日々草子 イリエアン・ウェディング 3

イリエアン・ウェディング 3

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ダッ、ダッ、ダッ…大勢の足音が響く。

「王子の結婚を中止しろー!」
「もっと素敵な女性を妃に迎えろー!」

農具や包丁などを手にした民たちが叫びながら突進してくる。とうとう皆の我慢の限界を超えたのである。

「あの女を引きずり出せ!」
「イーリエ王国から放り出せ!」

「そ、そんな…。」
城の窓から大挙して押し寄せる民たちの様子を、コトリーナは震えながら見ていた。

ピッ、ピッ、ピッ!!

そこへ突然響くのは笛の音。バルコニーに立って吹いているのはユウキヴィッチだった。
コトリーナはユウキヴィッチが止めてくれたのかと思った
しかし。

ピッピッピッ、ピッピッピッ、ピッピッピッピッピッピッピッ!

ユウキヴィッチは笛を吹きながら、両手を動かし何と音頭を取っている!

ピッピッピッ、ピッピッピッ、ピッピッピッピッピッピッピッ!

笛の音が重なった。何とイッシキ国王までユウキヴィッチに合わせて吹いているではないか。

それに鼓舞され、民たちはますます興奮する。

ピッピッピッ、ピッピッピッ、ピッピッピッピッピッピッピッ!
ピッピッピッ、ピッピッピッ、ピッピッピッピッピッピッピッ…。



「…おい、おい!」
コトリーナはパチリと目を開けた。上からナオキヴィッチが心配そうに自分を見ている。
「王子様、眠れないのですか?」
「それは俺の台詞だ!」
「あっ…。」
ここでようやくコトリーナは夢を見ていたことに気付いた。
「やめて、やめてと隣で唸っているから、起こしたんだ。」
「…すみません。」
ナオキヴィッチが出してくれた水を、コトリーナは一気に飲み干した。
何ということだろう。ナオキヴィッチを眠らせるために隣にいるというのに、逆に安眠を妨害してしまったとは。

コトリーナは夢の内容をナオキヴィッチに話してみた。すると、
「アハハハハ!」
と、ナオキヴィッチは腹を抱えて笑い出した。
「何だそれ。三三七拍子に合わせて一揆かよ!笑える!」
「笑いごとじゃありません!」
それでなくとも、二人からは認められず、ティアラまでなくなったという事実にコトリーナは苦しめられているというのに。

「ティアラに足が生えたわけでもあるまいし。気にするなよ。」
「でも、私がお妃にふさわしくないから逃げ出したって…。」
「んなことあるか。ほら、寝るぞ。」
ナオキヴィッチは枕元の灯りを消し、ベッドに入った。コトリーナも潜りこむ。
ナオキヴィッチには笑われてしまったが、それはそれでホッとした。ここでナオキヴィッチまでも自分を否定したらどうなっていたことか。



ガサッ、ガサッ…。
長い棒を庭の草の中でコトリーナは動かしていた。
「妃じゃなく庭師修行を始めることにしたね?」
声をかけてきたのはイッシキ国王であった。
「それはそれでいい選択たい。うん、うん。」
「違います!ティアラを探しているんです!」
言い返した後、コトリーナは棒をまた動かし始める。
「そげなことせんでも、もっと効率のいい探し方ば、せんとね?」
「効率のいい探し方?」
「そうたい。城中の人間集めて問い詰めていけばよかね。」
「そんなこと、しません。」
ガサガサと草の中を探しながら、コトリーナは答えた。
「何でね?」
「…ティアラは逃げて行ったんです。」
「あほか」とイッシキ国王は呟いた。確かに逃げ出したと言ったのは自分だがそれを信じるとは。

「あんたが妃になることが我慢できなくて、どっかへ持ちだしたに決まっているやろうが。」
「そんな人、このお城にはいません!」
いつになく強い口調のコトリーナに、国王は少し驚いた。

「…確かに陛下のおっしゃる通り、城中の人たちを集めて調べることは簡単です。でもそれはみんなを疑うことになるじゃないですか。」
棒に引っ掛かった破れた布を捨てながら、コトリーナは言った。

「お城の人たちはみんないい人ばかりです。私が何度迷っても優しく案内してくれる侍女さんたち、お菓子を作るといっても嫌な顔をしないで厨房を使わせてくれる料理人さんとか…みんな私に優しい人ばかりです。そんな人たちを疑うことなんて絶対できません!そんなことするくらいなら、ティアラは逃げて行ったと思うことにします。」

