日々草子 続・あの人に憧れて
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プロフィール

水玉

Author:水玉
『イタズラなkiss』のほかには『ゴルゴ13』が好きです☆
多数あるイタキスの二次小説の中で邪魔することなく、ひっそりとマイペースで我が道をゆきつつ生息しております。
そっと見守っていただけたら嬉しいです。

※当ブログに掲載されている文章及びイラストの無断転載・使用はご遠慮下さい。

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このブログについてのお願い

当ブログは、『イタズラなkiss』の二次創作をメインとしておりますが、時折管理人の趣味や日々の出来事についての記事も書いております。

原作者様や関係各位とは一切関係ありません。

二次創作については、いわゆる原作の隙間をぬった作品もありますが、主人公以外のキャラクターをメインとしたものや オリジナルキャラクターが出てくるものもございます。

そして、原作と違った時代(平安や明治やその他の時代を舞台にしております)、異なる設定(主人公を医者と看護師じゃない職業にしております)で書いてあるものが多いですが、原作を冒涜しているつもりは全くございません。

二次創作が苦手という方及び原作のイメージと合わないと思われる方はどうぞお引き取り下さいますようお願いいたします。

コメント及びメールなどでの苦情及び批判は公開、非公開を問わず、私へ告げることはご遠慮いただけますよう、お願い申し上げます。

このブログ及び掲載されている話が嫌いだと思われたら、黙ってあなた様の中から、このサイトの存在を消去していただけますよう、お願い申し上げます。

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「渡辺さーん、久しぶり!」
「やあ、琴子ちゃん!」
琴子ちゃんと俺は再会を祝してハイタッチをする。
「大丈夫、入江のことも忘れちゃいないよ。」
琴子ちゃんの後ろで相変わらず無表情な入江に俺は声をかけた。

入江から電話がかかってきたのは、数日前のこと。
「もう、俺の力ではどうにもなりそうもない。」
そんな弱音を珍しく吐く友人。とりあえず話を聞いてみると・・・なるほど、なかなか手強いようだった。
「三人で飯を食いながら、それとなく説得してみようか。」
入江ができなかったものを俺にできるとは思えないが、こうして頼まれたのだから力になりたい。というわけで、今夜の食事会となったわけ。

「渡辺さん、弁護士さんのお仕事忙しいでしょ?」
乾杯の後、料理をつまみながら琴子ちゃんが無邪気に聞いてきた。
「うん?そうだね、こんなことまで弁護士の仕事なんだってことが多いよ。」
「どんな?」
「おい、守秘義務があるんだぞ。」
入江がやんわりと琴子ちゃんを止める。
「あ、そっか。」
「いやいや、具体的な名前とか出さなければ。そうだなあ…例えば離婚とかで…。」
「離婚?」
「住んでいた家をどうするかとか、細かいところまで。」
「住んでいた家…。」
琴子ちゃんがお箸を置いた。しまった!
「ええと…。」
俺は入江をそっとうかがう。入江は数回頷いた。なるほど、さっさと本題に入る方がいいってことか。

「住んでいた家といえばね、渡辺さん。」
「あ、はいはい。」
「私と入江くん、引っ越しを考えているんだけど。」
「ああ、そうだってね。」
「ん?何で知ってるの?」
「え?ああ、ごめん。ちょっと扱っている事件の話とごっちゃになっていた。えっ!琴子ちゃん、引っ越し?どこに?」
俺は何も知らないというように驚いて見せる。
「ここなんだけど。」
琴子ちゃんは傍らに置いたバッグからチラシを出した。うわあ、本当にあのまんま。
「ここ、どこ?」
「××県の○○町。」
「へえ…。」
「ここなら私の理想にぴったりなの。」
「理想…って?」
勿論、琴子ちゃんの「理想」も入江から聞かされている。が、ここはあえて知らないふりをしなければ。
「あのね、それは…」と琴子ちゃんは一通り説明をしてくれた。

「でも、こんな崖の上の一軒家だと琴子ちゃん、すごく寂しいんじゃないかなあ?」
「入江くんが一緒だから平気。」
俺は入江の顔を見た。入江は眉間にしわを寄せ、無言でビールを飲んでいる。
「ええと…この辺には病院ないから仕事は?」
「ここで開業するの。」
「人いないから患者さん来ないよ?」
「大丈夫。お日様の当たるところを歩けないような患者さんが大金持ってくるから。」
そんな怖い患者さん、嫌だ。
「琴子ちゃん、何か読んだ…?」
勿論、知っている。だけどあえてそこは本人に確認。
「あ、これ。これなの!」
琴子ちゃんはいそいそとバッグから例の漫画を出して来た。そのそばに黒いマントがたたまれて置いてあるのを俺は見た。このセットを持ち歩いているというのは本当のようだ。
「ね?やっぱり医者の理想ってこれよねえ。」
「ええと…うん、そう思う…けど。」
この漫画は俺も昔読んだことがある。確かに感動する名作だとは思う。でも、これを実際実行しようという人は多分いない。というかできない。

