日々草子 水面に映る蓮の花 19
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水玉

Author:水玉
『イタズラなkiss』のほかには『ゴルゴ13』が好きです☆
多数あるイタキスの二次小説の中で邪魔することなく、ひっそりとマイペースで我が道をゆきつつ生息しております。
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当ブログは、『イタズラなkiss』の二次創作をメインとしておりますが、時折管理人の趣味や日々の出来事についての記事も書いております。

原作者様や関係各位とは一切関係ありません。

二次創作については、いわゆる原作の隙間をぬった作品もありますが、主人公以外のキャラクターをメインとしたものや オリジナルキャラクターが出てくるものもございます。

そして、原作と違った時代(平安や明治やその他の時代を舞台にしております)、異なる設定(主人公を医者と看護師じゃない職業にしております)で書いてあるものが多いですが、原作を冒涜しているつもりは全くございません。

二次創作が苦手という方及び原作のイメージと合わないと思われる方はどうぞお引き取り下さいますようお願いいたします。

コメント及びメールなどでの苦情及び批判は公開、非公開を問わず、私へ告げることはご遠慮いただけますよう、お願い申し上げます。

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久しぶりの続きにコメントと拍手をありがとうございました。
続きを読んでいただけてホッといたしております。

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「さすが、母上の親友によって集められた女官たちだな。いずれも身元がしっかりとしている。」
東宮殿に戻り、直樹は机に広げた名簿を興味深く眺めていた。
「直樹様、今の刻限は診療所においでのはずでは。いえ、それよりも先程のお話なのですが。」
直樹の言葉にまだ半信半疑といった鴨狩が尋ねる。
「先程?」
「側室を迎えるためにと仰ったことです。」
「ああ、その通りだ。」
直樹は平然と答えた。
「まことでございますか!?」
「嘘を言ってどうする。どうせ迎えるようにとうるさく言われるのだ、ならばこちらから先に手を打った方がよかろう。」
「そんな、東宮妃様が聞かれたらどう思われるか。」
「もうあいつはいない。このような話が聞こえない所に自ら出向いたんだ。」
まるで琴子のことはもう話したくないという、冷たい直樹の態度である。
「しかし。」
「ああ、この女官は覚えている。見た目も悪くなかった。」
「見た目などと。そもそも、女官から側室に迎えることはいかがかと。まずお手がついて、それで御殿を賜り、王妃様の許可を得て、いえ、東宮妃様の許可をも…。」
「だから東宮妃はもういないと申しただろう。」
直樹が声色を強めて、鴨狩の言葉を遮った。鴨狩はそれ以上は何も言えなくなった。
「大臣たちの娘から側室を選ぶのはあの時で懲りた。ならば手っ取り早く周囲にいる者の中から選ぶのがいい。」
「直樹様。」
「うるさい、お前はもう下がれ。」
直樹に命じられ、鴨狩は渋々、引き下がるしかなかった。



「何と、東宮様がそのようなことを!」
東宮自らの側室選びの件は、欅宮の耳に入っていた。
「左様でございます、東宮様はようやく目が覚められたのでございましょう。」
側仕えの柘榴が嬉しそうに相手をしていた。
「ただ、あの娘に仕えていた女官から選ぼうとしているところに未練があるような気もするが。」
そう言う欅宮は直樹の行為を全面的に信用することはまだできなかった。
――あれほど寵愛していた娘だというのに。
いや、それは考えすぎというものだろう。自分が思っていたように、高貴な育ちの東宮の前に突如現れた、貧乏貴族の娘が珍しく見えただけに違いない。そういうものは程なくして飽きが来るというものなのだ。
「それは、東宮妃様の顔を立ててのことなのでしょう。実際、そのように東宮様はお話しになったそうでございますから。」
「そうだな。」
そういうことにしておこうと欅宮は思った。
「それにしても、あの娘に仕えていた女官のどれかにお手がついたら面倒だな。」
女官から側室になるには、貴族の娘が正式に側室に選ばれることと手続きがかなり違う。
「まずは子を産まねば側室として認められぬからな。それが男子だとますます厄介なことになろう。」
「でも大丈夫でございますよ。選ばれた女官はこちらから手を回して如何様にもできますから。」
「それに」と柘榴は続ける。
「いずれ正妃が必要になります。未来の王妃たるお方はそれなりの教養を身につけたお方が。」
「そうだな。」
その時が待ち遠しいと欅宮は笑った。



――このような粗末な暮らしをしていても、御髪は変わらないものだわ。
桔梗は櫛を動かしながら思った。
「たっぷりで美しい御髪でございますね。姫様のご自慢の御髪。」
「桔梗がそうやって手入れをしてくれるからよ。」
東宮妃だったころのように香油など使うことはできない。が、実家で貧しい暮らしをしていたころとて、香油はたまにしか使わなかった。それを思えば何ということはなかった。それに琴子の髪は香油を使わずとも艶めいていた。
櫛を動かしていた桔梗の手が不意に止まった。
「どうかしたの?」
「人の気配がしたような。」
「まさか、このような所には…。」
二人がそのような会話をしていた時だった。
「欅宮様のお越しでございますぞ!」
聞き覚えのある声が、二人が暮らす粗末な建物に響いた。



