日々草子 水面に映る蓮の花 6
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水玉

Author:水玉
『イタズラなkiss』のほかには『ゴルゴ13』が好きです☆
多数あるイタキスの二次小説の中で邪魔することなく、ひっそりとマイペースで我が道をゆきつつ生息しております。
そっと見守っていただけたら嬉しいです。

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当ブログは、『イタズラなkiss』の二次創作をメインとしておりますが、時折管理人の趣味や日々の出来事についての記事も書いております。

原作者様や関係各位とは一切関係ありません。

二次創作については、いわゆる原作の隙間をぬった作品もありますが、主人公以外のキャラクターをメインとしたものや オリジナルキャラクターが出てくるものもございます。

そして、原作と違った時代(平安や明治やその他の時代を舞台にしております)、異なる設定(主人公を医者と看護師じゃない職業にしております)で書いてあるものが多いですが、原作を冒涜しているつもりは全くございません。

二次創作が苦手という方及び原作のイメージと合わないと思われる方はどうぞお引き取り下さいますようお願いいたします。

コメント及びメールなどでの苦情及び批判は公開、非公開を問わず、私へ告げることはご遠慮いただけますよう、お願い申し上げます。

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楠の講義に、琴子はついていくことで必死だった。
桔梗は琴子の助けに少しでもなればと、講義が行われている部屋の片隅で楠の言葉を懸命に書き取っていた。それを夜、二人で復習し合うというのが日課となっていた。

「…で、こういう意味だと思うのですが。」
「ああ、そうね。桔梗は本当に頭がいいのね。」
「いいえ、そのようなことはありません。楠様の仰ることを自分で好きに解釈しているだけでございますよ。」
「私は解釈までとても無理。ああ、この意味はどこかの書物に乗っていたかしら?」
「はい、こちらに。」
意味の分からない個所にぶつかると参考となる書物をめくる。なかなか進むことのない学問である。

「こうしていると直樹様に教えていただいた時を思い出しますね。」
少し琴子にくつろいでもらおうと、桔梗が思い出話を口にした。
「側室選びの時ね。直樹様ったら東宮様の家庭教師とおっしゃって。」
その時のことを思い出し、クスクスと琴子は笑った。
「はい。きっと直樹様、何と御身分を偽っていいか分からなくて咄嗟に仰ったのですよ。」
「あの時は裕樹様まで徹夜されると言い張って。」
「ご自分で机をえっちらおっちら運んでいらして。絶対戻らないって言い張られて。」
側室になろうというのではなく、候補に選ばれた手当金目当てで宮中に入っていた琴子だった。その時はぞんざいな扱いを受けていたが、直樹や裕樹、鴨狩も交えて楽しいひと時だったと懐かしい。
「直樹様は教え方がお上手だったわ。」
琴子が思い出に目を細めた。
「今ごろどのあたりにいらっしゃるのかしら?」
直樹は、作物が不作となっているとある場所に日数をかけて出向いているところだった。本来ならば王自身が見に行き、問題を解決せねばならないのだが、立場上多数の警護を必要とする。東宮である直樹の方が身軽に行動できるし、年齢を考え王に負担をかけることを避けたのだった。
「お戻りになったら、教えていただきますよ。」
桔梗の言葉に琴子は首を横に振った。
「だめよ。私のことで負担をかけるわけにはいかないもの。」
「ですが。」
「直樹様はやることが山のようにあるのよ。しかも周りがどれほど直樹様を頼りにしているか。そのような状況で、頼ってはいけない。」
「…そうですか?」
桔梗は鴨狩一人でも宮中に残ってくれればと思った。この状況を改善する相談ができたかもしれないのに。鴨狩は東宮侍従として直樹に付添っている。

「少し、この個所を読みこむわね。」
「はい。」
書物に再び真剣な目を向けた琴子の邪魔をせぬよう、桔梗は散らかったものを静かに片付け始めた。
その途中、そっと主の姿を見つめる。
――この状況で、直樹様からの御依頼のお話はできない。
琴子は直樹から頼まれている香のことをすっかり忘れているようだった。無理もない。講義の度に眠る間もないほどの宿題を出されている。それができないとあの楠がチクチクと嫌みをぶつけてくる。
「前の東宮妃様でしたら」これが楠の口癖のようだった。それがどれほど琴子の心を占めてしまっているか。
そのような状況に香の話を持ち出したら、睡眠時間を削ってまで学問をしている琴子はどうなってしまうか。
「桔梗、ここの解釈についてなのだけれど。」
「は、はい。ただいま!」
折りを見て話をしてみようと、桔梗は琴子に近寄った。



