日々草子 差し出すその手に

差し出すその手に

先日の8周年のご挨拶には沢山のコメント&拍手をありがとうございました!!
あんなにいただけると思っていなかったので、すごく嬉しかったです!
どうぞ今後ともよろしくお願いいたします。

どうでもいい話を一つ。
私の中で第?次韓国時代劇ブームが起きつつあり、『馬医』にハマってました。
そして気づくと母が『イ・サン』を再び見てるという。
付き合って『イ・サン』見ると『天の海…』書きたくなる〜笑 『天の海…』は『イ・サン』見てて書きたくなって書いたから笑

と、色々おしゃべりしましたがイリコト結婚記念日おめでとう~!!!

☆☆☆☆☆





それは相原琴子と入江直樹が高校三年生の頃の話――。

「うわあ、素敵、素敵、素敵!!」
入江家のリビングにて、琴子がテレビを前に歓声を上げていた。
「うるせえな、黙って見てられないのか。」
「いいじゃない、テレビに向かってでも話しかけたらボケ防止になるんだって。」
「もう手遅れだな。」
「ひどい!」
そのリビングのソファには、直樹も座っていた。休日のひととき、それぞれの親たち及び弟は外出、恐らく琴子も出かけるだろうと思い、のんびりと読書を楽しもうと思っていたのに。
「お前、どっか行けよ。」
「別に予定ないもん。」
すっかり入江家に馴染んでいる琴子は、もう生まれたときからそこにいるかのようである。
「入江くんがどっか行けばいいじゃない。」
「無駄な体力は使わない。」
「やあだ、どこのお爺ちゃんなんでしょうね。」
「ボケ防止を気にするほど年は取っちゃいない。」
こんなやりとりもすっかり日常茶飯事となった。少し前から考えると、直樹とこんな会話ができるなんて信じられない。今だって「どこかへ行けば」と言いつつ、まさか二人きりだなんて、こんな夢みたいなことがあるのかと琴子は頬をつねりたい気分だった。

「そもそも、くだらねえ番組を見るな。」
「くだらなくないもん、ほら、見てよ。」
琴子が夢中になっているのは、休日の午後に時間を埋めるために適当に作られたバラエティ番組。どういうわけか映し出されているのは結婚式。
「結婚式を挙げたい教会特集なの。」
「挙げる予定もないくせに。」
「そりゃ、まだ高校生だし。でも夢を見るくらいいいじゃない。ねえ、ここ、この教会なんて都内にあるんだって。」
まったくもって興味のかけらもない直樹であるが、琴子があまりにうるさいので目を向けた。
「ここで結婚したらね、永遠に幸せに過ごせるなんて言い伝えもあるんだって。」
「普通だろ、それ。」
「へ?」
「ここで結婚したら不幸のどん底に落ちます、なんていう教会で挙げるカップルいるか?」
「そりゃいないけど…。」
「宣伝文句だよ。お前みたいな単細胞がいるからくだらない文句考えて宣伝するんだ。まんまとカモにされているのが分からないか?」
「カモ…。」
おもわず「ガーガー」と鳴き真似をした琴子であった。それを直樹がすかさず、
「お前が言うとアヒルだな。」
と言う。
散々琴子を罵倒したが、それでも直樹はそこから動くつもりはないらしい。再び本に戻ったその姿を見て、琴子は想像を膨らませていく。


************

「琴子…この教会で式を挙げられたな。」
タキシードをビシッと決めた直樹が、ウェディングドレスの琴子に微笑んだ。
「入江くん、あの時のこと覚えていてくれたのね。」
「当たり前だろ。お前のことなら全て覚えている。」
「嬉しい、入江くん…。」
琴子の手を取る直樹。
「あの時はアヒルなんて言って悪かった。」
「ううん、アヒルと鴨を間違えた私が悪いの。」
「お前はアヒルなんかじゃない、白鳥だ。」
「ありがとう、入江くん。」
そしてゆっくりと近づく二人の顔…。
「入江くん…。」
「ギャラくれ。」
「はい?」
思わず琴子は目を開けた。
「だからギャラくれ。」
直樹が真顔でそうはっきりと言っている。
「入江くん!?」

