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2013.08.06 (Tue)

吾輩は猫である 4


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昼寝とおやつ。まーくんがパワーをチャージするのは十分である。
パワーアップしたまーくんは庭に出て、世界の平和を守るためのヒーローに変身し、やたら手足をバタバタと動かしていた。
それだけなら可愛いものだが、何故吾輩がチビと合体して『チビゴン』なるロボットにならねばならなかったのか?

その後また手術を吾輩に施し(今度は全治三時間と診断された)、まーくんはソファに落ち着いた。

「アニメ見ようね。」
「ワン!」
「ニャー(こう言わないとチビが睨むのだ)」
と、まーくんがセットしたのはアニメのDVDである。
問題はその中身である。なぜゆえ『トムとジェリー』なのだろうか?なぜネコが窮地に陥るアニメを吾輩が見なければならないのか?いや、どうしてまーくんはこれを選んだのか?
もしや、まーくんは実は吾輩を嫌っているのではなかろうか?

と、吾輩が悩んでいるとキッチンから何やらいい匂いがしてくる。
これは天ぷらの匂いだ。なるほど、この家の夕食は天ぷららしい。
するとまーくんは、アニメを一時停止した後ソファから立ち上がり、キッチンへとトコトコと歩いて行った。

「カボチャの天ぷら~。」
戻ったまーくんの手には、カボチャの天ぷらが一枚あった。
「あつあつ~。」
と頬張るまーくん。
「まーくんね、いい子だからつまみ食い、一個しかしないんだよ。」
…いい子はつまみ食いをしないと思うが。

「真樹、ただいま。」
「あ、おじいちゃん!」
リビングに入ってきたのは、まーくんに昼間見せられたあの、サルと一緒に描かれていた顔であった。
「おじいちゃん、ゴンザエモンがお泊りしているんだよ。」
「ああ、真樹が手当てをしてあげたというネコか。」
「ゴンザエモン、ふぐのおじいちゃんだよ。」
そうそう、そんな名前だったな。
「ゴンザエモン、いらっしゃい。」
適当に挨拶を流すつもりであったが、ふとふぐのおじいちゃんとやらから漂ってくる匂いに吾輩の鼻が動いた。
これは、魚の匂いではなかろうか?何と…何と素晴らしい匂い!!

「ニャー、ニャー。」
この家にこのような素晴らしい匂いの持ち主がいたとは。吾輩はふぐのおじいちゃんの手に鼻をつけた。
「ふぐのおじいちゃんのこと、大好きなんだね!」
「アハハ。きっと魚の匂いがついているからだろう。」
「そっか。あのね、ゴンザエモン。おじいちゃんはふぐのお料理をするお仕事してるんだよ。」

ワンダホーッ!!!
そんな、そんな素晴らしい、世のためネコのためになる職業に就いているとは!!
そんな素晴らしい人間が、この悪魔の館にいたなんて。

すばらしい、すばらしいぞ!!

「ふぐのおじいちゃんはね、ママのパパなんだよ。」
なるほど、なるほど。
あのママの父親か。そうなると、ママとふぐのおじいちゃんはまだ清らかな心の持ち主なのだろう。
魚を扱う人間に悪者はいないが、吾輩の信条である。

「真樹や、ただいま。」
次に入ってきたのは…。
「おもちゃのおじいちゃんだよ、ゴンザエモン!」
ああ、そうだ。そんな名前だった。
「おもちゃのおじいちゃん、ゴンザエモンだよ。」
「おお、これはこれは。」
さっきのおじいちゃんがまーくんママの父親、そうなるとこっちのおじいちゃんはあの悪魔の父親か。
ふむ、こうして顔を見ると悪魔には見えないが。どこにでもいる好々爺といったところだ。
どうして息子は悪の道へと進んでしまったのだろか。

「なかなかふっくらしたネコちゃんだな。」

なぬっ!?
今、何と言った?ふっくら?

「ゴンザエモンはね、ダイエット中なんだよ。」
まーくんも余計なこと言わんでよろし!
「そうか、この体ならそうかもしれないなあ。」
笑いながら何てことを言うんだ。
やはり悪魔の父は悪魔だった。
それにおぬしに吾輩の体をとやかく言われる覚えはない。
おぬしなんて、吾輩より毛がはるかに少ないじゃないか!