そしてこの日も「前の東宮妃様は」という楠の言葉を何度聞かされただろうか。
「前の東宮妃様は歌を詠まれることに関しては素晴らしく」「前の東宮妃様は女人ながら素晴らしき漢文を作成され」と繰り返す楠。
「恐れながら、この解釈は間違っております。」
徹夜しかけてまで答えを導き出した琴子に、楠は容赦がなかった。
「どの辺りが…。」
「それをご説明申し上げると他の部分が進みませぬ。」
有無を言わせない態度に、琴子は黙り込む。こうして分からないところがどんどん増えていくので悪循環となっていた。

しかし、この夜は直樹が戻って来た。といっても実地検分してきたことをまとめて王に見せねばならないということで琴子とゆっくり過ごす時間はなかったが、それでも何とか少しの時間を見計らって二人は顔を合わせることができた。
「そうだ、琴子。」
見聞きしてきたことを簡単に話した後、直樹が思い出したように言った。
「香はどうなっている?」
「香…でございますか?」
そう直樹に言われても、琴子にはピンとこなかった。直樹も首を傾げる。
「俺が出かける前に頼んだ、診療所で焚く香のことだが。」
「診療所…ああっ!」
琴子は声を上げた。そして真っ青になった。
「申し訳ございません!あの…まだ…。」
「忘れていたのか。」
まさか忘れていたとは思っていなかった直樹は少々呆気にとられているようだった。その表情が琴子を追い詰める。
「すぐ…すぐに。」
今にも立ち上がり自分の御殿へ戻って調合を始めようとする琴子の手を、直樹は掴んだ。
「いい、いい。」
「でも…。」
「学問の講義に追われていたのだろう。」
琴子が欅宮から遣わされた楠に講義を受けていることは、直樹の耳にも届いている。
「その状況を考えずに頼んだ俺が悪かった。」
「そんな…。」
直樹に気を遣われたことで琴子は深く落ち込んでしまった。



次の日、琴子は散歩をした。池のほとりまで来た時、「少し下がっているように」と桔梗を含めた女官たちに言った。
――よほど落ち込んでおいでだ。
離れた場所から辛そうな琴子の背中を見つめ、桔梗は後悔した。あの時、自分が香の話をしていればこんなに落ち込ませることはなかったのに。
桔梗は自分からも女官たちを下がらせ、静かな空間を作り琴子の気持ちが落ち着くまで待つことにした。
が、その桔梗の気遣いが全く無にされる状況が起きた。

「学問に追われていると聞いていましたが、余裕がおありのようで。」
ぞろぞろと自分の威厳を見せつけるために女官を引き連れた欅宮が登場したのである。
「欅宮様…。」
琴子はすぐに頭を下げた。桔梗も飛んで行った。
「楠から聞いたところによると、だいぶ苦労されているとの話ですが。このような所でボーッとしている暇がおありなのですね。」
「…少し外の空気が吸いたかったものですから。」
まるで散歩すら許されないかのような言い方である。
「やはり育ちというものがあるのですね。」
欅宮がフッと笑った。
「幼い頃より教育を受けていないとこうして苦労することになるのです。」
「…。」
琴子は言い返せず俯いてしまった。桔梗は言い返したくてたまらなかったが、琴子に返ってくると思い堪えていた。それを柘榴がニヤニヤと見ているのがまた腹が立つ。

