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2019.05.13 (Mon)

水面に映る蓮の花 18

長い間お待たせして申し訳ありませんでした!!
リハビリもできてきたので、続きにとりかかります。
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【これまでのざっくりとしたあらすじ】
宮中に乗り込んで来た欅宮というオババの企みにより自信を失ってしまった東宮妃琴子は東宮直樹と言い争いに。
直樹に愛想を尽かされ、更に欅宮の罠にはまってしまい、宮中生活で身も心も疲れ果ててしまった琴子は桔梗だけを連れて冷宮という、その昔、妃を廃された者たちが送られた場所へ自ら暮らすことに。それを止めることもしなかった直樹を母は叱るがどこ吹く風~という態度。
そんな状況のなか、二ノ宮裕樹の絵の師匠の娘である好美があやしい女官を発見、これは何かあるぞと少年探偵団の結成か?


☆☆☆☆☆


【More・・・】






事は慎重に運ばねばならないことを、三人の少年少女は分かっていた。
「女官の名簿は宮中に提出されているはずなんだ。」
以前、そのようなことを王妃が話しているのを裕樹は耳にしていた。
「その名簿を見れば、痣のある女官が何者か分かるんだ。」
今すぐでも、その名簿が置かれている部署へ行きたい三人であった。が、下手に動くとまた琴子に迷惑がかかってしまう。
「どうすれば見られるものなのでしょう。厳重に鍵がかかっているのでしょう?」
春也が裕樹に尋ねた。
「多分。女官の人事を担当する部署に厳重に保管されているはずだ。」
「あのう。」
二人の話を黙って聞いていた好美が手を上げた。
「私が女官のふりをしてそこに忍びこむというのは…。」
「馬鹿かお前は!」
最後まで好美に話をさせず、裕樹が怒鳴った。「宮様、お静かに」と春也が慌てる。この会話が外にばれてはいけないことを裕樹はすぐに思い出し、怒鳴ることをそこで止めた。
「お前が女官に化けても、せいぜい下っ端だ。下っ端女官がやすやすとみられるようなものではないんだ。」
「も、申し訳ございません。」
好美が自分の考えが足りないことを素直に詫びる。裕樹は「コホン」と咳払いをして、続けた。
「…それにお前の正体がばれたら、恐ろしい拷問に合うかもしれないだろうが。いや、母上は拷問はお嫌いだからそれは避けられたとしても、宮中から永久追放の沙汰を出さねばならないかもしれぬ。そんな危険な目に遭わせられるか。」
「宮様…。」
ひょんなことから見せられた裕樹の優しさに、好美が頬を染める。自分で言っておいて照れたのか、裕樹はプイと横を向いた。その二人を春也がニヤニヤしながら見ていた。
「確かに宮様の仰る通りです。好美殿を危険な目に遭わせるわけにはいきません。でしたら…。」
春也がそこで言葉を止めた。その先は好美も同じことを考えていた。二人は裕樹を見つめた。
「…母上にお願いすればと僕も思う。けれど、母上を巻き込むと大騒ぎになるし。」
「欅宮様たちに疑われることになりますね。」
きっと母は琴子のためにと事情を話せば力になってくれるだろう。が、今後は母が王妃の地位を降りる危機に陥るのではないだろうか。
「後宮というのは表よりも掟が厳しいところがあるからな。僕が出向いても相手にされないだろう。」
元服前の裕樹が名簿を見たいと言っても、いくら相手が王子であっても許されないことは間違いない。
「宮様がだめなら私たちが出向いても無理ですね。人事をつかさどるということはかなり大事ですから…。」
「そう。王子の僕ですら…ん?」
裕樹が何かひらめいたようであった。
「どうなさいました?」
「いや…王子がだめでも…女官相手ということは…王子よりも…。」
一人でしばらくブツブツ言っていた裕樹が、やがてニンマリと笑った。



「鴨狩、鴨狩。」
「おや、宮様。」
鴨狩が兄の所から下がって来た所を、裕樹はつかまえた。
「一人か?今、忙しいか?」
「一人でございますが…珍しいですね。宮様が私の忙しさを気遣って下さるとは。」
「僕だってたまには優しいのだ。ちょっと話があるのだが。」
「何かいたずらを考えておいでなのではないでしょうね?」
鴨狩は笑いながらも、裕樹について来た。

