日々草子 アタリ?それとも…? 7

プロフィール

水玉

Author:水玉
『イタズラなkiss』のほかには『ゴルゴ13』が好きです☆
多数あるイタキスの二次小説の中で邪魔することなく、ひっそりとマイペースで我が道をゆきつつ生息しております。
そっと見守っていただけたら嬉しいです。

※当ブログに掲載されている文章及びイラストの無断転載・使用はご遠慮下さい。

現在の御訪問者

現在の閲覧者数:

御訪問ありがとうございます

このブログについてのお願い

当ブログは、『イタズラなkiss』の二次創作をメインとしておりますが、時折管理人の趣味や日々の出来事についての記事も書いております。

原作者様や関係各位とは一切関係ありません。

二次創作については、いわゆる原作の隙間をぬった作品もありますが、主人公以外のキャラクターをメインとしたものや オリジナルキャラクターが出てくるものもございます。

そして、原作と違った時代(平安や明治やその他の時代を舞台にしております)、異なる設定(主人公を医者と看護師じゃない職業にしております)で書いてあるものが多いですが、原作を冒涜しているつもりは全くございません。

二次創作が苦手という方及び原作のイメージと合わないと思われる方はどうぞお引き取り下さいますようお願いいたします。

コメント及びメールなどでの苦情及び批判は公開、非公開を問わず、私へ告げることはご遠慮いただけますよう、お願い申し上げます。

このブログ及び掲載されている話が嫌いだと思われたら、黙ってあなた様の中から、このサイトの存在を消去していただけますよう、お願い申し上げます。

カテゴリー+月別アーカイブ

 

最新コメント

最新記事

コメントいただいておきながら、お返事できずに申し訳ありません。
前回は琴子ちゃんの出番が少なくてすみませんでした。

☆☆☆☆☆







「うーん…そういうことか。」
天美の話を聞いた直樹は少し考え込んだ。その表情は天美の提案を受け入れることは難しいということを示していた。
「難しいでしょうか?」
少し間を置いた後、天美が恐る恐る切り出した。
「そうだなあ…外に出て行くってことだし。」
「でも病院の敷地内です。」
「点滴を下げているし。」
「私が付き添います。目を離しません。」
天美の迫力に、直樹も少したじろいだ。
「最近、気温の差が激しいだろ?」
「あ…。」
天美はその点を考慮していなかったことに気がついた。
「あと、彼は食事を取っていない。建物の中を歩き回っているが結構疲れた様子を見せていないか?」
「…はい。」
大人の患者に比べて体力が比較的ある子供でも、ベッドに寝ていたらやはり筋力は落ちる。慎一も点滴スタンドに頼って歩いていることは事実だった。
「転んだら大変だしなあ。」
やはり主治医の許可は得られそうもなかった。そして天美は自分の考えが浅はかであったことを思い知らされた。
―― 入江先生は起こりうる全てのことを考えているのに。
これで自分の考えを示すなんて大それたことができたものだと、天美が落ち込んだ時だった。

「お願いします、入江先生。」
背後から聞こえた声に、直樹は顔を上げ、そして天美も振り返った。
「お願いします、入江先生。渡辺さんの考えを実行させて下さい。」
「入江さん…。」
いつの間に来たのか、琴子が頭を下げていた。
「慎一くんは車椅子に乗せます。これならば転倒の危険は減ります。」
「車椅子…。」
その考えがあったかと、天美は気づいた。
「外と中の気温差にも気を配ります。上着や膝掛けなど万全の準備をします。」
琴子が直樹を見て、言った。
「もちろん、慎一くんの親御さんの許可を得た上です。だからお願いします。」
琴子が再び頭を下げた。天美も一緒に頭を下げた。
「私がプリセプターとして全責任を負います。」
この言葉に、頭を下げていた天美の目に涙が浮かんだ。自分はただ、勉強だけしてきた頭がでかいだけの人間だった。

