日々草子 信じられないことをする後輩

信じられないことをする後輩

4年に一度のこれを絡ませた話を書いておかねば…。

☆☆☆☆☆







オリンピック…それは4年に一度の祭典。
期間中は患者さんたちもテレビ観戦に夢中でさ。まあ、おかげで回診や検査の時間にベッドにいない、探さなきゃ~っていうのがなかったから僕ら医者としても助かったわけで。

ところが、その時期にあの後輩は姿を消していた。
琴子ちゃんとの休暇はまだ取っていないってのに、一体何回姿を消せば気が済むんだ?こっちは夏休みを順番に取って行くからスケジュールが大変だってのに!
そんな勝手な行動を許す上も上だ。部長に文句言っても「入江先生は特別だから」とか訳のわからんことを平気で言うし!じゃあ僕は特別じゃないのかよっ!

と、文句を言っていると顔に出てしまう、いけない、いけない。せっかくのイケメンが台無しだ。
奴がいない今、斗南大病院のイケメンドクター1位の座は僕…あ、いや!奴がいても1位だよ、1位!…だよね?

「で、君のダーリンは今度はどこへ行ってるのかな?」
琴子ちゃんに聞いてみると、
「あれ?西垣先生には言ってなかったんですか?」
と、これまた驚きの返事。
「うん、聞いてない。ていうか、言っていったことが一度もない。」
「ああ、そうか。ま、そうでしょうね。」
琴子ちゃんも僕を粗略に扱うようになって!
「リオですよ、リオ。」
「リオ?」
リオってあのリオ?あの熱戦が繰り広げられているリオ?今度パラリンピックをやるリオ?
「他にリオってあるんですか?」
「…多分、ない。」
「でしょう?」
何を馬鹿げたことを言うんだと、僕をあきれた顔で見る琴子ちゃん。くそ、琴子ちゃんにまで馬鹿にされるとは。
「ま、まさかオリンピック観戦?」
「うーん、どうかな?」
そこまでは把握してないらしい。ていうか、この夫婦は「ちょっとそこのコンビニ行ってくるわ」みたいな感覚で「ちょっくらそこのリオに行ってくるわ」という会話を成立させているのだろうか。
あの世界を股にかけている後輩にとっちゃ、地球の裏側だろうが宇宙だろうが、コンビニ、いや院内の売店程度の距離感なのかも。

いや、そんなことはどうでもいいんだ。問題はあいつが何をしにリオへ行ったかってことだ。オリンピック、パラリンピック開催中。世界でもっともテロ対策に目を光らせているであろう地域に。

…分かったぞ、あいつ、またあのアーマライトM16(フッ、スラスラ言えるようになっただろ?)を手に会場を駆けずり回ってるに違いない。
え?そんなもん持ったら没収されるだろって?いや、身柄確保されるだろって?まったく、君たちは何年この僕、西垣のゴルゴ入江に関する詳細レポートを読んでいるんだ?
あいつは自分の任務を成功させるためにはどんな手段を使っても、愛用のアーマライトM16を分解してでも持ち込むに決まってるだろ?


「西垣先生?」
「今度は誰の尻を狙ってるんだ?」
「尻ってお尻?」
「そうだよ。あんにゃろ、一体何人の尻を狙って金稼いでるっていうんだ?」
「は?」
「ああ、そりゃああいつの腕があればあんなに尻が並んでいるんだ、やりたい放題さ!」
「お尻が並んで、やりたい放題?」
「琴子ちゃん、いいのか、そんな旦那で!」
「何がですか!」
琴子ちゃんは僕が何を言っているのか分かっていない。うん、無理もないさ。僕は琴子ちゃんの両肩をガシッと掴んだ。
「いいか?君の亭主の狙いだ。多分どっかから依頼されたんだろうな。それで…うん、そうだ、陸上!トラック競技ね。あそこでスタートラインに立つ選手たちは尻を突き出すだろ?その尻めがけてあいつ、君の亭主はズキューンッって座薬をぶち込んでいるんだ。それが目的でリオに行ってるんだよ!」
「…座薬?」
「ああ、気にすることない。あいつはいろいろコネがあってね。服の上からでもぶち込める座薬とか開発してもらってるんだ。だから尻に穴開けて選手が走るなんてことは想像する必要はないんだよ、琴子ちゃん。」
「いや、西垣先生。」
琴子ちゃんに名前を呼ばれて僕は我に返った。僕、今とんでもないことを口走ったんじゃないか?
どうしよう、琴子ちゃんは何も知らないのに。とうとう後輩の真の姿を口にしてしまった…ああ、やばい!亭主があやしい武器を持って他人の尻を狙ってるなんて知ったらいくら寛大な琴子ちゃんでも…あの後輩にベタ惚れの琴子ちゃんでも100年の愛も冷めるのではないだろうか!
いや、正体をばらしてしまったらもう僕の命も危うい。自分の正体を突き止めようとする輩や他へバラそうとする輩には容赦ない奴だから…。

