日々草子 サブ・ローザ 1

サブ・ローザ 1

というわけで、改めて。
お久しぶりでございます。
休業中にもかかわらずご来訪してくださった皆様、ありがとうございました。

ようやく落ち着いたので、予告(?)どおり、神戸シリーズの続編でございます。
久しぶりの病院が舞台のお話なのですが、正直、病院ものはドラマも見ないようになってしまっているので…病気の様子とかサラリと流すことになるかと思いますが、その辺はどうぞ読者様もサラリと流していただけますよう、勝手ながらお願い申し上げます。

※神戸シリーズとは?
『幸運の女神』『秘密』…と続いているシリーズです。










「相原さんって、本当に真面目よねえ。」
看護師たちの噂に、カルテ確認をしている入江直樹の耳がそちらに向いた。
「東京からわざわざ研修に志望してきて、遊ぶこともほとんどしないで。」
「だからたまには息抜きしようって、うちらが誘ってるくらいだしね。」
「それにしたって男の影は見えないわねえ。」
思わず直樹の頬が緩む。直樹のいる場所は物陰になっており看護師たちからその姿は見えていない。

「真面目過ぎて、変な男に引っかからないといいけれど。」
「うん、何か男と深くかかわったこともなさそう。」
「結構チェック入れている人は、この病院にも多いけれどね。」
「あ、内科の○×先生でしょ?」
「え?皮膚科の△□先生じゃないの?」
「あれ?私が聞いたのは…。」

―― そんなにいるのかよ。
パソコン画面を見ながら直樹は軽く舌打ちした。

「じゃあ、うちの先生は?たとえば…入江先生とか?」
ここでなぜ自分の名前が出てくると、直樹はマウスを動かす手を止める。
「入江先生かあ。いつ見てもクールで素敵だけど…。」
「うん、入江先生も噂にならないね。」
そう簡単になってたまるかと直樹は画面に向けている目を吊り上げている。
「いや、入江先生はないわ。」
「そうよねえ。」
「何ていっても、バツ3だもん!」
思わず直樹はマウスから手を滑らせてしまった。
―― 回数が増えている…。

「さすがに3回も離婚していたら、女はこりごりなんじゃない?」
「そうよねえ。3回よ、3回!何があったら3回も離婚になるわけ?」
「あの完璧すぎるビジュアルが女を惑わせていくのよ、きっと!」
確かここに来たばかりの頃は「バツイチ」だったはず。それがいつの間にバツ3とまでなったのか。

直樹は看護師たちにばれぬよう、スタッフステーションから出た。
「真面目、ね。」
確かにこの病院で働いている琴子はその言葉がぴったりである。
「でも。」
思わず直樹はクククッと笑った。
―― 夜、俺の中にいるあいつを見ても、そんなことが言えるかっていうんだ。
同僚たちが知らない琴子を自分だけが知っている。この優越感が直樹にはたまらなかった。


「あふ…あ、ごめんね。」
人が滅多に通らない場所にある仮眠室。
「…出勤したばかりでそんな大あくびするなよ。」
「ごめん、ごめん。で、聞きたいことってなあに?」
日勤だというのに、夜勤明けの直樹よりも眠そうな琴子である。
「俺はいつからバツ3になったんだ?え?」
「バツ3?え?あら、何時の間にバツの数がそんなに増えちゃったの?」
「増えちゃったの、じゃねえよ。」
「入江くんがつれない態度取っているから、噂にフカヒレがついちゃったのよ。」
「尾ひれな。」
「そう、それ。あんまり気にしない方がいいって。人の噂も十月十日…。」
「七十五日。」
「そうそう、そういうことで。」
「アハハ」と笑う琴子に直樹は「はあ」と溜息をつくと、また体をベッドに横たえた。
「ったく、お前がくだらねえことをずっと続けるから俺がこんな目に遭うんだ。」
「ああん、秘密の院内恋愛は続行するの!」
最初に琴子がとある事情から旧姓でこの病院に研修に入ったため、いい機会だから夫婦であることは秘密にしようということにしている。

「噂かあ。ねえ、私も何か噂になっていたりしない?」
「お前の噂?」
どこぞやの医者がご執心らしい…とは口が裂けても言いたくない。
「さあな。お前なんて存在感ないんじゃね?」
「ひどーい!もう、ただでさえ小児病棟離れて不安だっていうのに。」

琴子は先週から一時的だが、小児病棟から離れた勤務となっていた。
新しい勤務先は特別病棟である。
せっかくの研修なのだから、色々な病棟で働くこともいいのではという小児病棟の看護師長のアドバイスからであった。
「そんなに重症な人もいなければ、元々入院している人も少ないし。」
「VIP病棟だしな。」
特別病棟の別名はVIP病棟であった。他の病室に比べ料金も割高であるし利用者もそれなりの人間が多いことから由来する。

「ねえ、入江くん。」
寝ている直樹の顔の傍に琴子が顎をちょんとのっけて来た。
「何だよ?」
「私がいない間、浮気とかしないでね?」
「…さあな。」
直樹はクルリと琴子に背を向けた。
「俺、素っ気ないからバツが増えていくんだろ。これ以上増やしたくねえから、お前のいない間に笑顔を振りまいておくつもりだし。」
「ええ、それはちょっと困る!」
ゆさゆさと直樹の背中を揺らす琴子。
「入江くんの奥さんは私だけなんだから。浮気しないで。私のこと忘れないで…。」
と言いかけた琴子の口が直樹の口で塞がれた。
「…分かったから、ちゃんと仕事行って来い。」
「…はあい。」