「渡辺さんも読んだことあるのね!」
それならば話が早いと、琴子ちゃんの顔が輝いた。
「あるけど…うん。」
俺は入江の顔をまた見る。「おまえ、弁護士のくせに説得できねえのか」とその顔にはっきりと書いてあるのが分かった。
「でもさ、この主人公って無免許だよ?入江は免許あるし。」
たぶん入江も同じことを言っただろうなということを、俺は口にするしかなかった。
「あ、それは大丈夫。免許返納するってことで話をつけるから。」
「ええ!!」
この切り口から説得したと想像ついたけど、免許返納させちゃうの?
「それはまずいよ、琴子ちゃん。だって無免許の医療行為は法律違反だから!」
「もう、堅いなあ渡辺さんは。」
「いや、それが俺の仕事だから。」
法律を使うことを仕事に選んだ俺に何てことを、琴子ちゃん。
「法律にがんじがらめにされていたら、必要なことができない時だってあるでしょ?」
「まあ、そうかも。」
「ほうら、渡辺さんもそう思ってるじゃない。命は法律より尊いのよ。」
「そうかも…。」
「そうだ、渡辺さんも免許返納する?」
「へ?」
「そういうものに縛られないで、自由にお仕事しようよ。」
「いやいや!!やっとの思いで取得した資格なんだけど!」
無資格行為推進委員会の委員長となった琴子ちゃんは目がランランと輝いている。こりゃ、手強い。

「腕がいいことだけが、この主人公と入江くんの共通点じゃないわけよ。」
琴子ちゃんは焼き鳥を食べながら話す。
「何が共通点なの?」
「いい?入江くんもこの主人公も…孤高なの!!」
琴子ちゃんは漫画の表紙をバシッと叩いた。
「孤高…。」
それは入江も初耳だったようで、きょとんとなっている。
まあ確かに入江は孤高の存在だよな。近寄りがたいし。これは腹が立つくらいの整った顔立ちと歯ぎしりしたくなるくらいうらやましい頭脳のせいでもあるんだけど。
「確かに孤高と言われれば…。」
「主人公も入江くんも友達がいない!!」
琴子ちゃんの言葉に、俺はギョッとなった。それは入江も同じだった。
琴子ちゃん、それは「孤高」じゃなく「孤独」だよっ!!
「こ、琴子ちゃん、それは…。」
「ん?渡辺さん、何かご意見が?」
琴子ちゃんは軟骨をコリコリとさせながら俺を見た。入江は、妻に指摘された事実に軽いショックを受けているようだ。
「あ、わかった!あのシャチのことを言ってるんでしょ!」
「シャチ?」
何でこの場にシャチが?
「渡辺さーん、あのシャチは友達じゃないです。なぜならばシャチは人間じゃないからです。」
え?あの主人公、シャチと何か交流をしてたの?
「確かに親友と書かれているけれど、入江くんとの類似点に関しては省きます。」
ごめん、あの主人公はシャチが親友なの?ちょっとよく分からないんだけど。でもそこは突き詰めない方がいいんだろうなってことにしておく。

「いや、俺だって友達は…。」
入江がここでようやく口を挟んだ。俺の顔をじっと見る。
「うん、入江と俺は…。」
「友達じゃないでしょ?」
琴子ちゃんがきっぱりと言った。
「なぜならば、渡辺さんと入江くんはクラスメートです。クラスメートと友達は違いまーす。」
琴子ちゃんはレバーをぐいっと串から外してもぐもぐと口を動かす。そしてビールをぐびぐびと飲む。
「そんな…。」
「百歩譲って、渡辺さんがあのシャチみたいに真珠やサンゴや金貨を入江くんに運んで来たら友達と認定してもいいけど。」
ちょっと待って。さっきシャチは人間じゃないから友達じゃないって言ったの琴子ちゃんだよね?あと、琴子ちゃん、君は旦那に貢物をしない人間は友達じゃないの?

「どう?何かご意見は?」
ビールの酔いが回っているのか、琴子ちゃんは頬を上気させている。
「ご意見って…。」
俺は入江を見た。入江は俺と友達だと言ってほしい顔をしている。うん、そうだ。入江は友達だ。ただのクラスメートじゃない。高校三年間、そして卒業後もこうして相談を受けている間柄。これを友達と呼ばずして何と呼ぶんだ?
俺は琴子ちゃんを見た。琴子ちゃんの顔には「渡辺、空気読めよ」とはっきり書いてある。

パリッ…。

緊張したこの場に、乾いた音が響いた。見ると琴子ちゃんがレタスで肉味噌を包んだものを食べている。その音が響き渡っている。

パリッ、パリッ、パリッ…。

どうする、俺。どうこの場を求めるんだ?

