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2015.01.28 (Wed)

永遠に君を愛す 47

お待たせしてすみませんでした。
あともう一つお詫びを。最近忙しくてコメントのお返事ができずに申し訳ありません。けれど全て読ませていただいております。感想をいただけて励みになっているし、本当に嬉しいです。心のこもったコメント、いつもありがとうございます!!
歯のご心配もありがとうございます。
神経抜くのか…嫌だな~嫌だな~と思いながら先日、二度目の診察へ行ったら…「この間もう抜きましたよ!」と言われて驚きました(笑)初診でそこまでやっていたとは!あの時間でそこまでやったなんて、先生の腕にびっくりでした(笑)

☆☆☆☆☆



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そのホテルに到着しても、重樹と紀子はどこか不安そうなままであった。
「そんなに心配しなくても。」
直樹はクスッと笑った。
「本当にいいのね、こういうお席を設けても。」
紀子は心配そうに何度も繰り返していた。
「そんな顔をしていたら、せっかく誂えたばかりの着物が台無しじゃないの?」
珍しくそんなことを直樹に言われても、紀子の顔は晴れないままである。

「これは入江社長。」
ホテル内にあるレストランにて待ち構えていたのは、重樹と同じくらいの年齢の男性とその妻であった。
「まあまあ、噂以上にご立派な御子息様でございますね。」
訪問着を美しく着こなしている夫人に笑いかけられ、紀子は礼を言う。
「本当にこのような場に仲人として出席できることが嬉しいですよ。」
今日は直樹の見合いであり、この夫婦は仲人であった。

琴子が夫と共に病院へ姿を見せるようになり、早二ヶ月になろうとしていた。このままではいつまで経っても琴子へ執着してしまう。そのためには琴子同様、自分も新しい人生を見つけねばという気になっていたところ、ちょうど両親より見合い話を持ちかけられたのだった。
渡りに舟とばかりにこの話を承諾してみたものの、肝心の相手について直樹はろくに話を聞いていなかったことに気付く。さて、相手はどんな令嬢だったか。重樹が会社の付き合いを通じて知り合った人の紹介だったような気はするが。

「遅れて申し訳ありません。」
やがて先方が現れた。両親に付き添われてやってきたのはそこそこ可愛い女性であった。華やかな振袖で周囲がパッと明るくなるのを感じる。
仲人が両家を紹介し、いよいよ見合いが始まった。

「直樹くんは京城帝大医学部を首席で卒業して、その後軍医として満州に赴任…復員後は都内の病院に勤務を…。」
記憶喪失だったことは家族しか知らないことなのでそこは省略されている。なので経歴に相手の一家は素直に感嘆の声を上げていた。
「知栄子さんはこの春学校を卒業されたばかりで、ご趣味は洋裁とお料理。お茶とお花のお免状をお持ちで…。」
そういえばそのような名前だったなと、直樹は今頃思い出して来た。その知栄子嬢は直樹と目が合うと赤くなって俯いた。
ふと、直樹の脳裏に昨夜の夢が蘇った。いつものあの、琴子の夢である。琴子と再会してからというもの、その夢を見る頻度が増えつつあるのが苦しかった。しかも最近は声まで付いてくる始末。せっかく忘れていたのにと直樹は溜息をつきたくなるのを堪える。何とか振り払おうとするが、どんどんはっきりとしてくる。

「直樹、直樹。」
新川と琴子の裸体と戦っていると、紀子の声が聞こえた。
「あちら様があなたにご質問だとお待ちなのですよ?」
「え?ああ、すみません。」
前を見ると知栄子が恥ずかしそうにしている。
「何でしょうか?」
「あの…直樹さんのご趣味は何かと。」
いかにも深窓の令嬢というような消えそうな声だった。
「趣味ですか?」
さて困った質問だと直樹は思った。これまで趣味らしいものを持った覚えがない。
「直樹さん、お休みの日は何をされていらっしゃいますの?」
仲人夫人が助けに入った。
「休みですか、そうですね…大抵家で医学書を読んでます。」
「いや、無趣味な息子で恥ずかしい。」
重樹が「ハハハ」と笑ってその場を取り繕う。
「いやいや、さすが医者です。ご立派なことだ。」
知栄子の父親が心から感心した様子を見せると、母親と本人も頷いた。

