日々草子 体を動かし続ける野獣

体を動かし続ける野獣

たくさんのコメント本当にありがとうございます。
申し訳ございません!ちょっとお返事をする時間がとれません!でも全部嬉しい気持ちで隅々まで読んでます。本当にありがとうございます。
お返事ができない失礼な状態ですが、それでも反応は欲しいのでできれば感想をお気軽にお寄せ下さると嬉しいなという勝手なお願いをまたもや、してしまします。

久々のこの前書きです。
今回も快く許可を下さった千夜夢さんに感謝いたしますm(_ _)m


注意!!

入江くんのキャラが相当崩壊しています。
下品なギャグも寛容な方のみ読み進めて下さい。











「まあ、今日も数値が下がらなかったんですねえ。」
外来にて入江直樹の前で、安藤という老婦人の患者が検査結果を前に溜息をついた。
「まあそれほど気にする高さではありませんよ。」
直樹は気休めで言っているわけではない。実際、心配する程度ではない。
「そうですね、やはり運動をしていただければ…。」
健康を及ぼす可能性の高い体つきの安藤にそう言おうとしたら、
「やっぱりあの“しっぽ”に触らないとだめなのね!」
直樹のアドバイスを遮って安藤は主張した。
「しっぽ…?」
「あら?入江先生ご存知ありませんの?」
外来がイケメン医師であることから顔色も分からないほど念入りなメイクをして来ている安藤が、鼻息荒く直樹にその顔を近づけた。
「それはね…。」



「…わし、やっぱりそろそろあそこへ行く頃合いなんでしょうかねえ。」
安藤の次に入ってきたのは、井上というこれまた高齢の患者であった。
「井上さん、そんなことありません。」
「いやいや先生、気休めはよしとくれ。」
杖を手に井上は大きな溜息をついた。
「わかっとるんじゃ。わしはもうお迎えが近い。そろそろ極楽浄土へ行く日が来るんだ。」
「まだまだそんな日は来ませんよ。」
こちらも安藤同様、数値も心配するようなものではない。それなのに気弱になっていて診察のたびに「もうあの世が近づいている」「この世に未練はない」と繰り返すのである。
「大丈夫、井上さんはまだ長生き…。」
「やっぱり、“しっぽ”に触れねば延命はできないのかも。」
ここでもまた「しっぽ」である。安藤からその話を聞いたばかりの直樹が今度は溜息をつきそうになったが、患者の手前グッと堪えた。
「井上さん。」
「はい?」
「…“とんにゃんくんのしっぽ”を握ったら病が消えるというのは、ただの噂ですから。」



「とんにゃんくん」――それは斗南大病院に最近登場したゆるキャラマスコットである。頭はブタ、体はネコ、「豚(トン)」と「ネコ(ニャン?)」を足して「とんにゃんくん」という、捻りも何もない単純なキャラ。それを考え出したのは直樹の妻、琴子であった。
先日小児病棟にて行われたお披露目にてこのキャラの中に入ったのは直樹。そしてひょんなことから直樹はその「とんにゃんくん」の前方にしっぽを生やしてしまったのである。それに子供たちは大興奮し、散々な目に遭った記憶は直樹の中に永遠に封印したいものだった。

が、この「とんにゃんくん」の「しっぽ」がいつしか勝手に一人歩きしてしまったようである。どこをどうやったらそう伝わったのか、高齢者を中心とした患者の中で「とんにゃんくんの第二のしっぽ」は滅多に拝めない。だからそれを見つけて握ったら病はたちまち消え去るというご利益めいた噂が広まってしまっているという。



「ったく、しっぽを握っただけで病気が治ったら医者はいらねえっての。」
何かにすがりたいという気持ちは当然分かる。それを支えに治療に前向きになってくれたら直樹だって文句は言わない。しかしその支えにしようとするものが自分の…だと思うととても温かい目で見守ることはできない。
「そもそもこれは琴子のためだけに存在しているわけであり…」と廊下を歩きながら言いかけたところで直樹はニヤッと笑った。
「俺ときたら神聖な職場でふしだらなことを。」
いけない、いけない。でも考えてしまったことは仕方ないので今夜は琴子を相手に「第二のしっぽ」で遊ぼうかと思った時だった。

