日々草子 シンデレラ・コトリーナ 11

シンデレラ・コトリーナ 11

ふと拍手履歴を眺めていたら、「姫と軍師」をどなたか読んで下さってますね(笑)過去作品に一つずつ拍手が入るとなんだかすごく嬉しいです。ありがとうございます。








その後、コトリーナとナオキヴィッチが顔を合わせる日はなかった。ナオキヴィッチも忙しくしていたし、コトリーナは布団に水たまりを作ることに精を出していた。

ところが。

「何ですってえ!!」
またもやコトリーナの部屋でモトの絶叫が響き渡った。
「お、女に…女にわざわざアンタを会わせるですってえ!!」
この日、ナオキヴィッチの使いがやってきて、明日ロクサーヌに会いにいくのでコトリーナも伴をするようにと伝言を伝えたという。
「行く必要なんてないわよっ!まったくどこまでアンタを馬鹿にすれば気が済むんだか!」
さすがにモトは怒りに震えずにいられなかった。
「ちょっと顔と頭がいいからって、何をしても許されると思ってるのかしら!王子だから人を馬鹿にしていいなんて法律はないってのに!」
そしてモトはコトリーナの両肩をガシッと掴む。
「行く必要なんてないわよ。分かった?」
「ううん…。」
コトリーナは首を横に振った。
「行くわ。せっかく王子様が誘って下さったのだし。」
「そこまでお人よしにならなくていいのよ。」
「もしかしたら、ロクサーヌ様の上品なところを学ぶようにって思われてのことかもしれないし。私のことを考えて下さっているのかもしれないわ。」
「コトリーナ…。」
そしてまた、コトリーナは涙の水たまりをつくったシーツを干しに行くのであった。



翌日。モトは心配でたまらなくなりコトリーナの部屋を訪れた。
「コトリーナ…ひぃっ!!」
コトリーナの顔を見るなりモトはのけぞった。
「モトちゃん…。」
コトリーナの顔はどこをどう塗りたくればそんな色になるのかというくらいの真っ白い顔。そして頬はこれまた頬紅を一つ使いきったのではと思うくらい、真っ赤な真丸ほっぺ。

「き、気合入れすぎじゃないの…?」
「違うわ。」
朝になってまたもやナオキヴィッチから使いが来て、あまり華美な格好をしないようにと言われたのだという。
「どこまで酷い王子なのかしら。」
あくまでロクサーヌの引き立て役にするつもりだと思い、モトは歯ぎしりせずにいられない。
「それでお化粧も薄くしようと思って…でもできないの。どんなにしても、どんどん厚くなってしまうの。」
ポロポロと涙をこぼすコトリーナ。それなのに一向に落ちる気配のない厚化粧…。

「これはきっと、私の心が醜いからなのよね。」
「醜い?」
「そうよ。頭では王子様の言われた通りにしようと思っても、心の奥でロクサーヌ様に負けたくないって醜い気持ちがあるから、それがお化粧に出てしまったんだわ。私ってなんて最低な人間なのかしら。」
涙がとめどなく溢れだす。しかしそれでもびくともしない厚化粧…。

「アンタは醜い人間なんかじゃないわよ。」
「え?」
「ほら、じっとしていて。」
モトは杖を取り出した。
「カマ、カマ、カマ~!!」
呪文と共にモトが杖を大きく動かす。するとコトリーナの顔から厚化粧が消え、ほとんど素肌のような、しかしきちんと施されたメイクが完成される。そしてドレスも派手すぎず、しかし卑下しすぎることもない上品なものへと変わった。いずれもコトリーナに良く似合っている。

「うん、完璧ね。」
「モトちゃん、ありがとう!」
抱きつくコトリーナの頭を撫でながらモトは、
「いい?変な気を起こさないようにね。何があってもまっすぐお城に帰ってくるのよ。」
と優しく言った。



ということでナオキヴィッチとコトリーナは城を出発した。

「…おい。」
馬車に揺られながらナオキヴィッチはコトリーナを見た。何と二人は同じ馬車に乗っている。
「青空が広がっているってのに、何でお前はそんな辛気臭い顔をしているんだ?え?」
モトに魔法をかけてもらったものの、いざナオキヴィッチと顔を合わせるとコトリーナの胸には悲しみが広がる。それでコトリーナはうつむいたままであった。
「ごめんなさい…。」
「ったく、鬱陶しい奴。」
「ごめんなさい…。」
何とも、暗い馬車となってしまうのである。