ガサガサと棒を動かすコトリーナを、イッシキ国王は口をへの字に曲げて見ていた。

「それに、ティアラにふさわしい人を見つけに行ったということが本当ならば、必ず私の元に戻ってくるはずです。王子様の傍にいるのは私しかいないんだから!」



「…気に入らない割には、コトリーナの行動をずっと見ているんですね。」
城の中に入っても、窓からコトリーナの様子を見ていた祖父に、ナオキヴィッチが声をかけた。
「…今度はどぶさらいまで始めたと。」
草むらを探した次は、何とコトリーナはどぶの中を探し始めていた。
「気に入らないならば無視すればいいだけでしょう?何でいちいちあいつに構うんです?」
「うるさい!ナオキヴィッチ、お前も悪か!」
「俺が?」
「そうたい!お前、わしがあのおなごに頭が悪いとか言った時、どうして庇わんね!」
「プッ」とナオキヴィッチは噴き出した。
「何がおかしか?」
「俺に庇うことを期待するくらいなら、いじめなければいいでしょう。」
「うっ!」
「さしあたって、どうも自分で引っ込みがつかなくなっているってところですか?」
「うっ!」
図星であった。
「出来が悪いことは本当ですし、どこかとろいのも本当ですしね。おじい様の言い分は外れていません。だってそれがコトリーナって奴なんですから。」
「…すごか言い様たい。」
あまりの孫の率直ぶりに、さすがの祖父も言葉を失う。

「俺が選んだ女をおじい様にそのまま、見てほしかっただけですよ。」
「そのまま?」
「そうです。この俺が家まで押し掛けて結婚を申し込んだ女をね。」
「…何でお前ほどの男がそこまでして、あんなおなごを選んだと?ましなおなごはもっといるやろう?」
「好きになったのだから、しょうがないでしょう。」
ニッとナオキヴィッチは笑いかけた。
「俺はコトリーナを愛しているんです。ただそれだけです。」
「愛している…。」
「ちなみに、俺は俺はあのマフィンをほぼ毎日食ってます。それで俺の愛の深さが分かるんじゃないですか?それじゃ。」

去っていく孫の背中を見て「あれを毎日…」と呟くイッシキ国王。
少しすると、どぶさらいをしているコトリーナの傍にナオキヴィッチの姿が見えた。

「ったく、お前はやることがすげえよ。」
「だって…。」
どぶの中に突っ立っているコトリーナの顔は汚れている。
「王妃様の大事なティアラ…あれは思い出の品なのですもの。」
自分が身につけたいという理由よりも、ノーリー王妃の大事な思い出の品だからこそ、コトリーナは何としても見つけ出したかったのである。
「ったく、しょうがねえな。」
ナオキヴィッチはどぶの中に足を入れた。
「王子様、汚れちゃいます!」
「構わねえよ。ほら、お前はそっちを探せ。俺はこっちを探す。」
「…はい!」


「…あれが、あのナオキヴィッチかね?」
泥まみれになってどぶの中を動く孫息子に、イッシキ国王は唖然となっていた。誰よりも輝いていた優秀な孫が、どぶの中に身を屈めている…。

「だけど…なんか楽しそうたい。」
時折コトリーナの顔の汚れを拭いてやっているナオキヴィッチの顔は優しく、この状況を楽しんでいるかのようであった。

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紀子ママさん、ありがとうございます。

原作でのいびりぷりはすごかったですよね。
でもそれに立ち向かう琴子ちゃん,私は大好きです。
「手伝ってくださいよ」と言ったり赤ちゃんに向かって「このクソガキ」と呟いたり。
その辺が九州編はかなり笑えました!
こちらのナオキヴィッチはちょこっと、コトリーナちゃんに優しさを見せてみました。
そうそう、性格は宇宙一いいんですからね!

たまちさん、ありがとうございます。

ティアラに足が生える…確かにシュールですよね(笑)
本当に生えたら、それは完全見世物レベルですわ。
コトリーナちゃんのこと、だんだんおじい様も認めつつありますよね。
確かに誰かに止めてほしいって思う時ありますし。自分が言いだしっぺだったら何となく決まり悪くて引っ込めないし。
あのマフィンを食べていることは、本当に愛情以外の何物でもありませんから!
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Author:水玉
『イタズラなkiss』のほかには『ゴルゴ13』が好きです☆
多数あるイタキスの二次小説の中で邪魔することなく、ひっそりとマイペースで我が道をゆきつつ生息しております。
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