日々草子 万華鏡 2

万華鏡 2

琴子は部屋の中へ入ってきた直樹にすっかり目を奪われていた。すごい、外国の本に出てくる人みたい…。こんなにきれいな男の人、見たことがない。

「はじまして。娘がお世話になります。相原です。」
「はじめまして。長男の直樹です。」
直樹は重雄と握手をした。
「これが、うちの娘の琴子です。ご面倒ですが、よろしくお願いします。」
「は、はじめまして。琴子です。」
「はじめまして。琴子さん。」
直樹が琴子へ微笑んだ。琴子の心臓がバクバクしている。

その後、重雄は何度も紀子と直樹に琴子のことを頼み、入江邸を出発していった。琴子は父の乗った車を見送りながら、寂しさとこれからの不安が込み上げてきたが、ぐっと堪えた。

「お夕食には、主人と次男の裕樹が間に合うと思うの。」
琴子の部屋へ案内しながら、紀子が言った。
「裕樹ったら主人の仕事に興味があるみたいで、今日も会社へ付いていったのよ。」
紀子の話を聞きつつ、琴子は先程会った直樹の姿が忘れられなかった。
「さあ、今日からここが琴子さんのお部屋よ。」
「わあ…!」
その部屋は南向きで日当たりがよく、すぐに生活が始められるように全て整っていた。琴子は初めて見るベッドや、椅子に座って使う机などに目を奪われた。
「そして、見て!」
紀子が洋箪笥の扉を開いた。
「うわあ…。」
そこには、洋服が所狭しと吊るされていた。
「琴子さんが来るって聞いたときに、すぐに用意したの。女の子の服を選ぶのって本当に楽しいわ。今度、一緒に買い物へ行きましょうね。」
疲れただろうから、夕食まで部屋で休んでてと紀子は言い残し、部屋を出て行った。

「やあ、君が琴子ちゃんか!アイちゃんに似なくてよかったなあ。」
夕食の席で入江伯爵がにこやかに言った。
「お世話になります。」
怖そうな人でなくて、琴子は安心していた。
そして、昼間には見なかった入江家の次男の裕樹も座っている。
「よろしくお願いしますね。裕樹さん。」
琴子は裕樹に挨拶をした。直樹とは年が離れているんだなと思った。
すると、裕樹が口を開いた。
「琴子さん。」
「はい?」
「“嫁き遅れ”ってどういう意味ですか?」
「…え?」
琴子は一瞬、目が点になった。
「裕樹さん!」
紀子が裕樹をたしなめた。
「何てことを言うの!」
「だって、兄様が本人に聞いてみろって言うから…。」
琴子は漸く理解した。つまり、この兄弟は自分のことを“嫁き遅れの娘”だと思っていると。
「だって、本人に聞いたほうが確実じゃないですか。」
直樹が昼間とは打って変わった態度で、言った。
「下宿代、払ってもらってるんでしょうね?」
「うちはそんなにお金に困っていません!」
紀子が叫んだ。
そして、直樹は自分を邪魔だと思っていることも、琴子は理解した。


☆あとがき
昨年に更新したかと思い込んでいたら、更新してなかった!
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楽しみにしてました!
直樹も祐樹もばかにしているセリフでも、口調が丁寧で余計に笑えますね
このあとどうなるのか、ドキドキしながら続きをお待ちしてます

ありがとうございます

takieさん
ありがとうございます^^
話はできてるんだけど、文章にできず…。
気長にお待ちいただけると嬉しいです。
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水玉

Author:水玉
『イタズラなkiss』のほかには『ゴルゴ13』が好きです☆
多数あるイタキスの二次小説の中で邪魔することなく、ひっそりとマイペースで我が道をゆきつつ生息しております。
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