日々草子 オタクたちの進撃 上

オタクたちの進撃 上

よく知らないのですが…最近CMでよく使われているので、つい笑
そこからのイメージだけで書いていますので、ご了承下さい。


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新しい生活が始まり一ヶ月が過ぎようとしている。斗南大の新入生たちは受ける授業を登録したり、入会するサークルをいよいよ絞ろうとしている季節である。

「さて、ここらでバーンと仕掛ける必要があるな。」
そんなことを口にしているのは、新入生のフレッシュさとは無縁なドヨヨーンとしている男たちである。そう、言わずもがな。斗南大アニメ同好会のメンバーである。
彼らが考えているのは、新入生勧誘目的のイベントについてであった。

「やあ、やあ、やあ。」
そんな部室に今日もやってきた唐草模様の男。
「矢野さん!」
それを大歓迎することも、いつもと変わらないアニメ同好会。
「新入部員、どう?」
「それがまだ一人もいなくて…。」
アニメ同好会の一人、青木が古ぼけた事務椅子を矢野に差し出した。長い間ガムテープで補強していたパイプ椅子はとうとう修復不可能な状態に陥ったため、部員たちが大学及び自宅から半径3キロのゴミ収集所を回って探し出してきた、貴重な椅子である。
「やっぱり、コトリンなしの同人誌じゃ部員は来ません。」
「はあ」と盛大なため息をついて、白山が山積みとなっている同人誌を見つめた。
「コトリンを使うと、絶対あいつが出てくるし。」
「あいつが出てきたら、入部希望者なんて逃げていっちゃう。」
過去の数々の出来事を思い出し、震え上がる部員たち。

「お前、逆転の発想って知ってるか?」
落ち込む後輩たちに矢野が声をかけた。
「逆転?」
「そうだ。コトリンを使ったらあいつが襲ってくるというのならば、逆に考えればいいんじゃないか?」
「どうやってです?」
そこで矢野は、今日もささくれだった太い人差し指をビシッと後輩たちに突き立て告げた。
「コトリンを使って怒られるのならば、奴を使ってやればいいのさ!」
「奴…?」
「奴って、ドンを?」
先輩の意図を理解できずにいる後輩たちは顔を見合わせた。

「ドンを主人公にするってことですか?」
「そう。ドンを主人公に一本、映像を作ればいいのさ。」
自信満々な先輩に青木たちは「うーん」と腕を組み考え込む。

「あいつを主人公にというと…“チーム入江の栄光”または“チーム入江FINAL斗南の肖像”とか?」
「もしくは“ドクターI”?フリーの外科医?」
「あ、“ドクター入江診療所”ってのは?」

バァァァンッ!!

矢野が机を叩いた。

「お前ら、何馬鹿なことを言ってやがる?え?何だよ、FINALって?まだ一本も作ってなにのにFINALもへったくれもねえだろうが!」
「だ、だって…。」
「それに何だ?“ドクター入江診療所”?あいつが白衣パタパタさせながら、自転車にまたがって南の島を一周しているところでも撮影しろと?俺らが入江のPV(プロモーションビデオ)作ってどうするんだ?んなもん作ったら、コトリンが身悶えして喜ぶだけだろうが!」
「そ、それはそうですけど…。」
「まあ、あいつが一億用意してきて、土下座してPV作ってと頼んできたら考えてやってもいいけどな。」
…彼らが一億用意して土下座して頼んでも、入江直樹がPV制作を依頼することはないだろう。

「全くお前らは本当に人がいいんだよな。こんなことになるんじゃないかと用意してきて正解だったぜ。」
矢野は唐草模様のかばん(風呂敷ではない)に手を突っ込んだ。

「ほらよ。」
そしてバサッと後輩たちの前に置いたのは…。


「“進撃の入江”…?」
それは矢野が描いた絵コンテだった。タイトルに大きく「進撃の入江」と描かれている。
「今、あちこちで話題になってるだろ?あれをもじったんだ。」
矢野の説明を聞きながら、青木たちは絵コンテをめくっていく。一枚めくるたびに彼らの目が輝き始める。