「あれくらいの学問もできないのでは、東宮妃を名乗るなんておこがましいと思いませぬか?」
「楠殿の力を借りて何とか…。」
「あの前の東宮妃を作り上げたのは楠の尽力が大きいからです。分かったであろう?東宮妃というのはあれほどの学問を身につけねば立てない身分なのだ。」
ホホホと高笑いする欅宮であった。
「そうだった。東宮妃という立場よりもそなたは大事なことがあったのだった。」
その言葉遣いから、未だ欅宮は琴子を東宮妃と認めていないことは明らかだった。
「確か、東宮様の医療のお手伝いをしたいとか申していたような。」
琴子が顔を上げた。
「だが、それすらできていないではないか。」
この言葉に琴子も桔梗も顔色を変えた。
「東宮様から頼まれたこと、そんなこともできなかったとか。東宮様も失望されたであろうな。前の東宮妃であればそのようなことは絶対なかった。」
なぜそのことを欅宮が知っているのだろうか。香の話は琴子と直樹、桔梗と鴨狩しか知らないはず。準備を手伝わせる女官を選ぶことすらまだ行っていなかったというのに。
「結局、何もできない役立たずなのです、そ・な・た・は。」
軽蔑する目を琴子に向け、欅宮は来た道を戻って行った。
「欅宮様の仰る通りだわ…。」
「そのようなことは、姫様…。」
「…役立たずね。」
琴子は桔梗の顔を見ず、御殿へと歩き出した。桔梗は少し時を置いて後を追いかけた。



「また遊べないのか!!」
琴子の学問に不満なのは、裕樹であった。この所琴子が復習に追われてちっとも遊べないのである。
「どういうことなのだ。そんなに酷い師匠なのか?」
御殿の入り口に侍る女官を相手に裕樹はおかんむりであった。
「ちょっとどんな講義か聞いてやろう。」
「宮様、いけませぬ。」
桔梗であれば力ずくで裕樹を止めようとしたであろうが、その他大勢の女官である。素早く裕樹は御殿の中に入り込み、部屋の外へ近寄った。そして耳を澄ませた。

「あいつは出来が悪いのだ。あんなに急に詰め込んでも破裂するだけだ。」
講義の邪魔をすることなく、裕樹はブツブツ文句を言いながら琴子の御殿を後にしていた。
「何だ、あの女は。さすがババアの遣わした者だ。」
「裕樹。」
怒り冷めやらぬ弟に声をかけたのは直樹であった。
「兄上。」
「どうした、機嫌が悪いようだが。」
「…琴子に会えないのです。」
口を尖らせ不満を口にする弟に、直樹は笑みをこぼした。
「全く仕方のない奴だな。琴子は学問をしているのだから我慢しろ。」
「もうずっと会ってないんですよ?」
「何?」
裕樹の言葉に直樹の顔色が変わった。
「ずっと?」
「はい。兄上が出かけられる前から。」
「出かける前というと…一月以上前になるが?」
「それくらいになります。」
「せっかく新しい絵を描いてきたのに」と手にした絵を恨めしそうに裕樹は見た。

「夜もずっと書物に向かっているみたいです。母上が心配していました。でも琴子は大丈夫だと言っているみたいで。」
「寝ているのだろうか…。」
直樹は鴨狩を振り返った。
「桔梗から何か聞いているか?」
「桔梗も何か話したそうですが、共に講義を受けているようで疲れていて。」
役に立てずに申し訳ないとばかりに鴨狩が頭を下げた。
「どんな師なのだ、一体。」
そこまで無理をさせているならば、香のことを忘れるのも無理はないと直樹は思った。
「ギャーギャーうるさい女でしたよ。」
「お前、見たのか?」
「あ、それは…。」
しまったという表情をしつつ、裕樹はこっそり部屋の外に潜んで講義の様子を立ち聞きしたことを直樹に話した。
「…。」
「兄上?」
直樹は鴨狩に目配せをした。
「これ、宮様を丹頂殿にお連れするように。」
直樹の意を汲んだ鴨狩が女官に命じる。
「僕は一人で帰れるぞ?」
「そろそろ春也様のおいでになる刻限でございましょう。」
「おお、そんな刻限か。」
あっさりと裕樹は女官と共に自分の御殿へと向かった。
それを見送り、直樹は言った。
「…雀殿へ向かうぞ。」



琴子の御殿である雀殿に直樹が姿を見せると、女官たちは慌てた。それを鴨狩が騒がぬよう身振り手振りで指示する。
「ただいま東宮妃様は…。」
「分かっている。」
小声で言うと、直樹は足音を忍ばせ御殿に入った。