「直樹さんから、知栄子さんにご質問は?」
仲人夫人が直樹にも勧めた。質問と言われてもと直樹は困った。見事にこの目の前の令嬢に興味がわかない。趣味は先程聞いたばかり。年齢も知っている。他に何を知る必要が?と考えているうちにまた、あの琴子の姿が浮かんで来た。ああ、本当に煩わしいことだと直樹は嫌になる。
「直樹さん?」
「…その振袖ですが。」
「はい?」
一体何を訊かれるのかと、知栄子は期待と不安が籠った目を直樹に向けた。
「…脱いだら、それなりの体で?」
「…え?」
直樹の言葉に、知栄子とその両親、仲人夫妻、そして重樹と紀子の目が点になったのは言うまでもなかった――。



「…すみません。」
帰りの車中にて直樹は両親に謝った。
「いや…まあ…言ったことはしょうがないな。」
重樹はそう言うしかなかった。
「息子は医学しか頭になくて」「毎日患者の体を見ているのでどうしてもそちらに」と一生懸命取り繕ったことと、趣味が医学書を読むことと先に言っておいたため、医者とはそういう人種かと先方は何とか納得したようだった。しかし、この話が流れることは間違いないだろう。
車は入江家へ戻る途中で止まった。これから直樹は医学関係者とのパーティーなのである。直樹を下ろして、再び発進した。
「ウフフ…」紀子が笑い声を立てた。
「どうした?」
「何か久しぶりに楽しかったと思って。」
「息子の縁談が破談になったのに?」
「あれくらいのユーモアを受け入れないと、お兄ちゃまの相手は務まりませんわ。」
「いや、ユーモアで片付けていい話か?」
「ええ、そうですよ。」
そのユーモアを受け入れてくれる相手は…その名前を言いそうになった紀子は口を噤んだ。



色々な病院から医者や理事などが集まっている、なかなか豪華なパーティーだった。知り合いを作っておいた方がいいと上司に勧められ参加した直樹は、顔触れを観察している。
と、最近あの病院で若いのに腕のいい医者だと話題になっている青年が来ていると知った者たちが直樹の周囲に集まり出した。直樹の方も読んだことのある医学書の著者や論文の執筆者と顔を合わせることになり、話に花を咲かせた。
もっとも直樹が会話を楽しんだのは同業者が主で、経営に携わっている実業家などとはあまり関わりたくはなかった。直樹をいい条件で引き抜こうとするのがあからさまであったし、金のことを話題にするのも嫌だった。
最新の医学知識などを交換した後、直樹は少し休もうとホテルのバルコニーに出た。冬の空気は澄んで、シャンパンでほてった体に心地よかった。

「…すっかりお医者様になられたのですね。」
聞き覚えのある声に直樹は驚いて振り返った。
「お久しぶりです、直樹さん。」
シフォンのドレスをまとった沙穂子が、変わらない美しい笑顔を直樹に向けていた。

「そうですか、大泉会長の代理で。」
自分も世話になったあの病院の理事の一人である沙穂子の祖父もこのパーティーに招待されていたのだが、仕事で出席できずに代わりに沙穂子が来たのだという。そういえば西垣とも最近会っていないなと直樹は思った。今夜も来ていないようだと思っていると、
「西垣先生は他県の大学病院へ出張されているそうですわ。」
と、直樹の考えを素早く察知した沙穂子が答えた。

「他のお医者様とお話されている直樹さん、とてもご立派でした。」
「そんなことは。」
バルコニーには直樹と沙穂子しかいない。そんな二人を美男美女でお似合いだと室内では噂されているようだった。
「やはり直樹さんの天職でしたのね。」
「それはどうか分かりませんが、医者はなりたくてなった職業ですので。」
仕事はやりがいがある。それは間違いない。
「そんな直樹さんに、きっと琴子さんも嬉しいでしょうね。」
言おうかどうしようか迷った末に、沙穂子はその名前を口にした。
「琴子さん、お元気でいらっしゃいます?」
沙穂子は直樹が琴子を探し出し結婚していると思っていた。
「…多分、元気なのでは?」
「え?」
意味深な直樹の答え方に、沙穂子はその顔を仰いだ。
「多分って、だって…。」
「一緒に暮らしていません。あちらは別の男と結婚しましたから。」
「そんな!」
沙穂子の美しい目が驚きで大きく見開かれた。直樹は苦笑しながらシャンパングラスに口をつける。
「本当…ですか?」
「ええ…風の噂でいい人とめぐり会ったと聞きました。幸せなようです。」
まさか自分でその現場を目撃したとは直樹には言えなかった。
「そんな…酷い…。」
沙穂子は目を伏せた。
「仕方ないことです。酷いことをしたのは俺の方ですし。あの状態ではあちらがいなくなるのも無理はありませんから。」
「でも…直樹さんは…。」言い淀んだ沙穂子であるが、続けた。「…私に琴子さんを重ねて…それで記憶を取り戻したのに。」
直樹は苦笑するしかなかった。