「いたいた、入江先生!お願いします!」
廊下の前方より幹が息を切らして走ってくるではないか。急変か?直樹はたちまち頭を医師モードに切り替えたのだが…。



「…二度とやらねえって言ったよな?」
幹に連れて来られたのは、小さな部屋だった。そしてそこにあるのは「とんにゃんくん」の着ぐるみ一式。
「お願いします!駄目なんです、子供たちの見る目がすっかり変わってしまって!」
もうあんな騒ぎはごめんだと直樹は二度と着ぐるみに入るつもりはなかった。幹もそれなら仕方ないと、他の人間に一度頼んだという。
が、初回で「とんにゃんくん」の見事なアクロバットを見てしまった子供たちは、もはや普通の着ぐるみショーでは満足できない状態となり不満爆発なのだという。
「琴子も楽しみにしているんですよ?」
「琴子が?」
「はい。もう一度あの時のとんにゃんくんに会いたいねって子供たちと話してました。」
「そうか、琴子が…。」
ならば仕方がない。琴子のために協力してやろう。直樹は渋々着替えを始めた。



「はあい、みんな!とんにゃんくんがまた遊びに来てくれましたよ!」
琴子の掛け声とともに「とんにゃんくん」がホールに入った。
「わあ、とんにゃんくん!」
「とんにゃんが来たぞ!」
初回よりは大分反応がいいようである。キモキャラに慣れたというところか。
しかしすぐに子供たちの視線がどこを向いているか、直樹は気づいた。
「…第二のしっぽがない。」
「ええ?何で?」
まさか、こんな子供たちまで第二のしっぽを握ったら願いが叶うとか思っているのか?子供たちの願いならば聞き届けてやりたい思いもあるが、だからといって一斉に握られたらどうなるか。入江汁ぶしゃーっどころか、二度と琴子を喜ばせられなくなる可能性もあるではないか。
「もう、そんなものはありませんって言ったでしょう?」
そこに琴子が割って入ってくれた。製作者としてそんなものを作った記憶がないのだからそう主張するのはもっともである。
「みんなの見間違いだよ?」
「そんなことないよ、だってちゃんと見たもん!」
「そうだよ!」
「琴子ちゃん、知らないんでしょ?」
「何を?」
子供たちに集中攻撃された琴子は聞き返す。
「とんにゃんくんの第二のしっぽを引っ張ったら “スーパーとんにゃんくん”に変身するんだぜ!」

…子供は大人より容赦がないことを、直樹は改めて知った。握っただけで病が治ると信じているのはずっと可愛い方である。しっぽを引っ張る?スーパーとんにゃんくんになるだと?確かにスーパーとんにゃん、いやスーパー直樹になるだろう。髪も逆立つくらいに。だがそんなことされたらもはや男としてどうなるか。

――絶対に第二のしっぽを出すことは阻止せねば!

直樹が固く心の中で誓った時である。

「ウキーッ!!」
これまた二度と聞きたくない声が、ホールに響いた。
「あ!おサルさんだ!」
そう、ホールに飛び込んで来たのは一匹の猿だった。
「ええと…確か来夢って名前だったかしら?」
幹が呟くとおり、猿の名前は来夢、アニマルセラピーの講習まで受講した、直樹の前にちょいちょい姿を見せる、琴子狙いのとんでもない奴である。
「ウキーウキー」と言いながら、来夢はまずはご挨拶とばかりにバク転を披露した。
「うわあ、すごい!」
子供たちは第二のしっぽ、いや「とんにゃんくん」のことなどすっかり忘れ拍手喝采である。
「ウキッ!」と機嫌をよくしながら、来夢はちゃっかりと琴子に抱き付いた。「ウキ~」と頬を琴子のぺったんこの胸に寄せた。
「あらあら、甘えん坊ね。」
琴子が突くと調子に乗り来夢はその胸に摺り寄せる。が、その目はしっかりと直樹に向けていた。
「うふふ、今日はおしゃれさんなのね。」
琴子が言うとおりだった。今日の来夢はハットをかぶっている。
「ったく、サルのくせに色気づきやがって」と直樹は「とんにゃんくん」の中で呟いていた。
「ウキ!」
「え?これってCD?」
「ウキキ!」
賢い来夢は持っていたCDを琴子へ渡し、部屋の片隅に置かれたプレーヤーを見た。
「かけろってこと?」
来夢を抱いたまま、琴子はCDをセットした。流れて来たのは『Billie Jean』、マイケルジャクソンである。といっても、子供たちはほとんど知らないだろう。
来夢は曲に合わせ見事なステップを披露し始めた。かぶっていたハットをヒラリと投げる。
「きゃー!おサルさん、素敵!」
と琴子が声を上げた。それを見て「チッ!」と直樹は「とんにゃんくん」の中で舌打ちをする。