「こら、真樹。パパのこと忘れちゃったのか?」
「あ、パパも帰ってきたんだ。お帰りなさい。」
「ただいま。」
…出た、悪魔。
「パパ、ゴンザエモンがお泊りなんだよ。」
「へえ、そうかあ。」
安心しろ。吾輩は一晩かけてまーくんを悪の道から救い出すつもりだから。
それにしてもこの悪魔の匂いときたら…薬臭い!!

「ゴンザエモン、パパだよ。前に会ったことあるよね?」
吾輩はソファの影に隠れた。この匂いには耐えられん。
「ゴンザエモン、パパのこと嫌いなの?」
何と言われても、耐えられん。
「真樹、ゴンザエモンはパパにしみついている匂いが苦手なんだよ。」
「匂い?」
「パパ、病院でお仕事しているからお薬の匂いがくっついているんだよ、きっと。」
「そっかあ。」
そうそう。悪魔にしてはなかなか察しがいい。
吾輩と悪魔の間には深い深い溝があるのだ。
「だから無理はしないでおこうな?」
「うん…。」
しょんぼりとするまーくん。

「まーくん…パパとゴンザエモンとも仲良くなってほしかったんだけどな…。」
しゅんとなるまーくんを見ていると、吾輩の胸は痛むものである。

「ニャー…。」
仕方がない。吾輩はまーくんの所へ戻り悪魔のところへ鼻をつけてやった。
「ゴンザエモン!やっぱりパパのこと好きだったんだね!」
好きじゃないが、まーくんが落ち込む姿は忍びないのだ。
「パパ、ゴンザエモンは匂いなんて気にしてなかったんだよ。」
「そうか。」
「よかった!!」
まーくんは着替えを終えて戻ってきたおじいちゃんたちの所へと報告へ行く。

「…ありがとうな、ゴンザエモン。」
悪魔が吾輩の喉を撫でた。チッ、特別に撫でさせてやろう。
「お前、優しいな。」
「ニャー。」
ならお前も吾輩を見習え。
どうしてあんな立派な職業(ふぐの料理人)についている人物と暮らしていながら、そんな悪の道に進んで行こうとするのか、吾輩には理解できぬ。
とにかく、一刻も早く足を洗え!


それから裕樹お兄ちゃんとやらも帰ってきて(悪魔よりやや背が低かった)、夕食となった。
吾輩にもまーくんがちゃんと食事をくれた。

そしてその後、吾輩への歓迎パーティーだとかで、カラオケ大会が開始される。
といっても主役はまーくんであるが。何を歌っても祖父母にべた褒めされるまーくん。それを嬉しそうに見る悪魔とまーくんママ。
アンコール曲はまーくんの『おおきな栗の木の下で』であった。



まーくんがお風呂に入り、リビングは一刻の静寂に包まれた。
こう静かになると吾輩はふと、下僕を思い出す。
下僕は元気にやっているだろうか。吾輩を気にして泣いていないだろうか…。
吾輩のこと、ちゃんと覚えているだろうか…。

「ゴンザエモン。」
パジャマを着てホカホカのまーくんが吾輩の前にちょこんと座った。
「ゴンザエモン、まーくんのお家でも一匹でお泊り、寂しいよね?」
…別に寂しくはない。
「まーくんもね、前に一人で知らないお家にお泊りしたことがあったんだ。」
…この年齢で一人で知らない家にお泊りってどんな状況だろうか。そもそも、この家の住人がよくそんなこと許可したものだ。こんなに溺愛されているのに。
「その時ね、ペン吉くんを連れて行ったんだけど、まーくん、お泊りするのと違うお部屋にペン吉くんを置いていっちゃったの。だからまーくん、一人で我慢してお泊りすることになっちゃったんだ。」
その時のことを思い出したのだろう、まーくんの顔は悲しそうだった。
どこにお泊りしたかは知らないが、何でこんな小さな子を部屋に一人にしたのか。その家の住人の意識を吾輩は疑う。
「きっとゴンザエモンも寂しいよね。我慢しなくて大丈夫だよ。」
まーくんは吾輩の頭を優しく撫でる。
そんな…まーくんの気持ちだけで吾輩は十分だ。まーくんも家族もみんな優しいから吾輩は寂しくなんてないぞ。

「まーくんみたいな気持ちにゴンザエモンはなってほしくないから。」
と、まーくんはどうやら吾輩の傍にぬいぐるみを置いてくれるつもりらしい。そんな気を遣わずとも…。
「はい、これ!ハゲ太くん!」
…ハゲ太くん?
まーくんが吾輩の前に出したのは、可愛らしさの欠片もない、何とも怖い顔をした人形だった。
「ハゲ太くんと一緒だったら、ゴンザエモンも寂しくないよね?」
と、吾輩の寝床にハゲ太とやらを入れるまーくん。

