日々草子 篤志家な後輩

篤志家な後輩

あけましておめでとうございます。
昨年は色々とお気づかいいただき、ありがとうございました。
今年、さっそく風邪スタートでありますがボチボチとこのブログも続けていけたらいいなと思っております。
本年もよろしくお願い申し上げます。

☆☆☆☆☆











今日もまた、あの後輩に多額の報酬が舞い込む手術が行われる。
「手術は第5手術室で。」
「え?何であそこ?」
場所を聞いた僕は不思議に思った。だって今日は手術の予定はほとんどといっていいほど入っていない。あ、手術室っていうのは近い方から第1、第2って番号が振られているんだけど、それでもなんで第5?
「入江先生の御希望なんです。」
手術に入る智子くんがニコッと笑った。ふうん、あいつの希望ねえ。何だ?ラッキーナンバーが5とか?結構縁起担ぐタイプなのかもしれない。

ということで、手術が始まった。
といっても執刀医は入江、助手が僕(悔しいが仕方ない)、介助に智子くんと鴨狩くんというとっての少人数の手術。

そして順調に進んでいく手術…うーん、これが普通なんだけどさ、何か落ち着かないんだよな。
だって入江とこの愉快な仲間たち(?)だぜ。何も起こらないってのが不思議だよ。

と思ったら、突然頭上よりスピーカーを通して声が聞こえた。

「入江先生…あれほど私がこの手術から手を引くよう言っても決行したんですね。」

喋っているのは見た事のない男だ。この病院の関係者ではない。え?ちょっと、どうやって入った?いや、それより、こいつ誰?

「俺は医者として救うべき命を救っているだけだ。」
と、手を止めることなく答える入江。いや、正しくは救うべき命に多額の報酬がからんでいる場合だろ?

「ふん!そんな生意気なことを言っているのも今のうちだ。」

だからあんた、誰なんだ?

「この手術室はすでに我々の手に落ちた。我々に逆らったことをとことん後悔したまえ、ワハハハハ!」

不気味な笑い声と共に、突然辺りが真っ暗になった。

「さあ、この状況で手術を続けることができるかな?ワハハハハ!」

だんだん遠ざかっていく笑い声――。

「おい、どういうことなんだよ、入江!」
さすがに真っ暗になっては何もできないじゃないか!

「この患者と敵対しているマフィアですね、あれ。」
「いや、日本語しゃべってたじゃん!」
「マフィアが日本語喋っちゃいけない決まりはないでしょう?」
「妙にうまい日本語だったけど…いや、こんなことにこだわってる場合じゃなかった。」
「それはあなたが英会話教室を一日で追い出されたひがみですね。」
「だからそれは…って、言葉問題は置いておいて!どうするのさ!自家発電、自家発電は!?」
「あいつらが全部破壊していったんでしょう。」
「はあ!?」
何しれっと怖いこと言ってるんだ、こいつ。動じないにも程がある。
「どうすんの、電気止められたら手術できないよ!」
入江の手もさすがに止まっている。やはりこいつもピンチに陥っていると自覚しているのか?

「…西垣先生。」
暗闇の中から智子くんの声が聞こえた。よく目を凝らすと彼女の肩が小刻みに震えているじゃないか。
そうだ、入江じゃないんだから君は怖いはずだよね?いくら血みどろの現場が大好物っていったって、こんな状況、怖いはず。
「大丈夫だよ、智子くん。僕がついてる…。」
「…ワハハハって笑う人、本当にいるんですね!!」
「…え?」
すると小刻みに震えていた智子くんの肩が大きく上下しはじめた。
「だって、あんな笑い方する人ってテレビの中だけかと思ったから!まさか、まさか現実にいるなんて!!」
そういうと爆笑する智子くん。
「あの、君?」
「何だよ、俺も笑うのずっと我慢してたんだぜ!!」
続いて聞こえたのは鴨狩くんの声だった。
「いやマジで受けたよな!あんな笑い方する奴は時代劇の悪代官くらいだと思ってた!」
そして鴨狩くんも大爆笑。二人の爆笑が響く暗闇の手術室…。

そうだよな。僕が間違っていたよ。
こいつらも入江の手下だった。こんなことで動じないっていうか、現実に起こり得ないことを普通に受け入れる、そう、尋常じゃなかった。

「鴨狩、そろそろ笑うのはやめてくれないか。」
「あ、そうでした。すみません。」
ヒーヒーと腹を抱えて笑いながら、鴨狩くんは何とか真顔を取り戻した。
と思ったら、
「では準備してきます。」
と、言い残し手術室を出て行った。準備って何?カミカゼでも起こすとか?

どれほど暗闇の中で待たされただろうか。
「準備できました。」
鴨狩くんが戻って来た。が、一人ではなかった。

「ごっつぁんです!」
と野太い声が今度は手術室に響き渡る。この挨拶といえば…。
「どすこいクラブ?」
「看護学部相撲同好会です。」
あきれたように訂正する鴨狩くん。いや、いいじゃないか。似たようなもんだろ?
と、僕がそんなことを思っているうちに次から次へとどすこいクラブ、じゃない相撲同好会の面々が中へ入ってきた。あっという間に手術室の人口密度が高まった。

「じゃ、みんな位置について。」
「どすこーい!」
いつか聞いた掛け声とともに巨漢の集団が手術室の壁際、僕らを囲むように立った。
「始め!」
鴨狩くんの声で何が始まったかと思ったら…。

「どすこーい!」
「どすこーい!」
野太い声と共に、彼らは手術室の中をグルグルと回り始めた。しかも押し出しのポーズで!

