日々草子 親孝行する後輩
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水玉

Author:水玉
『イタズラなkiss』のほかには『ゴルゴ13』が好きです☆
多数あるイタキスの二次小説の中で邪魔することなく、ひっそりとマイペースで我が道をゆきつつ生息しております。
そっと見守っていただけたら嬉しいです。

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当ブログは、『イタズラなkiss』の二次創作をメインとしておりますが、時折管理人の趣味や日々の出来事についての記事も書いております。

原作者様や関係各位とは一切関係ありません。

二次創作については、いわゆる原作の隙間をぬった作品もありますが、主人公以外のキャラクターをメインとしたものや オリジナルキャラクターが出てくるものもございます。

そして、原作と違った時代(平安や明治やその他の時代を舞台にしております)、異なる設定(主人公を医者と看護師じゃない職業にしております)で書いてあるものが多いですが、原作を冒涜しているつもりは全くございません。

二次創作が苦手という方及び原作のイメージと合わないと思われる方はどうぞお引き取り下さいますようお願いいたします。

コメント及びメールなどでの苦情及び批判は公開、非公開を問わず、私へ告げることはご遠慮いただけますよう、お願い申し上げます。

このブログ及び掲載されている話が嫌いだと思われたら、黙ってあなた様の中から、このサイトの存在を消去していただけますよう、お願い申し上げます。

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親孝行する後輩






斗南大学医学部附属病院の、とある一室に僕はいた。

「こちらがご用意したものです。」
カーテンを閉め切った上、明かりもぼんやりと間近にいる人が見える程度という部屋で、男がジェラルミンケースを開いた。中にはぎっしりと詰まった札束が!
「念には念を入れて、三千万円をご用意するようにと社長からの命令でした。」
三千万円!!すげえ、いつもの報酬より高い!!
「私どもの依頼を受け入れて下さるのならば、すぐに指定の銀行へ入金させます。」
三千万円を前に、顔色一つ変えない男―いつもの後輩が言った。
「わかった、引き受けよう。」
「ありがとうございます!」
そして男は傍らにいた部下らしき者に頷いた。閉じたジェラルミンケースを抱え、部下は部屋から足早に出て行った。
「それから、もう一つお願いが。なにとぞ、この件についてはご内密に。我が社のトップシークレットですので。」
「口止め料も含まれているってことだな。」
「はい。」
「分かった。」
後輩はいつものように壁に背をつけ、腕を組み立っている。その返事を聞いた依頼人はホッとした顔で部屋を出て行った。

三千万円かあ。いつもは二千万円なのに。あ、すごく危険な所へ出向く時なんかはそこそこの価格だけど、でも今回は普通の手術だし。あいつのアーマライト何ちゃらも出番ないし。
もう入金されたんだろうなあ。いいなあ、三千万円かあ。何ができるかなあ…っと、目的のフロアにエレベーターが到着してしまった。

「やれやれ、ここは床からして違うよなあ。」
フカフカの絨毯に足を取られつつ、僕は一番奥の特別室の前に足を止めた。入り口に掲げられている名前は『一色菊之助』。ドアをノックすると「はい」という返事が聞こえた。
「失礼します。」
広い特別室の、豪華なベッドにいるのは見覚えのある顔。
「ご気分はいかがですか、"一色さん”。」
「西垣先生、ここでは本名で結構ですので。」
笑う患者は入江重樹さん、そう、あの後輩の親父さんだ。
「すみません、会社の社長という立場では病気だと明らかになると色々大変なんです。」
「社員達も不安を抱えるでしょうし、株価にも影響がありますの。」
「これでも私の肩に社員達の生活がかかっているものですからねえ。」
親父さんと、傍らに座っているお袋さんが申し訳なさそうに僕に言う。
「いやいや、ご事情がある患者さんは珍しくありません。そうですよね、パンダイレベルの大企業の社長さんですと大変なこともおありかと。」
いい社長だよなあ。うちの院長や外科部長も少しは見習ってほしいよ。
「ところで一色という名字はどこから?」
僕はベッドのネームプレートを見て尋ねた。
「一色は私の旧姓でして。」
お袋さんが答えてくれた。
「へえ、そうなんですか。じゃあ、下のお名前は?」
「私の父の十代前の当主からです。何でも愛人と妻を殺してどうこうしたとか…。」
「えっ!そうなの?」
親父さんが真っ青な顔でお袋さんを見た。お袋さんは「ホホホ」と笑っているばかりだ。ああ、このお袋さんの血を間違いなくあいつは引いている。
ということで、あいつの今回の依頼人は親父さん。あいつは実の父親から三千万円といういつもより高額の報酬を取ったんだ!
それを指摘したらあいつはこう言った。
「ビジネスはビジネス、プライベートはプライベートなので。」
言ってることは社長みたいだな、こいつ。