「…二人、目を離さないな?」
直樹が琴子と天美の顔を交互に見ながら訊ねた。
「はい。」
天美がきっぱりと言い切った。
「許可できるのは…気温が高ければ30分。低かったら10分だ。それでいいか?」
「…はい!」
天美の返事に、直樹が険しい表情を崩した。
「…何だか、数年前にこんな光景をどこかで見た覚えがあるな。」
「そうなんですか?」
「ああ。俺がまだ学生だった頃に看護の実習生が高熱を出した病人に一晩中付き添いたいって師長に頼んでいた。琴子、そんなことあったよな?」
「え?」
天美は琴子の顔を見た。
「…忘れちゃった。」
赤くなってプイと横を向いた琴子に、直樹がニヤニヤと笑っていた。



「こんなもん、乗らなくたって歩けるのに。」
慎一は病室からずっと琴子と天美に悪態をつき続けていた。
「まあまあ。」
点滴スタンドを持つ琴子がなだめた。天美は車椅子を押す係だ。
「それに、上着なんていらないし。」
「パジャマ一枚で出るには、ちょっと厳しいからね。」
「出る?どこにだよ?」
「うーん、どこでしょうねえ。」
こういうやり取りをさせたら琴子にはとてもかなわないと天美は思った。慎一も口は悪いが琴子とコミュニケーションを取るのが楽しそうである。

「外に出るのかよ。なんだ、売店で好きなもん買ってくれるかと思ったのに。」
口ではそう言いつつ、久しぶりの外の空気に満更でもない慎一だった。
「散歩か。ジジババじゃねえんだよ。」
「まあまあ。」
三人はベンチのところで止まった。この辺りは近隣の人間の散歩コースにもなっている、以前、天美が菅井と話をしていたところだった。
「おい、何だよ…。」
何でこのような所で止まるんだと慎一が琴子たちを見上げた時だった。

「お兄ちゃん!!」
その声がした方を慎一が見た。
「お前…え?ロン!?」
慎一に手を振っていたのは、天美があの時つかまえた少年。そして少年は柴犬を連れていた。
「ワン!ワン!」
「ロン、待て。僕と一緒に行くんだよ。」
ロンはリードを持つ少年を引きずる勢いで慎一へ、しっぽを振って向かって来た。
「ロン、待て!」
慎一が声を飛ばした。すると興奮していたロンがぴたりと止まった。
「お座り!」
ロンがまたもや慎一の声で座った。
慎一は琴子、そして天美を見た。琴子が天美を見て頷く。
「ロンに来てもらっていいよ。」
天美の言葉に「え?」と慎一が驚いた。
「…いいの?」
「うん。あ、近くまで行こうか。」
天美が車椅子を押した。徐々に距離が近づく。ロンのしっぽははちきれんばかりに振られていた。
「ロン…飯を食ってないんだろ?」
恐る恐る、慎一が手を伸ばしロンの頭を撫でた。
「だめじゃん。」
「お兄ちゃんがいないから、寂しがってだめなんだよ。」
「俺みたいに病気ってことはないよな?」
「獣医さんに行ったら、体は問題ないって。」
「そっか。それならよかった。ロンまで入院したらやだもんな。」
愛おしそうに、慎一はロンを撫で続けた。



あの日、天美がつかまえた少年は慎一の弟だった。
「大声出すよ?」
いくら女性とはいえ、知らない大人に突然追いかけられた恐怖に慎一の弟は震えていた。
「あ、ごめんなさい。違うの、私、この病院の看護師で。」
そう天美が言っても、弟は信じなかった。
「本当にそうなの。ええと…あ、そうだ。」
天美は職員証を見せた。その写真と天美の顔を少年はまじまじと見比べた。
「さっき、そこの病院の廊下、見てたよね。」
「お兄ちゃんのこと?」
やはり相手は慎一だったか。
「慎一くん…。」
「お兄ちゃん、知ってるの?」
「うん、担当だから。」
「そうなの。」
「いつもお兄ちゃんに会いに?」
弟は頷いた。
「だってロンは病院に入れないから。」
「ロン?」
「僕らの犬だよ。」
そこで聞き出した話によると、慎一の弟は犬のロンを連れて病院の敷地内にやって来ているのだということだった。
「ロンはお兄ちゃんがしつけたから懐いているんだ。お兄ちゃんが病気になっちゃって落ち込んじゃって。お兄ちゃんの顔を見たら安心すると思って。」
慎一は渡り廊下まで弟とロンに会うために来ていたのである。
「ロン、ごはんをあんまり食べなくなって。元気もないし。それはお兄ちゃんが見てもわかるって、こないだ病室に行った時に言われた。」
愛犬が食欲をなくしてしまって、自分も食事がとれなくなったということか。これで全てが分かった。
そこで天美は、窓越しではなく直に愛犬に会せれば慎一も気分が良くなるのではと考えたのだった。



