日々草子 入江裕樹の考察

入江裕樹の考察

イタキス期間ということで、私もこっそりと便乗させていただくことにしました。
というか実は便乗したくてたまらなくて!
今月初めに細々と創作はしていたのですが…これがなかなか難しくて。
せっかくのイタキス期間にこういうのでいいのかと、水を差すのではと不安になってUPは控えていました。
男性キャラから見たイリコト~という風に書きたかったのですが。

それじゃあ、違うお話をと思って、昨夜こっそりUPしてみたのですがこれがまた、笑えるくらい引かれていた感じだったので一旦下げました。でもお祭り気分を味わいたいので落ち着いたころにまたUPしてみます。


あと、昨日久しぶりにまーくん更新しました。







大抵、彼は一人で下校することが多かった。
しかし、最近はどうも様子が違っていた。

「裕樹くーん、一緒に帰ろう!」
その声が聞こえた途端、彼は「チッ」と舌打ちをした。
「待って、待って。」
「やだね。」
待ってと言われたら余計足を速める、何とあまのじゃくなことこか。

「ああん、裕樹くん、歩くの早いね。」
「お前の足が短いんだろ。」
「歩くの早いのに、どうして徒競争は遅いんだろうね?」
「余計なお世話だ、ばあか!!」
「ごめん、えへへ。」

褒めたかと思いきや即座に突き落とす。このせりふ回しというか物事の思考回路は本当にあいつに似ていると、彼、入江裕樹はとある人物の顔を思い浮かべた。

「ねえねえ、琴子先生、元気?」
裕樹が思い浮かべた人間の名前を、この少女、佐川好美は「琴子先生」と呼ぶ。
「馬鹿だから元気。」
「そんな言い方、琴子先生が可哀想だよ。」
そして好美はその琴子を慕っている。
「だって馬鹿なんだからしょうがないじゃん。」
「そんなことないもん。あ、直樹先生は?」
「元気だけど。」
と、ここで裕樹の足が止まった。突然止まったため、思わず好美は裕樹の背中に鼻をぶつけてしまった。

「どうしたの?裕樹くん。」
「お前さ、何でお兄ちゃんのことまで“直樹先生”って呼ぶわけ?」
「え?」
前から裕樹にはそれが不思議だった。
琴子を先生と呼ぶのは、好美と琴子が知り合ったのは、琴子が数カ月前、斗南中に教育実習に来ていた時だからその名残である。しかし直樹は?直樹は教育実習に来ていないし、まだ医者にもなっていない。
「ええと…それは…。」
「何だよ?」
「…ほら、琴子先生の旦那様だから?いちいち“琴子先生の旦那様”とか“裕樹くんのお兄さん”とかいう呼び方って長くて大変だもん。」
なぜか挙動不審になりながら、好美はあせあせと説明した。
「琴子先生の旦那様だから直樹先生でいいかなって?」
「…意味不明。」
やはり琴子や好美のレベルの人間の思考回路は自分に理解できないと思い、裕樹はまたスタスタと歩き出す。それを好美が急いで追いかける――。



「秋本が佐川のこと可愛いってさ!」
そんな男子の声が裕樹の耳に聞こえてきたのは、音楽室へ移動している昼休み、F組の前を通った時のことだった。
「好美、やったね!」
「そんなこと、ないよ!」
好美の声に裕樹の視線が動く。F組の教室内には頬を赤く染めている好美の顔があった。
秋本って、どいつだ?と裕樹は教室内を探す。すると片隅に男子に囲まれてこちらも恥ずかしがっている人間が一人。

「ふん、大したことないじゃん。」
背が自分より高いのが気にくわなかったが、所詮はF組の男。頭脳は自分のほうが断然優れているに決まってる。
「どうした?入江?」
「え?いや、何でもないよ。」
クラスメートに早く行かないとまずいと促されながらも、裕樹の頭からはまんざらでもないような好美の顔がずっと離れなかった。



「裕樹くーん、待って!!」
その日も校門を出ようとしていた裕樹の後ろを追いかけてきた好美。裕樹は足を速める。
「待ってってばあ!」
「別にお前なんかと一緒に歩く義務はない。」
と言っても好美は隣に並ぶ。