パリッ、パリッ、パリッ…。

琴子ちゃんとの付き合いの方が、入江より短いのは事実だ。琴子ちゃんと知り合ったのは高3だし。
でも琴子ちゃんの期待を裏切りたくないというのも事実だ。
琴子ちゃんを失望させることはしたくないんだ。何て説明したらいいのか分からないけれど。
ほら、あれだ。よく性格のいい人っているじゃん?その人を怒らせると人間的に終わりっていうか。
「え?あいつ、あの仏のヤマさんを怒らせたわけ?すげえな!」みたいな非難を浴びる感じ。

パリッ、パリッ、パリッ…。

仏のヤマさん、じゃない、琴子ちゃんがレタスを食べている音が響く。入江との友情を選ぶか、仏のヤマさん…琴子ちゃんの信頼を選ぶか。

パリッ、パリッ、パリッ…。

レタスの音と共に俺の胃が痛みだす。

パリッ、パリッ、パリッ…。
キリッ、キリッ、キリッ…。

パリッ、パリッ、パリッ…。
キリッ、キリッ、キリッ…。

キリ…キリ…?俺は頭の中で大昔に一度読んだきりのあの漫画のページをめくった。カモーンッ、入江の記憶力!!今俺の頭の中にそれをくれっ!!

「キリ…キリコ!!」
「はい?」
俺の突然の大声に、琴子ちゃんと入江が同時に返事をした。
「そうだよ、キリコ!!」
俺は思い出した。
「ドクター・キリコ!あれは友達だろ、ブラック・ジャックの!!」

「…それは違うだろ、渡辺。」
暫しの沈黙を破り、声を上げたのは驚くことに入江だった。
「え?」
「違うよね、入江くん。」
なぜか琴子ちゃんも入江の意見に頷いている。
「ち、違うって?」
「ドクター・キリコは友達じゃないぜ、渡辺。」
「そうだよ、渡辺くん。キリコは違う。絶対違う。」
「そ、そんな…。」
「渡辺くん、もっと深く読み込まないと。」
「そうだな、それは大きな間違いだから。」
うん、うんと頷き合う夫婦。

…何だよ、おい!!俺が、俺が懸命に記憶の片隅から呼び出して、ちゃんと言ってやったのに、この期に及んで夫婦二人で全否定かよっ!!

「入江くん、ビールのお代り頼んでいい?」
「あと一杯だけな。」
「はあい。」
これまでの流れはそこでストップとなった。俺の役目って一体…。



「すっかり寝ちゃったな、琴子ちゃん。」
「お前と久しぶりに会って楽しかったんだろう。」
「よいしょ」と言いながら、慣れた様子で入江は琴子ちゃんを背負って店を出た。
「今日は色々悪かったな。助かったよ。」
「まったく、あそこで夫婦そろって全否定とはな。」
「悪い、悪い。でもまさかお前があそこであの名前を出すとは。」
入江がハハハと笑うと、琴子ちゃんは「いりえくーん」と名前を呼んだ。
「なにわらっているのよう。」
「お前のせいで散々な目に遭ったからだよ。」
そう悪態をつく入江の目は優しかった。まったく、こんな顔は高校時代は見たことないし、そもそも入江が女性を背負って帰る…いやいや、結婚することすら想像できなかったよな。

「ちょっと待って、入江。」
「ん?」
「あ、いや。琴子ちゃんの靴が脱げそうだったから…よし、と。」
「サンキュ。じゃあ、また。」
「ああ、また。免許返納するなよ。」
「当たり前だ。」
入江と琴子ちゃんの姿が見えなくなるまで、俺は見送った。
琴子ちゃんを背負う入江は、黒いマントを身につけていた。さっき靴が脱げそうだと誤魔化しながら、琴子ちゃんのバッグから拝借したものだ。うん、これで少しだけ琴子ちゃんの願望をかなえたことになるんじゃないかな。

何よりも大事な宝である妻を背負う俺の友人は孤独じゃない。でも腕は確かな、ちゃんと免許を持っているブラック・ジャックに違いない。






☆☆☆☆☆
作中のシャチは、ブラック・ジャック(手塚治虫)の主人公が開業して最初の患者です。
ドクター・キリコは安楽死をすすめる医者でブラック・ジャックと正反対の立場の医者です。


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