日々草子 サブ・ローザ 26

サブ・ローザ 26

数日出かけていたので、間が空いてしまいました。待っていて下さった方、ありがとうございます。

いつも拍手とコメントをありがとうござます。
またもやお返事ができない状態が続いてしまい、申し訳ございません。









今日の理志はいつものスーツ姿ではなく、カジュアルな感じであった。同様にカジュアルなスタイルの自分とこうして並ぶのは不思議な感じが直樹にはした。

「入江先生、何になさいますか?」
「コーヒーで結構です。」
「それではコーヒー二つ。」
落ち着いて話をと言われたので、大通りのカフェの奥まった席に二人は座っていた。



「相原さんのことなのですが。」
コーヒーが来たあと、切り出したのは理志であった。やはりこの話かと思い、
「…申し訳ありませんでした。」
と、直樹は頭を下げた。理志が面食らう様子は見ずとも直樹に伝わった。

「騙していたわけではないのです。ただ、病院にも結婚していることは内密にしていたものですから。」
そう言っても、騙されたと理志が思うのは無理もないだろうと直樹は考える。
「あいつは決してあなたを振り回したいと思っていたわけではありません。寺崎さん…理志さんに話さなければと何度も思ったそうなのです。」
「あいつ…か。やはりそういう関係なのですね。」
理志ががっかりしたように呟いた。
「分かっています。お二人とも、俺をからかっていたわけではないということは。秘密にしていたことは何か事情があることも。でもショックはショックでした。」
「本当にすみません。」
「俺があきらめられないと言ったら、入江先生はどうされますか?」
直樹は顔を上げた。
「結婚していても関係ない。好きなものは好きだと俺が主張したら?」
「それは…。」
「何てことを言うんだろうと思われるでしょうね?そう思われても構わないくらい、俺も相原さんが好きなんです。こんなに誰かを好きになったことはないくらい、好きなのです。」
理志は直樹を試している様子ではなかった。本当に琴子を愛していて、あきらめきれない。できることなら何度でも琴子に、と心から決めているかのようであった。

「…世の中にあいつにふさわしい男はいると、思います。俺よりずっとふさわしい男は沢山いるでしょう。」
「え?」
理志は直樹の言葉に耳を疑った。理志の目から見ても直樹は外見は申し分ないし、医師としての腕も若いのに卓越したものがある。
「俺は今まで散々あいつを泣かせてきました。結婚する前からずっとです。琴子の友人は皆、俺のような男はやめておけと口を酸っぱくして言っていたほどです。」
「入江先生が?」
自分と父親の仲をあんなに懸命に取り持ってくれたのにと、理志は信じられなかった。
「ええ。どういうわけか、琴子は俺に夢中でして。正直、どうしてこいつはここまで俺を追いかけて来れるんだと首を傾げたことも多々あります。こんな俺よりもずっといい男はいるだろうにと。でもあいつはこんな俺がいいって、ずっと言ってくれました。」
「相原さんが。」
「はい。あいつにふさわしい男はごまんといるでしょうが、俺が必要な女は世界でただ一人しかいません。それは琴子以外に存在しないんです。俺が琴子を必要としているんです。琴子がいるから、おれはあいつが自慢してくれるような男でありたいと思い努力ができるんです。琴子が傍にいない世界なんて、俺には考えられません。」
「入江先生は相原さんを愛していらっしゃるんですね。」
「愛しています。あいつに惹かれる男はきっと沢山いるでしょうが、その男たちの誰よりも俺の愛情は負けません。」
きっぱりと直樹は理志に告げた。


「…花火師。」
どれほどの間があったか、理志が呟いた。
「え?」
「相原さんに以前、知り合いの方の話を伺ったんです。俺が父とうまくいっていないことを愚痴った時に。」
花火師の話は直樹も立ち聞きしていたから知っている。が、ここではあえてそれを口にしなかった。

「父親と将来で言い争いになったけれど、自分の進路を曲げなかった人がいると。その人は何の道を選んだのかと相原さんに聞いたら花火師だって答えが返ってきました。それって入江先生のことですよね?」
「…多分、そうじゃないかと。」
直樹の答えを聞くと、理志はクスッと笑った。
「先日、入江先生がご自分のことを打ち明けられた時、どこかで聞いた話だと思ったんです。そうしたらこの話をやっと思い出して。そっか。医師と言うと入江先生のことがばれると思って、そんな風に答えたんでしょうね。花火師か。入江先生の花火師姿、ちょっと想像できませんね。」
理志の言葉に、直樹も笑いをこぼす。

「相原さんにとって、入江先生は自分の誇りなんでしょうね。そうやって色々なものを乗り越えて医師になられた入江先生が。」
「俺の誇りは琴子です。」
直樹が優しい顔で言った。
「俺は元々理系だったので医学部への編入は授業は大変でしたけど、慣れると何とかなりました。でもあいつは違う。」
「相原さん、編入して看護師に?」
「ええ。文学部から。」
「それは入江先生が医師になるから?」
直樹は頷いた。
「実習や試験、レポート。すごく大変だったと思います。でも一度も弱音を吐くこともなく、“もう看護師あきらめる”とも言わずになりました。それはなかなか真似できないことだと思います。」
「そうですか。相原さん、そんなに努力したんですね。」
「ええ。」
こんなことを話すと、ますます理志があきらめてくれなくなるのではという不安もあったが、それでも今の直樹は琴子がどれほど素晴らしい人間であるかと自慢したくてたまらなかったのである。

