日々草子 再会する後輩

再会する後輩

お話の更新ができずにすみません。
以前の連載でだいぶお待たせしてしまったことで、新しい物を書く勇気がなかなか出なくて。
とりあえず、このくだらない話でもよろしければと更新してみました。

☆☆☆☆☆







僕と後輩はとある都市にいる。
え?また後輩の例の任務にくっついてきたのかって?いやいや、違うさ。今回はちゃんと、僕たち医者として学会に参加しているわけ。
学会ってのは退屈、あ、違った、色々な症例の勉強になるし、その場所ならではの食事とか楽しめるからいいよね。

学会を終え、新しい医学の知識に満たされた僕は後輩を誘い夕食を取った。
「なんであなたの顔を見ながら食べないといけないんですか。」
「僕だってお前の顔見ながら食事なんていやだけどさ。でもこういう時こそ、後輩とコミュニケーションを取るべきかなって。」
普段言えないこととか、場所が違う今だからこそ、色々聞き出す機会かと。僕は本当にいい先輩だよ。
「コミュニケーション…。」
後輩は僕の顔をじっと見る。
「な、何?」
「西垣先生って、一人で飯、食えないタイプでしょう?」
ズキーンッ!!な、何だ…この胸の苦しみは!!
「い、いやだなあ…そんな女の子じゃあるまい…し…。」
アハハと笑いながら僕はナイフとフォークを動かす。
「先生、そこ、肉ありませんけど。」
「え?あ、ああ…そうだっけ?」
しまった、何も乗っていない所でナイフとフォークを動かしていた。
「一人で店に入れないタイプでしょう?」
ズキーンッ!!ああ、こいつはどうして人の心をぶち抜いていくんだ!
「まあ、いいですよ。しょうがないから付き合っても。」
「べ、別に一人で店に入れないとか飯食えないってわけじゃないぞ?ただ、後輩とコミュニケーションを…。」
「必要ありませんので。」
もくもくと食事をする後輩。
「俺は一人の軍隊ですから。」
いつか聞いた台詞だな。
「だからといって、一人じゃ生きていけないだろ?人という字はだな…。」
「すみません、ワインリストを。」
先輩の話を見事にスルーする後輩。
「当然、西垣先生のおごりですよね?」
「はあ?なんで僕が…。」
「後輩とコミュニケーション取るための食事の席では?」
「いや、だからといって…。」
「大丈夫ですよ。この店、先生の寂しい懐にも優しい感じですし。」
スイス銀行に巨額な預金をしているお前がおごっても、罰はあたらんだろうが!!

ということで、夕食をおごらされ僕らはホテルに戻って来た。
「あ、ちょっと飲んでいこう。」
「少しは勉強するという考えはないんですか?」
学会というのはそういう所じゃないのかと先輩に説教をする後輩。
「僕はここの出来がいいから、一度聞いただけで覚えるんです。」
僕はこめかみをトントンと叩いて見せる。が、後輩は完全に疑っていた。
「ふーんだ、ちゃんと一人でも飲みに行けるんだからねえだ!」
あっかんべーをしながら、僕はいそいそとバーへ向かったのだった。うん、大人だ。


あ、いた。
バーの奥、僕は目当ての人物を見つけた。突然飲みに行く気になったのは、その人物がバーへ入る所を見かけたからだ。

「やあ、隣いいかな?」
キメッキメの顔をして、僕はその人物―とびきりの美女の隣に立つ。
「…どうぞ。」
長い髪を背中に垂らした、年の頃僕と同じくらいの美女は微笑んだ。
僕は座ると、パチンと指を鳴らして「こちらと同じものを」とバーテンへ言う。

「…連れは遅れているのかな?」
「え?」
美女が僕の顔を見た。
「待ち合わせだろう?」
「まあ、いいえ。」
美女が笑う。
「一人よ。」
「こんな美女が一人で飲んでいるのかい?」
「口がお上手なのね。」
このホテルは学会に参加する医者が多く泊まっている。ということは、この美女も医者だろうか。
「出会いに乾杯しても?」
僕はグラスを持ち上げる。
「ええ、いいわ。」
カチンと鳴るグラス。ああ、これ!これだよ、大人の世界!!

