日々草子 アタリ?それとも…? 8

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水玉

Author:水玉
『イタズラなkiss』のほかには『ゴルゴ13』が好きです☆
多数あるイタキスの二次小説の中で邪魔することなく、ひっそりとマイペースで我が道をゆきつつ生息しております。
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当ブログは、『イタズラなkiss』の二次創作をメインとしておりますが、時折管理人の趣味や日々の出来事についての記事も書いております。

原作者様や関係各位とは一切関係ありません。

二次創作については、いわゆる原作の隙間をぬった作品もありますが、主人公以外のキャラクターをメインとしたものや オリジナルキャラクターが出てくるものもございます。

そして、原作と違った時代(平安や明治やその他の時代を舞台にしております)、異なる設定(主人公を医者と看護師じゃない職業にしております)で書いてあるものが多いですが、原作を冒涜しているつもりは全くございません。

二次創作が苦手という方及び原作のイメージと合わないと思われる方はどうぞお引き取り下さいますようお願いいたします。

コメント及びメールなどでの苦情及び批判は公開、非公開を問わず、私へ告げることはご遠慮いただけますよう、お願い申し上げます。

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イタキス月間が始まりましたね!
すごくステキな企画に私も参加させていただくことができました。
印字されたものを見たら作家さんになった気分を味わえてとても嬉しかったです!
えまさん、本当にお世話になりました!ありがとうございました!

☆☆☆☆☆






感情的になってはいけない、感情を顔に出してはいけない。天美はそれだけを心がけて看護師をめざしてきた。それがいつしか、機械的な行動になっていたことにようやく気づき始めた。

気づき始めると、担当している患者の様子が一人一人、気になるようになってきた。それが当たり前のことなのであるが、このまま順調に退院すれば問題ないと思っていた患者も何かしら、事情を抱えているような気がしてきた。

「渡辺さん、どうかした?」
この日、琴子は休みだった。天美が悩んでいる様子を見つけたのは幹だった。
「あの、谷川さんのことなんですけれど。」
「谷川さん?」
ああ、あのおばあちゃんかと幹もすぐ分かった。手術が成功して経過を見ている患者であった。
「どうかした?」
「ため息をついていることが多い様な気がして。」
幹は思わず口笛を吹きそうになった。琴子をバカにしていた新人が、ここまで気づくようになったかと思った。
「経過も順調だし、ご主人もほぼ毎日いらしているし。」
「ご夫婦仲いいわよね。」
「でもどこか元気がないような…。」
何か悩みがあるのだろうかと思うのだが、そこまで立ち入っていいのだろうか。
「それなら、カルテに琴子が何か入れているかもしれないわよ。」
「入江さんが?」
確かに琴子の担当でもあるわけで、しかしそんなことが入力されているのだろうか。
「あの子、何でも入力してくれるから。意外とそれに助けられることって多いのよね。」
琴子は電子カルテの入力に結構な時間を費やしていたことを、天美も見ていた。眉を寄せ、「うーむ」と唸りながら、背中を丸めておぼつかない手つきでキーを叩いているのを何度も目にしていた。
少し前の天美であったら、そういう無駄なことを入力しているから残業することになるのだと思ったところだが今は違った。

天美は祈る思いで谷川のカルテを開いた。既往症、家族構成、アレルギーの有無などが並んでいるのを丁寧に辿っていく。
「ん?」
そこは気づいたことを入力する欄であった。そこに日付が入力されていた。それも明日である。
しかし、その日付は一体と天美が目で追っていくと謎の文字が続いていた。
『○月×日 け』

「…け?」
何だろう、これはと天美は首を傾げた。け、け、薬の略称だろうか。それとも隠語…そんなものが病院にあるのか。

「どうした?何か見つかった?」
画面の前で固まっている天美を心配して幹が来てくれた。
「あら、明日…け?」
やはり幹もそこで目が点になった。
「け?け?」
繰り返しても答えは出ない。
「琴子、パソコン苦手だから時々こういうことやるのよねえ。」
やれやれと幹がため息をついた。
「何でしょうか、“け”って。」
「け…け…何かの暗号かしらね。」
夫の養毛剤に効果が出た日だろうか。
「いえ、谷川さんのご主人は…もう…その…。」
「ああ、そうね。清々しい頭になっているわね。」
じゃあ違う。
「とにかく、この欄ってことは治療にかかわることじゃなさそうだし。明日琴子に聞いてみた方がいいわね。」
なんだったら「先輩、これじゃ困るんです」って怒ってもいいわよと幹は笑った。