馬車が止まった時は城を出発してどれほどの時間が経過していたか。全く外を見ていなかったコトリーナは、どこに連れて来られたのかも分からなかった。

「ここにロクサーヌ様が?」
とにかく街から大分離れたところであることは間違いなかった。のどかな田園風景が広がっている。しかし屋敷がある気配はない。
「王子様、ロクサーヌ様はどちらに?」
「ああ、こっちに向かっている。」
「向かっている?」
そう言われても女性の姿は一体どこに?コトリーナが辺りを見回していると。

「モー。」

これはまた毛並みのいい牛が二人の前に姿を見せたではないか。

「ロクサーヌ、元気だったか?」
「モー。」
ナオキヴィッチが声をかけると、嬉しそうに声を上げるホルスタイン牛。
「ろ、ロクサーヌ様って、もしや?」
「彼女がロクサーヌだ。」
ニヤッと笑って、ナオキヴィッチはその牛、ロクサーヌをコトリーナに紹介したのだった。



「ひ、ひどい!!王子様の意地悪!!」
ようやく事態をのみこんだコトリーナは顔を真っ赤にして、ナオキヴィッチを怒鳴りつけた。
「何で早く言ってくれなかったのですか!」
「だってお前、聞かなかったじゃないか。」
ロクサーヌの鼻を撫でながら、ナオキヴィッチは意地悪く答えた。
「ロクサーヌは人間か?って聞かれたら、俺は正直に牛だって答えたぞ。」
「普通、そんな聞き方しませんよっ!」
まったく、牛に嫉妬していたとは。牛を思って毎日ベッドに水たまりを作っていたとは。
「意地悪な王子様!」
「そんな男を好きなくせに。」
「うっ!」
自分の片想いを手玉に取られると、コトリーナは何も言い返せない。

「…このロクサーヌ様、いえ、ロクサーヌちゃんはとても大事な牛なんですか?」
落ち着いたところでコトリーナはロクサーヌについてナオキヴィッチに訊ねた。
「ああ。ロクサーヌは俺のために色々協力してくれているんだ。」
「協力?」
「どういう餌を食べさせたら栄養価の高い牛乳ができるか。飼料の配合を細かく分析しているんだ。そんな実験に付き合ってくれているのが、こいつだ。」
ナオキヴィッチはロクサーヌを撫でる。
「栄養価の高い牛乳は国民の健康維持に必要だからな。高価にならず、皆に行きわたるためにはどうすればいいか。俺の研究に大人しく協力してくれているんだ。」
「そうだったのですか。」
なるほど、それでは月に二回足を運ぶわけである。
「ロクサーヌちゃんは王子様の大事なお仕事のパートナーなんですね。」
コトリーナはロクサーヌの体を撫でた。するとロクサーヌが「モー」と機嫌のいい声を出す。
「ロクサーヌちゃん、私ともお友達になってくれる?」
「モー。」
「嬉しい!」
そんなコトリーナとロクサーヌのやり取りを、ナオキヴィッチは優しく見守っていた。



「ということで、俺は城で研究してきたことをここの職員と話し合ってくる。」
「分かりました。」
「じゃ、これを頼む。」
ナオキヴィッチは大きなバスケットと敷物をコトリーナに渡した。
「いい場所を取っておけ。」
「…はいっ!」
お昼は二人でという意味だと分かり、コトリーナはウキウキしながら場所を選びに行く。
「ったく、現金な奴。」
フッと笑うナオキヴィッチ。
窮屈な城に閉じこもっているのも辛いだろうと、以前コトリーナが妄想していたことを実行してやろうとここに連れてきたのは成功だったらしい。
「しかし、お前に嫉妬しているところは笑えたな。」
「モー。」
「何だ?あいつをからかっては可哀想だと?」
「モー。」
「珍しいな、お前が俺以外に懐くなんて。」
どうやらすっかりコトリーナを気に入ったらしいロクサーヌを自ら引き、ナオキヴィッチは職員たちが待つ場所へと向かった。



「うふ、ここなんていいかも。」
見晴らしのいい場所を見つけ、コトリーナはバスケットを置いた。
「王子様と二人で…何て素敵な日!」
城を出てきたときとは見事に打って変わった様子のコトリーナ。
「さて、敷物をと…。」
敷物を敷こうとした時だった。強めの風が吹き、コトリーナの手から敷物を奪ってしまった。
「待って!!」
慌ててコトリーナは飛んでいく敷物を追いかけ、森の奥へと走って行った ――。