「ねえ、あのさ…。」
よし、このまま部屋へ伴い大人の夜を過ごそうと僕は一気に攻撃を開始しようとした。
「あら?」
しかし、美女の目は僕ではなく僕の後ろに行く。
「あなた…。」
あなた?僕は嫌な予感がした。そっと振り返ると…奴がいた!!

「お、お前、部屋で勉強してるんじゃ…。」
「あなたも来てたのね。」
ワナワナと震える僕を完全に無視し、美女が奴、後輩の側へ寄る。しかし、後輩は美女をこれまた無視し、バーの全体を見渡せる席へついた。
「知り合い?」
席に戻った美女に僕は声をかける。
「そうね…一度は熱いひとときを過ごした関係とでもいおうかしら?」
無視されても美女は傷ついていないらしい。それ以上奴にすがることなく、静かにグラスを口に運んでいる。
「熱いひとときってことは…。」
も、もしかしてあの後輩、不倫してたってこと!?え?琴子ちゃんは!?
「ご想像にお任せするわ。」
美女は奴に熱い眼差しを送る。が、やはりあいつは無表情のままだ。
「なあ、なあ。」
今度は僕が奴の側へ近寄った。
「もしかして、お前と彼女待ち合わせしてたとか?」
「は?」
「何だよ、焼けぼっくいに火がついたってやつか?お前、彼女を見つけてバーへ来たとか…。」
「何訳のわからないことを。」
「いや、だって。」
「違うわ。そういうつまらない、あなたの物差しで測れる話じゃなくてよ。」
美女がいつの間にか僕らの側にいた。ていうか、なにげに僕をバカにしなかった?

「懐かしいわ…あれは何年前だったかしら?」
美女が遠い目をする。
「あなたとは、豪華客船で出会ったんだったわね。」
「豪華客船…。」
タイタニック?
「タイタニックはとっくに沈んでいるわ。何を言ってるの?」
なぜかこの美女も読心術を心得ているらしい。
「あの時、あなたと一緒にした仕事、今でも覚えているわ。」
仕事?え?仕事ってことは…。
「難しい“穴”だったわね。」
あ、やっぱり。坐薬つながりのお知り合いでしたか。
「あなたと二人、見つめ合ったあのお尻は今でもはっきりと目に浮かぶわ。」
いや、さっさと忘れなよ。どこのどなたのお尻に坐薬をぶち込んだか知らないけれど。

「入江くん!!」
大人の雰囲気を見事に破壊する聞きお覚えのある声。
「琴子ちゃん!?」
なぜか、そこに仁王立ちしているのは可愛い琴子ちゃんじゃないか。
「今の…今のどういうこと?」
「え!琴子ちゃん、もしかして今の話を聞いたの?」
これは修羅場か?修羅場なのか?なぜか僕の胸がワクワクとし出す。
「琴子ちゃん、落ち着いて。」
「どいて!!邪魔!!」
琴子ちゃんは僕を蹴り飛ばした。夫婦そろって敬うという言葉を知らないらしい。

「バーで待ち合わせなんて大人みたいって思って来たら、こんなことに!お尻、お尻って!この人とお尻を見たって!!何で?何でなの?」
すっかりパニックになっている琴子ちゃんを、僕は蹴られた尻をさすりながらながめる。
もしかしてこれは、奴の裏の仕事を琴子ちゃんが知ることになるのか?

「入江くん、ひどいよ!!」
琴子ちゃんの大きな目に涙が浮かぶ。
「入江くん、あたしのお尻が一番好きだって…可愛いって…スベスベだって言ったじゃない!」
そんな会話をしているのか、あの朴念仁。
「だからあたし、入江くんのためにお尻専用のエステに通って…一生懸命…ぐすっ。」
お尻専用のエステがあるの!?いや、琴子ちゃん。全身磨こうよ。ていうか、あいつ尻フェチ?
いやいや、それよりも琴子ちゃん、責めるのはそこなの?
「違うわ、奥さん。」
美女がゆったりとした動作で、琴子ちゃんの側に立つ。
「違うって…?」
「旦那様と私は一緒に仕事をしただけなの。」
「仕事?」
ああ、それだと完全に裏の仕事の話をしなければいけなくなる。余計ややこしいことに…だけど僕は楽しくてたまらねえ!!

