日々草子 悲しみ、そして喜びのバースデー
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プロフィール

水玉

Author:水玉
『イタズラなkiss』のほかには『ゴルゴ13』が好きです☆
多数あるイタキスの二次小説の中で邪魔することなく、ひっそりとマイペースで我が道をゆきつつ生息しております。
そっと見守っていただけたら嬉しいです。

※当ブログに掲載されている文章及びイラストの無断転載・使用はご遠慮下さい。

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当ブログは、『イタズラなkiss』の二次創作をメインとしておりますが、時折管理人の趣味や日々の出来事についての記事も書いております。

原作者様や関係各位とは一切関係ありません。

二次創作については、いわゆる原作の隙間をぬった作品もありますが、主人公以外のキャラクターをメインとしたものや オリジナルキャラクターが出てくるものもございます。

そして、原作と違った時代(平安や明治やその他の時代を舞台にしております)、異なる設定(主人公を医者と看護師じゃない職業にしております)で書いてあるものが多いですが、原作を冒涜しているつもりは全くございません。

二次創作が苦手という方及び原作のイメージと合わないと思われる方はどうぞお引き取り下さいますようお願いいたします。

コメント及びメールなどでの苦情及び批判は公開、非公開を問わず、私へ告げることはご遠慮いただけますよう、お願い申し上げます。

このブログ及び掲載されている話が嫌いだと思われたら、黙ってあなた様の中から、このサイトの存在を消去していただけますよう、お願い申し上げます。

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裕樹が帰ったのは、夕方にもまだ少し時間がある頃だった。
「ただいま…。」
リビングから声が聞こえてくる。ここしばらくは針一本落ちても響くのではというくらいの静かさだったのに珍しい。
裕樹は上がったばかりの玄関を見返した。靴は今脱いだ自分のものと、母が新聞や郵便を取りに行く時に使うサンダルだけ。
「来客、じゃないか。」
家族以外の靴、特に女性の靴がないか心配したが、それはなかった。

リビングのドアを開けるとソファに座る母の後頭部が見えた。
「ただいま。」
「ああ、お帰りなさい。」
不意に声をかけられた驚きを見せながら、母が裕樹を振り返った。
「珍しく声が聞こえると思ったら、ビデオか。」
大きなテレビには、ビデオが映し出されていた。そこにいるのは、今はもうこの家にいない人物。
「うふふ、高校最後の体育祭のビデオよ。」
誰の高校最後か聞かずとも、裕樹にはそれが分かった。
「そっか。懐かしいな。」
昔は何度も、それこそ飽きるほど見せられたというのに。裕樹は着替えに行くこともせず、そのまま母の隣に座った。
「見て、ここ!ああ、今見てもステキよね。」
母の示す方に映し出されているのは、兄とその背中に背負われた…。
「ったく、琴子は恥ずかしい奴だよな。」
「あら、一生懸命走った結果、転んじゃったのよ。頑張り屋の琴子ちゃんらしくて可愛いわ。」
「それにしても、アップすごすぎ。あいつの顔が迫って来る。」
「可愛い顔じゃないの。それにあのお兄ちゃんがこんなことするなんてもう驚いたの何のって。」
「驚き桃の木山椒の木。」
そんな古い言葉がつい裕樹の口から飛び出した。母はじっと息子の顔を見つめると「ぷっ」と噴き出した。
「やあだ、裕樹。そんなこと言うなんて珍しい。」
「別にいいじゃん!ちょっと浮かんだんだからさ!」
自分でもくだらないことを口走ったと、裕樹は顔を赤くした。が、そんなくだらないことで母が笑ってくれるならば悪くない。

「…何でお兄ちゃん、琴子を助けたのかな?」
親子でひとしきり笑い合った後、裕樹が呟いた。
「そうねえ…どうしてかしらね?」
そう答える母の横顔は、どこか寂しそうだった。