「…それはまことでございますか?」
周囲に誰もいないことを確かめたうえ、裕樹は謎の女官の存在から名簿の話まで鴨狩に聞かせた。
「まこともまこと。だから、お前の力を借りたいのだ。」
「私が名簿を見せてもらえと?」
「そう!」
話が早いなと裕樹は手を叩いた。
「それは難しいことでございます、宮様。」
申し訳なさそうに鴨狩が言った。
「なぜだ?お前ならば東宮の侍従だろ?兄上が王になられたら侍従長だ。そのお前が名簿を見せろと言えば見せるのではないか?」
「私が侍従長になるかは分かりませぬ。」
顔をしかめていた鴨狩は笑った。
「東宮の侍従がなぜ女官のことを調べるのです?」
「そ、それは…。」
「東宮殿に仕える女官のことを調べるならまだしも、東宮妃の御殿の女官を調べる理由が私にはありませぬ。」
「え?」
裕樹は聞き返した。
「ちょっと待て。名簿というのはもしかして。」
「はい。仕える部署、仕える御殿によってまとめられております。そうしないと整理できないですから。」
「ああ、そうか。」
そんな基本的なことに気づかないほど、裕樹は自分が焦っていたことに落ち込んだ。確かにその通りである。
「つまり、どこぞの女官について知りたいからと申し出て人事の長である女官に許可を得てその名簿だけを取り出して確認するという手順なのです。そうせねば面白半分に探る者が出てきますからな。」
「そうか。」
がっくりと肩を落とした裕樹に、鴨狩は気の毒だと視線を向けた。こんなに小さい王子が必死になって東宮妃の潔白を示そうとしているのに。
「…とりあえず、侍従の立場を利用してやってみましょうか。」
「まことか!」
「成功する可能性はほぼありません。が、宮様がそこまで必死になっておいでなのに私が何もしないのは辛いことでございますゆえ。」
「鴨狩!」
「ご一緒に昔の雀殿へ出向いたこともございますし。」
やはり鴨狩は話が分かると裕樹はその両手を取ってぶんぶんと振り回した。
「そういえば、兄上はどうされておいでか?」
落ち着いた後、裕樹が話を向けた。途端に鴨狩の顔が曇った。
「いつもと同じでございます。学問をされ、医者として宮中の外へお出かけに。」
「…琴子がいないことにすっかり慣れてしまわれたのか。」
裕樹が意地でも兄に力を借りようとしないのは、そのような態度が気に入らないからでもあった。

それから数日後、直樹が診療所へ出向いた日の午後、鴨狩は裕樹からの頼みを実行することにした。
「よいですか。宮様は絶対にいらっしゃいませんように。それを約束していただかないと私も名簿閲覧を願い出ることはできません。」
「分かった。」
裕樹とこういう約束を交わしてのことだった。万が一、自分の身に何かが起きても裕樹がその場にいなければ守ることができるという鴨狩の考えであった。

「…と言われても、じっと待っているのは難しい。」
裕樹は女官の人事管理部署の近く、人目につかない場所にいた。
「鴨狩のやつ、全て自分の責任で行うつもりだがそうはさせないぞ。何かあったら僕が命じたと飛び出さねば。」
そう言いつつも、春也と好美はそれぞれの家にいるようにきつく命じていた。
「あ、来たぞ。」
鴨狩が一人で歩いて来るのが見え、裕樹は身を潜め口を閉じた。どこか緊張した面持ちなのが伝わってくる。

「これは鴨狩様。」
女官たちは東宮侍従の姿を認めると、一斉に頭を下げた。なるほど噂通りの厳重さだと鴨狩は思った。
「こちらは宮中に仕えし女官たちの人事を統括する場所でございます。どのような御用でしょうか。」
「女官の名簿を見たいのだが。」
率直に希望を鴨狩は述べた。女官たちは顔を見合わせた。
「恐れながら、名簿は正当な理由がなければ。」
「東宮侍従としての役目から名簿を閲覧する必要がある。」
できるだけ威厳を保ち鴨狩は言った。とはいえ、内心は汗だくである。
「少々お待ち下さいますように。」
さすがに東宮の、しかも首位にたつ侍従。無碍に断ることはしなかった。女官の一人が上司へ報告をするために室内へと消えた。
しばらくすると、人事担当の女官長が姿を見せた。人事を担当するだけに、かなりの貫禄である。
「鴨狩様、女官の名簿をご覧になりたいとか。」
人事の女官長とはいえ、位は鴨狩より下である。鴨狩より上の位に立つのは王についている侍従長と王妃の女官長、同位は東宮妃女官長である桔梗である。
「左様。手間をかけさせて悪いのだが。」
自分の頼みを断ることはあるまいと、わざとそういう態度を装って鴨狩は告げた。
「恐れながらそれは無理でございます。」
「何だと?」
「いくら鴨狩様とて、それはできかねます。」
有無を言わさぬ人事女官長の態度であった。
「そう言われても困る。名簿を見せてほしい。」
「申し訳ございませんが。」
頭を下げる人事女官長。
「私は…東宮様の、首位にある侍従であるが。」
「私は王妃様より女官の全てを記したものを管理する権限をいただいておりまする。」

