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2013.10.30 (Wed)

大蛇森の欺罔











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わが脳神経外科に、研修医が来ることになった。
どんな男だって?ちょっと待ちたまえ。なぜゆえ男だと決めつける。僕が選ぶのだから男に違いないだろうって。うーん、なかなか君、鋭いところをついてくるね。さては僕の熱烈なファンかい?

ご明察どおり、研修医は男だよ。
ああ、来た来た。

「大蛇森先生、ご指導よろしくお願いいたします。」
「はい、こちらこそよろしく。」

いいね、いいね!やはり若い男性はフレッシュで最高だよ!
履歴書の写真で第一次選考して(イケメンを絞ったが、何か文句でも?)、面接で実際に体格をチェックして(決していやらしい意味ではない。体力勝負だからそこを確認したまでだ。誤解しないように)。

「それじゃあ、最初にこちらを。」
僕は数枚のディスクを取り出した。
「僕の華麗なるメスさばきを収録したものだ。DVD版とブルーレイ版の2種類がある。DVDが3,500円でブルーレイが4,500円。ちなみにブルーレイには特典映像がついてくるよ。」
「で、ではブルーレイの方を。」
「料金は後ほどで構わないから。」
「ありがとうございます。」
フフフ、特典映像が何か君たちも気になるだろう?何と『大蛇森の麗しいプライベートタイム』なんだよ。あ、僕のバスタイムシーンとかあるから、一応R18にしておいているんだ。お子様の前では見ないように。
医者じゃないけれど医学に興味があるという人はぜひ斗南大医学部の事務局までご連絡を。



「じゃあ、簡単に病棟を案内しておこうかな。」
「え?先生自ら案内して下さるのですか?」
「ええ。丁度今手が空いているし。一緒に患者さんに挨拶もしておいた方がその後スムーズになるでしょう?」
「ありがとうございます。」

…ナースになんて任せてみろ。若い男ってことで群がって汚い手がついたらたまらないからな。やっとこの僕が選んだ活きのいいピチピチの研修医、絶対離さないさ。

と、ちょうどいい所にあの先生が!

「入江先生。」
僕が声をかけると、入江先生が振り返って笑顔を見せてくれた(筆者注・大蛇森にはそう見える)。
「大蛇森先生、研修医の先生ですか?」
「そうなんだ。こちら、小児外科の入江先生。小児外科といっても他の科も完璧な、斗南大病院のエースだよ。」
「わあ、すごいんですね!」
「いえ、そんなことは。」
そして僕は研修医の先生を入江先生に紹介する。
入江先生は優秀だけに忙しく、挨拶だけをすると次の場所へと足早に向かった。

「素敵な先生ですね。」
「そうだろう?」
ほうほう、入江先生の素晴らしさをもう理解したとは。しかも素敵だなんて、なかなか見る目があるじゃないか。さすが、この僕が選んだ研修医だけある。

「脳神経外科にも顔を見せられることがあるんですか?」
「ああ。とにかく優秀な医師だからね。君も沢山彼から学ぶといい。」
「はい、がんばります!」

いいねえ、素直で。

「入江くん~!」

チッ!人が最高にいい気分でいるところに、雑音が入った。
本当にどこでも顔を出す、鬱陶しい奴め!

「大蛇森先生、あの看護師さんは入江先生のことを“入江くん”と呼んでいるみたいですけれど、どういう関係なんでしょうか?」

ああ、何でそこを気にするか。名医になりたければ余計な雑音は遮断したまえ。

「ええと、あれはただの看護師だ。」
「でも呼び方がおかしくありませんか?僕のような研修医だったらあの呼ばれ方も全然不思議はありませんが、入江先生のような優秀な先生を君づけって。」
「彼女は…彼女の中には“先生”という単語が存在しないんだ。」
「存在しない?」
「ああ、そうだ。なぜなら日本人じゃないからだ。」
「え!?それじゃ外国の方なんですか?」
「そう。確かダメダメトロイ人だったかな?」
「だ、ダメダメトロイ人?そんな国あるんですか?」
「あるよ!君、もしかして受験に必要ない部分は勉強しなかったんじゃないかね?」
「うっ!」
「そうだろう。医学部をめざす人間にありがちなんだ。広い世界、知られていない国があるんだ。」
「勉強不足ですみません。」
彼は素直に自分の非を認めた。ああ、僕の胸が痛む。これもあのチンチクリンのせいだ。
あいつさえ姿を見せなければ、彼をこんなに傷つけずに済んだっていうのに。
「とにかく、彼女の国、ダメダメトロイ国の言葉には “先生”に当たるものがないらしくてね。それで先生という呼び方に馴染みがないので、ああいう呼び方をしているんだ。」
「そうなんですか。それなら納得します。」

よし、何とか切り抜けた!


