日々草子 大蛇森の受診

大蛇森の受診

花粉症に対するお気づかい、ありがとうございました。
コメントに書いて下さった方もいらしたのですが、確かにこの状況で重い話を考えるのはちょっと辛く…^^;
ただでさえ回転しない頭が更に回転しないで停止しているので、すみません。
なるべくお待たせしないうちに続きをアップ出来たらいいなと思っております。

その代わりといっては何ですが、軽いタッチのお話をアップしてみました。楽しんでいただけたらいいのですが。

☆☆☆☆☆








春だね、諸君。いかがお過ごしだろうか?
え?僕は誰かって?
ああ、そうか。最近このサイトには、初めましての人がいると聞いたな。そうか、じゃあこのシリーズのあらすじを簡単に説明しておこう。

まず、このシリーズの主人公は僕、大蛇森だ。斗南大学附属病院の脳神経外科に勤務する医師。ま、自分で言うのもなんだけど腕はなかなかのもんだよ。なにせ繊細な脳を扱う毎日。そう、心も繊細なのさ、僕は。

で、どういうシリーズかというと、この僕が一途にとある人物に想いを捧げる純愛ラブストーリー。
相手?うーん、どうしようかな。言っておいた方がいいか。
僕の純愛の相手は同じ病院に勤務する小児外科のホープ、入江直樹先生だ。いや、これがラブストーリーにふさわしい、美青年。もうあんな美しい男性はいないだろってくらい。

うん、分かってるよ。あれ?ラブストーリーっていうから相手は女性だと思ってたって言うんだろ?ノン、ノン、ノン!いまや愛は性別を問題にしないのさ。
つまりこのシリーズも僕と入江先生が様々な困難を乗り越えて結ばれていくストーリーってこと。わかったかい?

え?イメージがわかないって?もう、想像力が貧困だな。
仕方ない、何か例えを…うーむ。
ああ、そうだ。少女マンガにもあるだろ?『風と木の詩』『トーマの心臓』『日出処の天子』『摩利と新吾』とか。これらの作品をもし知っているならば、それぞれの主人公たちを僕と入江先生に置き換えて想像したまえ。
ん?ああ、それならば想像がついた。納得したって?そうかい、そうかい、ならばよかった。
ほう?何々、その中でいうと僕は『日出処…』の厩戸皇子にそっくりだって?
いやいや、そんな…って、実は僕もそう思ってるんだけどね。フフフ。なかなか君、いいこと言うじゃないか?

じゃ、そういうことで…クショーン!!
うう、最近くしゃみが止まらないんだよな。やはり激務のため風邪をひいてしまったのだろうか。しかし、かれこれ数週間…風邪をこじらせてしまったか?
休んだ方がいいんじゃないかって?いやいや、そんなことできない。僕一人が休むとこの病院の脳神経外科は機能がストップしてしまうからね…と、また鼻がムズムズと…。

「ハクショーン!!」

ん?あの下品なくしゃみはもしや?

「ハクショーン!!うう…!」

やっぱり、そうか。

「…君、花粉症かね?」
「違いますよ、大蛇森先生!」
そう言って僕を睨むのはこの病院にどんな手段で入ったか未だ不明の看護師、斗南大病院の歩く産業廃棄物こと、チンチクリンだ。もっともどこの処理業者だってこのろくでもない産業廃棄物を引き取ることはないだろうけど。
チンチクリンっていう名前なのかって?いや、それはさすがにないけど。でも本名忘れた、というか覚えるつもりがない。そんな余計なもんを覚えたら僕の脳がおかしなことになりそうだからね。


「風邪です、風邪!」
「いや、花粉症だろ?何せバカは風邪引かないっていうじゃないか…クショーン!」
「大蛇森先生こそ花粉症じゃありません?」
「僕は風邪だ。誰かと違って給料以上の働きをして、免疫力が落ちているんだ。」
「私も風邪です。」
「嘘つけ。ウィルスだって君を避けていくくせに。ああ、花粉もそうだな。君に好んでくっつく物好きな花粉はいないだろう。」
「その言葉、そっくりお返しします。」
「変な物質を持ち込んで入江先生を巻き込まないでくれたまえ。」
「それもそっくりお返ししますよ。」
相変わらず失礼な物言いをして、チンチクリンは女とは思えない下品なくしゃみをしながら去って行った。

