日々草子 イリエアン・ウェディング 1

イリエアン・ウェディング 1

本来ならばイリコトの記念日の今日にエンディングを迎えるような話なのに、今日開始ですみません。
「イリエアン・ナイト」「イリエアン・デイズ」の続編です。








イーリエ王国の世継ぎ、ナオキヴィッチ王子とアイハーラ子爵の令嬢コトリーナの婚儀も間もなくとなった。

コトリーナは、ナオキヴィッチの母、ノーリー王妃と共に婚礼衣装を合わせることに忙しい日々を送っていた。
「ウェディングドレスはこちら。パーティーではこちらのドレスで。アクセサリーはこちらとこちら…ええと、忘れていることはないかしら?」
「大丈夫です、王妃様。」
十分すぎる仕度にコトリーナはただただ、驚くばかりである。
「もう、だめじゃない、コトリーナちゃん!」
「え?」
何か忘れていることがあったかと、コトリーナは思い出そうと宙を見つめた。
「王妃様なんて呼び方、他人行儀よ。お義母様って呼んでちょうだい。ね?」
「いえ、それは。」
コトリーナはニッコリと笑った。
「結婚式を挙げてから、お呼びしたいと思います。」
「まあ…何ていい子なんでしょう!」
礼儀をわきまえたコトリーナの態度に、王妃は感動の涙を流すばかり。本当に嫁姑の仲は素晴らしいものである。

「あ、そうだったわ。大事なことがあったわ。」
パンと王妃が手を叩いた。そして傍の侍女に何か指示した。

「コトリーナちゃん、見てちょうだいな。」
侍女に運ばせた黒革のケースを王妃は開けてコトリーナに見せた。
「何て素敵な!」
そこにはプラチナ、ダイヤをふんだんに使ったティアラが美しく輝いていた。
「結婚式には、こちらを着けてちょうだいね。」
「こんな立派な物、私には勿体ないです!」
コトリーナは遠慮した。
「まあ、そんなこと言わないでちょうだい。こちらはね、私がこの国にお嫁入りする時に父が作らせた物なの。私も結婚式で着用したのよ。いつか、娘が生まれたら持たせようと思っていたの。でも…。」
うっとりとした目でティアラを見つめながら、王妃は続ける。
「生まれたのは息子だったわ。だから息子のお妃になる子に着けてもらおうと思って楽しみにしていたのよ。どんな可愛いお嬢様が着けてくれるかしらって思っていたら、こんな可愛いコトリーナちゃんが来てくれることになって!あ、それとも…。」
王妃はコトリーナを気遣わしげに見た。
「私のお古は嫌かしら?やはり結婚式は新しい物がいいかしらね?」
「そんなことは!」
とんでもないとコトリーナは首を振った。
「王妃様の思い出のお品を、こうして使わせて下さるなんて…私はなんて幸せ者かと思います。本当に私がお借りしてよろしいのでしょうか?」
「勿論ですとも。ナオキヴィッチとコトリーナちゃんの間に子供が生まれたらその子、またはお妃になる子にと受け継いで言ってくれたら、こんなに嬉しいことはなくてよ。」
「王子様との間の子供…。」
ポッと顔を赤らめる、初々しい花嫁が王妃は可愛くてたまらなくなり、思いきり抱きしめた。

「…そろそろ、時間ですけれど。」
いつの間に入ってきたのか、ナオキヴィッチがやれやれという様子で二人に声をかけた。
「これ、ナオキヴィッチ!あなたはこのお部屋に入ってはだめといったでしょう!」
王妃は息子の背中をグイグイと押し、部屋の外へと追い出す。
「ここにはコトリーナちゃんの婚礼衣装が並んでいるんですから。あなたは当日までのお楽しみと言ったはずです。」
「だったら、さっさと出て来て下さい。そろそろお着きになりますから。」