************


「な、何で結婚式にギャラを?」
「おい、くだらねえ妄想するな。」
本の背表紙で直樹は琴子の頭を突いた。
「ギャラよこせ、ギャラ。」
「あれ?何で?どういうこと?」
突かれた頭を摩りながら、琴子は直樹を見た。
「お前、妄想全部口に出してるんだよ。ったく、何でこの俺がお前と結婚しなきゃならねえんだ。」
「やだ!」
さすがにそれがばれていたと、しかも当の本人の前でということを知った琴子は今にも爆発するかのように顔を真っ赤にした。
「ギャラ、ギャラよこせ。」
「だからそれ、何?」
「お前の妄想に勝手に出演させられたんだ、ギャラだよ、ギャラ。」
「ほら」と直樹は手のひらをヒラヒラとさせる。
「ったく、それくらいもらわねえと割に合わねえぜ。」
「何て人…。」
こんな人と結婚なんて無理だろう。琴子は「べぇ」と舌を出すと、再び明るい妄想を開始した。今度は言葉に出さぬよう、しっかりと口を真一文字に閉じて。


************

「琴子さん、とても綺麗です。」
そう言ってくれるのは、顔がへのへのもへじの男性である。
「ありがとう、もへじさん。」
よかった、やっと幸せになれる。
「もへじさん、この教会ってね言い伝えがあって…。」
「ごめんなさい、琴子さん。」
「はい?」
もへじは突然頭を下げた。
「もへじさん、どうして謝るの?」
「僕、あなたと結婚できません。」
「ええ?」
「ごめん、琴子さん!」
そう叫んでもへじは教会を出て行った。
「待って!待って、もへじさん!ここは幸せになれる教会なのにぃぃぃぃぃぃ!!」
琴子の魂の叫びは誰もいなくなった教会にこだまするだけだった。

「よう、やっぱりお前って運のない奴なんだな。」
そこに登場したのは直樹である。
「何よ!ギャラなんて払わないわよ!」
「お前のせいでこの教会の評判、今日からガタ落ちだな。」
「そ、そんなあ!!」
「向こうで神父が賠償してくれってさ。」
「賠償!?」
「評判を落としたんだから当然だな。ほら、払え。」
また手をヒラヒラとさせる直樹。
「そ、そんな!」
ウェディングドレスの琴子は直樹に抱きついた。
「助けて、入江くん!!」

************


「…お前の妄想、すげえな。」
「はい?」
現実に戻ると、やや引いた表情で直樹が琴子を見ていた。
「私、もしかして?」
「お前がもへじに振られるところから、俺が賠償金の請求を伝えるところまで全部しゃべっていたぞ。」
「何で?」
ちゃんと口は閉じていたはずなのにと琴子は「ああ!」と頭を抱えた。
「お前さ、将来教会で結婚するの諦めた方がいいかもな。」
「ええ、ドレス着たいのに!」
「あきらめろ。」
「そんなあ!」
「あとギャラな、ギャラ。」
再び直樹は琴子に手を差し出す。琴子は「意地悪!」とその手をペチンと叩いてやった。



あれから何年が経っただろうか。

「はあ…。」
この日、琴子はウェディングドレスであの時テレビで紹介されていた教会にいた。
「夢みたい…。」
式を終えた今、まだ現実とは考えられない。もしかして夢の中なのかもしれない。
ここは古典的だが、おもいきり頬をつねるべきだろう。琴子は頬を引っ張った。
「痛くない…やっぱり夢なのかしら?」
いや、まさか。琴子はもう少し力を入れて見た。
「痛い!」
夢じゃない。が、頬がヒリヒリとする。
「引っ張りすぎたか…。」
「お前、アホだな。」
いつから見ていたのか、今日のもう一人の主役がそこにいた。
「ったく、何をやってるんだか。」
「だって…。」
琴子は目の前に立つ直樹を見た。タキシード姿はいつも以上に凜々しい。本当に今日から自分は直樹の妻なのだろうか。
「ったく。」
直樹は右手を伸ばしてきた。
「え?や、やっぱりいるの?」
「は?」
突然自分から距離を置こうとする琴子に、直樹は信じられないという顔を向ける。
「ギャラ?ねえ、ギャラをよこせってこと?」
「ギャラ?」
「だ、だって。昔…。」
ほら、テレビでとか琴子が話すと「ああ」と直樹が思い出した。
「そんなことあったか。」
「あったよ。でもお財布今ここにないし…。」
「ばあか。」
直樹は琴子の額をコツンと突いた。
「あれはお前の妄想に勝手に出されたから言っただけのことだろ。」
「でも。」
「今、妄想なのか?うん?」
「…違います。」
そうか、妄想の世界じゃない、現実なのだと琴子はやっと実感できた。
「俺よりもへじの方がいいっていうなら、話は別だけど。」
「もへじ?やだ、そんなことまで覚えているの!」
「まあな。」
「入江くん、本当に頭いいよね。全部覚えていられるなんて。私のくだらない妄想覚えても必要な知識もちゃんと覚えていられて。」
「お前と出来が違うからな。」
「そうよねえ。」
しみじみと溜息をつく琴子に、直樹はクスッと笑った。どうして琴子の妄想を全て覚えているか、その理由は琴子の全てを見ているからだなんて言ったら、この花嫁はどんな顔をするだろうか。