「これも運命というものでしょう。」
直樹は夜空を見上げた。もう琴子のことは割り切ったかのように演じる。
「運命…。」
「ええ、運命です。」
口にするとその通りかもしれないと直樹は思える。そう、琴子と結ばれなかったことは運命なのだと。
「運命というものがあるのでしたら…。」
消えそうな沙穂子の声に、直樹は振り返った。
「…私たちがこうして再会できたことも運命になりませんか?」
直樹は驚いて沙穂子を見つめた。まさか沙穂子も独身であったとは。
「はしたないことを申して、すみません。でも。」沙穂子は直樹を見つめた。「私は直樹さんを忘れることができないままなのです。」



新川は松葉杖から卒業することができた。といってもまだ不安があるので杖はついている。
「今日はちょっと色々検査するから時間がかかるんです、奥様。」
レントゲンなど移動が多いからと、診察前に車椅子を持ってきた看護婦が言った。
「でしたら、私が押します。」
そういう琴子であったが、「いえ、それは私が」と看護婦がにこやかに言った。
「あまり外に出ないのだから、こういう時こそゆっくりと過ごすといいよ。」
新川が笑った。家に籠りがちな琴子をいつも心配しているのだ。
検査へ向かう夫を見送った後、琴子は院内をゆっくりと歩いた。直樹の姿を見つけられないかと期待してしまう自分がそこにいる。そんなこと期待してはいけないのにと思いながらも、そうせずにいられない。しかし、この日直樹の姿はどこにもなかった。


今日は琴子が夫と共に診察に訪れる日だった。直樹はなるべく待合室を通らないようにしていた。また琴子を見て心がざわつくことを避けたかった。早く琴子を忘れなければ、そのためには何をしてでも――。
とにかく午後の外来ギリギリまではどこかにいようと、直樹は中庭で時間をつぶしていた。医学書を広げると人も寄って来ない。暫くの間、直樹は本に没頭した。
どれほど時間が経っただろうか。
「そろそろ昼食を取らないと。」
まだ昼休みは始まっていないが、混む前に食堂へ行きたい。ゆっくりと食べれば時間はつぶせると思い直樹は本を閉じ立ち上がり、中庭を後にした。



気がつくと琴子は中庭に来ていた。ベンチは誰も座っていない。そこで座って、夫が戻ってくるのを待とうと思った。冬であるが今日は暖かいので外の方が気持ちよかった。
「…あら?」
ベンチに座った琴子は、背もたれと椅子の部分の境目に何か光るものがあることに気付いた。何だろうと手を伸ばし、それを拾い上げる。そこで琴子の動きが止まった。
「なぜ…これがここに?」
拾った物を乗せた琴子の右手が震え出す。そこにあったのは、かつて自分が宝物として、お守りとして大切に持ち歩いていたあの花のブローチだった。大泉家で失くしたブローチが、どうしてこの病院にあるのだろうか?これは本当にあのブローチなのか。琴子は信じられなかったが間違いなく、幼い頃に直樹から贈られたブローチだった。

カサッという音が聞こえ、琴子はゆっくりと顔を上げた。白衣姿の直樹が、自分を見ていた――。





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『ココロのスキマ、お埋めします』  by喪黒福造ならぬ沙穂子♪



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17:30  |  永遠に君を愛す(イタkiss祭り2014)  |  CM(19)  |  EDIT  |  Top↑

*Comment

更新ありがとうございます!!
ひぃぃ!やっと出会いましたね!!

というよりさほこさん、運命…にはなりません!!!!!!

ぁー続きが(>_<)すごくすごく気になりますが、無理せず続けていただければ嬉しいです(*^^*)
ちゃー |  2015.01.28(Wed) 17:41 |  URL |  【コメント編集】

和=とうと?入江君、対面ですか?琴子、入江君?これから❓どんなふうに、なっていくんだろう、簡単ではないかもしれないけど、やはり<入江君、琴子ちゃんと結ばれてほしいです、琴子ちゃんと。入江君が、幸せに、なってほしい。
なおちゃん |  2015.01.28(Wed) 17:51 |  URL |  【コメント編集】

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 |  2015.01.28(Wed) 17:54 |   |  【コメント編集】

★再会!!