「入江さん、あなた、503号室の石田さんの点滴交換は?」
「あ、すみません!」

「大蛇森先生、今、あの看護師さん、入江さんって呼ばれませんでした?」
「え?き、気のせいじゃないかね?」

おお、ジーザス!ダメダメトロイのチンチクリンがゆえに清水主任に叱られている。それを彼に見られてしまった。


「偶然、同じ名字なんですか?あ、もしかして二人は結婚しているとか?」
「ありえなーいっ!!ナッシング!!」
僕は声という声を張り上げた。
「結婚なんてしてない、入江先生は!」
「そうなんですか?」
「当たり前だ!」
何て恐ろしいことを言うんだ、君は!

「あの二人は結婚なんてしていない!婚姻届という、薄い紙切れに署名をするだけの、そんなくだらないことをするわけないだろうが!」
「くだらないって…。」
「仮に君の妄想としてだ。二人がもし結婚していたら?それは何かの過ちだね。署名だって入江先生の意思でしたかどうかも定かではない!あのチンチクリンがストーカーのように入江先生のゴミをあさって、サインをしたものを探し出し、それを巧妙な手口で真似て書き込んだ可能性だってあるじゃないか。いいや、絶対そうだ!ああ、想像しただけで寒気がする。君も医者ならばくだらない妄想するのは控えたまえ!」
「は、はい…。」
「大体、婚姻とはどういう意味か君、知っているか?え?」
「結婚じゃないんですか?」
「ちがーう!」
僕は思いきり首を横に振った。振り過ぎて首がもぎれるかと思ったくらいだ。

「婚姻とは、生活共同体を作ろうというお互いの意思があって成立するものだ。それが入江先生にあると思うか?」
「さあ、どうでしょうか…?」
「あるわけないだろう!入江先生くらいの優秀な、素晴らしい男が何を好んであのチンチクリンと共同して生活を作る意思があると?あるわけないだろうが!あいつと共同生活を送るくらいならば、ゴキブリとゴキブリホイホイで暮らすことを僕は選ぶね!」
「そんな…そこまで…。」」
「とにかく、くだらない考えはこれきりにしたまえ。分かったか?」
「分かりました…。」



********************

「はあ。」
脳神経外科での研修医は溜息をついた。一日目がやっと終わろうとしている。
指導医の大蛇森先生は信用できるんだろうか?腕はいいって噂を信じて希望したんだけど…どうも昼間の様子を見ると不安を隠せない研修医である。

「お疲れ様です。」
あちこち駆け回った後、スタッフステーションに戻った彼を迎えたのは昼間見かけた、入江という看護師だった。
「お疲れ様です。ええと…日本語お上手ですね。」
「え?」
「いえ。こうしてみると日本人にしか見えないなあって。入江さんの国の方って日本人とそっくりなんですか?」
「私の国?」
「はい。」
入江看護師…琴子は首を傾げて考えた。
―― 私の国、私の国…ああ、田舎ってことか!お国はどちらですかとか言うし。てことは、秋田のことと考えていいのよね?

「ええ、そうですね。まあ私みたいなのが(=美人が)多いですよ。」
「そうなんですかあ。僕も行ってみたいなあ。」
「ぜひ。いい所ですよ。」
「でしょうねえ。」

二人は顔を見合わせて笑った。全く内容は通じていないというのに。

研修医はパソコンに向かう琴子の横顔を見た。
―― 可愛いなあ。ダメダメトロイ人って結構いいかも。

「あの、入江さん?」
「はい、何でしょうか?」
「あの、ええと…入江さんって可愛いですね。」
疲れからか、ついそんなことが口を突いて出てしまった。
「そんな…。」

「琴子。」

琴子が照れたと同時に、現れたのは入江医師…入江直樹である。

「琴子?え?」
研修医は目を丸くした。
「入江先生、今、何て呼びました?」
「琴子って呼んだけど?」
昼間の愛想の良さはどこへやら、冷たい何かがビシビシと当たるかのような態度である。

「そう呼ぶことに何か問題でも?」
「いえ、ただ…ちょっと…あっ、そうか。」
研修医は一人合点した。
「分かった!そうですよね、入江さんが日本人じゃないからだ!」
「は?」
「そうですよね?入江先生のことを入江くんって呼ぶくらいですもん。あ、でも琴子って?そうか、この国に永住するために改名したんだ!うん、可愛い名前ですね。」
「ど、どうも。」
意味が全く理解できないが、取りあえず琴子は名前を褒められたので礼を言った。

「それじゃ、僕も今日から入江さんの国に合わせて、琴子って呼びます。よろしく、琴子!よかったら今夜飲みに行きませんか?」

ドカッ!バシッ!バターンッ!