「完全に負けだ…。」
見守っていた裕樹が小さく溜息をついた。やはり東宮の侍従というだけでは無理だった。
「鴨狩に悪いことをさせてしまった。あとで謝らねば。」
それよりも、自分が飛び出した方がいいだろうか。だがここで飛び出すと更にややこしいことになり、母の耳に入り父の耳にも。叱られることは全然怖くないが騒ぎを起こすことは怖い。
「だけど鴨狩にだけ責任を負わすのも…。」
と考えあぐねていた裕樹の目が大きく見開いた。

それまで梃子でも動かぬとばかりの人事女官長が頭を下げた。背後に控える女官たちも同様である。鴨狩は振り返った。
「鴨狩、きちんと理由を話さねばならぬ。」
「と、東宮様!?」
女官たちが頭を下げる間をやって来たのは、宮中にいるはずのない直樹であった。
「人事女官長、鴨狩は俺の命で来たのだ。」
「東宮様の御命令でございますか。」
「そうだ。」
「恐れながら、どのような理由でございましょうか。」
それは鴨狩も聞きたいくらいだった。「理由などなくとも自分は東宮だ」と言い張るのだろうか。いや、そもそもどうして直樹が名簿のことを聞きつけているのか。
「理由は側室選びのためだ。」
直樹が平然と言い放った言葉に、人事女官長も鴨狩も驚いた。
「ご、御側室でございますか?」
絞り出すように人事女官長が聞き返す。
「そうだ。そなたも知っているように東宮妃があのようなことになった。そうなると側室が必要なのだ。」
「…しかし。」
それでもまだ信じられぬという人事女官長に、直樹は続ける。
「東宮が命じている。名簿を、東宮妃に仕えし女官たちの名簿を見せよ。」
「東宮妃様の女官たちでございますか。」
「一応、その中から選んだほうが軋轢が少なくて済むだろう。」
これ以上まだ何かと直樹がギロリと人事女官長を睨んだ。さすがに東宮には女官長も何も言い返せず、「どうぞ、こちらへ」と中へ通した。

「こちらが東宮妃様にお仕えしていた女官たちの名簿でございます。」
人事女官長が冊子を直樹の前に置いた。
「苦労をかけた。では借りていくぞ。」
「東宮様!」
冊子を鴨狩に持たせ、立ち上がった直樹を女官長は呼び止めた。
「何だ?」
「恐れながら持ち出されることは…。」
「それは見逃してくれまいか。」
直樹が綺麗な顔で笑った。年は重ねているとはいえ人事女官長も女、頬を染めるのを鴨狩は見逃さなかった。
「側室を選ぶのだ。ここで目を通すだけでは難しい。自室で吟味したいのだ。」
「さ、左様で…。」
「話が分かる女官長で助かる。それにこの厳重な保管、そなたを人事女官長に選ばれた王妃様のお考えは確かでいらした。」
「勿体ないお言葉でございます。」
褒められた人事女官長がそれ以上反対することはなかった。



「兄上が側室…側室…側室…。」
兄と鴨狩が出て来たのを見届けた裕樹であったが、頭にはその言葉しかなかった。
「まことなのか、兄上が…。」
どこをどう戻って来たのか、裕樹は自分の御殿に気づいたらいた。が、何も考えられずにいた。



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Comment

ありがとうございます
あゆみ |  2019.05.13(月) 22:39 |  URL |  【コメント編集】

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 |  2019.05.13(月) 23:25 |   |  【コメント編集】

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 |  2019.05.14(火) 15:41 |   |  【コメント編集】

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 |  2019.05.14(火) 18:05 |   |  【コメント編集】

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 |  2019.05.17(金) 09:15 |   |  【コメント編集】

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 |  2019.05.17(金) 09:25 |   |  【コメント編集】

入江君の、作戦😖
なおちゃん |  2019.05.18(土) 11:01 |  URL |  【コメント編集】

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