日々草子 もしもこんなカーナビがあったら 2

もしもこんなカーナビがあったら 2

ナビの正体は明かさない方がいいかなと思って。
想像している時は面白かったんですが、文章にしたらちょっとイマイチだったかも><
お祭り騒ぎに乗ってこんなのもありかなと。










「入江くんと二人でドライブなんて、素敵。」
「ドライブじゃねえからな。」
少し遠い都立図書館まで直樹は車で出かけることにした。珍しく休みが重なった琴子は今日はずっと直樹といるのだと離れない。

「一応ナビで調べるか。」
「…これ、使わない方がいいんじゃない?」
カーナビに触れようとした直樹を琴子が止めた。
「何か邪悪な香りがするのよね。」
「ナビに何を言い出すんだ、ったく。」
「だって画面の両端にあるこれ、黒いクルンッってなっているの、おかしくない?」
「そういうデザインなんだろ?」
不満そうな琴子を無視して直樹はカーナビにタッチした。

アァァン!

画面から聞こえた音、いや声。

『素晴らしいタッチ!』

「…は?」

『身悶えしてしまう、ああ最高!!さあ、目的地をどうぞ。』

「ほうら、気持ち悪いって言ったじゃない!」
「少し暴走してるだけだろ。」
直樹はあまり気にせず目的地を入力した。

アァァン!
『目的地、都立○×図書館。知的な休日に付き合えて嬉しい!』

不安げな琴子を隣に乗せ、直樹はアクセルを踏み込んだ。

アァァン!
『今の車線変更、すごく素敵!』

アァァン!
『歩行者を優先させるその運転姿勢、トレビァァン!』

アァァン!
『無駄のない運転、パーフェクト!』

アァァン!
『僕に触れるその指、ああゾクゾクしちゃう!』

「…いちいち気持ち悪い声を上げるんじゃないわよっ!」
ずっと隣で耐えていた琴子が、とうとう声を荒げた。
「何なの、さっきから!入江くんに向かって変な声上げて!」
「お、おい!」
ナビをわしづかみするかのような勢いの琴子を直樹は止める。
するとナビから突然流れてきたのはクラシック音楽。

「何で突然音楽が?」
ラジオもCDもつけてないのにと不思議に思う直樹と琴子。その二人の前で画面に文字が表示された。

『雑音シャットアウト機能のスイッチをONにしました。』

「雑音?」
訝しむ琴子。
『…耳障りなダミ声は聞きたくないからね。』

「ダミ声って私の声ってこと?」
『他に誰がいる?』
「ムキーッ!」と琴子は唸り声を上げる。
「今日は入江くんとドライブデートなのよ!何であんたに邪魔されないといけないのよ!」
『ダミ声シャットアウト機能、パワーアップ!』というカーナビの声の後に聞こえてきたのは、

Seid umschlungen, Millionen!
Diesen Kuß der ganzen Welt!
der ganzen Welt!
Brüder! über'm Sternenzelt…

「何生意気に英語の歌を歌ってるのよ?」

『ブッブー!これはドイツ語です。ベートーヴェン交響曲第9番です!ったく外国語だと何でも英語だと思うその浅はかさよ!ケケケッ!』

「何がドイツ語よ!日本人ならば日本語の歌を歌うべきでしょうが!」
そして琴子もナビから聞こえてくる歌に負けじと声を張り上げた。

「ゆうやーけこやけーの赤とんぼぉぉぉ!!」

琴子の声に負けじと、ナビも声を張り上げる。

in lieber Vater wohnen,
ein lieber Vter wohnen.
Seid umschlungen!
Seid umschlungen!
Diesen Kuß der ganzen Welt!
der ganzen Welt!

こちらも負けるまいと更に琴子は声を張り上げた。
「おわれぇぇて見たのぉぉはぁ、いつの日かぁぁぁ!!」


「…うるさいっ!!」

張り上げるナビと琴子の声よりもひときわ大きな、直樹の声がとうとう車内に響いたのだった――。



数日後
「まったく、あのナビには本当にまいったわ。」
車に乗り込みながら琴子は眉をひそめる。
「でも今日はそうはさせないわ。ナビに勝ってみせるんだから!」
「だから機械に張り合ってどうするんだって。」
嫌そうに助手席に乗り込む直樹。
「お前の運転に付き合うだけでこちらは気が滅入るっていうのに。」
「そんなあ。せっかく今日こそ図書館へ行くっていうのに。」
この間のドライブではナビと琴子の戦いに疲れ果てた直樹は、途中で引き返したのだった。

「大丈夫、今日こそ入江くんに快適なドライブをお約束するから!」
「頼むぜ、ったく。」
「入江くんはゆったりとそこに乗っていてくれればいいからね。」
またもや直樹と出かけるということで機嫌のいい琴子はナビにタッチした。

チッ!