************

あの研修医くんが、僅か一週間で病院を去ってしまった…。
『入江にやられた』というダイイングメッセージ(?)を残して。

入江とは絶対チンチクリンのことに違いない。
チンチクリンのあまりの駄目さに愛想を尽かし、こんなナースのいる病院で研修なんてまっぴらだと思ったのだろう。

研修医くんは、尻をひどく痛めたらしかった。僕もちょっと忙しかったためにあまり指導出来なかったのだけど、時折見かけると尻を擦りながら歩いていた。
可哀想に。
どうせあのトロいチンチクリンがカートでもぶつけたに違いない。
「あ、ごめんなさい。大丈夫ですかあ?」と間抜けな声を出しながら、更に足をふんづけて痛めつけたのだろう。
未来ある医師の体を傷つけてどうしようもない奴だ。
あいつ、もしかして医師の体を傷つけるのが趣味なのか?僕も昔やられたことだし。

あーあ。
入江先生も見込みがあると思ってくれたのか、色々仕事をさせてくれていたようだというのに。
カルテの整理、病棟の巡回、手術の立ち会いと、入江先生があんなに熱心に対応してくれたのに。
目を赤くして栄養ドリンクを飲んでいる姿を時々見かけたけど、それも入江先生の愛の鞭だったのだろう。

それを全部、全部あのダメナースが壊しやがって!!

はあ、やれやれ。
僕のハーレムはいつ完成するのやら。
あいつがいる限り、永遠にできないかもしれない、クソッ!!



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 |  2013.10.30(Wed) 19:53 |   |  【コメント編集】

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 |  2013.10.30(Wed) 21:19 |   |  【コメント編集】

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 |  2013.10.31(Thu) 02:48 |   |  【コメント編集】

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 |  2013.10.31(Thu) 10:37 |   |  【コメント編集】

最近 記事の更新がないので、体調を崩されたのではと心配になりコメントさせていただきました。朝晩 寒くなってきたので、お体に気をつけて下さい。
ゆこりん |  2013.11.11(Mon) 19:10 |  URL |  【コメント編集】

★ゆこりんさん、ありがとうございます。

すみません、御心配をおかけして。
少々忙しくてパソコンから離れておりました。気づいたら結構時間が経ってしまって。
元気にしております。
ゆこりんさんも、体調に気をつけて下さいね!
水玉 |  2013.11.12(Tue) 15:04 |  URL |  【コメント編集】

★まあちさん、ありがとうございます。

お返事遅くなりました。申し訳ありません。
いや、どこか違う病院に行ったのかと笑
ここで入江先生の下で働くのは限界だったのでしょう。
本当にそんな国、あるわけないじゃんって感じですよね。
勉強ばかりしてきて、分からなかったのかもしれません。
大蛇森、本当に自分からイケメンを遠ざけていることに気づくのはいつのことやら。
水玉 |  2013.11.12(Tue) 15:06 |  URL |  【コメント編集】

★よしピーさん、ありがとうございます。

お返事が遅くなり、申し訳ありません。
タイトルは『ぎもう』です。
貴重な休憩時間に読んでくださりありがとうございます。
彼は観たのでしょうか?赤いバラを浮かべた大蛇森のバスタイム笑
サービスショット、もちろん満載ですよ!そうそう、多分あのBGMですよね。恐らくよしピーさんと同じ曲を連想していると思います。
水玉 |  2013.11.12(Tue) 15:08 |  URL |  【コメント編集】

★たまちさん、ありがとうございます。

お返事遅くなり申し訳ありません。

元気でしたよ、大蛇森先生。
結婚している事実、相変わらず認識していないんでしょうね。
そうそう、入江先生がチンチクリン琴子ちゃんを愛している事実もシャットアウト。
自分の都合よく考えるところはチンチクリン琴子ちゃんとよく似ているといえば、似ている気もするのですけれど。

入江先生の逆襲の方がよほどイケメン研修医には辛かったようで。
これ以上ここにいたら命にかかわると早々に退散したようです。
ハーレム、確かに全然作れてませんよね。これからも作れそうもなさそうです、はい。
水玉 |  2013.11.12(Tue) 15:10 |  URL |  【コメント編集】

★紀子ママさん、ありがとうございます。

お返事遅くなり、申し訳ありません。

本当にアホというくらい素直ですよね。
何でもかんでも信じちゃって。
それでナンパもするって一体(笑)そりゃあ入江先生にボコボコにされるわけです。
こうして斗南大病院には研修医がいつかなくなっていくんでしょうね。
その原因をつくっているのは、大蛇森先生に他ならないんですけれど(笑)
水玉 |  2013.11.12(Tue) 15:12 |  URL |  【コメント編集】

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