「何の仕事なんですか?お尻がどういう関係が?」
「私、こういう会社のものなんです。」
美女が幼子をなぐさめるかのように慈しむ目をして琴子ちゃんに渡したのは、名刺。
「あ、この会社…。」
「ええ、私はそこの社員。入江先生にはうちの薬を使ってもらっているだけ。だからその関係なの。」
「そっかあ。」
琴子ちゃんはこんな説明で納得してしまったらしい。さすが単細胞…。
「誤解させちゃってごめんなさいね。こんな可愛い奥様がいらっしゃる方を誘惑なんて、とてもできないわ。」
「そんな…。」
褒められてポッと赤くなる琴子ちゃん。本当に単純だなあ。

「琴子、いくぞ。」
「あ、うん。」
黙って会話を聞いていた後輩が琴子ちゃんの背中を押す。ああ、これから愛の斗南病院…じゃない、愛の学会か?まあ、いいや。
「あのね、今日はエステでポイントたまったから、アルガンイルをたっぷり塗ってもらったのよ。」
「そうか。」
アルガンイル…お尻に。なんかオイルが気の毒というか、何というか。



「…寂しいんじゃない?」
再び静粛を取り戻したバーで、僕は美女に声をかけた。
「君、本当は…。」
「いいの、もういい思い出だから。」
「じゃあ、君はあの仕事から引退を?」
「ええ。この世界には入江先生、ゴルゴ入江がいれば十分よ。ゴルゴ入江にはかなわないもの。」
まあ、尻を狙う医者なんて一人いればいいよね。
「さっきの名刺は、こういう時に備えて用意してるの?」
「いいえ。ちゃんとした本物。私、今までのキャリアを生かそうと転職したの。」
彼女は僕にも名刺をくれた。あ、ここは「痔には~♪」の歌で有名な会社じゃ?君も本当に尻が好きなんだな!
「でも、ゴルゴ入江に再会して、ちょっと昔の気持ちを思い出したわ。」
遠い目をする彼女。その心に浮かんでいるのはどこの誰の穴なのか…まあ、いい。

「僕でよかったら、君の思い出に付き合っても…。」
「そう?じゃあ、これを。」
部屋に連れ込もうとしたのに、なぜか彼女が何かを渡して来た。
「私の思い出の品よ。今夜の記念に受け取って頂戴。」
「え?いいのかい?」
「ええ。これで完全に過去と決別できるわ。ゴルゴ入江と再会したのもそういうわけだったのね。」
それじゃと、彼女はバーを出て行った。僕の掌に握らせたものは一体何だろう?彼女の思い出を僕はそっと見つめる…。
「…坐薬かよっ!!」
密封した袋に入っていたのは坐薬だ。しかも。
「…使用済みかよっ!!」
投げ捨てようとしたが、
「いけない。医療用廃棄物として処分しないと。」
こんな時にも医師としてのモラルがはたらく自分が恨めしい。
彼女の思い出の品は病院に戻って処分しようと、僕はそれをポケットへしまったのだった…嫌だったけど!!


翌朝、アルガンオイルをつけたかのような、艶々の顔をした琴子ちゃんがロビーに出てきたのは言うまでもない。



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kazigonさん、ありがとうございます。

ありがとうございます~!!
そのお言葉に甘えてしまっております。
もうちょっとお待ち下さいね。

紀子ママさん、ありがとうございます。

いえいえ、私もいつもコメントのお返事遅くなって申し訳ありません。
髪の長い美女、確かに松本姉を思い浮かべました。
ポイント貯めて~あれ、本当に情けないですよ!うちの母が「昔は“君を忘れない”で共演していたのにねえ~」と呆れてました。
ゴルゴ入江、琴子ちゃんなしでは眠れないんですよね。どんなに遠くても呼ぶことを忘れない。
座薬、確かに子供の頃入れられた覚えが…あれで熱が下がるとかすごい仕組みですよね(笑)

まあちさん、ありがとうございます。

お久しぶりです!
そうそう、まあちさんは数少ないゴルゴ入江ファンでしたよね。
コメントすごく嬉しかったです!