「それってドーピングって言うんじゃないですか?」
「…は?」
僕は琴子ちゃんの顔をじっと見た。
「先生がさっきから言っていること、ドーピングって言いますよね?」
「あ…。」
琴子ちゃんはすごい真顔で、しかも心底僕に呆れ果てているという冷たい顔で僕を見据えている。
…アーマライト担ぐ後輩よりもっと恐ろしいもの、それは普段ニッコニコしている可愛い琴子ちゃんが、大きな目を直線状態にした、冷たい顔だ。

「まったく、入江くんがドーピングなんてするわけないじゃないですか!」
「…あ、う、うん。」
琴子ちゃんが正論すぎて、僕は何も言えない。
「くだらない話を長々と聞かされて、時間の無駄だったわ!」
「…すみません。」
ていうか琴子ちゃん、アーマライトとか尻をなぜ狙うのかとか、そこは全然気にしないんだ?あくまで薬を入れるっていう行為だけを気にするんだね、琴子ちゃん。

「だから付き合うなと言っただろうが。」
そしてバッドタイミングな声が聞こえてきた。
「入江くん!」
さっきまでの冷たい、直線だった目がパチリと大きく見開かれ後輩に飛びついた。
「ほら吹き男の話なんて聞くだけ無駄だ。得るものは何もない。」
「だってつかまっちゃったんだもん。」
近所のおしゃべりおばさんみたいな扱いしないでよ、琴子ちゃん。

「じゃあ何しに行ってたんだよ?」
せめてもの抵抗を僕は見せた。
「これです。」
後輩はバッと広げて僕に何かを見せた。ん?Tシャツ?あれ?どっかで見たような?
「オリンピックのボランティアです。」
「はあ!?」
見たことあるはずだ。それはリオでボランティアが来ていたシャツ。
「お前が?ボランティア?」
「うわあ、入江くん、さすが!」
後輩の首に抱きつく琴子ちゃん。それを離そうともしない後輩。
「何でそんなもんに!」
「医者として何か役に立つことがあるのではと思って。」
「いや、お前がんなことするわけないだろうが!」
僕は叫んだ。
「だってボランティアだぞ?ボランティア!いいか、無償奉仕だろ?お前が、尻一つで何千万円要求するお前が無償で働くなんてそんなことするわけない!」

「あ、入江先生が映ってる!」
近くのデイルームでテレビを見ていた患者さんが声を上げた。それはオリンピックを取り上げたニュースで、確かにボランティアのユニフォームを着た入江が流暢な外国語で案内していたわけで。
「何語しゃべてるんだ?」
「ポルトガル語です。他にも英語、ドイツ語、フランス語、スペイン語、アラビア語、ヒンズー語、中国語、日本語、イヌイット語、イタリア語、ヘブライ語、タガログ語、ニューギニアの原住民語など18カ国語を困らない程度には。」
「18カ国…。」
「英会話学校を追い出された誰かさんと一緒にしないで下さい。」
くっ!またもや僕の黒歴史を!

つうか、何の魂胆があってボランティアなんて崇高な行為をお前がしたんだ?絶対他に目的が…。

「琴子、リオ土産だ。」
「ありがとう!」
そして奴はいつもの場所に行ってろと琴子ちゃんに指示する。「はあい!」とさっきまでとは打って変わった機嫌の良さで走って行く琴子ちゃん。

「まあ、すごいわあ!」
またもやテレビを見ている患者さんが声を上げた。何だよ、今度は。
「資金不足のパラリンピックに謎の寄付ですって!」
「寄付?」
僕はテレビの前に立った。「西垣先生、邪魔!」と言われても気にしない。

「何?資金不足のパラリンピックに匿名で寄付…5千億円!?」
何で?誰が?
しかもその金は全て違うスイスの各銀行振り出しの小切手で、個人からの寄付であることは間違いないという。そして贈り主は“一部を捨て去りし者”とだけ…。
「一部って、まさか?」
僕は振り返って後輩を見た。後輩は「何か?」と僕を見返す。

「いや、お前…一部って…一部って?」
「全額だと金額多すぎて断られそうだから。」
一部で5千億!お前の総資産額いくらなんだよ!おい!

