日々草子 化ける後輩

化ける後輩

すみません。
最近ちょっとバテ気味で、話を考えることができなくて。
『サブ・ローザ』の続きはもうちょっとお待ち下さい。←待っている人がいるのだろうか?←内容が読んで下さる方のお好みに合ってないのかなと心配しつつ…。










「入江先生、お願いします。どうか娘を助けてほしいのです。」
懇願する両親。
「…スイス銀行に入金を確認したら準備に入りましょう。」
快諾する後輩。もう何度も見てきた光景だ。
「ありがとうございます!入江先生に手術をしていただけるのならば、もう安心です!」
涙を流さんばかりに喜ぶ両親だったが、その顔がなぜか曇った。
「ただ、問題が一つあるのです。」
「問題?」



「琴子お姉さま!」
「かれんちゃん、気分はどう?」
「お姉さまの顔が見られたから、とってもいい気分よ。」

入江に依頼した患者は、かれんちゃんという7歳のおしゃまな女の子だ。
あの入江に依頼するくらいなのだから、両親は大金持ち。
そして今回は手術という、医者としては至極まともな仕事である。

「お姉さま、今日もとっても可愛らしい髪型ね。」
「ありがとう。かれんちゃんもお揃いにしてあげましょうか?」
「わあ、うれしい!」

かれんちゃんは琴子ちゃんのことが大好きだ。「琴子お姉さま」と呼んで慕っている。
それはそれで何の問題もない。
だけど。

「ねえ、かれんちゃん。やっぱり入江先生は嫌なの?」
琴子ちゃんと同じようなツインテールにしてもらってご機嫌なかれんちゃんの顔がすぐに変わった。
「嫌。」
「どうして?私の旦那様なんだけど。」
「琴子お姉さま、どうしてあんな人と結婚したの?」

かれんちゃんは、大のイケメン嫌いなのだった――。



「…とにかく、顔のきれいな男性に拒否反応を示しまして。」
かれんちゃんの父親が言いにくそうに、入江に説明する。
一度入江がかれんちゃんの様子を見に来た時があったのだが、その時はベッドに潜って出てこなかった。
ぷぷぷ、入江には悪いが僕はいい気味だと思ったもんだ。

「…そちらの先生レベルでしたら、何の問題もないのですが。」
かれんちゃんのお母さんが僕を見て、あっさりと言った。
ムッ。失礼な。

特にかれんちゃんにイケメンへのトラウマがあるわけではないらしい。



「琴子お姉さま、男は顔じゃないわよ。顔のいい男なんてロクな人間じゃないわ。」
「だけど、かれんちゃん。入江先生はとても腕のいい立派な先生なのよ。」
「信じられないわ。絶対嫌よ。」

琴子ちゃんが懸命に説得しているが、全く聞く耳を持たないかれんちゃん。
これは相当手ごわい。

「可哀想な琴子お姉さま。イケメンに騙されているのね。かれんが助けてあげたい。」
「騙されるってそんな…。」
困惑する琴子ちゃんも可愛いものだなあ。
「それじゃあ、西垣先生に手術してもらいましょうか?」
「かれんちゃんがよければ、僕は構わないよ。」
僕はかれんちゃんに笑いかけた。

「…二股かけられたのがバレて往復ビンタされたような顔している人、かれんは嫌い。」

…なぜバレた!?



「我々はどうしても入江先生にお願いしたいのです。無理なお願いだとは分かっておりますが。」
頭をテーブルにつけんばかりに下げるかれんちゃんの両親。
「…分かりました。何とかやってみましょう。」
「おお!!」
そして入江は部屋を出て行く。僕も勿論、後をついていく。



「どうするんだよ、入江。」
「どうするも何も、手術はしますよ。」
「代理を立てるとか?」
「それじゃ、依頼に答えたことにならないでしょう。」
「じゃあ、どうやって?お前はかれんちゃんにあんなに嫌われているというのに。」
「あらゆる方法を考え、実行するのがプロです。」
カーッ!いちいち言うことがキザなんだよ、お前は!