ん?ちょっと失礼過ぎないかって?あそこまで言われたい放題で僕は忍耐強いって?
いやいや、ご心配におよばず。ほら、ラブストーリーには憎まれ役が必要じゃないか。憎まれ役が憎たらしいほど、ヒロインである僕のけなげさが引き立つってもんさ。そのためならば耐えるさ。

え?入江先生がどうしてあの産業廃棄物に巻き込まれるんだって?ああ、そこに気づいてしまったか…君、最近来たばかりの読者なのに鋭い突っ込みだね。
まあ、そうだな…そこがこのラブストーリーの悲劇的なところであるんだが。
あの産廃物チンチクリンは、入江先生の戸籍を乗っ取っているんだ。産廃物のくせに入江先生の隣に自分の名前を掲載させている、とんでもない女だ。
それは結婚というのでは…ちっがーうう!!

いいかね?入江先生はこれまで真実の愛を知らずに生きてきたんだ。自分の能力の高さがあまりにすごいゆえ、人のために役に立つことを考えた。
そこであのチンチクリンに目を向けてしまったんだ。普通の人間ならば無視するところ、入江先生はあの歩く産廃物を放置しておくことができなかった。誰かの迷惑になるならば自分が処理業者になってやろうと、それで引き取ってしまったんだ。自分の生涯を犠牲にすることを決意したんだ。

ところが!先生は僕という真実の愛の相手を見つけてしまった。しかし、すでにチンチクリンがいる。チンチクリンはこれ幸いと入江先生につきまとっている、それはもう蟻地獄に引きずりこむかのようにね。
しかし、僕たちは負けない!チンチクリンごときに屈することなく、真実の愛を貫くんだ!
道のりは長いが、決して僕たちはくじけないのだ…ヘックション!!

うう、どうも風邪がまずいことになってきた。幸い今日はスケジュールが空いている。一応診てもらうか。
うーむ、喉も痛くないし熱もないんだよな。鼻と目くらい。うむ、とりあえず耳鼻科に行ってみよう。

それにしても入江先生が耳鼻科じゃなくてよかった。入江先生に鼻の中を見られるなんて、いやそれよりもあの器具で鼻をグイッって上げられた姿を見られることが耐えられない。
入江先生の前ではいつも美しい自分でありたいんだ、それが乙女心ってもの。まあ、あのチンチクリンには永久に分からないだろうけど。

いや、でも先生がどうしても僕の鼻の中を見たい、僕の体の隅々まで見たいっていうなら別だよ?鼻だろうが耳だろうがどこでもいいよ?
まあ、肛門科に比べたら…いやいや、入江先生がどうしても肛門科に行きたいっていうならば、僕は喜んで体を献上するけどね!僕は毎日きれいに体を洗っているし。
と、話題がずれてしまった。とにかく僕の形の整った鼻に異常があると大変だ。入江先生の匂いが分からないではないか。



「ああ、これは花粉症ですね。」
耳鼻科の花田先生(容姿はいたって平凡そのもの)が僕の鼻の中を診るなり告げた。
「花粉症?」
「ええ、そうです。」
「いや、そんなはずは!だって去年まで何でもなかったのに!」
「そういう人多いですよ?突然発症するものなんです、といっても大蛇森先生もご存知ですよね?」
「いやいや、そんなことはないですって。僕が花粉症になるわけないでしょう?」
「そう言われても、そういう鼻の中なんですけど。」
「だって僕の両親も祖父母も花粉症じゃないのに?」
「そういう人も多いです。」
「そんなことないでしょうが!!ああ、わかった!あいつ、あいつにうつされた、いや汚染されたんだ!」
「花粉症は伝染しない…。」
「チンチクリンに汚染されたんだ!ねえ、そうでしょ?花田先生、そうでしょ?」
「大蛇森先生!あんたも医学部出たんでしょうが!医学部の授業で花粉症、勉強したでしょうが!」
「いやだあ!僕が花粉症だなんて!この僕が、この僕がそんな平凡な国民病になるなんてえええええ!!」


うう…花粉症、この僕が花粉症だなんて。これはチンチクリンの呪いだ。あいつが花粉を連れてきたに違いない。

「大蛇森先生、こちらがネブライザーです。」
看護師に言われ向かったのは、薬を吸入する機械の前だ。
「こちら、使われたことは?」
「ないよ。」
「では説明しますね。この機械にこれを差し込んでいただいて。」
と、看護師は二股に分かれている管を機械に差し込む。
「で、これをお鼻に入れていただいて、このボタンを押すとお薬が出て来ますから。このランプが消えたらおしまいです。」
「はあ…。」
何でこの僕がこんなもんを鼻に突っ込まなければいけないんだ。ああ、やだやだ。こんなところ、絶対入江先生に見られたくない。そう思いながら鼻に入れようとした時。

「じゃあ、入江さん。ここで吸入して下さいね。」
…なに?ま、まさか入江先生が…?

