日々草子 サブ・ローザ 25

サブ・ローザ 25

クライマックスなのに、どうも決まらないのが私の書くお話なんだな…。





「あ、あ、あ、愛してます…?」
理志の告白に福子の目は点になった。
「こ、こ、この看護師さんを?」
「はい。」
「では、お二人はお付き合いされていると?」
「いえ、そこまでは。」
理志はそこは正直だった。
「これから結婚を前提にお付き合いを申し込もうとしているところです。」
「それなのに、私とお見合いをされたと?」
ブルブルと震える福子が琴子は気の毒だった。
「その点は謝ります。まさか東京で見合いが計画されているとは知らなかったものですから。結果として福子さんを傷つけてしまったことは本当に申し訳なく思います。」
「こちらの方は理志さんの将来にお役に立つお家の方なのでしょうか?」
政治家の御曹司と大企業の令嬢の結婚は、やはりその点が大きく影響するらしい。
「結婚は家とするものではありません。」
そして理志は家など関係ないと考えているらしい。
「ですが、それなりの資産がありませんと、選挙などは…。」
「そんなの、どうにかなるでしょう。」
「まあ!」
理志の変わらない態度に、とても深いショックを受けた福子はフラフラと東屋を後にした。

「あ、あの…いいのですか?あのお嬢さん。」
がっくりと肩を落とし去って行く福子を琴子は気遣った。
「構いません。ここで嘘をついても仕方のないことです。」
「ですが。」
見合いを断るにしてももっと穏やかな方法があるのではないかと琴子は思う。経験上から、どうも振られた女性を見ると同情せずにいられないのである。

「福子さんはあの人と同じ聖麗女学院の出身なのです。」
日本でも屈指のお嬢様学校の名前を理志は挙げた。
「あ、それでは…寺崎さんの奥様は学校の後輩ということでお見合いを。」
「まあ、そうでしょうね。そこの卒業生であることを誇りに思って同窓会の会長など引き受けていますし。加えて大山田建設というバックアップを寺崎家が受けられる。これ以上ない縁談でしょう。」
「はあ。」
「大山田家は政治家とパイプを結びたいみたいで。この話に福子さんの親の方が大乗り気だったそうです。」
「そうですか。」
「もっとも、当の本人は親の思惑に気づいているかどうか。悪い人ではない気がしますけれどね。」
一途に理志を想っているような気もするのであるがと、琴子はやはり福子が気の毒でならなかった。


「ところで、相原さん。」
理志がくるっと琴子の正面に立った。
「先程の台詞は冗談ではありません。」
「え?あ、あの…。」
「俺は相原さんのことが好きです。愛してます。」
こんなストレートな愛の告白を受けるとは。琴子は顔が真っ赤になった。
「理志さん、勘違いされているんです。」
「勘違い?」
「そうです。理志さんはお父さんの看護をする私を見て、その…好きになったと勘違いされてしまったんです。」
「そんなことありません。俺は相原さんが懸命に看護をしてくれている姿を見て…。」
「それが勘違いなんです。私が看護をしたのは仕事だからです。」
「でも、ただの仕事で家まで来ますか?」
「うっ!」と琴子は痛いところを突かれた。
「熱心なその姿に俺は惹かれたんです。」
「ですから、それは…。」
こうなったら、もう正直に全て話すしかない。
「相原さん、俺を一人の男として見てもらえませんか?」
ますますヒートアップした理志は、琴子の両肩をガシッと掴んだ。
「あ、あの…私は理志さんとお付き合いできないんです!ごめんなさい!」
「なぜですか?」
「それは、ですね…。」