「入江くん!」
そこに登場したのが、入江の肉体要員、琴子ちゃん。
「ごめんね、私が力がないばかりにかれんちゃんを説得できなくて…。」
ぐすっ、ぐすっと泣き出す琴子ちゃん。うーん、かわゆい。
「お前のせいじゃない、気にするな。」
「でも…入江くんは腕のいいスーパードクターだって何度も説明したのに。」
「本人の嗜好の問題だ、仕方がない。」
「でも…でも…。」
「お前にさえ、いい男だと思われていれば俺は十分満足だ。」
「入江くん!」
ムギューと入江に抱きつく琴子ちゃん。そして抱きつかれたまま、仮眠室へと入って行く入江…あとは、お決まりのパターン。肉体要員、大活躍~。



数時間後。
よれよれになりながらも、入江の役に立てた喜びでいっぱいの琴子ちゃんが帰って行くのを見送った後、入江も病院を後にした。
「どこへ行くんだ?」
勿論、僕も一緒だ。

「あれ?ここって。」
入江がやって来たのは「ふぐ吉」。琴子ちゃんの親父さんが経営する料理店だ。

「すみません、まだ準備中…と、直樹くんか。」
琴子ちゃんの親父さんが入江を見て顔を綻ばせた。
「金之助たち、います?」
「おお、そっちに今日は用か。おーい、金之助、クリス!」
親父さんに呼ばれて顔を見せたのは、前にうちの病院に入院したことのある金髪美女とその恋人だった。
ていうか、なんでこんな美女にこんなサル顔の男なんだ?どうして僕だけ独り者なんだ?
世の中、すごく不公平!

「久しぶりやな、入江。」
ふぐ吉の上の階の部屋。金之助くんが愛想よく入江に声をかける。
「で、ご注文はどないしましょ?」
「俺と分からない顔にしてくれればいい。」
「ほおーこのイケメンを変えるんか。」
「ああ。」
「イケメン」と言われたことに謙遜もしない男、入江。

「絶対俺とわからぬよう、平凡な顔にしてくれ。」
「こちらのお兄さんレベルに?」
金之助くんが、僕を見た。
チョイ待て。どうして僕の顔が平凡レベルなんだ?お前に言われたくないぞ。
「いや、もっとレベルを落としてくれ。」
「ほな、かなりひどい顔にすることになるなあ。」
「できないのか?できないなら他を…。」
「デキマッセ!!」
と、ムキになったのは金髪美女のクリスちゃん。
「アタシと金之助がいれば、百万馬力デッセ、直樹!」
「そうや、そうや。」
「じゃあ、頼む。」
「マイド!」
うーん、どうしてこの金髪美女は関西弁なんだろうか?


数時間後――。

「すごい…お前だって絶対分からないよ。」
さすがの僕も驚くできばえだった。目の前にいる入江は、もはやあのクソ生意気な入江の欠片もない。どこにでもいる、いやむしろ女性には苦労するだろうっていう顔だ。
これが金之助くんとクリスちゃんの手によりメーキャップの結果だった。

「き、君たち、どうしてこんなに腕がいいのさ?」
金之助くんは板前さんで、クリスはお店の手伝いをしていると聞いている。
手先が器用というレベルではない。

「俺はクリスに教わったんや。」
金之助くんが胸を張った。
「クリスちゃんは、どこで?」
「アタシノ家ノ隣、ナブラチロワ住ンデマシタ。」
「ナブラチロワ?テニスの選手の?」
「イエース。」
…ナブラチロワとメイク?

「ナブラチロワ ト ヨク、テニス、シテタデショウ。」
「はあ。」
…それがどういう関係が?あ、もしかして日本語がよく分かってないのかな?
僕の質問の意図が理解できていないのかもしれない。

「テニスヲシタ後、汗ヲ沢山カイタデショウ。」
「うん、そうだろうね。」
さっぱり分からない。
「アタシノ家ノ反対側ノ隣、メーキャップアーティストガ住ンデタデショウ。汗デ落チタメイク、ヨク直シテモラッタデス。」
「へえ、そうなんだ。」
「メイク直シノツイデ、特殊メイク、教エテモラッタデス。」
「ついでに!?」
「イエース。彼、ハリウッドデ活躍シテイタ特殊メイクノプロデシタ。」

ハリウッドの特殊メイクアーティストが隣にいた環境もすごければ、ついでに教えてもらってこの技を習得したクリスちゃんもすごい。
けど、ナブラチロワの下り、必要だったかな?ま、いっか。

「というわけで、クリスからその技を俺が教えてもらったというわけや。」
「金之助、覚エガ早クテ最高デシタ。サスガアタシノダーリン。」
うっとりと金之助くんを見つめるクリスちゃん…やっぱ、世の中おかしいって。

