日々草子 Nurse X 2

Nurse X 2

シリアス展開が続くと書いている私も息抜きがしたくなりまして。
先に言っておきますが、ギャグですので。ギャグ、ギャグで一つよろしくお願いいたします。
場合によっては後で下げるかもしれません。ご了承ください。

それからアンケート第2弾を実施しております。質問の意図は変化がないかもしれませんが、琴子ちゃんをテーマにしてみました。よろしければご協力下さい。



************











「あのチンチクリンはどうしてる?西垣先生。」
「チンチクリン?ああ、琴子ちゃんのことですか?」
「そんな可愛い呼び方せんでいい!!」
机を音を立てて叩いたのは、斗南大病院脳外科医の大蛇森であった。
「まったくあいつが来てからというもの、膨大なお金を取られて…。」
「まあまあ。それで懲りて手術には入れないようにしているじゃないですか。」



“これは一匹狼の看護師の話である。常に人手の足りない看護師。看護系大学の数は増えているにもかかわらず、すぐに退職していくのはその激務のため。その危機的な医療現場の穴埋めに現れたのがフリーランス…すなわち、一匹狼のナースである。たとえば、この女。
群れを嫌い、権威を嫌い、束縛を嫌い、正規な手段で取得したライセンスとその度胸だけが彼女の武器だ。 看護師、入江琴子。またの名を、ナースX。”

(某ドラマのテーマが流れる中、Xの文字を抱える琴子登場。)



「午後一番のオペ、ナースが一人足りなくなったんです。」
外科病棟のスタッフステーションで困っているのは若手外科医の船津であった。
「インフルエンザにかかってしまったそうでして。」
「あらら、もう流行っているのですね。」
船津の相手をしているのは、先程大蛇森と西垣の話題に上っていた入江琴子である。
「誰かヘルプでオペに入ってくれる人、いませんか?」
船津はメスさばきに一目置かれている有能な外科医であった。が、その性格はやや神経質であり、周囲が扱いに困るところもあった。そういうわけで船津の提案に手を上げるナースはなかなか現れなかった。
「困ったなあ…。」
船津は傍の琴子に目をやった。
「入江さん、どうですか?」
「私はその…手術室に入ることを禁止されていまして。」
「は?禁止?だって君、ナースでしょう?」
何を言っているんだと船津は怪訝な様子でその顔にかかっているメガネを光らせた。
「でも、大蛇森先生や西垣先生がそう仰ってまして。」
「あの二人の言うことなど気にしなくていいです。」
船津が「フン」と二人を小馬鹿にしたような顔をした。
「でも私を雇ってくれたのはそのお二人ですし。」
「違います。入江さんを雇ったのは斗南大病院であってあの二人は選考に関わっただけ。そこはちゃんと把握しないと!」
琴子を逃したら手術に入るナースの数は足りなくなる。船津は必死であった。
「分かったら、よろしく。」
「はあ…。」
スタスタとステーションを出て行った船津の背中を見送りながら「いいのかなあ?」と琴子は不安な表情を浮かべた。



「ええと、包帯交換…琴子ちゃんに付いてもらおうかな?」
大蛇森とは違って西垣は琴子を気に入っていた。今日も包帯交換に琴子を指名しようと思っていたのだが、その姿がスタッフステーションに見えない。
「あれ?琴子ちゃんは?」
「琴子ですか。いるはずなんだけどな。」
答えるのはすっかり琴子と仲良くなっている看護師の桔梗であった。
「あれ?琴子、手術室に入ってるの?」
予定表に挟まれていた琴子のメモを見て桔梗は驚く。が、桔梗以上に驚いたのは、
「何だってえ!!??」
…西垣であった。
「こ、琴子ちゃんが手術室?え?オペについてるってこと?」
「み、みたいですけど?」
桔梗が琴子のメモを渡した。確かに琴子の字で「船津先生のオペに入ることになりました」とそこに書かれているではないか。
「大変だ…これはえらいことだよ、桔梗くん!」
「何が、どうしてです?」
西垣は桔梗の両肩をがっしりと掴み、ゆさゆさとその体を揺らす。
「琴子ちゃんはオペに入ってはいけない人物なんだよ!」
「琴子がオペに入ってはいけない?どうして?」
「訳を話している暇はない。これは…大蛇森先生の所へ急がなければ!手遅れにならないうちに!」
桔梗を突き飛ばして、西垣は転がるように大蛇森の元へと走って行った。
「琴子って、オペに入れないくらいの…病弱なのかしら?」
そんな風に見えなかったけどと言いながら桔梗は乱れた髪を直していた。



「入江さん、よろしく。」
すっかり支度ができた船津が、こちらも支度ができた琴子に声をかけた。
「よろしくお願いします。」
「ではこれより…」と船津が声高だかにオペの名前を告げようとした時であった。

「船津先生!」
手術室内のスピーカーから声が響いた。手術着姿のスタッフ全員が何事かと上を向く。手術室上部には見学スペースが設置されており、そこにいたのは血相を変えた大蛇森と西垣であった。