「どうやって使うんですか?初めてなので。」
あ、違った。このダミ声はチンチクリンだ。って、ちょっと待て!!
「これはこうして」と先ほど僕が受けた説明と全く同じ説明を受けながら、チンチクリンが僕の隣に座った。
「分かりました。ありがとうございます。」
そしてチンチクリンが前を向いた。

「あっ!!」
チンチクリンが僕を見て声を上げる。
「大蛇森先生、何してるんですか!」
「治療に決まってるだろう。」
「なあんだ、やっぱり花粉症だったんじゃないですか。」
「ウヒヒ」といやらしい笑いを浮かべるチンチクリン。
「違う、花粉症じゃない。(アレルギー性)鼻炎だ。」
「花粉症でしょ?」
「違う、(アレルギー性)鼻炎だ!君と一緒にするな。」
「だからそれはこっちの台詞です。」
「何だ、入江先生に見離されたのか?」
「違いますよ。入江先生はちゃんと専門の先生に診察してもらった方がいいって、それはもうすごーく、すごーく心配してくれて。」
「ああ、はいはい。入江先生も君の真っ黒で腐りきった鼻の穴を診るのは耐えられなかったってことだね。」
「ちょっと、腐りきってませんってば!」
「君の腹黒さが上へと移動して、その薄汚い鼻の穴からどす黒いものが発生しているんだね。うんうん、そんなもんは確かに診たくなかろう。」
「それは大蛇森先生のことでしょ?」
「君の相手をしている暇はない。さっさと吸入して行ってくれ。」
「先生、お先にどうぞ。」
「…は?」

冗談じゃない。どうしてこいつの前で僕が鼻の穴に管を突っ込む姿を披露しなければいけないんだ?死んだって断る!

「ほら、やりたまえ。」
「先生が先に来たんですから、どうぞ、どうぞ。」
「いや、君がいけ。」
「先生が。」
「君は鼻だけじゃなく、耳からも目からもこの薬を入れた方がいいんじゃないかね?少しは浄化されてマシになるかも知れないよ?」
僕は二股に分かれた管を振りながら言った。
「ああら、それなら先生がやった方がいいんじゃありませんこと?」
「何だと?君の声を聞かなくて済むよう耳栓はしたい気分だけどね。」
「ああ、だったらこれを耳に突っ込んで歩いたらどうです?そりゃあよくお似合いでしょうよ!」
「じゃあ君は鼻だ!鼻に突っ込んでぶら下げて歩きたまえ!牛の鼻輪のようにさぞ似合うだろうよ!」
「何ですってえ!!」
「ほうら、突っ込んでやろうか?」
「先に突っ込むのはそっちです!」
「ふざけるな!」
「ふざけているのはそっちでしょうが!!」

機械の側に置かれた管をむんずと僕はつかみ、両手でグルグルと回し始めた。お互いの間合いをはかって攻撃の機会を…。
と、チンチクリンも僕の真似をして管を両手につかみ回し始めた。くそ、生意気に僕に攻撃をしかけるつもりか!!
じりじりと、僕とチンチクリンは輪を描くように歩みを進める。さて、先に動くのはどちらなのか――。

「とどめだ、チンチクリン!」
「勝負、大蛇森!!」

僕とチンチクリンは同時に飛び上がった――!!