「うわ、大学入っても全然変わらないな、あいつ。」
ビデオは高校から大学へと時が流れていた。
「あいつがミスキャンパスって…ったく、レベル低すぎだろ。」
「まあ、そんなことないわ。琴子ちゃんは十分その資格はありますとも。」
「あれ?」
唐突に映像がそこでストップする。
「何だ、カメラまでショックで壊れた?」
「違うわよ。バッテリーが切れちゃったのよ。」
「そうだ。相原のおじさんがおふくろに申し訳なさそうに言ってるの、覚えてる。」
大学の学園祭にも家族そろって乗り込んでいたことを、裕樹は懐かしく思い出した。
「静止画は残ってるわよ。」
紀子はアルバムを引っぱり出してきた。
「にしても二人揃って傷だらけ…。」
ミスとミスターの栄冠に輝いているというのに、王冠を乗せたその顔は直樹も琴子も傷だらけである。
「二人でつかみ合いの喧嘩でもしてたのか?」
「まさか!」
「分からないよ。だってこの二人、クイズで喧嘩してたじゃん。」
「そうね!思い出したわ。お兄ちゃんのノリが悪くて琴子ちゃんが怒っちゃったのよ。」
「元々、おふくろが引っぱり出したせいじゃん。」
「あら、そうだったかしら?」
思い出は次から次へと止まらない。

いつの間にか窓の外は真っ暗になった。が、テーブルに広げられたアルバムの冊数とビデオの本数は増える一方だ。
「あら、裕樹。あなた塾は?」
「やばっ」と裕樹が時計を見た。もう授業は始まっている。
「…一回くらいサボってもいいか。」
「月謝を無駄にして。」
だが母はそれ以上叱ることはなかった。「次は何を見ようかしら」とアルバムをめくる。
「夕食も、どこかに食べに出ちゃえばいいわよね。」
「出前でもいいんじゃない。」
そう答えながら、裕樹は気づいた。
「今日って…。」
カレンダーを確認する。11月12日。少し前までは母と琴子が大騒ぎをしていたはずの日。
―― だからこんなもんを引っぱり出していたのか。
もうこの家でこの日が祝われる可能性は、限りなくゼロだろう。母はその寂しさを埋めるために、楽しかった頃を振り返っていたのか。
「お兄ちゃんは…。」
一応、今日の主役となるべき兄の予定を母に確認する。
「ああ、沙穂子さんとお食事してくるって。そりゃそうよね。婚約者だもの。」
脚本の台詞を棒読みするかのように、母が言った。
「そっか。」
当たり前のことである。
「でもさ、これからどうなるか分からないよ。」
「どういうこと?」
「ほら、えっと…お兄ちゃんが…結婚したら…。」
「家庭を持った息子がいちいち実家で誕生日を祝うの?そんなことないでしょう。」
母が声を上げて笑った。が、その目は全く笑っていなかった。
「そんなことしてたら、過保護だとあちらのお宅に疑われてしまうわ。うちはお兄ちゃんを過保護に育てたつもりは一切ありません。」
「そうだ…ね。」
「私だってそんな姑だと沙穂子さんに思われたくないわ。」
「うん。」
「だから別居することも勧めたわけだしね。それに遅かれ早かれ、お兄ちゃんは大泉家の入り婿のようになるんじゃなくて?」
「そんな!」
「だって援助していただくための結婚だもの。」
そう言った母の目が潤み始めるのを、裕樹は見逃さなかった。しまった、自分が母の傷をえぐる真似をしてしまった。

「あ、そうだ。これチビがうちに来た時の写真だ!おい、チビ!」
裕樹は少しテンションを上げ、愛犬を呼んだ。チビがすぐにしっぽを振ってやって来た。
「覚えてるか?お前が来た時だぞ。あーあ、琴子の顔ときたら強張ってる。」
最初琴子は犬が苦手だった。が、そう言うと直樹に嫌われると思ったのか耐えていたことを裕樹は懐かしく思い出す。
「あいつ、お前の散歩でリード離しちゃってさ…。」
と言いかけたところで、裕樹はチビの顔に気づいた。
「…何だ、お前まで寂しそうな顔しちゃって。」
振られていたしっぽは下にパタンと降りていた。琴子がいなくなって寂しいのはチビも同じなのだ。