今日は城にゲストがやってくることになっていた。それはノーリー王妃の父、イッシキ王国の国王夫妻である。孫のナオキヴィッチの婚儀に出席するために来るのである。そしてもう一人。
「ようやく、ユウキヴィッチ様にお会いできるのですね。」
ゲストを迎える広間に向かいながら、コトリーナはナオキヴィッチに話す。
ユウキヴィッチとは、年齢の離れたナオキヴィッチの弟であった。コトリーナがナオキヴィッチと出会う少し前から、母の故郷であるイッシキ王国へ遊学していたのだった。兄の結婚式に合わせ、祖父母の供をしながらイーリエ王国へ帰国することとなった。

「イッシキ国王ご夫妻、ユウキヴィッチ殿下、お着きー!」
広間に声が響くと同時に扉が開く。老夫婦が少年に付き添われ入って来た。
「これは義父上、義母上。遠路はるばるようこそ。」
イーリエ国王シゲキヴィッチがまずは出迎える。
「ユウキヴィッチがお世話になりました。」
ノーリー王妃がにこやかに声をかけると、
「兄に似て優秀だったため、ちっとも苦労はなかった。」
とイッシキ国王が返事をした。

イッシキ国王は顔はナオキヴィッチとよく似ているとコトリーナは思った。髪の毛がふさふさだったらもっと似ていたに違いない。

「父上、母上そして兄上、ただ今戻りました。」
祖父母に続いて挨拶をしたのは、背丈がまだ伸びる途中といったユウキヴィッチである。やはり顔は兄にどこか似ていた。
そのような親族の再会を、コトリーナは微笑ましく見守っていた。

「おじい様、紹介します。私の妃となるコトリーナ・アイハーラ嬢です。」
漸くナオキヴィッチがコトリーナを紹介してくれた。
「初めまして。コトリーナ・アイハーラと申します。ふつつか者でございますが何とぞ…。」
「…本当にその通りのようだな。」
コトリーナの緊張の挨拶をさえぎったのは、何とイッシキ国王であった。
「顔にちゃんと書いてあるわ。“ふつつか者”と。」
「え?」
思わずコトリーナは顔をペチペチと叩いてしまった。イッシキ国王は冗談を言ったのだろうか。いや、違う。そんな顔はしていない。
そして、驚くべきことは更に続く。
「おじい様の仰る通りです。ただ、僕には“まぬけ”と書いてあるように見えますが。」
何とユウキヴィッチまでそんなことを言い出したのである。
「アハハハ、さすがユウキヴィッチじゃ!」
そして満足そうに笑うイッシキ国王である。

「お父様!いきなり何てことを仰いますの?失礼じゃありませんか!」
戸惑うコトリーナを庇ったのはノーリー王妃であった。
「そうですよ、あなた。可愛い孫嫁になんてことを。」
イッシキ王妃も一緒に庇ってくれる。しかしイッシキ国王は「フン」と横を向いてしまった。
「ユウキヴィッチ、あなたもあなたです!お兄様のお妃となる方になんて口のききよう!謝りなさい!」
「嫌です。」
即答のユウキヴィッチである。

「わしは、ナオキヴィッチの嫁はもっといい嫁が来ると信じておった。」
イッシキ国王が憮然と言った。
「いいお嫁さんですよ。見ればお分かりでしょう?」
ノーリー王妃の言い分にまたもや「どこが」と言い返し、イッシキ国王はジロジロとコトリーナを見た。
「…間の抜けた顔、安定感のない体つき、特に腰!」
「こ、腰?」
思わずコトリーナは自分の腰を撫でてしまった。
「そげな腰で跡取りが産めるもんかね?ああ、もっと安産型の嫁を選べばいい物を。それとも何かね?あんた、頭はナオキヴィッチと並ぶ出来とか?」
「いえ、全然。」
今度はナオキヴィッチが即答する番であった。
「やはりな。」
イッシキ国王は頷くと、欠伸を一つした。
「やれやれ。長旅は年寄りの体にはこたえる。少し休みたいのだが、部屋に案内してくれないか?」
父の勝手な振る舞いに怒りを露わにするノーリー王妃であったが、ここはひとまず部屋に閉じ込めておこうと付き添うことにした。シゲキヴィッチ、ユウキヴィッチも一緒である。ナオキヴィッチは母親に睨まれ、コトリーナと共にその場に残った。