「でも、まあ病気といってもただの盲腸ですしねえ…。」
「ちょっと、西垣先生!!」
いつの間に来ていたのか、琴子ちゃんが僕を睨んでいた。
「たかが盲腸とは何ですか!」
「で、でも…。」
「盲腸だろうが痔だろうが、患者さんにとっては病気に違いないんです!手術には違いはないし、お義父さんの不安は一緒です!!」
「ご、ごめん。」
そうだよな。僕らにとっては盲腸なんて研修医が手術デビューする時に多い病名だけど、患者さんにとっては手術に違いないもんなあ。
「まあ、琴子ちゃん!!なんて素晴らしい看護師になったのでしょう!!」
嫁溺愛のお袋さんが涙を浮かべ、拍手をしている。
「素敵よ、素敵!!よかったわ、琴子ちゃんが担当になって、ねえ、あなた!」
「そうだなあ。」
「もう一回、今のところお願いできるかしら?」
お袋さんはいそいそとバッグからカメラを取り出した。
「もう一回とは?」
僕が聞くと、
「もう一回、琴子ちゃんが西垣先生に啖呵を切ったところですわ!」
「はあ!?」
何言ってるの、お袋さん!
「分かりました、お義母さん!」
琴子ちゃんが張り切って「あめんぼ赤いなアイウエオ」と発声練習を開始する。ちょっと、ちょっと。何やる気になってるの、琴子ちゃん!
「西垣先生、じゃあこっちに。」
ひとしきり発声練習を終えた琴子ちゃんが僕を誘導する。
「もう一度お願いしますね。」
「分かったよ、ええと…ただの盲腸…。」
「ちがーう!!」
琴子ちゃん、いや琴子監督が僕の台詞を止めた。
「違うって?」
「こうですよ!“おい、入江!!お前俺の言うこと聞かねえってのか、患者の分際で!!”」
琴子監督は親父さんのベッドに片足を置いて演技指導を開始する。ちょっとそんなこと、僕してないけど!
「そこへ私が“何をするんですか、西垣先生!!医者の権力を使ってひどい!!”と涙ながらに割り込みます。その私を西垣先生は“うるせえ!”って突き飛ばして下さい!」
「しないよ、そんなこと!」
「琴子ちゃん、素敵よお!!」
「琴子ちゃん、わしはええともうちょっと顔色悪いメイクをした方がいいかな?」
「そうですね…お義母さん、ファンデーションありますか?」
「あるわよ、待ってて!」
お袋さんがバッグをゴソゴソ探す間に、僕は特別室から退散した。



「お前の一族、面倒くさいな!」
「あなたに言われたくありません。」
「ていうか、盲腸なんて何千万円もかかる手術じゃねえだろうが!」
「向こうがそれでと言うのだから、従うまでです。」
手術室で後輩を捕まえた僕は特別室の一件を事細かに伝えた。が、想像通りのリアクションだ。
「ん?」
どうも後輩の様子がおかしい。何か考えているような、ちょっと落ち着かないような。
「何かあった?」
「明日の手術のメスがないんです。」
「えっ!!」
僕は慌てて周囲を見回した。あれ?あるじゃん。いっぱい。
「あるよ?」
「それじゃありません。俺専用の、俺の手に合わせたオーダーメイドのメスです。」
「そんなもん作ってるのね、お前。」
ん?待てよ?
「それってもしかして、親父さんが作ってる?」
「そうです。」
「余分に作ってもらわなかったの?」
「先日の手術で、どっかの使えない助手が派手に落としたせいで全てなくなりました。」
「あ、すみません。」
僕のせいか。
「親父さん、ストックとかないかなあ。」
数回社長室にお邪魔した時、机の引き出しから色々出してたからそこにあるんじゃないの?
「言っておきますが、親父の引き出しの中の金庫は指紋認証かかってます。」
「あらら。」
「親父以外の指紋が触れたら仕掛けられた装置が発動、ドカンと証拠をすべて消し去るシステムですから。」
「何ですと!?」
なんちゅうもんを大企業の社長室に仕掛けているの、親父さん!社長の入院よりもそっちの方がトップシークレットじゃないの!
「とにかく今回は既製品のメスで我慢したら?」
「そんなことできません。」
傍らに置かれたメスをチラリと見て、こんなもん使えるかという顔をする後輩。
「ちゃんとした道具を用意しないと依頼に応えたとは言えない。俺の肩には依頼人たちの命がかかっているんです。」
なんか親父さんと同じようないいことを話しているんだろうけどさ、お前が言うと黒いモヤモヤとした背景が浮かぶのはなぜだろうな?


「仕方ない、あいつに頼むか。」
「他にもいるんだ。」
何だ、そんなことなら悩む必要ないじゃん。
さっさと支度をして病院を出る後輩の後を僕は追いかけた。出かける僕を見かけても、誰も声をかけてこない…僕の存在は本当に真夏のコバエよりも…。
「真夏のコバエの存在感、なめてるでしょ?」
まだ心を読みやがった!
「べ、別に!」
「ま、あいつらの方が賢いですけど。」
くそっ!