午後も特別病棟は穏やかなものであった。
「うん、このままだと定時に上がれるかな。」
確か直樹も夕方には上がれるということである。
今夜は久しぶりに二人で過ごせるから何かおいしいものでも作りたいと琴子が考えていた時だった。

「はい、わかりました。」
特別病棟の看護師長がやや緊張した面持ちで内線を終えた。
「患者さん、入院よ。」
その声に、スタッフステーションにいた看護師たちがざわつく。師長の様子に緊張が走る。
「かなりのVIPかもね。」
同僚の囁く声が琴子の耳にも入った。

「救急に運ばれてそのまま入院です。」
「救急から?」
珍しいケースだと看護師たちが顔を見合わせた。救急から特別病棟などあまり聞いたことがない。
「心疾患だそうです。お名前は寺崎高志さん…。」
「寺崎ってあの政治家の!?」
ざわつきが大きくなった。
「政治家…。」
そう言われてみると聞いた記憶のあるような、ないような名前だと琴子はぼんやりと考えていた時だった。
「担当は相原さんにお願いしますね。」
「えっ!?」
自分には関係のないことだろうと思っていた琴子は、思わず大きな声を上げてしまったのだった。




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水玉さん♪
神戸のお話有難うございます!!
水玉さんの原点のお話。私も丁寧にコメントしなきゃ!!と思って・・・・
出来ないわ・・・・・とほほ。。。

入江君のバツ3.吹き出しちゃいました!!
こちらの入江君はとっても素敵だけど
秘密の院内恋愛のお陰で恰好いいだけじゃない訳ありなところも好き!!

さあ!特別病棟勤務の琴子ちゃん、これから忙しくなりそうね。
大好きな入江君と秘密の院内恋愛を楽しんでください。
入江君もバツの数が増えませんように(笑)


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YKママさん、ありがとうございます。

お久しぶりです!
入江くん、とうとうバツ3にまでなってしまいました(笑)それでも人気は衰えそうにありませんけれどね。
夫婦であることを秘密にしたいなんて無茶なお願いを受け入れている時点で入江くん、琴子ちゃんに甘いですよね。それも愛あるからこそ。

YKママさんもどうぞお体に気を付けてくださいね!

ゆみのすけさん、ありがとうございます。

ゆみのすけさん、ここを忘れないでいてくださってありがとうございます!
そんな、丁寧にコメントだなんて…ゆみのすけさんがこのシリーズが私の二次デビューだと覚えていてくださったことだけで嬉しいですよ~。
そうそう、このシリーズは琴子ちゃんと入江くん、対等な感じなんですよね。それが書きたくて二次創作に足を踏み入れた私ですから(笑)
院内恋愛、楽しめるといいですよね!
バツも、この調子だと半年後にはバツ6くらいになっていたりして。

カスガノツボネさん、ありがとうございます。

カスガノツボネさん、こんばんはでありんす。
お暑いでありんす(笑)
ていうか、ありえない暑さですよ!!こんな暑い中お越しくださりありがとうございます。
フカヒレ付の入江くん…すごい高級感は漂っているんですけどね!
気遣って下さり、ありがとうございます♪

たまちさん、ありがとうございます。

ありがとうございます~。
本当に入江くん、どんな男にされていくのか…。
仮眠室デートはこのシリーズになくてはならないものなので。
そうそう、私が起こす気満々でございます(笑)
琴子ちゃんの周りにはいい男が集まってきますからね。
入江くんも色々苦しむがいいさ…というのがこのシリーズの裏コンセプト(笑)

紀子ママさん、ありがとうございます。

お待たせしました~。
万歳までしてくださって、すごく嬉しいです!
そうだ、今はその時期だった…←おい!
今考えると政治家じゃなくてもよかったかもと思うのですが、浮かんだ時が政治家設定だったのでまあいいかと(笑)
参院じゃないのがちょっと申し訳ないっ!
入江くん、イケメンなんだから本当に頑張れよっって思います。
紀子ママさんも暑さに体がまいらないように。いや、まいるのが普通だから無理しないでくださいね。
そうそう、『ゴルゴ死す』が見つからなかった…。でも掲載作品は多分読んだことあると思います。
先月出たコンビ二版ゴルゴはイマイチでした…。
やっぱゴルゴは最初のころが面白いと思います。

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プロフィール

水玉

Author:水玉
『イタズラなkiss』のほかには『ゴルゴ13』が好きです☆
多数あるイタキスの二次小説の中で邪魔することなく、ひっそりとマイペースで我が道をゆきつつ生息しております。
そっと見守っていただけたら嬉しいです。

※当ブログに掲載されている文章及びイラストの無断転載・使用はご遠慮下さい。

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当ブログは、『イタズラなkiss』の二次創作をメインとしておりますが、時折管理人の趣味や日々の出来事についての記事も書いております。

原作者様や関係各位とは一切関係ありません。

二次創作については、いわゆる原作の隙間をぬった作品もありますが、主人公以外のキャラクターをメインとしたものや オリジナルキャラクターが出てくるものもございます。

そして、原作と違った時代(平安や明治やその他の時代を舞台にしております)、異なる設定(主人公を医者と看護師じゃない職業にしております)で書いてあるものが多いですが、原作を冒涜しているつもりは全くございません。

二次創作が苦手という方及び原作のイメージと合わないと思われる方はどうぞお引き取り下さいますようお願いいたします。

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