数時間後、夜勤と交代する時間に天美はもう一度谷川の所へ行った。
「あの谷川さん。」
「はい?」
やはりどこか元気がなさそうだった。
「明日って…何かあるのでしょうか。」
「明日?え?何であなたがそれを?」
驚きのあまり、谷川はベッドから起きた。
「あ、すみません。ええと、カルテに…。」
「カルテ?ああ、じゃあ入江さんね!」
叱られるかと思いきや、谷川の顔に笑みが広がった。
「入江さん、私がポロッと言ったことを覚えてくれていたのね。」
ウフフと谷川が声を出して笑った。
「実はね…結婚記念日なの。」
「ああ、それで"け”!!」
「け?」
「あ、いえ。失礼しました。何でもないです。」
謎が解けたためつい声を出してしまった。天美は続きを谷川へ促した。
「おかしいでしょ?こんなおばあちゃんが結婚記念日だなんて。」
「いえ、全然。」
天美は心から出て来た言葉に自分で驚いた。
「そうなんですね。おめでとうございます。」
「ありがとう。でも今年は…はあ。」
またもや谷川の表情が翳った。
「ベッドの上だもの。毎年、主人とささやかなお祝いをしていたのだけれど。」
それで元気がなかったのかと天美は合点した。谷川夫妻の仲のよさであれば分かる話だった。



「おはようございます…ひえっ!」
翌朝、スタッフステーションにやって来た琴子は後ろから腕をつかまれた。
「え?渡辺さん?」
「入江さん、ご相談が!」
「相談?な、何?」
目を白黒させながら引っ張られていく琴子を見て、つい直樹がクスッと笑った。
「女入江じゃなく、琴子二代目ってところじゃないのか?」



「谷川さんの髪の毛を洗ってあげたいんです。」
「髪の毛?」
「はい。」
天美は頷いた。
「今日、谷川さんは結婚記念日なんです。」
「え?そうなの?」
「入江さんがカルテに…。」
「確かに結婚記念日の話になってカルテに書いていたけれど、それは今日だったか。」
「はい。それで落ち込んでいて。」
「ああ…病院で迎えるのは気分がめいっちゃうわよねえ。」
すぐに琴子は谷川の気持ちを理解した。
「せめて髪の毛でも洗えれば気分が明るくなるかなって思って。すごく些細なことなのですが。」
確かに、手術以来髪の毛を洗えていなかった。
「…だめでしょうか。」
「ううん、先生に聞いてみよう!」
琴子の言葉に天美も笑顔になった。
「あと、もう一つお願いしたいことが。」
「もう一つ?」



「洗髪…かあ。」
谷川の担当医は西垣だった。医局でつかまえて、やはり天美が話を切り出した。
「だめでしょうか。」
「そうだなあ…。」
「あとトイレもできれば。」
「トイレ?」
「トイレに連れて行ってあげたいんです。」
天美のもう一つの願いは谷川をトイレに連れていくことだった。もちろん、谷川も用を足しているがそれはベッドでのことだった。
「動かすってことかあ。」
うーむと西垣は考え込んだ。
「何で突然?」
「そ、それは…。」
「結婚記念日なんですよ。」
琴子があっさりと言った。
「結婚記念日?」
「はい。だからです。」
どうしてだからと言い切れるのかと天美は琴子を見たが、琴子は平然としている。
「先生、女の子大好きでしょ?」
「そりゃあそうだけど。」
「谷川さんも女の子ですよ。」
「まあ、そうだね。」
「女の子の喜ぶ顔を見るのが先生の生きがいでしょ?」
「うん、そうだよ。」
「だからお願いします。」
どうも直樹への頼み方と違うなと思いつつ、天美は頭を下げた。
「琴子ちゃんが僕との記念日を作ってくれるなら…。」
「あら、残念です。入江先生との記念日でスケジュール帳はいっぱいです。」
「オホホ」と笑ってかわす琴子に、天美は舌を巻いた。
「じゃあ、渡辺さんは独身だよね。」
今度は自分に視線が向けられた。
「え?あ、あの…。」
「新人に手を出すのはやめてもらえます?」
すかさず琴子が助けに入った。

「でもさ、トイレって?」
西垣が真面目な話に戻った。琴子が話すよう、天美に視線を送った。
「あの、自力でトイレに行けるようになったら回復してきたなって思ってもらえるんじゃないかなって。それで元気になってくれるのではと思いました。」
我ながら単純すぎる説明だと天美は思った。これで担当医の許可が下りるだろうか。
「なるほどねえ。」
意外にも西垣はバカにしなかった。
「じゃあ、ちょっと様子を見てみるか。」
西垣はすぐに立ち上がり、医局を出て行く。
「え?え?」
そういう展開になるとは思っていなかった天美が琴子を見た。
「西垣先生はね、ああ見えて患者さんのことをよく考えているのよ。」
「ああ見えてはひどいなあ。琴子ちゃん。」
「こういういいところを、どうしてみんな気づいてくれないのかなあ。」
「おイタが多すぎるからでしょうね。」
「チェツ。」