「…舌打ち?」

『…そんな手入れの行き届いてない指で触らないでくれたまえ。』

「…やっぱり腹の立つナビね!」
目を吊り上げながら琴子は都立図書館の名前を入力する。

チッ!
『図書館行ってもどうせグーグー寝ているくせに。ガソリンの無駄だ。』

「余計なお世話よ!!」
「安全運転で頼むぞ。」
またもやヒートアップしそうな琴子を心配しながら直樹は溜息をついた。


チッ!
『性格だけじゃなく運転もガサツだな。』

チッ!
『もう一度教習所に通い直しが方がいいんじゃないか。』

チッ!
『お前の吐く二酸化炭素が多すぎて空気悪すぎ。まだ道路の方がさわやか。』

チッ!
『この運転下手ちんちくりんめっ!!』

「…いちいちうるさいのよ、あんたは!」
怒鳴る琴子であるがハンドルを握っているためそれ以上は手を出せない。ひたすら耐えるしかない。

チッ!
『ほら、ここがお前の目的地だ。』

「え?」
ナビに示されたとおりに一応運転して来たものの、到着した場所は図書館ではなかった。
「ここって区役所じゃない。」
そう、ここは区役所。図書館も区役所も公共施設ではあるが全然違う。

「何だ、あんた馬鹿だったんじゃないの。」
「間違えた~ケケケ」と笑う琴子の前でまたナビが「チッ!」と舌打ちする。

『間違えてなどない。さっさと降りて手続きしてこい。』

「手続き?」
『チッ!用紙はいくらでももらえる。』
「用紙?」
『チッ!察しの悪い奴め。離婚届だよ!さっさとサインして出してこい!』

「…誰が出すもんですか、んなもん!!!」

しかしナビは琴子に怒鳴られても一向にめげることはなかった。

チッ!
『じゃあ目的地変更するか。斗南大病院へ案内してやろう。』

「何で病院なのよ?私たちは今日休みなのよ?」

チッ!
『平日だから事務はやっている。退職手続きならばできる。』

「だから離婚もしなければ病院も辞めないっていうの!!私は入江くんとどこまでも一緒なんですぅ!!」

最後に叫ぶと琴子は案内を取り消し、ナビを現在地画面へと変更させた。

「はじめからこうすればよかったわ。」
琴子は直樹に笑いかけた。「やれやれ」と直樹は疲れた様子を見せながらもすっかり記憶していた図書館への道を指示し始めた。

「大体入江くんに変な声を出すところからおかしいのよ。」
漸く図書館に到着しても琴子の不満はおさまらなかった。
「君のタッチはどうだか、気持ち悪いったらありゃしない。」
「俺のタッチに喘ぐのはお前の専売特許だもんな。」
「そうそう、入江くんのタッチに喘ぐのはあたしの専売特許…って!?」
つられてとんでもないことを口走りかけた琴子の顔は真っ赤である。その真っ赤な琴子の頭をポンポンと叩きながら、
「寝てもいびきをかくことだけは勘弁してくれよ。館内はお静かにってあるだろ?」
「寝ないし、いびきもかかないもん!」
「どうだか。」
二人は図書館の中に入ったのだった。





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紀子ママさん、ありがとうございます。

つけてませんよ~!!でも面白いかも(笑)
そうそう、琴子ちゃんも遠慮ないんですよね。そこが書いていて面白い!
入江くんも呆れながら楽しんでいたと思います。男の人に本気で立ち向かう琴子ちゃんですもん。
そうなんです、あれで純愛、究極のプラトニックラブなんですよ。でもこればかりは遂げさせるわけにはいきませんね、パンプキンと違ってそんな気も私は起きませんわ(笑)

たまちさん、ありがとうございます。

琴子ちゃんがいなかったら密室で二人きりだったんですもんね。
秋だけにそんな歌をチョイスしてみました!
さぞやうるさい車内だったことでしょう、入江くん(笑)
ちんちくりんの道案内なんて絶対嫌だったと思いますよ。でも一応指示はする。行き先は勝手に(笑)
そうですね、入江くんのスイッチはONですよ。図書館で静かな分さぞ大変だったことでしょう(笑)

ねーさんさん、ありがとうございます。

いやそもそもカーナビ西垣は入江くんが選ばないはず(笑)
ついているけどいつも画面現在地状態。
そっか、「どこまでも一緒なんだろ?」とか運転を代わって、勝手に行き先を決める直樹カーナビ。大蛇森カーナビとやってること、大して変わらない(笑)
無自覚に入江くんをあおっているんですね、琴子ちゃん。とりあえず大蛇森との勝負には勝っているってことで!
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水玉

Author:水玉
『イタズラなkiss』のほかには『ゴルゴ13』が好きです☆
多数あるイタキスの二次小説の中で邪魔することなく、ひっそりとマイペースで我が道をゆきつつ生息しております。
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