「あいつ、どこまで行ったんだ?」
ひと仕事を終えたナオキヴィッチはコトリーナの姿を見回した。
「浮かれて遠くまで行きやがったか?」
と思いながら歩いて行くと、見晴らしのいい場所に大きなバスケットが一つだけ置かれているのが見つかった。
「これは一体?」
事態を察知したナオキヴィッチは、森の奥へと目をやったのだった ――。





関連記事

コメントの投稿

非公開コメント

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

YKママさん、ありがとうございます。

そうなんです。モーモーさんだったんですよん♪
似た名前を探して下さったんですね。
コトリーナちゃんを嫉妬させて喜ぶ王子様、本当に性格悪いです(笑)

紀子ママさん、ありがとうございます。

紀子ママさんは馬だと!
確かにロクサーヌ号に乗る王子様も魅力ではありますけど、ここは違う目的があるので牛に(笑)
牛はほら、色々出してくれるから…。

コトリーナちゃんの一途で可愛らしい性格はさぞ、王子様には新鮮なことでしょう。
迷子にはならないかもですが、違う理由で泣いていそうです。

たまちさん、ありがとうございます。

くまもん、とくると別ぺの琴子ちゃんが書きたくなりますね。
ご当地キャラオタク設定の別ぺの琴子ちゃん(笑)
そうそう、直すうちに厚くなるもんですよね。特に眉毛とか(笑)Tゾーンとか(笑)
本当にロクサーヌは頭のいいモーモーさんです。さすがナオキヴィッチに目をつけられただけある!
口が堅いので(笑)、ナオキヴィッチも素直になるんでしょうね。
森に入ったコトリーナちゃんを王子様は見つけることができるでしょうか?

tenchanさん、はじめまして。

初めまして!
こちらこそ読んで下さりありがとうございます。
『姫と軍師』は他の作品に埋もれてしまって目立たなくなっているものですから、珍しいなあと思うと同時に見つけて読んで下さったことが嬉しくて、つい書いてしまいました。
私のメッセージに反応して下さってありがとうございます。
沢山のお話がありますが、埋没してしまっているお話も多くあるので…そういうお話に拍手をポツポツといただけるのは見ていてとても嬉しいものなのです♪
ぜひまた遊びに来て下さいね!

まあちさん、ありがとうございます。

ありがとうございます!

そうなんです、牛だったんですよ~。
コトリーナちゃんの反応、楽しんでいますよね。おねしょ疑惑をかけたり訂正しなかったりとまあ…本当にかわいくない王子です。
意地悪しすぎてコトリーナちゃんに愛想尽かされたらどうするんでしょ?
さすがに行方不明のコトリーナちゃんを探しに行きそうですけどね!
プロフィール

水玉

Author:水玉
『イタズラなkiss』のほかには『ゴルゴ13』が好きです☆
多数あるイタキスの二次小説の中で邪魔することなく、ひっそりとマイペースで我が道をゆきつつ生息しております。
そっと見守っていただけたら嬉しいです。

※当ブログに掲載されている文章及びイラストの無断転載・使用はご遠慮下さい。

現在の御訪問者
現在の閲覧者数:
御訪問ありがとうございます
このブログについてのお願い
当ブログは、『イタズラなkiss』の二次創作をメインとしておりますが、時折管理人の趣味や日々の出来事についての記事も書いております。

原作者様や関係各位とは一切関係ありません。

二次創作については、いわゆる原作の隙間をぬった作品もありますが、主人公以外のキャラクターをメインとしたものや オリジナルキャラクターが出てくるものもございます。

そして、原作と違った時代(平安や明治やその他の時代を舞台にしております)、異なる設定(主人公を医者と看護師じゃない職業にしております)で書いてあるものが多いですが、原作を冒涜しているつもりは全くございません。

二次創作が苦手という方及び原作のイメージと合わないと思われる方はどうぞお引き取り下さいますようお願いいたします。

コメント及びメールなどでの苦情及び批判は公開、非公開を問わず、私へ告げることはご遠慮いただけますよう、お願い申し上げます。

このブログ及び掲載されている話が嫌いだと思われたら、黙ってあなた様の中から、このサイトの存在を消去していただけますよう、お願い申し上げます。

カテゴリー+月別アーカイブ
 
最新コメント
最新記事
カボチャの世界
Private
カレンダー
03 | 2017/04 | 05
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 - - - - - -
リンク