「どすこーい!」
「どすこーい!」

すると驚くことに、今まで真っ暗だった手術室に明かりがともったじゃないか!

「え?どういうこと?」
「発電床ですよ。」
いつの間に定位置に戻った鴨狩くんが説明してくれた。
「発電床?」
発電床、それは床を歩くことにより発電する仕組みのものだ。
「そうです。この間の工事でこの第5手術室に取り入れておいたんです。」
「どすこーい!」
「入江先生、万が一のことを考えてこの手術室を選んだんですよ。」
「どすこーい!」

二人が説明している間にも「どすこーい」「どすこーい」の声は響き続ける。

「いや、その考えはすごいんだけど…でもこの声、ちょっと邪魔というか?」
僕がそう言った途端、「どすこーい」の声と共に感じていた振動がピタリと止んだ。
と同時に、再び真っ暗になる手術室。

「ちょっと!余計なこと言わないで下さい!」
「だったら西垣先生一人で発電床歩いて電気作って下さいよ!」
途端にわき上がる鴨狩くんと智子くんの非難の声。
「ご、ごめん!あの…続けて下さい。」
鴨狩くんが顎をクイッと動かすと、再び手術室は野太い「どすこーい」に包まれた――。

僕も手術に集中しなければと、前の後輩を見た。
おい、今溜息ついただろ?マスクに隠れていても、その目で分かるんだ。どうせまた僕にあきれたんだろ?
ああ、もういいさ。手術やってやるよ!
「智子くん、ドス!」
「え?」
あれ?僕、今、何て言った?
「…メスでしょ?」
またもや冷たく突き刺さる後輩の声。
「西垣先生、メスをどうぞ。」
何事もなかったようにメスを渡してくれる智子くん。

どすこーいっ!
どすこーいっ!

こんな掛け声聞かされてたら、メスをドスって言い間違うのも無理ないだろ!?

どすこいが響くこと2時間(さすが相撲同好会だけに体力は大したもんだ)、手術は無事に終わった。それはあらゆる危機を予測していた入江の用意周到さゆえのことなのか、それともどすこいクラブのおかげか。僕に判断はできない。

ともかく終わった、終わった。
あ、例のマフィアは手術室の電源を落とすのに夢中になっていたため、逃げ道確保はお留守だったせいであっさりと捕まったらしい。

「入江くーん、お疲れ様!」
そして今日も何も知ることのない無邪気な琴子ちゃんがあいつに抱きつく。もちろん、そのまま仮眠室へ…。
「ああぁぁぁ!!愛の初場所!!」

…琴子ちゃんまでどすこいクラブの影響か?もういいや。愛の初場所だろうが愛の綱とりだろうが好きにやっちゃって。

やれやれ、僕はひとりさびしく医局へ戻る。と、誰かが持ち込んだのか医学部の募集要項なんてもんが落ちていた。
「こんな変てこな学校、来る人間がいるのかねえ。」
僕はページをめくった。医学部医学科…看護学科…ん?
僕は目を疑った。眼鏡を外してまたかけて確認する。うん、間違いない。

斗南大医学部看護学科の募集方法…一般入試。うん、これは普通。推薦入試、うん珍しくない。ただ最後のこれは一体?

『特別推薦入試:どすこい枠 若干名』

え?どういうこと?ど、どすこい枠!?
僕はよく目を見開いて項目を読んだ。今後看護師は力が必要となる。そのため腕力体力に自信のある、当大学の看護学部相撲同好会に入部を希望する者を『どすこい枠』として特別に募集する?え?ちょっと、これどういうこと?

『どすこい枠による入学者は、篤志家の寄付により入学金および授業料を無料とする』

…ちょい待て、おい。この『篤志家』ってのは間違いなくあいつのことだろ?
え?篤志家?ああ?あいつか?あの大金もらって手術しているあの後輩が篤志家だあ!?
なるほど、どすこいクラブ(こうなったら意地でも相撲同好会なんて呼んでやらねえ!)のタニマチはあいつなわけね。

ていうかさ、危機を予知して準備するのは結構だけど、そんなことする必要のない、まっとうな医師として暮らすつもりはないのか?

もう今日はさっさと帰ろうと、残った仕事を片付けて僕が医局を出た時、愛の大一番を取り終えた琴子ちゃんが、ヨロヨロと花道…じゃない、廊下を歩いて行くのが見えた。
琴子ちゃん、今年も君は…そうやって肉体要員として頑張るんだね。それで君が幸せなら…僕は何も言うことはないよ、うん。



☆☆☆
と、こんな感じで書いていただけたらいいと思います、S様(笑)。簡単でしょ?








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『イタズラなkiss』のほかには『ゴルゴ13』が好きです☆
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そして、原作と違った時代(平安や明治やその他の時代を舞台にしております)、異なる設定(主人公を医者と看護師じゃない職業にしております)で書いてあるものが多いですが、原作を冒涜しているつもりは全くございません。

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