「え?ムーンウォークまでできちゃうの?」
幹が驚くのも無理はなかった。サルのくせにムーンウォークまでばっちりこなすのである。
「すごい!」
「最高!」
マイケルを知らない子供たちも大歓声である。琴子も手を叩き続けているのが直樹は面白くない。

来夢のダンスに皆が夢中になっていた時、幹はふと視線に気づいた。それを辿ると、とてもゆるキャラとは思えない貫禄で壁につまらなそうに寄り掛かっている「とんにゃんくん」が、これまたゆるキャラとは思えない、手のひらを上にしてクイクイと自分を呼んでいるではないか。
「な、何か?」
「お前…を持っているよな?」
ゆるキャラとは思えない声が幹の耳に届く。
「…持っていないとは言わせないぞ。」
「…持っています。」
「すぐ持って来い。」
ドスの利いた声に背中を押され、幹はホールを飛び出しマッハのスピードでロッカールームへと向かった。

幹が戻って来たのと、来夢が二曲目『Bad』を踊り終わったのは同時であった。来夢を取り囲む子供たち。そしてそこから直樹を小馬鹿にした顔を向ける来夢。
直樹はそれを無視し、まだハアハアと息を上げている幹に顎を動かした。幹は疲れた体を引きずりながら持ってきたそれをプレーヤーにセットする。


「あれ、これは?」
「聞いたことある!」
今度流れて来たのは、エイベックス的なサウンド。子供たちがどうしたのかと顔を動かすと…。

「…すげえ!!」
大きく体を動かす「とんにゃんくん」がそこにいた。そしてその曲は子供たちも聞いたことがあるのか体を動かす。
「…すごい!」
CDを持っていることを言い当てられた幹も口をあんぐりと開けていた。
踊っているのは「とんにゃんくん」一人のはず。それなのにと幹は目をパチパチと瞬きをした。おかしい。「とんにゃんくん」が7人いるように見える。7人の「とんにゃんくん」がこの歌声の主であるグループ――三代目JSoul Brothersのそれぞれのパートを踊っているかのように見えるのだ。
「もしや…。」幹はゴクリと唾を飲み込んだ。「これぞまさしく、“ひとり三代目JSoul Brothers”!!」
とてもゆるキャラとは思えない機敏な動き。サビでは子供たちも「OOH!OOH!」と声を合わせる。何といっても最高潮になったのは…。
「すげえ、ランニングマン!!」
太い腕を突き出し、太い足を軽やかに動かす「とんにゃんくん」の見事なランニングマンに子供たちは大喝采である。真似をし出す子も出てきて、琴子と幹はそれぞれ安静にさせるのに苦労するほどであった。

「確かにすごい、すごいのだけど。」
幹もそれは認める。あの巨体であの動きはなかなかできるものではない。しかし、こう思わずにいられなかった。
「できれば、着ぐるみを脱いだ入江先生の状態でランニングマンを見たかったわ…。」

大盛況のうちに「とんにゃんくん」の“ひとり三代目JSoul Brothers“は終わった。最後のポーズを決めたとき、絶対直樹はドヤ顔をしているに違いないと幹は思った。



「すごい!とんにゃんくん!最高!」
感激したのは子供たちだけではなかった。琴子も拍手しながら近づいて来た。そして「とんにゃんくん」の体にムギュッと抱き付いた。
「まずい!」
抱き付かれた途端、現れたのは…。

「出たぞ!第二のしっぽ!」
「つかめ、ひっぱれ!!」
ニョキニョキと現れた第二のしっぽを子供たちが見逃すはずはなかった。
「みんなでつかんでひっぱるぞ!スーパーとんにゃんくん!」
冗談じゃない!そんなことさせるわけにいかない!「とんにゃんくん」は琴子を突き飛ばしホールから逃げ出す。
「待て!」
「くそ!逃げ足の速い奴!」
子供たちの声を後ろに聞きながら、直樹はできるだけ遠くへ逃げる。

