日々草子 猫神家の一族 9

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水玉

Author:水玉
『イタズラなkiss』のほかには『ゴルゴ13』が好きです☆
多数あるイタキスの二次小説の中で邪魔することなく、ひっそりとマイペースで我が道をゆきつつ生息しております。
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当ブログは、『イタズラなkiss』の二次創作をメインとしておりますが、時折管理人の趣味や日々の出来事についての記事も書いております。

原作者様や関係各位とは一切関係ありません。

二次創作については、いわゆる原作の隙間をぬった作品もありますが、主人公以外のキャラクターをメインとしたものや オリジナルキャラクターが出てくるものもございます。

そして、原作と違った時代(平安や明治やその他の時代を舞台にしております)、異なる設定(主人公を医者と看護師じゃない職業にしております)で書いてあるものが多いですが、原作を冒涜しているつもりは全くございません。

二次創作が苦手という方及び原作のイメージと合わないと思われる方はどうぞお引き取り下さいますようお願いいたします。

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猫神家の一族 9






すっかり見慣れた大広間の正面に、雉子と啓太がいた。雉子は顔を強張らせている。
「さ、持ってきたわ。」
猿子が運んで来たものは、普通のものより大きな絵馬だった。
「それって。」
東馬と金之助にも見覚えのあるものだ。
「俺らが出征する前に神社に置いて行ったもんやろ?」
「そうよ。この斗南市で出征した人たちは皆、この絵馬に手形を押して斗南神社に奉納していったでしょう。金之助、お前のもありましたよ。」
猿子がここに持って来たのは、啓太の絵馬だった。
「今、用意した紙に啓太さんに手形を押してもらいましょう。それと、この絵馬の手形を比較すればここにいる啓太さんが本物かどうか分かるわ。」
犬子が得意げに手形を押す準備をする。母親たちの行動を東馬と金之助はもう好きにしろという感じに見ていた。
「入江さん…。」
「よく考えるもんだよ、ったく。」
困惑する琴子の隣で、直樹は呆れながら座った。

「雉子、いくら反対したって無駄よ。」
「そうよ、これは猫神家にとって避けては通れない問題なのだから。」
すごむ姉二人に対し、雉子は冷静であった。
「分かったわ。姉さんたちの強欲ぶりに降参よ。」
「強欲はあんたも一緒でしょう。」
「そうよ。」
三姉妹を前に「同じ穴のむじな」と直樹は一人呟いた。

全ての準備が整えられた。
「啓太、言われる通りそこに手形を押しなさい。」
雉子に言われると啓太は黙って頷いた。そして袖をめくり手を出した。猿子が朱墨をその手に塗りたくった。
啓太は真っ白な料紙に手を押し付けた。



「…どちらも同じ手だな。」
「せや、当たり前や。」
東馬と金之助が絵馬と料紙の手形を見比べる。二人が言うとおり、同じ手形がそこに並べられていた。
「姉さん方、これで満足して?」
得意げになった雉子が、姉たちを見る。
犬子と猿子は穴が開くほど、二つの手形を見ていた。「うぐぐ」という歯ぎしりが聞こえてきそうな顔をする二人。
「愚かな考えだったわね。うちの啓太は正真正銘、本物の啓太ですよ。」
「…ふん!」
手形と絵馬を置き、二人は雉子親子に背を向けた。
「疑ってすまなかった、の一言も言えないの?」
雉子の言葉に犬子と猿子は何も答えず、大広間を出て行った。
「まったく、どうしようもない人だよ。」
「これでおかしなことはもう考えんやろ。」
東馬と金之助は、やれやれこれで少しは落ち着くと安心して大広間を出て行った。

「ま、あの二人が謝罪を口にしたらそれこそこの世の終わりでしょうよ。」
姉たちの性格をとことん知りつくしている雉子は、謝罪されないことにさして憤慨している様子はなかった。
「啓太、行きましょう。」
雉子は啓太を連れて立ち上がる。立ち去る時、啓太が仮面の隙間からのぞかせた目を琴子に向けるのを、直樹はしかと見ていた。