「今日で過去を振り返るのはおしまいにしないとね。」
熱海旅行まで見た後、母が言った。
「これもさよならしないと。」
いつの間に用意したのか、組み立てられるのを待っているダンボールが壁にかけられていた。
「さよならって?」
「…処分するってことよ。」
「そんな。」
こんなにたくさんの思い出を全て母は処分するというのか。
「これがあったら、さすがに沙穂子さんに悪いでしょう?」
「そりゃそうだけど。」
確かに昔の恋人の物があったら、大抵の女性はいい気分はしない。が、琴子は残念ながら兄の元恋人ではないし、どちらかというと家族の一員という感じだ。処分しないといけないのだろうか。
「見終わったらダンボールに入れて…明日はちょうど燃えないゴミの日だから。」
「うん…。」
それに反対することは裕樹にはできなかった。



「ただいま。」
翌日帰宅した裕樹は、廊下に置かれていたものに気づいた。
「これ、捨てたんじゃないの?」
そんな声をつい出してしまう。昨日、母と一緒に片付けてガムテープは裕樹が貼ったものである。
「お帰り、裕樹。」
母が申し訳なさそうにリビングから顔を出した。
「これ、僕がゴミ捨て場へ運ぶって言ったら、おふくろが自分で運ぶからって…。」
「ええ、ええ。そうよ、そうなの。でもね…。」
母は玄関までこれを運んだのだという。そして外へ出ようとした時に、どうしても足を踏み出すことができなかったのだという。
「次の、次の回収日こそ出すわ。それにほら、明日は資源ゴミだからアルバムを出して…ああ、写真は一枚ずつ剥がして破いて燃えるゴミの方が…。」
熱に浮かされたようにまくし立てる母を、裕樹が手で止めた。
「いいよ。僕が預かるから。」
「裕樹?」
「捨てなくてもいいじゃん。」
「でも…お兄ちゃんが結婚したら…。」
「僕の部屋に置いておく。クローゼットの奥へしまいこむから。」
「でも。」
「これは元彼女のものだとか、そんな軽い調子で片付けられるものじゃない。家族の歴史だよ。この数年のこの家の出来事を記録したものだ。とっておいたって問題はないさ。」
そう言って、裕樹は段ボールを抱えた。
「アルバムも一緒にしまっておく。」
傍らに置かれた、きちんと縛られて重ねられたアルバムに裕樹は目をやった。
「…いいの?」
「うん。」
「ありがとう、裕樹。」
安堵した母の顔を見た後、裕樹は段ボールを抱えて二階へと上がって行った。


************

「はあい、ケーキの登場ですよ!」
「うわあ!!」
紀子と琴子が協力して作ったケーキには『おたんじょうび おめでとう』とひらがなでデコレーションされている、チョコレートケーキだった。
「何だか子供の誕生日みたいだな。」
「英語だとまーくんが読めないでしょ?」
ろうそくに火をつけながら、紀子が片目をつぶる。
「はい、お兄ちゃん。お願い事をして火を消して。」
照れくさそうに直樹が目を閉じた。その隣で真樹がワクワクしている顔を父に向けている。
「はい、祈ったよ。」
直樹は目を開けると、フーと一気にろうそくの火を消した。
「お誕生日おめでとう!パパ!」
「おめでとう、入江くん!」
「おめでとう、お兄ちゃん!」
皆の祝辞を皮切りにクラッカーが打ち鳴らされる。

「パパ、お誕生日だからまーくんにアーンしてケーキあげていいよ。」
真樹が大きく口を開けた。
「まーくんはお誕生日じゃなくてもパパにアーンしてもらってるでしょ?」
琴子が笑う前で、直樹はケーキを真樹の口へ運んだ。それを見て他の大人たちも笑い声を上げた。
「そもそも、お兄ちゃんより真樹のケーキのほうが大きいもんね。」
裕樹が言うとおり、直樹の一切れの倍の大きさのケーキが真樹のお皿に乗っていた。