直樹は随分無駄なあがきをしてますね~。
お見合いなんて何度やっても無駄でしょうに(笑)
いや、お見合いの席であなたの裸はどんな感じ?とか聞かれても、女は答えようないですもんね~。(今のアホ子なら『ご覧になります?』とか言って脱ぎだしそうですけど(笑))

そして、アホ子お嬢との再会。
喪黒福造並みの滑りこみ方。水玉さんのコメントで爆笑しちゃいました!!直樹がキッパリとお断りしていることと信じてますよ~!!(まぁ、疑ってもいますが(笑))

ついに、直樹と琴子が再会。
正直、二人とも忘れよう忘れようって思ってる時点で忘れるのは無理なんですよね。
この再会がどう転がっていくか、今後がすっごく楽しみです。

しばらく更新がストップしていたようなんで、ちょっと心配してましたが更新していただけてうれしい限りです。
今後も楽しみにしてますね~。
六華 |  2015.01.28(Wed) 18:34 |  URL |  【コメント編集】

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 |  2015.01.28(Wed) 18:40 |   |  【コメント編集】

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 |  2015.01.28(Wed) 20:23 |   |  【コメント編集】

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 |  2015.01.28(Wed) 20:34 |   |  【コメント編集】

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 |  2015.01.28(Wed) 20:43 |   |  【コメント編集】

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 |  2015.01.28(Wed) 20:55 |   |  【コメント編集】

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 |  2015.01.28(Wed) 21:23 |   |  【コメント編集】

★とうとう再会

お忙しい中、更新ありがとうございますm(_ _)m嬉しいです。
入江君は琴子ちゃんを忘れ様とお見合いをしようとしてるけど、やっぱり頭の中は琴子ちゃん一色でしたね。しまいには「脱いだらそれなりの体で?」とのセリフに、私は入江お母さんみたく、大爆笑しちゃいました。確かに入江君のユーモア?に着いていけるのは、琴子ちゃんだけかもしれませんね(*^m^*) ムフッパーティーではアホ子と再会したけど、アホ子は未練タップリだし、無駄無駄!諦めろ!と言いたいです(怒)とうとう二人は再会しちゃいましたね(笑)これからの二人はどうなるのか、凄く楽しみです。
さな |  2015.01.28(Wed) 23:46 |  URL |  【コメント編集】

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 |  2015.01.28(Wed) 23:55 |   |  【コメント編集】

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 |  2015.01.28(Wed) 23:58 |   |  【コメント編集】

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 |  2015.01.29(Thu) 08:13 |   |  【コメント編集】

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 |  2015.01.29(Thu) 16:03 |   |  【コメント編集】

★おばっちさん、ありがとうございます。

43とこちらへのコメントありがとうございます。
再会しちゃいました~。そうそう、新川さんがいますしね。
既婚となった琴子ちゃんを入江くんはどんな思いで見るのか。
とりあえず幸せそうな琴子ちゃんをお届けできてよかったです。
水玉 |  2015.01.29(Thu) 20:36 |  URL |  【コメント編集】

★佑さん、ありがとうございます。

44とこちらへのコメントありがとうございます。
いえいえ、とんでもない。いただいておいてお返事できなくて本当に申し訳ありません。
そうか、琴子ちゃんの結婚の方がもしかしてショックでしょうか?
私はあちらで佑さんにいただいた「こんなかわいそうな結婚式見たことない」というコメントが未だに心に残ってます(笑)
水玉 |  2015.01.29(Thu) 20:37 |  URL |  【コメント編集】

★とこさん、ありがとうございます。

46からの続けてのコメントありがとうございます。
確かに、見事に隙をついてますよね!!本当、うまいこと見つけてくるなあ、お嬢はと書きながら自分で感心しちゃってました!!
水玉 |  2015.01.29(Thu) 20:39 |  URL |  【コメント編集】

★ぽこあぽこさん、はじめまして。

初めまして、コメントありがとうございます!
そんなに読んでいただけるなんて嬉しいです。量だけはちょっと自信が(笑)でも質は保証できませんが。
そう言っていただけてとても嬉しいです。読み手の皆様にドキドキしていただくことが書き手冥利につきます。
待ち遠しさを思い出すなんて嬉しいです。
こちらこそ、今後もおつきあいくださると嬉しいです。
水玉 |  2015.01.29(Thu) 20:40 |  URL |  【コメント編集】

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