「それじゃ、これ。」
入江が懐から出したのは、例の分厚い封筒だ。
「おおきに。」
「オオキニ。」
二人でニコニコと受け取り、中身を確認する。
「金之助、コレデ独立ヘノ道ガ進ンダネ!」
「そうやな!俺とクリスの店もすぐに出来るで!」
「ちょっと待ったあ!!」
僕は思わず大阪商人カップルに割り込んだ。

「…何やねん?」
「いや、おかしいでしょ。こんな副業で独立とかさ。」
「まっとうな労働の対価や。どこがおかしいねん?」
「君、板前でしょ?板前だったらさ、俺の包丁で…とかいう所じゃないの?」
「ああん?」
金之助くんとクリスちゃんが胡散くさそうな目で僕を見る。

「入江、こいつさっきから何を言うてんねん?」
「気にしないでくれ。」
「いや、気にするで。何やねん、こいつ。」
「僕は入江の先輩医師だ!」
「先輩?医者かいな?」
「ああ、そうだ。」
「ハンッ!」
金之助くんが僕をバカにした。

「入江、もっとまともな奴と付きおうた方がお前のためやで。」
「いや、付き合ってはいない。勝手に付きまとってくるんだ。」
「直樹、友達ハ、チャント選ブベキヤデ。琴子モ泣クヨ。」
「友達じゃない。琴子にも鬱陶しがられている奴だ。」

何だ、お前ら!
入江、お前後輩のくせに僕を「奴」呼ばわりかよっ!!

「それはこっちの台詞だよ!」
とうとう僕は言い返した。
「何だよ、関西弁で僕を責めてさ!」
「あ、関西弁をバカにしよった。」
大阪商人カップルが僕を睨む。ふん、負けないさ。
「何やねん。お前さん、あべのハルカス知ってるんか?」
「あべの…ハルカス?」
「うわあ、こいつ、それも知らんで、よう人間やっとるなあ!」
額を押さえ叫ぶ金之助くん。
「地上300mの、日本一の高層ビルのことやないか!そんなん知らんでよう生きていけるわあ!」
「だ、だって…東京にはスカイツリーが…。」
「出た。」
金之助が僕を睨んだ。
「東京もんは、すぐにスカイツリー、スカイツリー。スカイツリーが何ぼのもんや。」
「セヤ、セヤ。」
同調するクリスちゃん。
「あんた、ICOKAも知らんやろ?」
「イコカ?イカとタコが合体した新種?」
「関西で使える、交通ICカードや!関東でも使えるめっちゃ便利なカードや!関東もんはどうせ“SUICAがあるから~”て言うんやろ。」
「いや、僕は私鉄メインだからどっちかというとPASMO…。」
「節操のない奴やわ!!なんであべのハルカスも知らん、ICOKAも知らん奴が医者、いいや、人間やってるんや?」


…何であべのハルカスとICOKAを知らなかったくらいで、僕の人格まで否定されねばならないんだろうか?



「かれんちゃん、こちらシンガポールからいらした先生よ。」
変身した入江はシンガポールから来日した医師、フォンということになっていた。
「入江先生とはアメリカの学会で知り合ったんですって。」
そう説明している琴子ちゃんも、フォンの正体が入江だということは知らない。
というか、あの琴子ちゃんが正体に気づかないって、やっぱりあいつらのメイク技術は相当なもんだなあと感心せずに得られない。

「どう?フォン先生ならかれんちゃんも大丈夫でしょう?」
フォン先生が日本語分からないということになっているので、琴子ちゃんも言いたい放題だ。
「うん、大丈夫。」
かれんちゃんの警戒をすっかり解くことに成功したフォン=入江は、見事に手術を成功させた。



その後、僕は大阪について勉強を始めた。
今度あの大阪商人カップルに会った時(できれば二度と会いたくないが)、一泡吹かせてやろうと思ってのことだ。
何て言っても僕は勉強家だからね。

しかし、これが原因でとんでもないことが待っていようとは、さすがの僕も気づかなかったわけで――。

「西垣先生、大阪へ行っても元気で。」
突然琴子ちゃんが声をかけてきたのは、僕が食事をしている時だった。
「大阪!?」
何で僕が大阪に?
「先生が大阪の病院に転勤するって病院中で評判ですよ。」
「嘘だろ?」
僕は全然聞いてない!何だ、一体?
もしかして、入江の奴が人事から入手した情報をいち早く流しているのか?