「…私たちのこと、皆すっかり忘れていますよね。」
ぽつんと大広間に残された琴子が、ようやく緊張を解いた顔で直樹を見た。
「まあな。」
「あれ、片付けましょうか。」
なぜか琴子がせっせと片付け始める。女中の一人でも呼べばいいのにと思いながら、やはり琴子は考えるより先に動く人間なのだなと思いながら直樹も手伝い始めた。
片付けの途中で、琴子は啓太の奉納絵馬を見つめた。
「どうした?」
「…三人とも、よくご無事で戻って来て下さったと思って。」
その目にうっすらと涙が浮かんでいた。
「戦死した方も多いのに…本当…よく無事で。」
その様子を見ながら、やはりこの猫神家で彼らを財産とは切り離して心から心配するのは琴子だけだろうと直樹は思った。

「そういえば、入江さんも戦争に?」
年齢を考えたら、直樹も戦地へ赴いていたのではと琴子は気づいた。
「まあ、南方に。」
「遠くに…さぞご苦労されたことでしょう。でもご無事でよかった。」
きっと直樹の家族も喜んだことだろうと、琴子は笑顔を向けた。
「俺は軍医としての赴任だったから。」
「ああ、軍医ですか。そうか、軍医か…ん!?軍医ってお医者様!?」
手にした絵馬を思わず落としそうになりながら、琴子は目を丸くした。
「え?入江さん、お医者様なんですか?」
「ああ。」
啓太が手形を押した料紙を丸めながら、直樹は頷いた。
「それって、軍医さんとお話した程度とか?軍医さんからお話をうかがって、軍医でーすって名乗っているとか?」
「お前、俺に職業詐称癖があるかのような言い方やめろ。」
ギロリと直樹が睨んだ。
「だって、前科が…」と言いかけた琴子であったが、また直樹から睨まれて口をつぐむ。
「じゃあ、本当にお医者様なんですね、入江さん。」
「そうだよ。見えないかもしれないけれど。」
「いえいえ、そんなことは!」
と、琴子はぶんぶんと手を振った。

「そっかあ、入江さん、お医者さまなんだ。」
よほど驚いたのか、何度も呟く琴子であった。
「あ、そうだ。だったら銀田一先生よりもホームズじゃないですか、入江さん。」
「ホームズ?」
「んもう、ホームズと言ったら、シャーロック・ホームズですよ。ほら、ホームズもお医者様でしょ?」
実は最近読んでいるのだと胸を張る琴子。
「それ、相棒のワトソンのことだろ?」
「へ?」
「軍医はワトソンだろ?」
「あれ?ワトソンなんて出てきましたっけ?ホームズの相棒はスンベロッチョじゃ?」
「お前、どこのホームズを読んでいるんだ?」
どこぞからくすねてきた、まがい物を読んでいるのかと、直樹は呆れる。
「そっか。軍医はホームズの相棒のワトソンか…相棒のワトソンが入江さんということは…。」
ブツブツとつぶやいていた琴子の顔がパァッと輝いた。
「するとホームズは私?ワトソンの相棒はホームズ。入江さんの相棒も私…。」
「こんな記憶力も読解力もないホームズがいてたまるか!コナン・ドイルに土下座して詫びろ!」
直樹に思いきり怒鳴られ、琴子は「ひどい」と涙目で直樹を見上げたのだった。



それから数日は何事もなく過ぎて行った。
しかし、事が動いたのは間もなくのことだった。

「うーん…。」
自分の部屋のベッドで、琴子はぐっすりと眠っていた。夢の中でホームズの格好をした自分が直樹を従えてロンドンを歩いている。
「入江さん、やはり私の推理は当たっていたでしょう?大蛇森は怨恨で殺されたのです。」
「さすが名探偵琴子。俺の相棒だ。」
「えへへ。」
直樹に褒められて笑う琴子。が、なぜか体が突然重くなった。
「あれ?どうしたのかな?」
見ると直樹から離されていく。
「入江さん…ええ!?」
自分の声で琴子は目を覚ました。が、夢から覚めても体が重い。それもそのはず。上に誰かが乗っているではないか。
「琴子…。」
それは金之助だった。
「金ちゃん」と言いかけた琴子の口が金之助の手で塞がれる。
「堪忍な、琴子。俺かてこんな乱暴なことはしたくないんや!」
「むぐぐっ」と唸る琴子に申し訳なさそうにしつつも、金之助はその手を緩めようとしない。
「好きや…本気で好きなんや、琴子!」
これは夢じゃなかった。金之助が今、自分を襲おうとしている!



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