段々と家へ近付いて行く。
「今日ね、うちのクラスでね、面白いことがあったの。」
「馬鹿なことの間違いだろ?」
「あのね、秋本くんと鈴木くんが…。」
「秋本」と聞いた途端、裕樹の中で黒い何かが拡大した。

「お前さあ。」
「はい?」
「何か勘違いしてるんじゃないの?」
「勘違い?」
きょとんとしている好美を裕樹は睨んだ。
「勘違いって、なあに?」
「何でこの俺が、毎日毎日お前の話に付き合わされなければいけないわけ?」
「え?」
「お前、ちょっと頭に乗ってるよな。秋本とやらにでも聞いてもらえよ!」
「裕樹くん…?」
茫然としている好美を置いて、裕樹はずんずんと家へと向かって大股で歩き出した。



「裕樹。」
突然聞こえた声に、裕樹は驚いて振り返った。
「お、お兄ちゃん?」
大学の帰りと思しき兄がいつの間にか後ろに立っているではないか。
「あ、あの…。」
先程の様子を見られただろうかと、裕樹は焦る。
「秋本ってのが、好美ちゃんのことが好きなのか?」
「違うよ!あいつはただ可愛いって言っていただけで、好きとかそういうのは…って。」
兄の誘導尋問に引っ掛かったことに気付き、裕樹は真っ赤になった。それを見て兄は「クックッ」と笑っている。

「ねえ、お兄ちゃん?」
並んで歩きながら、自分より遥かに背の高い兄を裕樹は見上げた。
「何であんなこと、言ったんだろ?なんかさ、ムカムカってしてきたんだよね。あの馬鹿がヘラヘラとしているのが。」
「ニコニコの間違いだろ。」
「違うよ。いつもヘラヘラしてるんだけど、今日は更にそれが増しているように見えて。秋本って奴に調子に乗せられたからだよ、きっと。」
「それ、何ていうか知ってるか?」
「え?」
「世の中では、お前のその気持ちをヤキモチって言うんだよ。」
ニヤリと笑う兄に、裕樹は、
「違うよ!ヤキモチなんてあいつに焼くわけないじゃん!冗談じゃない!何でこの僕が、背丈しか取り柄のなさそうなF組の男を意識しなきゃならないのさ!」
「はい、ヤキモチ確定。」
自分の考えを見事に無視する兄に、裕樹はムッとなった。

「じゃあさ、お兄ちゃんもこういうの、あるの?」
「こういうの?」
「…ヤキモチ。」
もう家が見えてきている。兄は足を止めた。
「ないね。」
「本当に?」
「琴子が何か言われて喜ぶような男、俺以外にいるわけないし。従って俺がヤキモチを焼く必要はまったくない。今後もあり得ない。以上。」
「…すごい自信。」
門扉を開ける兄の後ろを見ながら、裕樹は呟いた。
「ま、そうやって気にしてるんだったら、明日お前から声をかけてみるんだな。優しく。」
「優しくって、それってお兄ちゃん、琴子にしたことあるわけ?」
「あるよ。」
あっさりと答える兄に裕樹は驚いた。
「見たことないけど。いつ?」
「夜。」
「ふうん。」
謎を残したまま、兄弟は玄関のドアを開けた。



「裕樹くん、好美ちゃんは元気?」
そんな裕樹の事情を全く知ることなく、一番触れられたくない名前を口に出したのは兄弟を出迎えた琴子だった。
「知らない。」
「もう、冷たいのね。優しい言葉をかけてあげないとだめじゃないの。」
「そんな義務ないし。」
「ああ、これだから!もうしょうがないわね。優しいお義姉さんがレクチャーしてあげる。」
「いらねえよ、お前のレクチャーなんて。」
どうも最近、母親に似てきた兄嫁を裕樹は鬱陶しい目で見た。
「だめよ。裕樹くん、好美ちゃんに逃げられたら一生一人よ!裕樹くんみたいな子を慕ってくれるなんてそれだけで、き、貴重かじ?」
「希少価値だろ!…って、何だよ、失礼な!」
「そう、それそれ。ほら、何でも相談に乗ってあげるから。琴子お義姉さんの恋愛相談、365日24時間オープン!」
両手を広げる琴子に、裕樹はふと思った。