――みずぼらしさが増したな。
欅宮は、粗末な衣装をまとった琴子を冷たい目で見ていた。
「欅宮様がなぜこちらへおいでになられたのでしょうか?」
桔梗は訊ねずにいられなかった。ここは冷宮、かつては罪を犯し、または王や東宮の怒りをこうむった妃や女官たちが幽閉された場所である。現王の叔母にあたる欅宮が足を踏み入れる場所ではないことは間違いない。それに日に三度の食事を運ぶ者以外立ち入り禁止のはず。

「宮中の出来事を知らせてやろうと思ってな。」
欅宮は答えた。今だ宮中で勢力を持つ大泉家と縁のある欅宮である。手を回してこの冷宮に入れたのだろう。
「出来事でございますか。」
琴子の目に怯えが浮かんだ。ただそれだけのことならば、使いを寄越せば済む話。わざわざ本人が足を踏み入れてまで伝えに来た内容はいいものではないだろう。
「東宮様が側室を迎えることになった。」
「えっ…。」
まだ決定していないが、あえて迎えると断言したのは欅宮の企みであった。
「まことでございますか?東宮様が?」
青ざめて唇を震わせている琴子に代わって、桔梗が聞き返す。
「まことだ。ようやくご自身の立場を自覚されたらしい。」
欅宮は傍にいる柘榴と顔を見合わせニッコリと意地悪く笑った。
「誰かのせいで、身分違いの女人を迎えることにすっかり慣れてしまわれたようだが。」
「身分違いとは?」
桔梗は欅宮に訊く。
「女官の中に、どうやらお気に召した者がいたらしい。いずれ、その者が東宮殿に呼ばれる夜も近いと後宮ではもっぱらの噂よ。」
「女官から…。」
琴子が弱々しく呟く。いずこの女官なのだろうか、それは自分が知っている女官なのだろうか。
「何せ、ご自身で女官の名簿を調べていらっしゃるくらいだ。よほど、ご執心なのだろう。」
嘘は言っていないと欅宮は思った。
「ご自身で…。」
「まあ、側室を迎えても、正妃が必要になるのは間違いない。」
「お待ちください、欅宮様!」
桔梗が叫んだ。
「無礼だぞ、桔梗。」
柘榴が注意するが、欅宮は鷹揚に「よい」と言った。
「何だ、桔梗。」
「正妃と仰られましたが、こちらの東宮妃様が正妃であることは事実でございます!」
琴子はまだ妃を廃されてはいない。まるでもう東宮妃ではないかのような物言いは桔梗が一番許せないことであった。
「ああ、そうだったな。すっかり忘れていた。まだしぶとく、図々しく正妃であったか。」
ホホホと欅宮が笑った。
「東宮様はもう正気に戻られたのだ。」
「正気だなんてひどい仰りようではありませぬか。」
桔梗が涙ながらに抗議するが、欅宮には何一つ響かないものだった。
「正気に戻られたのだ。将来王となられるお立場にふさわしい正妃を迎える気に間もなくなられよう。側室は側室、正妃は正妃。」
「大泉家には、未来の王妃にふさわしきお方がおいででございますから。教養を身につけたお美しい姫君が。」
それが先の東宮妃を指していることは、琴子にも桔梗にも分かった。

「それで、そなたはいかがするつもりだ?」
欅宮は青ざめている琴子に訊ねた。
「王妃様より妃を廃する命令が下るのも間もなく。王妃様はそなたをお気に召しているゆえ、廃された後は宮中から暇をお与えになるだろう。それとも、この冷宮で廃妃として、過去の、ほんの僅かな、身の丈に合っていなかった暮らしを懐かしんで生涯を終えるか?」
「私は…。」
たとえそうなっても、ここで、宮中の片隅で、誰からも忘れられても直樹を想って暮らしたいと琴子は言いたかった。が、その言葉を出そうとすると胸が苦しくて何も言えなかった。
「新しき正妃にとって、宮中の片隅にそなたのような者がいることは目障りだろうが、な。」
「…。」
琴子は俯いたきり、何も答えなかった。桔梗は琴子の気持ちを慮り歯を食いしばって欅宮の仕打ちを耐えていた。
「地べたに這いつくばり、粗末な身なりで二度と戻らぬ栄華の日々を懐かしんで暮らすのも、似合っているかもしれぬなあ。」
再び欅宮と柘榴の笑い声が響いた。
「帰るぞ。このような所にいると息がつまりそうだ。過去の女人たちの怨念が染みつきそうで不快だ。」
言いたいだけ言うと、欅宮と柘榴は去って行った。



「姫様…何かの…何かの間違いでございましょう。」
桔梗はまだ信じられなかった。
「そんなことはないわ…欅宮様がわざわざいらして話していかれたのだから。」
今にも意識を失いそうな琴子を、何とか桔梗は建物の中に入れて座らせる。それでも琴子は座っていることが辛くて倒れてしまった。
「姫様、お気を確かに。」
「直樹様は…本当に私のことを忘れてしまったのね…私のことなど…心の中にもういないのね…。」
「姫様、そのようなことは。お気を確かに。」
先程桔梗に梳かしてもらったばかりの髪は、涙で濡れ始めた。





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入江君の、何かの作戦と、信じたいけど。😖v-238

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