「こ、ここまで来れば…。」
もう大丈夫だろうと足を止めた直樹だった。が、その後ろのしっぽをガシッと誰かに掴まれた。
「会いたかったわ、とんにゃんくん!」
何と、診察を終えたはずの安藤がそこにいるではないか!
「あ、これが“幸せのしっぽ”ね!」
安藤はめざとくしっぽを見つけ、手を伸ばす。直樹はバッと後ろに飛び去った。そして傍の階段を駆け上がる。
「待って!しっぽ!待って!」
大きな体とは思えない機微さで安藤が追いかける。何と階段を一段、いや二段飛ばしで追いかけてくるではないか!
「あんた、普段からそれくらい運動しろ!!」
いくらいっても体を動かそうとしなかったくせにと思いながら直樹は必死で安藤から逃れるため走った。

「何とか撒いたか…。」
さすがにこの着ぐるみではパワーが落ちるというもの。ハアハアと息をしていると、
「君が…とんにゃんくんかね?」
「井上さん!!」
今度は井上の登場である。もちろん、井上もしっぽを見つけ目を輝かせた(というか、あれだけ走ってもしっぽは引っ込まないのか?)。
「このしっぽに触ればわしも長生きできるはず…。」
しわしわの手を伸ばす井上から直樹は逃げ出す。が、井上は杖を突いている。安藤ほど必死にならずとも…と少し走ったところで後ろをチラリと見た。
「待たんか!」
何と井上は杖を放り投げ、見事なフォームで後を追いかけて来た。そのフォームは陸上短距離選手そのもの!
「待たんか!“ハヤブサの三郎”と呼ばれたわしから逃れられると思うな!」
「何だ、それは!!」
これは安藤よりも強敵である。直樹は必死で走った。
「待て!!」
「あんたが近づいているのは極楽じゃなくて…東京五輪の間違いだ!!」
この分だと本当に出られるのではないだろうかと思いながら、直樹は病院中を逃げ回った――。



「あれれ?」
その晩、ベッドに入っていた直樹を見て琴子は首を傾げた。
「入江くん、ちょっと痩せた?」
シュッとなっていると琴子は直樹の頬に手を伸ばす。
そりゃあ痩せるだろうと直樹は思った。あんな重い着ぐるみでランニングマンを披露したかと思ったら病院中をランニング、しかも全速力で走り回ったのだから。
「やだ、激務すぎるんじゃない?」
「…なら癒してくれる?」
またもや散々な一日となったのは一体誰のせいかと、直樹は琴子をベッドへ引きずり込み、これまた素早い動作でパジャマを脱がせた。
「俺も“ハヤブサの直樹”ってとこかな?」
「え?」
「何でもないよ。」
冗談じゃない、あれくらいでへたるなんて外科医の体力なめるなと思いながら直樹は笑った。
さて、スーパー直樹になる時間だ。そして…成長した「しっぽ」で琴子を恍惚の世界へ誘おうではないか!




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お、お腹が・・・(爆笑)

笑いすぎてお腹がよじれちゃいますヾ(≧∀≦*)ノ〃

いったい何やってんだ、直樹は~(笑)
それにしても着ぐるみ来ててもハッキリわかっちゃう直樹の第2のシッポ。どんだけ立派なのか見てみたい気も。。。(/▽\)♪キャッ
子供追いかけられ、おばはんに追いかけられ、ジジイに追いかけられで災難な入江くん。もう琴子ちゃんにしっかり癒してもらわないとね~。
それにしても、結婚して随分経つんだから、いちいち抱きつかれたくらいでおったててんじゃないよ、まったく~┐('~`;)┌

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プロフィール

水玉

Author:水玉
『イタズラなkiss』のほかには『ゴルゴ13』が好きです☆
多数あるイタキスの二次小説の中で邪魔することなく、ひっそりとマイペースで我が道をゆきつつ生息しております。
そっと見守っていただけたら嬉しいです。

※当ブログに掲載されている文章及びイラストの無断転載・使用はご遠慮下さい。

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当ブログは、『イタズラなkiss』の二次創作をメインとしておりますが、時折管理人の趣味や日々の出来事についての記事も書いております。

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二次創作については、いわゆる原作の隙間をぬった作品もありますが、主人公以外のキャラクターをメインとしたものや オリジナルキャラクターが出てくるものもございます。

そして、原作と違った時代(平安や明治やその他の時代を舞台にしております)、異なる設定(主人公を医者と看護師じゃない職業にしております)で書いてあるものが多いですが、原作を冒涜しているつもりは全くございません。

二次創作が苦手という方及び原作のイメージと合わないと思われる方はどうぞお引き取り下さいますようお願いいたします。

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