「あれ、ここは?」
普通のビルの前に僕らはいた。後輩はさっさとエレベーターに乗り込む。閉めかけたドアの隙間から僕は身を滑らせた。

「あれ、珍しいな。」
入ったのは、とある法律事務所。後輩を出迎えたのは見覚えのある穏やかな笑顔の男性だ。
「あなたは…。」
確かいつか警察に捕まった後輩と僕を迎えに来てくれた渡辺という弁護士だ。
「入江、こちらは?」
「いいんだ、コバエだと思ってくれ。」
「コバエはしつこいからなあ。」
…やっぱり後輩の友人だけある。

「なるほど、メスか。分かった、任せてくれ。」
え!渡辺弁護士がメス作ってるの?
「じゃあ、行こうか。この後は仕事は特にないから。」
事務所を出る弁護士につづき、僕と後輩も行く。

「入ってくれ。」
どうやらこのマンションが弁護士の自宅らしい。一人暮らしにしてはなかなか豪勢な。僕のマンションより良い所だな。
「全部入江のおかげですよ。」
この人も読心術かよ。
「ていうか、西垣先生でしたっけ?顔に全部出てます。」
やばい、医者はポーカーフェイスが信条だというのに。
しかし、きちんと片付けられた部屋だ。女の気配もありゃしない。
「男は全てあなたと一緒だと思わないで下さい。」
後輩が読心術を使った。へえへえ、すみませんね。

「さてと。」
書斎に入ると(このマンション、3LDKらしい。うらやましい!)渡辺弁護士は机の引き出しを開けた。中にはまた金庫らしきものが。
「もしかして、指紋認証?」
「当然です。」
指をピッと該当箇所に当てるとピーッって解錠の音が聞こえた。
「渡辺弁護士以外の人が触ると…。」
「ドカンです。当然です。」
お前ら、ドカン好きだな!って、そう言われて驚かなくなっている僕もちょっと自分が怖い。

「これでどうだろうか?」
金庫から取り出した黒革のケース。それを後輩が開ける。
「すげえ、きれいなメス…。」
すげえ高そう。僕だって使ったことない!
「十分だ、さすがだな。」
「お前の親父さんの教え方が上手なんだ。」
なるほど、渡辺弁護士は親父さんの弟子ってわけか。

「急な話で申し訳なかった。」
後輩は言いながら、分厚い茶封筒を弁護士に渡す。弁護士は中身を確認することなくそれをポケットにしまった。
「毎月の決まったものは受け取っているのに、お前も律儀だな。」
「え?毎月こいつから決まった金額を?」
思わず僕は口を挟んでしまった。
「ええ、今回のような不測の事態に備えて。こういう所、入江はプロ意識が高いんです。」
まあ、そこは見習いたいような気もするけど。
「弁護士ならこんな仕事しなくても食っていけるのに?」
「いやいや。司法改革の影響を受けて結構競争激しいんですよ。こういう副業は本当、助かります。」
もっとまともな副業を選べばと思うけど、黙っておく僕。
「あ、入江。弁護士だから依頼人の秘密は守るから安心して。」
「そこは医者と同じなんですね。」
「守秘義務ってやつです。ああ、西垣先生がスーパーエリートイングリッシュスクールを30分で逃げ出したこととか、女性を怒らせて真空飛び膝蹴りをくらったことも秘密にしておきますね。」
「なぜそれを!?」
後輩の活動を全て記録するためには世界中行かなきゃいけなくて、そのたびに馬鹿にされて悔しいから英語を身につけようと大金はたいて入学したけど、予想以上に厳しくて怖くてさ。
あと、二股かけていたことがばれちゃって…って、何でそれこそ僕のトップシークレットをこの弁護士が知ってるわけ?
「あなたもそろそろ、次の仕事を見つけた方がいいのでは?」
黒革のメスケースを丁寧にしまった後、後輩が冷たく言った。



と、色々あったけれど後輩の親父さんの手術は無事に終了した(そりゃ三千万円もらってればねえ)。
「入江くーん!」
手術を終えた後輩に、琴子ちゃんが尻尾を振って近づいてきた。
「お疲れ様!呼んでるっていうから来たけど?」
ああ、はいはい。いつものあれね、仮眠室のあれね。
「親父の手術のお礼に、お袋がいいもんくれたから。」
「いいものって?」
「仮眠室に置いてあるらしい。」
「へー、何だろうね!」
後輩の腕を取りスキップする琴子ちゃん。当然、僕もこっそりとついて行く。
「うわあ!!」
「何だ、こりゃあ!!」
仮眠室に入った途端、琴子ちゃんと僕は同時に悲鳴を上げた。
「素敵!」
「何でこんなもんを!?」
そこにあったのは、いつものボロっちいベッドじゃなくて…。
「お姫様のベッドみたい!!」
天蓋付きのベッドだ。仮眠室に全然合ってない!!
「早速使ってみるか。」
そう言って、後輩は僕を後ろに足で蹴り出した。そして後ろ手でガチャリとドアを閉め鍵をかけた。

「入江くん…ああ、そこ、そこが指紋認証の場所よ~!ピッタリ~!!」

あいつ、どこに指紋認証させてるんだか。
ていうかさ、ベッドより防音を施してもらえばよかったのに!!


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