「いいか、ロン。」
「ワン!」
「もうすぐ俺は家に帰れるからな。」
「ワン!」
「本当?」
ロンと弟が同時に声を上げた。
「ああ。俺がその気になればすぐさ。」
この言葉には天美と琴子がぷっと噴き出した。
「だから飯をちゃんと食って、俺の帰りを待ってろよ。退院したらすぐに散歩に行くからな。体力作って待ってろ。」
「ワン!」

「…窓から会うことと、直接会うことはあんなに違うんですね。」
はしゃぐ二人と一匹を見ながら、天美が言った。
「そうだね。きっと子犬の時から慎一くんが愛情たっぷりに育てたんだろうね。」
「私はペットを飼ったことがないから分からなかったのですが。入江さんは何か飼ってらっしゃいます?」
「ん?ああ、うちも犬。」
「そうなんですか。」
「慎一くんを見ていると、弟…あ、義理の弟とチビを思い出すなあ。」
「チビって名前ということは、小型犬なんですね。」
「ううん。大きいのよ。」
「え?」
「なんだっけ、種類の名前忘れちゃったけど…ハイジに出てくる犬と同じ種類。」
「ハイジ…。」
アニメで見た記憶を天美は手繰り寄せた。確か相当大きかったような。



束の間の再会を終え、慎一は病室に戻った。
「今日の夕飯、何?」
「ええと…あ、お肉を焼いたもの。」
天美が献立を確認して答えると、
「相変わらずまずそうだな。でも食べてやってもいいぞ。」
「本当?」
「ああ。」
ベッドに入ると、慎一はプイと横を向いてしまった。
やれやれと天美が戻ろうとすると、「おい」と慎一が声をかけてきた。
「…ロンに会わせてくれて、ありがとう。」
布団をすっぽりかぶったままの、くぐもった声であったがはっきりと天美に聞こえた。天美の口許に笑みが自然と浮かんだ。そして心の中にも温かいものが広がった。



「ありがとうございました、入江さん。」
直樹への報告を済ませたあと、天美は琴子に礼を言った。
「入江さんが口添えをしてくれたから、入江先生に許可をいただけました。」
「ううん、私はただ、渡辺さんの考えがいいと思っただけ。」
とんでもないと琴子は手を振った。
「渡辺さんが慎一くんの弟さんと話をしてくれたおかげよ。ありがとうね。」
「いえ、そんなことは。」
それで言葉が止まってしまった天美だった。
「どうしたの?」
「いえ、私は気配りとかそういうのが本当に足りなかったんだなと気づきました。」
もし、琴子の言葉なしで直樹に許可を得られたとしたら、おそらく慎一を車椅子に乗せることもなく、防寒対策をすることもなく外へ連れ出しただろう。それを天美が口にすると、
「前は私もそうだったよ。」
と琴子が笑顔で言った。
「やっぱりやってあげたいことしか見えていなくて。説得するには色々考えないといけないって最近だよ、気付いたの。」
「ですが…。」
「大丈夫、大丈夫。」
ポンポンと琴子が天美の肩を叩いた。
「渡辺さんならちゃんとできるから。」
「入江さん…。」
その笑顔を見ながら、天美の脳裏にあの時の琴子の言葉が蘇ってきた。
―― 私がプリセプターとして全責任を負います。
「…すごいです、入江さん。」
「ん?何か言った?」
「いえ。」
こんな愚かな自分に、そこまで言ってくれる先輩がいるだろうか。天美は自分の指導係が琴子でよかったと心から思った。



関連記事

コメント

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

 BLOG TOP