「お前、何でそんないいことばかりしてるわけ?」
「は?」
「おかしいだろ?今まで金の亡者だったお前がどうしてボランティアだの寄付だの始めたのさ?」
僕は奴の白衣の襟を掴んだ。
「どうした?何が狙いだ?もしかして、何か大きなことをしようとしてるのか?僕に教えろ!」

「西垣先生!!」
「部長!」
気づくと外科部長が僕を睨んでいた。
「やめたまえ、何を騒いでいるんだ!」
「だって、だって部長!入江が、こいつ、いいことばかりしてるんです!!」
「いいことして、何が問題なんだ!」
部長は僕を後輩から引き離す。
「おかしいでしょ!いいことしかしない奴なんて!」
「おかしいのは君だ!まったくデイルームで西垣先生が錯乱状態で暴れてると患者さんが言ってるから様子を見に来たら…本当におかしいぞ、君!!」
「おかしいのはこいつです、部長!」
「君だよ!おい、誰か車椅子!あと鎮静剤…いや間に合わん!ストレッチャーに乗せてそのまま手術室へ放りこんで全身麻酔かけて黙らせろ!!」
「部長、何をするんですか!」
「それはこっちのセリフだ。わかった、西垣先生。君は働き過ぎて疲れているんだ。」
「僕も…僕もボランティア行きます!リオのパラリンピックで働きます!」
「今の君を行かせたらパラリンピックに大迷惑だ!!」
「じゃあ、じゃあどこへ!?」
「分かった、西垣先生。君を働かせすぎた私が責任を取ろう。」
「ぐすっ…部長もボランティアを?」
「いいや。やはり、君は斗南大病院無人島診療所へ派遣する。そこなら誰もいない、静かだし療養にはもってこいだ。」
「無人島じゃ患者いないでしょう!」
「だからいいんだろう。安心したまえ、一週間に一度、ヘリから食料を投下してやるから。あ、こっちだ。ストレッチャーをこちらに!」
「いやだあ!!!」



それから少しして、僕はようやく落ち着きを取り戻した。全身麻酔も鎮静剤も何とか免れた…ホッ。
あーあ、まったくあいつのせいだ。全部あいつのせいだ。金をしこたま稼いだと思ったら、急にあんなことするからだ。
こうなったら4年後、僕も医師免許を生かしたボランティアを…。

「あなたには無理ですね。」
いつの間にかあの仮眠室の前に来ていたらしい。そしてまたもや僕の心を見透かした後輩がドアを突然開け言い放った。
「な、何でさ?僕だってボランティア…。」
「そもそもあなた、4年後に医師免許を所持しているとでも?」
「ちょっと、何を不吉なことを!」
「今だって医師免許を剥奪されないことが不思議だっていうのに。」
と、パタンと奴は仮眠室のドアを閉めた。

何だよ!白ブリーフ一丁の奴にそんなこと言われたくない!!

「白ブリーフのどこが悪いっていうんですか!」
「琴子ちゃん!?」
今度仮眠室のドアを開けたのは琴子ちゃん。琴子ちゃんまでいつの間に読心術を…って、琴子ちゃん!
「君、何て恰好をしているんだ!!」
「これですか?」
琴子ちゃんは白ブリーフ一丁じゃなく(いや、それだったら嬉しかったんだけど)、何てことだろうか!露出度高めのカーニバルのダンサーの衣装で僕を睨んでいた!
「入江くんのリオのお土産です。」
「いや、出所を聞いてるのではなく。ねえ、ここ病院、君の職場だよね?」
「琴子、相手にするな。」
「はあい。」
琴子ちゃんは僕を無視して、背中の羽をふさふさと揺らしながらドアを閉めた。

「入江くん…安定したところで踊らないと!!」

…どこでサンバ踊ってるの、琴子ちゃん!
ていうか、お前ら!サンバでも何でも家に帰って踊れよ!!