「谷川さん、気分いかがですか?」
「はい、おかげさまで。」
「今日は結婚記念日だそうで、おめでとうございます。」
「まあ、西垣先生まで。いやだわ、恥ずかしい。」
「お、恥じらう乙女ですね。」
そんなことを言いつつ、西垣は手早く傷の様子を診察していった。そしてカルテを見て「うん」と頷いた。
「谷川さん、今日は髪の毛を洗ってみませんか?」
「え?髪を洗うって?」
「この新人ちゃんが、谷川さんの髪の毛を洗いたいそうなんです。付き合ってくれませんか?」
「まあ。」
口をぽっかり開けて、谷川は天美を見た。
「もちろん、私も補助をしますから。」
新人では不安だろうと琴子が口添えをする。
「…いいのですか?」
「せっかくの記念日ですから、サラサラの髪で過ごしませんか?」
琴子の言葉を聞き谷川が「お願いします」と頷いた。ああ、こういう言い回しはまだ自分にはできないなと、天美は琴子を見つめた。
「あと今日からトイレにも行ってみましょうか。」
「いいんですか?」
「ええ。傷もきれいになってきてますし。」
「ですが…忙しい看護師さんを呼ぶのは…。」
「全然平気です!」
天美が言った。
「何度でも呼んで下さい!」
「…そんなにトイレが好きなの?」
あまりの勢いに西垣がポツリと呟いた。それには皆が笑った。
「大丈夫ですよ、谷川さん。遠慮せずコールして下さい。」
琴子が優しく話しかけると、谷川は「…ありがとう」と嬉しそうにはにかんだのだった。

その日の午後、谷川はさっぱりした様子で夫を迎えることができたのだった。



「ありがとうね、色々と。」
夫が帰宅した後、トイレの介助をしてくれた天美に谷川が言った。
「久しぶりに気分がよかったわ。あとおいしいデザートも。」
ウフフと谷川が笑った。
「コンビニのデザートなんて珍しいものをお見舞いに持ってきてくれたなって思ったら、あなたが教えてくれたんですってね。」
「あ…。」
せめて記念日らしいことができないかと、天美は来る時間を見計らって谷川の夫を待ち構えていた。
「病院のコンビニのデザートですごくおいしいものがあります。よかったら奥さまとご一緒に。」
豪華な食事は無理だが、ささやかなものくらいならと思ってのことだった。夫も何かしてあげたいと思っていたのか喜んで天美の提案に乗ってくれた。
「おいしかったわ。すごくおいしかった。」
「…来年はお二人でおいしいものを召し上がって下さいね。」
「ええ。本当にありがとう。」



「入江さん、知りませんか?」
琴子に確認したいことがあってこの日、天美はその姿を探していた。
「ああ、あの患者さんのところだわ。」
幹が気の毒そうに教えてくれた。あの患者とは、バイク事故で運ばれてきた金髪患者のことだった。
「大丈夫かしらね、琴子。」
採血に手間取っているのだろうが、戻りが遅い。
「ちょっと見てくるか。」
通りかかった直樹が病室へ向かった。天美もその後を追いかけた。
「大丈夫、渡辺さん。」
歩きながら直樹が天美に確認してきた。
「渡辺さんはああいう患者さん、怖いだろうからって琴子が気にしてたけど。」
「…ええ、まあ。」
消えそうな返事が気になった直樹であるが、琴子が心配な気持ちの方が勝った。



「ふざけんな!てめえ、殺す気か!!」
「そ、そんなことは…。」
皆の想像どおり、琴子は金髪患者の採血にかなり手間取っていた。琴子が得意じゃないということもあるが、患者も嫌がって逃げ回っている。個室であることが唯一の救いだった。
「も、もう一度…。」
「うるせえ!二度とやらねえ!」
金髪は腕を引っ込めてしまった。
「大体、怪我なのに何で血がいるんだよ!え?」
「それはですから…検査項目で…入院患者さんは皆…。」
かなりしっかりしてきた琴子であるが、こんな乱暴な患者を前にするとやはり怯えてしまう。いや、琴子でなくともそうだろう。
「ったく…。」
直樹がガラッと扉を開けた。
「おい、いい加減に…。」
「いい加減にしろ!てめえ、何様のつもりだ!!」
直樹の言葉を消し去る大声が、個室に響いた。
「え?」
琴子と金髪、二人同時にそんな声を上げた。
「い、今の…。」
「渡辺さん…?」
荒げた声を出したのは、入口で仁王立ちをしている天美だったのである。




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