僕は真相を確かめるために、食堂を飛び出した。


「部長、僕が大阪へ転勤って本当ですか?」
「あ?」
愛妻弁当を食べていた部長は、明らかに食事を邪魔されたことに不満げだった。しかし今の僕にそんなことを気遣う余裕はない。

「何で僕より先に病院に知れ渡っているんですか?」
「…何で君を転勤させねばならんのだ?」
部長は僕を睨んだ。
「わしが日本中に君の犠牲者を増やしたいとでも思っているのかね?我慢してこの病院で面倒を見てやっているというのに。」
「犠牲者って、そんな。」
医者とは思えない台詞じゃないか。

「そんなに異動したいなら、遠い海の離れ小島の無人島へ放り出してやろうか?」
「無人島?ちょっと、人がいないなら患者なんていないじゃないですか。病院いります?」
「いらんよ。だから君の被害に遭う人間はいない。一番いい方法だ。」
「建物あるんですか?」
「ないよ。材料を送ってやるから自力で建てたまえ!!」

どうやら大阪のガイドブックを持ち歩いていた僕から、大阪への異動に備えて勉強していると勘違いされたらしい。
これ以上部長の怒りをかったら、本当に無人島へ送られそうになりそうだから僕は退散した。


部長の部屋を出たら、あのクソ生意気な後輩と出くわす。
「栄転おめでとうございます。無人島とはいえ、院長じゃないですか。」
「行かねえよっ!!」
すっかり元の顔に戻った入江にバカにされ、今回も本当についてない僕だった。





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カスガノツボネさん、ありがとうございます。

お返事遅くなり申し訳ありません。
金ちゃんとクリスもゴルゴ入江の仲間だったのです。
完全に琴子ちゃん以外は秘密を知らないということに…(笑)
なぜ気づかない、琴子ちゃん?
そうそう、チビも何かの役に立っていそうですよね!
ゴルゴ入江のスイス銀行預金額…本物のゴルゴは兆単位ですけれど、それくらいあるのかな?
カスガノツボネさんもお体に気を付けてくださいね!

紀子ママさん、ありがとうございます。

お返事遅くなり申し訳ありません。

いえいえ、そんな~。
パソコンデビュー、順調ですね!!朝型生活でうらやましい限りです。
私なぞ夜も最近早く、だからといって朝をさわやかに起きているかと言えばそうでもなく…なんて悲惨な生活…。
そうそう、ゴルゴは信頼できないとすぐにバーンですもんね。
ガッキーの不幸とこの話は比例していくのです。

私もぴくもんさんのお話、どうオタクたちが活躍(?)するのか楽しみでたまらないんですよ~。
ぴくもんさんまでオタクを書くなんて。オタク、万歳!!

いたさん、ありがとうございます。

お返事遅くなり申し訳ありません。

うわ~それは無理しないで下さいね!
分かります、分かりますとも!
体調不良ってほどじゃないんだけど、なんだかやる気がでないという。私もそうです。
そんな中ご訪問ありがとうございます。

私もあのナブラチロワのところ好きなんです。本当にあの琴子と一緒で「だから何?」って感じだったのですが、まさか隣に住んでいるよしみでテニスの相手をしていて強いなんて、すごいっ!と。
琴子ちゃんがいないとゴルゴ入江は全くやる気がでないんでしょうね。
楽しんでいただけてよかったです!
プロフィール

水玉

Author:水玉
『イタズラなkiss』のほかには『ゴルゴ13』が好きです☆
多数あるイタキスの二次小説の中で邪魔することなく、ひっそりとマイペースで我が道をゆきつつ生息しております。
そっと見守っていただけたら嬉しいです。

※当ブログに掲載されている文章及びイラストの無断転載・使用はご遠慮下さい。

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御訪問ありがとうございます
このブログについてのお願い
当ブログは、『イタズラなkiss』の二次創作をメインとしておりますが、時折管理人の趣味や日々の出来事についての記事も書いております。

原作者様や関係各位とは一切関係ありません。

二次創作については、いわゆる原作の隙間をぬった作品もありますが、主人公以外のキャラクターをメインとしたものや オリジナルキャラクターが出てくるものもございます。

そして、原作と違った時代(平安や明治やその他の時代を舞台にしております)、異なる設定(主人公を医者と看護師じゃない職業にしております)で書いてあるものが多いですが、原作を冒涜しているつもりは全くございません。

二次創作が苦手という方及び原作のイメージと合わないと思われる方はどうぞお引き取り下さいますようお願いいたします。

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