「…ということですが、おわかりでしょうか。」
「あの、楠殿。この詩のこの部分なのですが。」
「そこは説明するまでもございませぬ。」

「何という教え方だ」と直樹は呆れた。これが学者の教え方なのか。
しばらく直樹は、どのように講義が進められているのか聞くことにした。

「なるほど、これはなっていない。」
琴子に合っていない教え方である。とにかく質問に応じない。これでは理解できぬまま琴子は置いていかれることになる。
わざとこのような教え方をしているのだろうか。欅宮からの指示なのか。
そして直樹が気になった点はそこだけではなかった。

「前の東宮妃様は…。」
何かと口にされるその言葉に直樹は眉をひそめた。いちいち比較するのはどういう意味なのだろうか。そんなことを言う必要は皆無のはず。
「なるほど、そういうことなのか。」
完璧であった前の東宮妃の名前を出し、琴子の自信を喪失させる考えなのである。これは欅宮の考えだろう。
「このようなお妃では東宮様が哀れでございますな!!」
この楠の言葉を耳にした途端、直樹の手が扉にかかった。

「東宮様!」
突然の直樹の訪れに楠はもちろん、琴子も桔梗も驚いた。
「こ、これは…。」
さすがの楠も、あたふたと立ち上がり頭を下げる。
「俺を哀れだと決めつけていたな?」
直樹は楠を見据えた。
「どういう理由でそう思う?言ってみるがいい。」
「そ、それは…。」
「なぜ言えぬ?言えぬことをそなたは東宮妃に教えていたのか?」
「そのようなことは…。」
琴子に対する厳しさはすっかり消え失せ、恐ろしさで震える楠がそこにいた。

「そなた、欅宮様からのご紹介の学者だと聞いているが?」
「畏れ多いことで…。」
「教え方は全くなっていないようだが。」
「え?」
楠は直樹を見上げた。
「そなたの教え方を先ほどより聞いていた。あのようにガミガミ言っていたら分かるものも分からなくなる。師として失格ではないか?」
「失格とはあまりに…。」
「何かと前の東宮妃の名前を出すのはいかがなものか。それとこの講義、何の関係がある?」
「…。」
何かを言いたいようだが、直樹の剣幕に押されて楠は口をパクパクさせることしかできない。
「前の東宮妃、いや、大泉の血縁に関わることがそなたの自慢ということでいいか?」
「恐れながら東宮様、前の東宮妃様は…。」
この期に及んでまだその名前を出すかと、直樹は怒りに震えた。
「ならばさっさとここから出て行くがいい。二度とこの御殿に、東宮妃の前に姿を見せるな!」
「わ、私は欅宮様から申しつけられ東宮妃様の講義を…。」
「必要ない!」
「欅宮様に申し上げます!」
「ああ、そうしろ。こう言えばいい。“東宮妃の学問は東宮自らが行う”そう欅宮へお伝えせよ!」
「ひぃっ!」と悲鳴を上げ、楠はあたふたと部屋を出て行った。
「誰かいるか!」
直樹がまだ怒りを納めることなく、女官を呼びつけた。
「あの者が置いて行った書物を全てまとめて、欅宮様のところへ届けよ。忘れものだと!」
「は、はい!」
自分たちにまで怒りが及ばぬようにと、女官たちはあっという間に書物をまとめて部屋を出て行った。


「直樹様…。」
このようなことになって大丈夫なのかと、琴子が心配して直樹を見上げた。
「…すまなかった、気づかないで。」
小さな琴子の頭を抱え、その髪に直樹は口づけた。ほのかに直樹の好きな香りがした。
こうして懸命に、一人で戦っていたのだと思うと可哀想でたまらなかった。




☆☆☆☆☆
ちょっとがむしゃらに頑張ってみたのですが…ストーリーが破たんしてきています…ううう。


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コメント

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ありがとうございます。

更新ありがとうございます。
そして、琴子姫への配慮ありがとうございます。直樹東宮の言葉でホッとしました。溜飲が下がるというのはこういうことを言うんだなと思いました。
後がどうなるか恐いけど、欅宮と楠がどんな顔するかと思うとなんかワクワクします。
更新楽しみに待ってます。

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スッキリしましたーー!
ありがとうございます❤

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