「ニャー。」
いらんわっ、そんな変な人形!!
「遠慮しなくていいんだよ?まーくんはね、ほら、くま子ちゃんとペン吉くんがいるから。」
と、まーくんはハゲ太くんとは似ても似つかない可愛いクマとペンギンのぬいぐるみに頬ずりしている。
いや、そんな可愛いぬいぐるみがいっぱいあるのに、どうしてその中からこのハゲ太とやらをチョイスしたんだ、まーくん!

「それじゃね、おやすみなさい、ゴンザエモン。」
「ニャー。」
「遠慮しなくていいんだってばあ。本当にゴンザエモンは気を遣うんだから。」
「ニャー。」
遠慮もしてなければ気も遣っておらんわ!こんなのいらん!!

まーくんがいなくなった後、吾輩は鼻の先でハゲ太とやらを寝床から突き落とすことに成功した。
ふう、これで安眠できる…。

「ワン!」
ん?
見ると吾輩が落としたハゲ太をチビがくわえている。そして吾輩の寝床へとポトンと落とした。
おいっ!!せっかく吾輩が苦労して追い出したというのに。
吾輩の気持ちを全く無視し、チビはハゲ太をグイグイと鼻で押し込んでいる。
…本当にお前は忠犬だよ!



「本当にお世話になりました。」
翌日の夕方、下僕が吾輩を迎えに来た。よかった、吾輩のことを忘れていなかった。
「いえいえ。ゴンちゃんはおとなしくていいネコちゃんでしたよ。」
まーくんのおばあちゃんはいつの間にか吾輩をゴンちゃん呼ばわりしておるし。
「まーくん、ゴンザエモンの面倒見てくれてありがとうね。本当に助かったわ。」
「…ゴンザエモン、またお泊りに来てくれる?」
吾輩との別れが辛いらしく、少し元気がないまーくんである。
「まあ、まーくんがいいならまたお願いしていいかしら?」
「うん!!」
そうそう。またすぐに遊びに来てやる。
まだまだ、まーくんを悪の道から救い出すという重要な任務が吾輩には残っているからな。



一夜あけ、吾輩はまーくんの家の様子を見に行った。
昨日、なんだかんだとまーくんは寂しそうだったからなあ。

「ゴンザエモン!!」
庭にちょうど出ていたまーくんが吾輩の姿を見つけて走ってきた。
そうだろう、そうだろう。
まったく子供というのは…。

「もう、ゴンザエモンたら。まーくんに会いたくてたまらなかったんだね。」

なぬっ?
寂しかったのは吾輩じゃなくてまーくんだろうが。
今日も何を都合よく解釈しているんだ、この幼児!

「ママー、ゴンザエモンがもう遊びに来てくれた!」
「あらあら。まーくんに一日でも会えないと寂しいのね。」
まーくんママはやっぱり今日もとぼけているし。
「ハンジロウ、まーくんの相手ご苦労様。」
そんでもって、今日も名前覚えてくれていないし。
この親子、もう疲れてしょうがないわっ!!




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 |  2013.08.06(Tue) 20:07 |   |  【コメント編集】

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 |  2013.08.06(Tue) 21:29 |   |  【コメント編集】

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 |  2013.08.14(Wed) 17:51 |   |  【コメント編集】

★佑さん、ありがとうございます。

お返事遅くなり申しわけありません。

そうなんですよ~高校生まーくんがいまだ途中のままなんですよね。
何か書かなきゃと思いつつ、何を書こうとしていたんだっけと思いださないといけないなと。
愛のある催促は嬉しいですよ♪ありがとうございます。
水玉 |  2013.08.23(Fri) 12:57 |  URL |  【コメント編集】

★カスガノツボネさん、ありがとうございます。

お返事遅くなり申しわけありません。

うふふ、尼になっているカスガノツボネさん(笑)
いいんですよ、そんなに我慢しなくても!思う存分言って下さっても(笑)

カスガノツボネさんの安眠のお伴になれてよかったです、まーくん&チビゴン。
フトンの入江くんは本当に琴子ちゃんを大事にしてますからね!
水玉 |  2013.08.23(Fri) 12:59 |  URL |  【コメント編集】

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