「じゃあ、どうして手を差し出してきたの?」
話を元に戻した琴子。直樹はその琴子がつねった頬にチュッとキスをした。
「…てことをしようと思ったんだよ。」
「…入江くん。」
あの時、妄想が全てばれていた時と同じくらい、いやそれ以上に顔を真っ赤にして琴子は俯いた。

「ねえ、入江くん。」
「うん?」
「この教会って幸せになれる教会なんだよ?」
「そんな話だな。」
「私たちも…そうなれるよね?」
返事の代わりに、直樹は可愛い花嫁にキスをしたのだった。

「そろそろ移動の時間だな。」
直樹が時計を見た時、
「二人とも、披露宴のホテルに行く時間ですよ。」
と、弾んだ紀子の声が聞こえてきた。
「行くぞ。」
「うん。」
直樹が差し出した手に、琴子はそっと自分の手を重ねた。そして二人は家族が待つ場所へと向かった。





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面白い。

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ちっちぽっぽさん、ありがとうございます。

勝手に夢に出されて、なんだか酷い役回りのようでギャラの一つも請求したくなりますよね(笑)
でも本当、琴子ちゃんと暮らして入江くん変わりましたよね~。人間らしくなって!
そうですね、この後入江くんの怒りは爆発するんでしょうね~。
こちらこそ、コメントをいつもありがとうございます!

あかとんぼさん、ありがとうございます。

ありがとうございます。
高校時代はこんなやり取りもあったかな~と想像しつつ書いてみました。琴子ちゃんに心を開いている入江くんが書きたくて。
本当に漫才コンビですよね。琴子ちゃんも遠慮ないし。何せあの入江くんをひっぱたいた女の子ですもんね。
ギャラ、ギャラってお金持ちの息子とは思えないせこさですよ。でもそれくらい意地悪だったかなと。
最後の紀子ママは書いているうちに、こんな感じで出したらいいかもと思って付け加えたんです。褒めて下さってありがとうございます。
下手な感想なんてとんでもない、私のコメントのお返事こそ下手ですみません。

なおちゃんさん、ありがとうございます。

ありがとうございます!
面白いと言っていただけて嬉しいです!

shirokoさん、ありがとうございます。

本当にその通りですよね。
嫌いだったらあんな大きな家ですもん、部屋に入ったきりでてきませんよ。
それなのに結構、入江くんはリビング率が高いような。
琴子ちゃん、唯一入江くんと普通に話せる女の子ですし。
今日嫌いでも…あれは入江くんの名言ですよ!その通りだったし。入江くん、あの頃はすでに琴子ちゃんへの意識が変わっていたんでしょうね!

こっこ(*^^*)さん、ありがとうございます。

久しぶりの普通のイリコトです。たまには書いてみようかと。
ほのぼのと言っていただけて嬉しいです。妄想がぶっ飛び過ぎて入江くんも楽しんでいたでしょう。
イリコトは常にハッピーエンドです♪

りょうママさん、ありがとうございます。

そうなんですよね。
入江くんも出かけないし(自分の家だから文句ないだろって所でしょうが)、なんだかんだ琴子ちゃんを気に入っている気がします。
そうだ、ギャラはコーヒーでいいじゃないか!ここでコーヒーを出したら…ああ、自分の妄想力のなさが憎い!
結婚式にまでギャラを払おうとする琴子ちゃん、笑えますよね!