「なあ、それじゃあ優しいお義姉さんとやら。」
「はいはい、何でしょう?」
「…お兄ちゃんにどんな風に優しくしてもらっているんだよ?」
「へ?入江くんに優しく?」
「夜、優しくしてもらってるんだろ?」
裕樹としては特に深い意味はなかった。ただ兄に聞いても「自分で考えろ」とか言われそうだから、ならば琴子にと思っただけである。
「よ、夜…優しく?」
すると琴子の顔がボッ!と燃え上がるように赤くなった。
「何だよ?お前、馬鹿だから僕の言葉の意味が分からなくてショートしたか?いいか?夜、お前は、お兄ちゃんに、どう優しくしてもらってるんだって聞いてるんだよ!」
「夜…」以降の部分をはっきりと、一語ずつ区切って、大きな声で裕樹は訊ねた。

「そ、そ、そ、それ…は…。」

「はい、恋愛相談室、クローズ。」
そこに直樹が割って入った。
「琴子、こっち来い。」
「…はい。」
直樹にかばわれるように、琴子が顔を赤くしたまま裕樹から離れた。
「もうクローズか。やっぱ役に立たないな。」
「…お子様相手にはムリだ。」
「え?」
兄はなぜか意地悪く笑っていた。

そういえば、結婚してから兄は琴子を助けることが多くなった。この間の実習の時、やんわりと釘を刺してきたことを裕樹は思い出す。
そして琴子を見る顔が、どこか優しい。
琴子だけではない。好美のことだって先程、裕樹が「ヘラヘラ」と言ったら「ニコニコ」と訂正していた。そんなこと、今までの兄からは考えられないことである。

まだ赤くなってうつむいている琴子を、直樹は優しい顔で見ている。何となぐさめるように、頭までポンポンと叩いているではないか。

――お兄ちゃんは変わった。

今、裕樹は気付いた。



まあ、いい。
とりあえず明日の朝は自分から好美に「おはよう」と声をかけてやろうと裕樹は思った。
いつも好美から挨拶をして来るから、きっと本人はそれが当たり前と思っているに違いない。
「僕から声をかけてやったら、あいつどんな顔するか。」
想像しただけで笑いが込み上げてくる。
更に「一緒に歩きたければ、早く歩く練習して来い」とも言ってやろう。本当にとろいんだからと、裕樹は「ケケケ」と笑った。
その顔が、かつて琴子をからかっていた時の兄の顔そっくりであることに裕樹は気付いていない――。





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お久しぶりです

裕樹君 夜 どんな風に優しくって聞いちゃう…(^-^; まだまだ可愛いですね~!!
さすが入江兄弟 どんなに隠しても 好きな気持ちは抑えられませんよね♪
毎日楽しく読ませて頂いてます(*^^*)これからの更新も楽しみにしてます!

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亮介さん、ありがとうございます。

初めまして。コメントありがとうございます。
最初お名前拝見した時はびっくりしました(笑)

受験勉強の癒しにして下さりありがとうございます。
これからが正念場でしょうが、体に気をつけて頑張って下さいね♪

たまちさん、ありがとうございます。

そうなんですよ、すごく心配で。
あちらでたまちさんのお名前拝見して密かに喜んでました。
一緒に念を送りましょう!!

裕樹くんの方が確かに優しいですよね。100位以内に入った時はちゃんと約束を守ってくれたし。
入江くんはやっぱり入江くんですよね、結婚しても。
きっと二人きりで部屋で何をしているんだろうかと裕樹くんはもやもやしていそうな気がします。
野獣なお兄ちゃんを知ったら、「もしや僕もいつかは…」と不安になりそうな気がします(笑)

まあちさん、ありがとうございます。

なんか入江ママみたいなコメントになってるー(笑)
やっぱりまあちさんのコメント、可愛いです!
本当に中学生相手に何を言っているんだか。それを知った時の裕樹くんは…顔を真っ赤にして逃げていくことでしょう!
私も書いていて楽しかったです。

さくらこさん、ありがとうございます。

お久しぶりです!お元気そうで何より♪
本当にまだまだ可愛いですよね~。入江くん、琴子ちゃんを好きだって気持ちを溢れさす所は成長したなって感じでしょうか?
毎日来て下さってるんですね、ありがとうございます!