ちっちぽっぽさん、ありがとうございます。

そうなんです、久しぶりだったなあと。
何だかゴルゴが実在したかのような事件があったから、ちょっと書いてみたり。
そうだ、ちっちぽっぽさんはプロでしたね!書くとドキドキしちゃいます。
西垣先生、こんな扱いでも入江くんについて行くんですよね。プライドも何もありゃしない。
初対面の人間の前でも恥をかかされ、それでも怒らない。
ある意味器の大きな人なのか(笑)
そうそう、最後の最後で医療人としてのモラルがはたらいてよかったです。

shirokoさん、ありがとうございます。

多額の貯金があっても、西垣先生におごらせるお金はびた一文ないんでしょうね。
自腹を痛めても付いて行く西垣先生、物好きですよ。
え?関西へ行ったらそんな技を私が身につけたと?いやいや、そんな(笑)
イリコトには倦怠期はないでしょうね。琴子ちゃんと一緒である限り、入江くんが飽きるわけありませんし!

りょうママさん、ありがとうございます。

そうなんですよ、ちゃんとした出張が当たり前なんですよ。
入江くんはサイドビジネスで海外跳び回っているけれど、今度は胸を張って出かけている西垣先生です。
西垣先生、一人のイメージないですよね。多分本当はモテモテだから一人で食事なんてなさそう。
美人を口説こうと思いきや、その彼女も後輩の関係者。
入江くんは待ち合わせしてるし。
そう!私もそこ書きながら思いました。「お尻」の連呼すごいなと(笑)ちょっと言い過ぎたかと思ったのですが、まあいいかと。

たまちさん、ありがとうございます。

そうなんです。ぼつぼつと始ってきました。
空気清浄機フル稼働ですよ。いつ詰まりだすのかと怖くて。
目の洗浄液は去年派手にかぶれたので、もう今年は使いません。

どんなに決めている西垣先生でも、入江くんの前ではダメキャラなんですよね。
琴子ちゃん、すごいですね。そんな入江くん相手に言いたい放題。
でもそれも正体を知らないからなんでしょうけれど。
思い出の品、座薬…この二人にとってはそうなんでしょうね。
東京まで西垣先生はお持ち帰りしたんでしょう。

マロンさん、ありがとうございます。

せっかく美女をお持ち帰り出来るかと思いきや、残念でしたの西垣先生でした。
すべてお見通しだし、相変わらずヘタレだし。
琴子ちゃんのお尻目当ての入江くんになってしまったけど。でもだから今のサイドビジネスをしているのかも。
そうなんですよ、もう最近頭がぼんやりしてきて…。
マスクして歩いています。ああ、辛い。
プロフィール

Author:水玉
『イタズラなkiss』のほかには『ゴルゴ13』が好きです☆
多数あるイタキスの二次小説の中で邪魔することなく、ひっそりとマイペースで我が道をゆきつつ生息しております。
そっと見守っていただけたら嬉しいです。

※当ブログに掲載されている文章及びイラストの無断転載・使用はご遠慮下さい。

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御訪問ありがとうございます
このブログについてのお願い
当ブログは、『イタズラなkiss』の二次創作をメインとしておりますが、時折管理人の趣味や日々の出来事についての記事も書いております。

原作者様や関係各位とは一切関係ありません。

二次創作については、いわゆる原作の隙間をぬった作品もありますが、主人公以外のキャラクターをメインとしたものや オリジナルキャラクターが出てくるものもございます。

そして、原作と違った時代(平安や明治やその他の時代を舞台にしております)、異なる設定(主人公を医者と看護師じゃない職業にしております)で書いてあるものが多いですが、原作を冒涜しているつもりは全くございません。

二次創作が苦手という方及び原作のイメージと合わないと思われる方はどうぞお引き取り下さいますようお願いいたします。

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このブログ及び掲載されている話が嫌いだと思われたら、黙ってあなた様の中から、このサイトの存在を消去していただけますよう、お願い申し上げます。

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