パーティーでは過去の懐かしいビデオが流れた。
『雑草のようですね。』
『ざ、雑草!』
そんな直樹と重雄の会話に、
「お父さんと入江くんの会話は何度聞いてもひどいわ。」
と琴子が二人を睨んだ。
「熱海の旅行の時か。懐かしいなあ。」
重樹が目を細める。
「だからあの時、全部ビデオに入ってますよって言ったじゃないですか、お義父さん。」
「本当だなあ。」
直樹の言葉に重雄が頭をかく。
「琴子ちゃんはまだいいよ。わしなんて何て言われてたと思う?スタイルは全然さえないとか、直樹は母さん似でよかったとか。ひどいよなあ。」
「いやあ、悪かった。悪かったよ、イリちゃん。」
「あら、本当のことよ。」
「ママ、酷いなあ。」
皆がドッと笑った。

続いて最近のビデオ上映が始まった。
「まーくんの運動会ね。」
「なんだかんだいって、お兄ちゃんもカメラ魔になったね。」
画面には琴子と真樹が親子でダンスを楽しむ光景が映し出されていた。
『…あーあ、琴子ワンテンポ遅れてるなあ。』
苦笑する直樹の声が聞こえて来た。
『ほらほら…逆だ、琴子。逆だ。』
「パパの声だ!」
真樹が身を乗り出した。
「パパもふぐのおじいちゃんと同じことしてるよ?」
真樹の言葉に今度は直樹が頭をかく番である。
「いやだってさあ。」
「直樹くん、わしの気持ち分かるだろ?」
重雄が直樹にニヤッと笑いかけると、
「…父親ってそういうものなんですね。」
と直樹は照れくさそうに答えた。

『まーくんよ、入江くん、次まーくんの番!』
『分かってるって!』
場面は変わりリレーである。真樹はアンカーの証のたすきをかけている。
『まーくん、頑張って!頑張って!』
『真樹!真樹!』
『まーくん!』

「…二人とも名前しか呼べてないし!」
兄夫婦の興奮ぶりに裕樹は腹を抱えて笑っている。
バトンを渡された時は最下位だったが、真樹は懸命に走る。
『ああ、抜いた!』
『よし、一人抜いた!』
『また抜いたわ!』
『頑張れ、真樹!』

両親の応援を背に真樹はグングン走り、トップでゴールテープを切った。

『キャー!!まーくん、すごい!』
『さすがだ!さすが俺の息子!』

「…もう何も聞こえてないでしょ、二人とも。」
裕樹が直樹たちをからかった。
「お前も親になったら分かるって。」
「そうよ。そういうものですよ。」
直樹と紀子の言葉に裕樹はただ笑っている。

「ワン!」
チビがしっぽをはちきれんばかりに振りながら、真樹の側へやって来た。
「チビ、まーくんが一等賞取ったの喜んでくれてるの?」
「ワン!」
「ありがと、チビ。」
むぎゅうとチビを真樹は抱きしめた。

―― もう隠さなくていいんだな。
笑いながら裕樹はテープとアルバムの山を見た。堂々とこの部屋に並べられるようになったのはいつ頃からだったか。

「ねえ、パパとママのリレーのビデオ見たい!」
「もちろんですとも!パパがママをおんぶしているところがまーくんは大好きだものね。」
「うん!」
顔を見合わせて笑う兄夫婦の前で、裕樹はサッと立ち上がり可愛い甥が見たがっているビデオをセットしたのだった。



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コメント

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長男がまーくんと同い年

昨夜はお疲れ様でした。
パンプキン方式は最後ほっこり終われますね!

このフトンシリーズ大好きで、先日の息子の七五三では、
フトン琴子ちゃんみたいな息子に愛情たっぷりのママになりたいと絵馬に書いてきたんです。

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ご無沙汰してます

毎日バタバタしてまして。
そしてPCの調子が悪くて。。。
いつの間にかイタキスウィークも半分過ぎてしまってます。。。
いろいろなお話がUPされててあたふたしてます。
また、ゆっくり楽しませて頂きますね。

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フトンシリーズの1番最初からのお話が、読みたいんですけど、どーしたらみれますか?
どーやって琴子と直樹がくっついたとか。

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