☆☆☆☆☆
ゴルゴ13豆知識
ゴルゴ13は全財産、金額にして約2兆円を『全て捨て去りし者』という名前で国連に寄付したことがある。

関連記事

コメントの投稿

非公開コメント

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

マロンさん、ありがとうございます。

マロンさんのコメント見て、ああ土管か!!とすごく勿体ないことをしたなと思いました。
そうですよ、土管!土管!あのネタ使わないでどうする、だから詰めが甘いんだよ~と!!
ガッキーが何を言っても琴子ちゃんは信じないんですね~。意外と感化されているんじゃなかろうか。
どうして正しいことを言っているのに、それが認められないのか不思議です。

たまちさん、ありがとうございます。

きっとゴルゴ入江から、西垣先生の相手は適当にしておけと命じられているんでしょうね。
いつもぽわわんとしている彼女から真顔で否定されればそりゃあ凹むでしょう笑
そうです、今回はボランティア。金銭からまないことをするって珍しいですけれどね。
本家ゴルゴは恩はきっちりと返すところがあるので、まあこういうのがあってもいいかと。
ゴルゴで扱っている金額が大きすぎて、書いている私も億単位でも安いと感じるようになってきちゃいました。

りょうママさん、ありがとうございます。

そうです、西垣先生は間違っていないのに。でも全然認めてもらえない。
錯乱と言われ、飛ばされそうになる。でもゴルゴ入江の周囲をうろつくことはやめないんでしょうね。
そうそう、院内で大人しく外科医やってればいいんです。
リオといえばカーニバル。もちろん琴子ちゃんのためにお土産です。
しかし、本当に家でやれよ!という気もします。

子持ちママさん、ありがとうございます。

いえいえ、こちらこそ笑っていただけて嬉しいです。
次のゴルゴ入江も待っていていただけると嬉しいです!

shirokoさん、ありがとうございます。

本家ゴルゴの報酬、平均3000万円なんです。最初高いと思っていたけれど、あの人の前準備とか命をかけているところとか考えると、それでも安いくらいかもしれないなと思って。
裏切られるのは当たり前だし、何が起きるか分からないし。失敗したらもう最後だし。
原作で全財産を寄付したのを見たとき、ゴルゴすごいなと改めて思いました。
そうですね、普通の暮らしが一番ですよ。大変だけど、食べていければ…。
琴子ちゃん、自分の旦那様が大金持ちなんて思ってないでしょうね。

よしぴぃさん、ありがとうございます。

お久しぶりです!
来て下さってとても嬉しいです!そして覚えていて下さって!
たまにはまともなことをしたいと思ったんでしょう、ゴルゴ入江。
あ、ゴルゴ13と同じ数の語学力にしました。だから本家も18カ国です。
そうなんですよ、白ブリーフなんです。ええ、これは第1話、表紙をめくってすぐのページからそうなんで。
ちなみにブラックブリーフだったときが一度あったとか。でもブリーフは譲れないようです。
だからうちのゴルゴ入江もブリーフで笑
そうですね、琴子ちゃんには大きいですよね!特に胸が!
よしぴぃさんの仰るとおり、特注でしょう。3サイズは頭にインプットされているからピタリと。いや、それともずり落ちそうになっているのを見て喜んでいるのか…。
問題は2年後の平昌ですね。ええ、ゴルゴ13って朝鮮半島に渡ったことないんですよ…。
唯一行ったことのない国が韓国、北朝鮮だったはず。どうするんだろう、うちのゴルゴ入江。
プロフィール

Author:水玉
『イタズラなkiss』のほかには『ゴルゴ13』が好きです☆
多数あるイタキスの二次小説の中で邪魔することなく、ひっそりとマイペースで我が道をゆきつつ生息しております。
そっと見守っていただけたら嬉しいです。

※当ブログに掲載されている文章及びイラストの無断転載・使用はご遠慮下さい。

現在の御訪問者
現在の閲覧者数:
御訪問ありがとうございます
このブログについてのお願い
当ブログは、『イタズラなkiss』の二次創作をメインとしておりますが、時折管理人の趣味や日々の出来事についての記事も書いております。

原作者様や関係各位とは一切関係ありません。

二次創作については、いわゆる原作の隙間をぬった作品もありますが、主人公以外のキャラクターをメインとしたものや オリジナルキャラクターが出てくるものもございます。

そして、原作と違った時代(平安や明治やその他の時代を舞台にしております)、異なる設定(主人公を医者と看護師じゃない職業にしております)で書いてあるものが多いですが、原作を冒涜しているつもりは全くございません。

二次創作が苦手という方及び原作のイメージと合わないと思われる方はどうぞお引き取り下さいますようお願いいたします。

コメント及びメールなどでの苦情及び批判は公開、非公開を問わず、私へ告げることはご遠慮いただけますよう、お願い申し上げます。

このブログ及び掲載されている話が嫌いだと思われたら、黙ってあなた様の中から、このサイトの存在を消去していただけますよう、お願い申し上げます。

カテゴリー+月別アーカイブ
 
最新コメント
最新記事
カボチャの世界
Private
カレンダー
02 | 2017/03 | 03
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31 -
リンク