紀子ママさん、ありがとうございます。

私、馬医は初めて見て。たまたまかけたら、ちょうど医者を目指し始めた所でここから面白くなるかな~と見ていたらはまっってました(笑)
いえね信じてもらえないと思いますが「イ・サン」の王妃様(サンの王妃ね)が好きで、あれをモデルに沙穂子さんを書いてみたら面白いんじゃない?と思って。え?お前、どこの王妃だ?お前が見ていたのチャンヒビンじゃないの?と言われるような出来になりましたけど(笑)「イ・サン」見た時は沙穂子さんが王妃になったらあんな感じかなと思ったんですよ~。
だからといって、ソンヨンをモデルに琴子ちゃんを書かなかったけど。だってソンヨンは可哀想で。
そうそう、運命の二人ですよね、イリコトは!

heorakimさん、ありがとうございます。

今年はイベントごとにお話をアップできて一安心しました!
読んで下さりありがとうございます。
はい、頑張ります!

ぱんださん、ありがとうございます。

ありがとうございます!
そうですよ、琴子ちゃんのことが気になってたんですよ。
琴子ちゃんのことが気になって大好きで、それであの雨の日のプロポーズになったんでしょうね!

たまちさん、ありがとうございます。

ええ、そうなんですか!
私の心にお姫様がいるなんて!嬉しい!ありがとう、たまちさん!
最近ご無沙汰だったんですけどね~何だか面白いのを見つけちゃって再び見てました。
最近の韓国時代劇はフィクションが多くて、若者向けが多くなって離れてたんですけど。
そうなんですよ、琴子ちゃんのことは忘れないんですよね。
もへじならぬ、金ちゃんに奪われると本気で焦って結婚しちゃったんですから。
金ちゃん、グッジョブ!
琴子ちゃんによって入江くんは充実した人生を送っているんだからよかったですよね!

ぷりんさん、ありがとうございます。

このセリフ書いた時、私もぷりんさんと同じこと考えていたんです!
嬉しい~!!結婚記念日、お話アップできてよかった!!
ありがとうございます!!

ねーさんさん、ありがとうございます。

アヒルたちに笑ってくれたのは、さすがねーさんさん!
ありがとうございます!
しかも昔書いた話まで覚えていて下さるなんて!
そうですね、罠をまだ知らない入江くんですよね。この後…オホホ。
結婚式の後、少しくらい二人きりの時間があるかなと思って。
教会の窓辺でたたずむ二人を想像しながら書いてみました。

マロンさん、ありがとうございます。

なんだかんだ文句を言いつつも、琴子ちゃんの行動も言葉も全部覚えていると思います。
それだけ琴子ちゃんは特別な存在なんですよ。
そうそう、結構琴子ちゃんの話に乗っているという。ギャラを要求するなんて面白がっているし。
琴子ちゃん、結婚できたこと自体信じられなくて色々考えちゃいますよね。
ずっと夢を見ているかのような気分だったんでしょう。
差し出した手に、幸せが重なっていく…いやあん、マロンさん、素敵な表現!!!
プロフィール

水玉

Author:水玉
『イタズラなkiss』のほかには『ゴルゴ13』が好きです☆
多数あるイタキスの二次小説の中で邪魔することなく、ひっそりとマイペースで我が道をゆきつつ生息しております。
そっと見守っていただけたら嬉しいです。

※当ブログに掲載されている文章及びイラストの無断転載・使用はご遠慮下さい。

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このブログについてのお願い
当ブログは、『イタズラなkiss』の二次創作をメインとしておりますが、時折管理人の趣味や日々の出来事についての記事も書いております。

原作者様や関係各位とは一切関係ありません。

二次創作については、いわゆる原作の隙間をぬった作品もありますが、主人公以外のキャラクターをメインとしたものや オリジナルキャラクターが出てくるものもございます。

そして、原作と違った時代(平安や明治やその他の時代を舞台にしております)、異なる設定(主人公を医者と看護師じゃない職業にしております)で書いてあるものが多いですが、原作を冒涜しているつもりは全くございません。

二次創作が苦手という方及び原作のイメージと合わないと思われる方はどうぞお引き取り下さいますようお願いいたします。

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