「矢野さん、これ、すごいっす!」
「さすが矢野さん、天才!」
「ガハハハハ!!」

「なるほど…ドンが凶暴な巨人で人々を襲う。それを俺らが退治すると。うん、これはいけますよ!」
「だろ?だろ?」
「ですが、矢野さん。」
全て見終えた青木が絵コンテを机の上に置いて、悲しげな目を矢野に向けた。
「どうした?」
「これを忠実に再現するには…制作費が相当かかります。」
「だよな。」
青木に白山、黄原も同調した。
「これほど迫力あるものに仕上げるには、相当なCGを使わねば。」
「今の俺らにはそんな金はとても…。」
落ち込む後輩たちに、
「心配するな!」
と矢野が声を張り上げた。
「矢野さんが出してくれるんですか?」
「…俺にそんな余裕があると?」
「それじゃ?」



白衣を着た男が女性看護師と親しげに話していた。
「いい店を知ってるんだ。きっと君も気に入ると思う。」
「でも…。」
迷うそぶりを見せる看護師の耳たぶを男が噛む。
「じゃあ、おつきあいしようかしら?」
「…待ってるからね。」

「…矢野さん、何ですか、あれは?」
突然矢野に連れてこられたのは、大学のすぐ隣にある斗南大付属病院。なぜ自分たちがここで、そしてこのようなくだらないシーンを見せられなければいけないのかと青木たちは不満げである。

「あれは医者だ。」
「え?あんなんで?」
「俺は入院中にあの医者を知ったんだ。」
とある年の夏、矢野は食中毒を起こしこの病院に入院したことがあった。

「名前は西垣という。」
「はあ。」
「彼はドンに毎日のようにひどい目に遭っている。“入江直樹被害者の会”が結成されたら、間違いなく会長に就任する資格がある人物だ。」
「へえ。」
ここまで話すと矢野が一人になったその医師に「西垣先生」と声をかけた。突然声をかけられた西垣は、その相手が自分とは全く無縁の世界に生きる男たちだと知り「ひぇっ」と声を上げた。

「な、何か?」
「ちょっとお時間ありますか?」
まさか製薬会社の営業かと西垣は思った。こんな唐草模様の男を寄越す会社があるのだろうか。
「君たちは一体、何者?」
「まあまあ。その…。」
矢野は思わせぶりに周囲を見回す。西垣が女性を口説いていただけに人通りのない場所である。
そして矢野は、リップクリームでテカった唇を西垣の耳元に近づけささやいた。
「入江直樹のことで、いいお話があるんですよ。」



「ほう!これはすごい!!」
こんな単純なことに医師ともあろう者が引っかかるだろうかと、矢野たちは正直自信がなかった。しかしそんな単純なことに西垣は見事に食いついた。
「へえ、“進撃の入江”ね。うんうん、すごくおもしろい!アハハ、なんだよ、このやられっぷり!最高!」

「…言っただろ?この先生はドンに虐げられているって。」
「この喜び様、まさしく“入江直樹被害者の会”会長ですね。」

自分たち以上に目を輝かせて絵コンテに興奮する西垣を前に、矢野たちはヒソヒソと囁き合った。

「で?これを大学で上映するって。いやいや、その前にうちの病院で上映しない?」
「病院で?」
突然の話の成り行きに矢野たちは驚いた。
「そうだよ。病院でお楽しみイベントとして。ホールがあるからそこでバーンと!いやあ、これが上映されたら、あいつの外見に騙されている看護師、患者、病院中のありとあらゆる女たちの目が覚めることだろうよ!」
「それはいいですね!」
入江の勤務先で上映し、入江の評判を下げる。こんな素晴らしいことがあるだろうか。やはり西垣に相談して正解だった。

「それでですね、これを製作するにあたって少々お願いが…。」
「もしかして、お金?」
西垣は察しがよかった。
「うーん」と腕を組み、考える西垣。その返事を待つ矢野たち。

「…入江をぎゃふんと言わせるなら、仕方ないか。」
今時使わない表現を口にしつつ、西垣は財布を取り出し数枚のお札を「はい」と矢野に渡した。
「スポンサーなんだから、ちゃんと製作過程とか報告してよ。」
「もちろんです。」
「キャラデザインとか、ちゃんと先生に送りますから。」

こうして『進撃の入江』の製作は開始されたのである。





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Author:水玉
『イタズラなkiss』のほかには『ゴルゴ13』が好きです☆
多数あるイタキスの二次小説の中で邪魔することなく、ひっそりとマイペースで我が道をゆきつつ生息しております。
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