「船津先生、手術は待った!」
「は?何を仰ってるんですか、大蛇森先生。」
決めようとしたところで邪魔された船津は露骨に不機嫌な顔をした。
「すぐに、すぐにそのチンチ…入江くんを追い出すんだ!!」
「それは困りますね!」
負けじと船津は言い返す。
「メンバーが足りないんです。」
「すぐに代わりを連れてくるから!」
大蛇森のマイクを奪うように西垣も叫んだ。
「時間のロスです。続行します。」
「いや、ちょっと待ったあ!!」
「…アウトです。」
見学スペースに静かな声が響いた。大蛇森と西垣は恐る恐る声の主を見る。琴子の派遣元、入江看護師紹介所の所長、入江直樹であった。
「あ、アウトってほら、ご覧よ!」
西垣が下を指さした。
「まだ手術始まってないし!琴子ちゃん、何もしてないし!」
「手術室に一歩でも踏み入れたらアウトです。」
「そんな、タグを外したら返品不能みたいな言い方しなくても。」
「契約は契約ですから。」
にべもない言い方に黙りこむ大蛇森たち。

「これも…あの二番野郎が余計なことをするから。」
つい大蛇森の口から船津への悪態が出た時だった。
「…誰が二番だって?」
手術着の船津がブルブルと震え出す。
「大蛇森先生、マイクのスイッチ!」
「え?ああ!!」
うっかりマイクのスイッチを入れたまま口にしてしまった大蛇森だった。が、時すでに遅し。
「僕は二番じゃない!!二番なんかじゃないんだああ!」
「ああ、船津先生。手術着ですよ!」
壁に向かって頭をぶつけ出す船津。キャップの隙間から流れ出す血。医大に入り初めて「二番」という成績を取り、それからずっと二番という言葉が船津にとってのNGワードであった。
「二番じゃないよ、僕は一番だ!!」
鈍い音が手術室に響き渡った後、ズルズルと船津はその体を折り座りこんでしまった。

「これじゃ手術は…。」
「大蛇森先生、僕が入ります!」
西垣が見学スペースから飛び出そうとした時、下に異変が起きた。

「入江くん!」
いつの間に準備したのか、しっかりと手術着を着こんだ直樹が手術室に姿を見せたのだった。
「またあいつかよ!」
いい所を取られ歯ぎしりをして悔しがる西垣。それに反してウットリとした目を向ける大蛇森。

「ではこれより、○△△○の×××の手術を行います、よろしく。」
突然現れた謎の医師に琴子以外のスタッフは驚き、不安を隠せなかった。
そのスタッフに自信を持って琴子が告げた。
「大丈夫です。私の夫は絶対失敗しないので。」
その言葉に安堵したのか、スタッフは「よろしくお願いします」と一斉に挨拶をしたのだった。



手術はスムーズに行われていた。直樹のメスさばきは船津を上回るものでありその技術に誰もが魅了されていた。
が、そこに突然ブザーが響く。
「血圧、低下してます!」
患者の容体が変わったのである。
「ああ、やっぱりあいつじゃ駄目です。僕がすぐに…。」
ここは自分の出番だと再び西垣が準備を始めようとする。
「琴子、いつもの!」
直樹の声が飛ぶと、
「入江くん、大好き!」
とまさに阿吽の呼吸で琴子から返って来た。すると直樹のメスのスピードが倍速になった。
「す、すごい。」
「こんなの見たことない。」
これは本当に人間技なのだろうか。誰もが直樹の手術の腕に息を飲む。
「すごすぎる…何て完璧なんだろうか。顔も腕も。」
大蛇森がピンク色の吐息を窓へと吹きかけている横で、西垣は歯がすり減ってなくなるのではというくらい歯ぎしりをしていた。

「琴子、汗。」
「はい。」
「琴子、メガネ。」
「はい。」
「琴子、キス。」
何も躊躇うことなくキスをする琴子。

そして今回も無事、手術は成功したのだった。



「来る…もうすぐ来る…。」
部屋で大蛇森と西垣が震えているとノックの音がしてドアが開いた。
「請求書をお持ちしました。」
スーツ姿でビシッと決めた直樹が請求書を机に置いた。二人は震えながら中を確認する。
「に、2,000万円!?」
「この間より上がってるじゃないか!」
「当然です。」
直樹は平然と答えた。
「今回はあの使いものにならない医師のヘルプを琴子がする羽目になったのです。今回は琴子の精神的損害の賠償を含めた金額にいたしました。」
「いや、琴子ちゃんは普通だったし!」
「さっき食堂で大口開けてハンバーグ食べてたぞ!」
「他人には分からないものもあるんです。」
とにかく契約は契約だと主張する直樹。
「…琴子ちゃんじゃなくてお前への手術代じゃないか?」
渋々西垣は請求書を事務へ回すことを約束するしかなかった。

「あと、こちらは手土産です。」
「ドリアンはいらねえぞ!」
即座に西垣が拒んだ。
「違いますよ。これがドリアンに見えますか?」
そう言われてみると、先日の包みより小さいものだった。
「同じ物ばかりでは芸がなと思いまして。ご自宅でどうぞ。」
と、「ご自宅」というのを直樹が殊更に強調したところでまたもやタイミングよくそこで5時を告げる時計の音。直樹は風のように部屋を出て行った。

「何だろうね、これ。」
小さな箱を見ながら大蛇森が呟く。
「さあ?二回で3000万円近くぼったくっている割にはケチな手土産ですよね。」
遠慮なく西垣は箱を開けた。
「缶詰じゃないか、本当にしけてやがる!」
箱から出てきたのは缶詰であった。
「カニ缶ならばまだしも、こんなわけの分からない物を寄越すとはドケチも甚だしい。」
「でもこれ、外国の缶詰のようだよ。」
何て書いてあるんだろうかと繁々と缶詰を見つめる大蛇森。時折鼻を動かしているのは直樹の匂いが残っていないかと期待しているからか?