ぴくもんさん、ありがとうございます。

うわ~何たる偶然でしょうか!すごく嬉しかったです!
来て下さっていたんだなあと…ホロリ。

もう、そんなこと言っていただくと、ばいーんを書きたくなるじゃないですか!
あれもとんと御無沙汰ですからね…(笑)

さりげなく夜とか言葉にする入江くんが入江くんですよね。
しかもその後に続くぴくもんさんの入江くんの告白が素晴らしい!!
私も最近原作読み返して「あ~前半の意地悪な入江くんも好きだわ!かっこいいわ!」と叫んでおりました。

久々に原作の隙間めいたものを書いてみました。
最近ぴくもんさんのお宅のスキマも読み返しているんです。どんな風に書いたらいいのかなと。

紀子ママさん、ありがとうございます。

いやいや、そんな読み損ねたと悔しがって頂けるようなものじゃございませんので(笑)
なんか最近は書いてみたけれれどラストが浮かばないといった、書きかけのものばかりがUSBの中に増えていって。

裕樹くんは昔は年上好みだったというのに、好美ちゃんをねえ…しみじみ。
原作読み返したら本当に言うことは可愛くないのに、なぜかビジュアルがどんどん可愛く見えてくるんですよね(笑)
琴子ちゃんは一人っ子だから弟みたいで可愛かったんだろうなと思います。
あの入江くんに憧れていたけど、恋愛面は早くに気づいてくれてよかったなあと。
一年後、入江くんは確かにやらかしますね(笑)

YKママさん、ありがとうございます。

そうなんです、実は間違えてました(笑)
最初「松本」にしていたんです。でもUPした後に「これじゃ松本姉とかと同じ名字」と気付いて、慌てて変えたんです。だから一か所訂正し忘れていて。

裕樹くんは好美ちゃんを泣かすことはあまりなさそうですね。
ノンちゃんにからかわれた時は本気で怒っていたし。

ちぇるしいさん、ありがとうございます。

Android、本当に落ちますよね!!
私もそうなんです。最近ブラウザのアプリが重くなったせいか落ちる頻度が高くて!
落ちる、フリーズする、もううんざりです。

そんな大変な状況でコメント、ありがとうございます。
それにしても久しぶりのコメントに「…の花園」って!!大爆笑しましたよ!!
確かに今、入江くんはその花園にどっぷりとつかっておりますが。
どんな風に浸かっているのか、想像しただけでも笑えます。
あの野獣で爽やかな笑いだなんて!こちらこそ、ありがとうございます。
プロフィール

水玉

Author:水玉
『イタズラなkiss』のほかには『ゴルゴ13』が好きです☆
多数あるイタキスの二次小説の中で邪魔することなく、ひっそりとマイペースで我が道をゆきつつ生息しております。
そっと見守っていただけたら嬉しいです。

※当ブログに掲載されている文章及びイラストの無断転載・使用はご遠慮下さい。

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御訪問ありがとうございます
このブログについてのお願い
当ブログは、『イタズラなkiss』の二次創作をメインとしておりますが、時折管理人の趣味や日々の出来事についての記事も書いております。

原作者様や関係各位とは一切関係ありません。

二次創作については、いわゆる原作の隙間をぬった作品もありますが、主人公以外のキャラクターをメインとしたものや オリジナルキャラクターが出てくるものもございます。

そして、原作と違った時代(平安や明治やその他の時代を舞台にしております)、異なる設定(主人公を医者と看護師じゃない職業にしております)で書いてあるものが多いですが、原作を冒涜しているつもりは全くございません。

二次創作が苦手という方及び原作のイメージと合わないと思われる方はどうぞお引き取り下さいますようお願いいたします。

コメント及びメールなどでの苦情及び批判は公開、非公開を問わず、私へ告げることはご遠慮いただけますよう、お願い申し上げます。

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