「王子様…イッシキ国王陛下は私がお嫌いなのでしょうか?」
まさか祖父にいびられるとは思っていなかったコトリーナは、どうしていいか分からずナオキヴィッチを見上げる。
「そういや、思い出した。」
「何をですか?」
「おじい様は俺の嫁は自分が見つけると、常々言っていたことを。」
「それを先に言って下さればいいのに!」
「言ったところでどうするんだ?もうお前が嫁になることが決まってるのに。」
「それはそうですけれど。」
あともう一つコトリーナには不満なことがある。
「頭が悪いと即答しましたね?」
「本当のことだし。」
「もうちょっとオブラートに包んでって、いつも言っているのに。」
「お前の出来の悪さを包める巨大なオブラートは存在しない。包んでほしければ、もうちょっとマシになってくれ。」
「何て酷い言い方。」
「正直に言ったまでだ。」
話はそこまでだとナオキヴィッチは言い、スタスタと歩いて行く。コトリーナはこれからどうすればいいのかと、溜息をついて後を追いかけた。




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水玉さん♪
密かに続編を狙っていたというか・・・・訴えていたというか・・・・
とにもかくも、続編有難うございます!!!!
こちらのコトリーナちゃんは可愛さ100倍ですから。

これから、琴子ちゃんのかわいさとパワーをたくさん見たいです♪
そのパワーであっと驚かせようね。

tomokoreikoさん、ありがとうございます。

そうなんです、やっと結婚式(笑)
さぞ、コトリーナの花嫁姿は可愛いことでしょう。
せっかく嫁姑の仲も円満だったというのに、とんでもないのが…。
耐えてゾーンはそんなにないと思います!ぜひ読んで下さると嬉しいです。

Yunさん、ありがとうございます。

イタキス期間半年なんですね!
そうですよね。今年から二次小説の世界を御存知の方は今年が初めてなんですよね。
Yunさんにワクワクして頂けて、嬉しいです。
とんでもありません。なかなかお返事ができずに、本当にすみません。
記念日に連載スタートもいいですねえと言っていただけて、すごく安心しました~!!
そういう言い方して頂けると、こちらもとても嬉しいです。
ありがとうございます。

たまちさん、ありがとうございます。

いえいえ、イリエアンシリーズで私も認識しております。
そうですよね、琴子ちゃんデザインのケーキはどうなるのか?
バリバリベチョベチョマフィンはどうなっているのか。

破談になることはないでしょう。
でもおじい様は手ごわいですからね~!!

紀子ママさん、ありがとうございます。

大好きと言って下さり、ありがとうございます!
投票で全く票が入らないシリーズですが、私も書いていて楽しいです。
本当にナオキヴィッチの濃ゆ~い血が入ってますもんね、おじい様(笑)
でも原作を読み返すと、なかなか楽しいことに気づきました。

ゆみのすけさん、ありがとうございます。

狙っていて下さったんですか!
ゆみのすけさんから頂いた先日のコメントで、読み返してみたら一年以上書いていなかったことに気づいて!
これはそろそろ結婚させないと可哀想だと思って書いてみました。
喜んで頂けて嬉しいです。
原作を読み返して、琴子ちゃんのパワーを実感したところです。
うまく出せたらいいなあと思っているのですが…。
プロフィール

水玉

Author:水玉
『イタズラなkiss』のほかには『ゴルゴ13』が好きです☆
多数あるイタキスの二次小説の中で邪魔することなく、ひっそりとマイペースで我が道をゆきつつ生息しております。
そっと見守っていただけたら嬉しいです。

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当ブログは、『イタズラなkiss』の二次創作をメインとしておりますが、時折管理人の趣味や日々の出来事についての記事も書いております。

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二次創作については、いわゆる原作の隙間をぬった作品もありますが、主人公以外のキャラクターをメインとしたものや オリジナルキャラクターが出てくるものもございます。

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