「差し支えなかったら…どうして結婚していることを秘密にしているのか、教えていただけませんか?」
本来だったら怒って説明しろと責められても文句の言えないところなのに、こんな所まで理志は紳士であった。
自分たちも寺崎家の事情を隅々まで知ってしまった。ここで言わなければフェアじゃない気もしたし、理志は所構わず吹聴するような人間でないことは、直樹にはよく分かっていた。

「それも俺が悪いんだと思います。」
「どうしてでしょう?」
「俺と琴子は恋愛期間がないまま、結婚したんです。俺が素直になるのに時間がかかったために。」
「恋愛?恋人の時間を取り戻したかったということですか?」
「ええ。知り合いのいないこの神戸の病院に二人で異動になった時、琴子が言い出したんです。でもそれを承諾したのは俺ですから、責任は俺にあります。」
「いえ、責めている訳ではありません。」
責任という言葉が出てきたため、理志は慌てた。
「でも承諾したということは、先生も恋人同士の気分を味わいたかったのでは?」
「…そうかもしれませんね。」
だからこそ、悪態をつきながらも琴子に合わせているのだろうと直樹は自分でも思う。

「琴子って呼ばれているんですね。」
「はい。」
「…いいなあ。」
理志が羨ましそうに直樹を見つめた。あまりに素直なその表情に直樹が照れを感じずにいられなかった。
「俺も名前で呼んでみたかったな。」
理志の気持ちを聞いて、こんないい男にそこまで思わせることができる琴子に想われているということは、いかに贅沢で幸せであるかということを直樹はこの時ほど、しみじみと実感したことはなかった。



「ん?」
直樹の背後をふと見た理志の目が見開かれた。
「何か?」
窓になっている自分の後ろを直樹は振り返った。
「今、うちの車が通ったようなんですが。」
理志は腰を浮かし、車が通った方向へ首を伸ばした。
「お仕事で何か?」
「いえ、通ったのは義母が使っている車なのですが。」
あのクソババアにまで気を遣うなんて本当に気の毒なことだと直樹は思った。が、次の理志の言葉に顔色が変わった。

「相原さんが乗っていたような気が。」






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佑さん、ありがとうございます。

23と26にコメント、ありがとうございます。
そうなんです、入江くんには琴子ちゃんが必要なんですよ。
佑さんに褒めて頂けて嬉しいです。
怒涛の更新、そうですかあ?
とりあえず読んで頂けているようで、安心しました(笑)

ぺろさん、ありがとうございます。

お久しぶりです!
私も書きながらそう思いました。
これを琴子ちゃん本人に話してあげたら…。
でも琴子ちゃんだったら、途中でのぼせてぶっ倒れてそうですよね。
言わないのがツンデレ入江くんのいいところなんだろうなあ。
今回はおもいきり、のろけてもらいました♪
琴子ちゃんのピンチ、どうなることやら?

lunaさん、ありがとうございます。

初めまして、でしょうか?違っていたらごめんなさい!
御訪問、ありがとうございます。
サブ・ローザ、やっとラブラブです。楽しんでいただけてよかった!
他のお話も読んで下さっているんですね。ありがとうございます。
更新をそんなに喜んで下さっているなんて!
本当に琴子ちゃんみたいに生きたいですよね。
お話を生きる糧とまで言って頂けて嬉しいです。こんな拙いお話を楽しんで来て下さるだけで幸せです。

まあちさん、ありがとうございます。

23、24、そして26とコメントありがとうございます。
そうそう、ちゃんと話せば喧嘩にもならないっていうのに。本当にこんなのろける入江くん、レアですよね。
次に見られるのは何年後か…。
誰かに取られないと本気にならないって、入江くんはまったく。
福子さんの逆襲?それはそれで笑えそうな←失礼。

そうそう、やってるんですよね!私も途中で気づいて録画してました。
でもね、まあちさん。
ゴルゴはやっぱ、原作がいいですわ。アニメは物足りないです。
何ていうか…アニメはやっぱりソフト過ぎ(笑)
ていうか、館ひろしはあのセリフ数でいくらギャラもらったんだか?
プロフィール

水玉

Author:水玉
『イタズラなkiss』のほかには『ゴルゴ13』が好きです☆
多数あるイタキスの二次小説の中で邪魔することなく、ひっそりとマイペースで我が道をゆきつつ生息しております。
そっと見守っていただけたら嬉しいです。

※当ブログに掲載されている文章及びイラストの無断転載・使用はご遠慮下さい。

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当ブログは、『イタズラなkiss』の二次創作をメインとしておりますが、時折管理人の趣味や日々の出来事についての記事も書いております。

原作者様や関係各位とは一切関係ありません。

二次創作については、いわゆる原作の隙間をぬった作品もありますが、主人公以外のキャラクターをメインとしたものや オリジナルキャラクターが出てくるものもございます。

そして、原作と違った時代(平安や明治やその他の時代を舞台にしております)、異なる設定(主人公を医者と看護師じゃない職業にしております)で書いてあるものが多いですが、原作を冒涜しているつもりは全くございません。

二次創作が苦手という方及び原作のイメージと合わないと思われる方はどうぞお引き取り下さいますようお願いいたします。

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