「ああ、腹が空いてきました。先生、食べましょう。」
「え!君も食べるの?」
缶詰ということでドリアンほど心配する必要もないだろうと一人で持って帰って直樹の残り香(だから残っているのか?)を楽しもうとしていた大蛇森が眉を寄せた。
「食べますよ、腹も立ってますしね。」
と西垣は「ちょっと待ってて下さい」と言い残し部屋を出たと思ったら、すぐに戻って来た。
「スタッフステーションから缶切り借りてきました。」
ギコギコと缶詰を開け始める西垣であったが…。



「…東京都○×区の斗南大附属病院で起きた異臭騒ぎでは男性医師二名が一時意識を失っていましたが、間もなく回復し命に別条はなく…。」
テレビでアナウンサーが無表情でニュースを読み上げているのを、
「異臭!?誰が意識を失ってたのかなあ?」
と他人事じゃないという顔で真剣に聞き入っているのは琴子だった。
「おい、こっち来ないのか?」
「待って。大丈夫かしら?もうちょっと詳しく…あん。」
話し続けようとする琴子の口を直樹は口で塞いだ。
「…俺のライバルはニュースか?」
「でも」とまだ心配そうな琴子に、
「倒れた場所は病院だし、嫌ってくらいスタッフもいるから大丈夫だよ。」
「そっか。」
と直樹に言われ琴子はベッドに入った。
「…ったく、自宅でどうぞって俺が忠告したの聞こえなかったのかよ。」
「え?」
「何でもない」と直樹はまた琴子の口を塞いだ。
モゾモゾと盛り上がって行くベッドの傍では点けっ放しのテレビからアナウンサーの声が続いていた。

「異臭の原因は机の上に置かれた“シュールストレミング”というスウェーデン製の缶詰から発せられたもので、これは強い臭気を発する食べ物で…なぜこれを病院で食べようとしたのか理由は不明です…病院側は医師二人に厳重注意したとのことです。」



“群れを嫌い(男と群がること)、権威を嫌い(夫より腕のいい医師はいないから)、束縛を嫌い(夫の独占欲で満足)、看護師のライセンスと有能な夫だけが彼女の武器だ。看護師、入江琴子。またの名を、ナースX。”





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ナッキーさん、ありがとうございます。

この不人気なお話にコメントいただけて嬉しいです。
そうそう、ゴルゴみたいだと私も思いました。
調べてみたら、相当臭いそうですね。絶対かぎたくないけれど(笑)
とりあえず元ネタのドラマが放送している間に書いてみたかったのです。

紀子ママさん、ありがとうございます。

私も来る、きっと来る~という風に紀子ママさんのコメントをお待ちしておりました(笑)
そうそう、書きながら貞子を思い出してましたよ。
琴子ちゃんの精神的苦痛は船津くんの醜態を見せられたことによるものかと。あんなもんを俺の琴子に見せやがってと入江所長は思っているはず。
手術中にキスするって、本当にどんだけって感じです。
ぼったくって嫌がらせまでして行くって…それでも琴子ちゃんの契約を打ち切らない理由が知りたいです。
プロフィール

水玉

Author:水玉
『イタズラなkiss』のほかには『ゴルゴ13』が好きです☆
多数あるイタキスの二次小説の中で邪魔することなく、ひっそりとマイペースで我が道をゆきつつ生息しております。
そっと見守っていただけたら嬉しいです。

※当ブログに掲載されている文章及びイラストの無断転載・使用はご遠慮下さい。

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このブログについてのお願い
当ブログは、『イタズラなkiss』の二次創作をメインとしておりますが、時折管理人の趣味や日々の出来事についての記事も書いております。

原作者様や関係各位とは一切関係ありません。

二次創作については、いわゆる原作の隙間をぬった作品もありますが、主人公以外のキャラクターをメインとしたものや オリジナルキャラクターが出てくるものもございます。

そして、原作と違った時代(平安や明治やその他の時代を舞台にしております)、異なる設定(主人公を医者と看護師じゃない職業にしております)で書いてあるものが多いですが、原作を冒涜しているつもりは全くございません。

二次創作が苦手という方及び原作のイメージと合わないと思われる方はどうぞお引き取り下さいますようお願いいたします。

コメント及びメールなどでの苦情及び批判は公開、非公開を問わず、私へ告げることはご遠慮いただけますよう、お願い申し上げます。

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