勝負はどうなったか。
いや、飛び上がったところで耳鼻科のベテランナースに怒鳴られたさ。
「二人とも、それでも医者と看護師ですか!!」
そりゃあもう、すごかったね。大体何で僕まで怒られなければいけないんだ。あのチンチクリンがさっさと吸入して出て行けばよかったのに。しかもどさくさに紛れて僕のこと呼び捨てにしやがった、チッ!
まったく、危うく耳鼻科出禁になるところだったよ。

「大蛇森先生。」
「あ、入江先生!」
と、ここで歩く空気清浄機の入江先生の登場だ。スーハース-ハー…深呼吸していい空気を体に取り込まなければ。

「先生?」
「あ、いや。ちょっと(アレルギー性)鼻炎でね。」
「琴子が何だかやらかしたそうで。」
「ん?ああ、そうだね。まあ、うん、チン…入江くんだからね、いつも通りってことで。」
「すみません、あいつどうしても花粉症って認めたくないみたいで。それで耳鼻科で言われれば納得して薬飲むだろうと思って俺が行かせたんです。」
なあんだ、やっぱりね。何が自分を心配してだ。あのチンチクリンめ。入江先生も手をこまねいて耳鼻科へ放り込んだってのが真相じゃないか。

「まあ吸入をしたくなかったんだろうねえ。」
というか、あいつ、絶対僕に吸入をしているところ見られたくなかったんだ。
「あんまりいい格好じゃないですからね。」
入江先生がクスッと笑う。ああ、そんな笑い方も美しい…。
「僕もやっぱり格好いいものじゃ…。」
「でもどんなものを入れていても、変わらないんですけどね。」

…え?今、何と?

「それじゃ、大蛇森先生。僕は病棟に行くので。」
「え?ああ、じゃあ。」
颯爽と白衣をひるがえす入江先生。

今、今、何て?
どんなものを入れても僕は僕。変わらないって?そ、そんな…そんな変わらない僕を先生は愛していると、そう言ってくれたんじゃないのか?
ああ、あのヤブ花田に花粉症呼ばわりされてから落ち込んでいた僕の気持ちがパーッと明るくなった。今僕の周りに漂っているのは花粉ではない、バラだ。大輪のバラが僕の周りに咲き誇っている~!!
入江先生…僕の操は一生、あなたのものです!!



************

まったく琴子の奴にも困ったものだ。どうしてああやって大蛇森先生とやりあうんだろうか。
耳鼻科に出入り禁止にされかけたって、医療関係者として恥と思えっていうんだ、ばあか。

大蛇森先生に敬意を示してネブライザーを譲ろうとした?ったく、一台しか機械がないわけじゃないのに、そんな見え透いた嘘を言いやがって。お前が大蛇森先生に示すのは拒否反応で敬意なんかじゃないのはお見通しだって。
ま、管を鼻の中に突っ込む姿をからかわれたくなかったんだろうが。恐らく大蛇森先生もお前に見られたくなかったから、あんなくだらないバトルになったんだろうが。

俺に一番見られたくない姿だと、家に帰ってもグチグチ言っていたけど俺は逆に見てみたいもんだけどな。お前が鼻に何を突っ込んでいたってお前はお前で可愛いことに変わりはないんだから。
…と、俺、ついこの部分をさっき口にしてしまったか?まずいな、気を引き締めないと…ん?そういや大蛇森先生が何だか頬を上気させて俺を見送っていたような。
…まさか変な勘違いしてないだろうな。ま、いっか。適当に勘違いしてもらっていた方が琴子とバトルを繰り広げることもないだろう。




☆☆☆☆☆
ねーさんさんに「マスク大蛇森も待ってます」と以前言っていただきまして。
でも花粉症を認めないのにマスク、絶対しないなという仕上がりになってしまいました(笑)
ねーさんさん、貴重な一言をありがとうございました!

ああ、そうだ、マスク大蛇森書くなら今じゃん!と思って。
自分の経験をもとに書いてみました。いや、本当にあの姿だけは他人に見られたくないな~といつも思ってました(笑)






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水玉

Author:水玉
『イタズラなkiss』のほかには『ゴルゴ13』が好きです☆
多数あるイタキスの二次小説の中で邪魔することなく、ひっそりとマイペースで我が道をゆきつつ生息しております。
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当ブログは、『イタズラなkiss』の二次創作をメインとしておりますが、時折管理人の趣味や日々の出来事についての記事も書いております。

原作者様や関係各位とは一切関係ありません。

二次創作については、いわゆる原作の隙間をぬった作品もありますが、主人公以外のキャラクターをメインとしたものや オリジナルキャラクターが出てくるものもございます。

そして、原作と違った時代(平安や明治やその他の時代を舞台にしております)、異なる設定(主人公を医者と看護師じゃない職業にしております)で書いてあるものが多いですが、原作を冒涜しているつもりは全くございません。

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