「こういう関係だからです。」

琴子と理志の間に何かが突然ぶら下がった。

「指輪…?」
指輪が二つ、目の前にぶら下がっているのを見て理志は一体それがどこから来たのかと首を動かした。

「入江先生!?」
驚きのあまり理志の手の力が抜けた。琴子は後ろを見た。
すると直樹が二本のネックレスをぶら下げている。その先には結婚指輪が下がっていた。

「俺とこいつは結婚しているんです。」
「け、結婚!?」
信じられないという顔をする理志。
「ごめんなさい!!」
琴子は腰を折って理志に謝った。
「結婚…?」
力をなくした理志は、ヨロヨロと東屋の椅子に座った。
「…本当ですか?」
「本当なんです…。」
とにかく事情を話して謝らなければと、琴子が口を開こうとした時。
「行くぞ。」
直樹が琴子の手を握った。
「え?でも…。」
「いいから。」
ショックを受けて項垂れている理志を置いて、直樹は琴子の手を引っ張り東屋から出る。
「入江くん、あのままじゃあまりに申し訳ない…。」
「あの状態でお前の話なんて、頭に入らないぞ。」
「でも。」
「頭の中を整理する時間が必要だ。」
「そんな…。」
そのまま、直樹は琴子を人の目がない一角まで連れて行った。そこで琴子を建物の壁を背にして立たせた。

「大体な。」
バンッと両手を壁につけ、直樹は琴子に覆いかぶさるように立つ。
「…お前がさっさと説明しないから、こんな騒ぎになるんだろうが。」
「ご、ごめんなさい。でも…。」
「看護師の仕事を愛情と勘違いしてる?あんな熱い視線を毎回送られながら、そんなことほざいているのはお前くらいのもんだ!」
「だけど、私を好きになる男の人が出てくるなんて考えられなかったんだもん!」
「は?」
「入江くんが結婚してくれたことだって奇跡だって周囲に言われてるんだよ?それなのに…。」
「お前って奴は…。」
金之助、啓太、武人の存在は一体何だったのか。あんなに言い寄られて今更どの口が言うのか。
「私みたいなのを…そんな…あんなに…っ!」
涙目になりながら一生懸命弁明する琴子の口を、直樹はキスで塞いだ。

「い、入江く…。」
しかし直樹は琴子を離そうとしなかった。外では経験ない深いキスを直樹がしてくる。琴子はそれを受けることで精一杯であった。

「…お前は本当にバカだな。」
ようやく唇を解放した後、直樹が睨んだ。両手はそのまま壁につき、琴子に迫る体勢である。
「お前のせいで、俺がどれだけ嫉妬に悩まされているか。」
「え…?」
「つうか、嫉妬の炎ってもんがあるならば、とっくに俺は燃え尽きて灰になってるね。」
「え?そ、それって、ええと…。」
信じられないのか、意味が分かっていないのか、目を白黒させている琴子の額を直樹はピンと指ではじいた。
「痛いっ!」
「ばあか。」
直樹は舌を出して、額を押さえつつもまだよく分からないという顔をしている琴子を一人残して病棟へと戻って行った。

「もう…バカは入江くんの方じゃない。」
その場に琴子はペタンと座り込んでしまった。
「職場でこんなキス…立てないじゃない…入江くんのバカッ。」
直樹にキスされた唇を押さえ、顔を真っ赤にした琴子は見事に腰を抜かしてしまったのだった。



しかし、それから数日後。
琴子は休みで、直樹も日勤を終えて病院を出た夕方のことだった。
「入江先生。」
真剣な顔をした理志が、直樹の前に立ちはだかった――。




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サブローザー

これから、どうなるの?ここは、入江君に、頑張って、琴子ちゃんを、守ってもらうしかないよね。

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花さん、ありがとうございます。

また来て下さって嬉しいです、ありがとうございます♪
指輪、出てきましたよ~。
入江くん、ここで登場しないとカッコつきませんもんね。
好きと言って頂けて嬉しかったです。
それにしても、この話が終わった後、パラレルになった時花さんはまた読んで下さるのでしょうか?
このお話がきっかけになったということなので、ちょっとドキドキしてます(笑)

なおたんさん、ありがとうございます。

本当に頑張って守ってもらわないといけませんよね!
散々泣かせてきたことだし。頑張れ、入江くん!
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水玉

Author:水玉
『イタズラなkiss』のほかには『ゴルゴ13』が好きです☆
多数あるイタキスの二次小説の中で邪魔することなく、ひっそりとマイペースで我が道をゆきつつ生息しております。
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そして、原作と違った時代(平安や明治やその他の時代を舞台にしております)、異なる設定(主人公を医者と看護師じゃない職業にしております)で書いてあるものが多いですが、原作を冒涜しているつもりは全くございません。

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