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2013.07.08 (Mon)

語る後輩

お久しぶりです。
不在中に足を運んで下さった皆様、ありがとうございます。
過去作にも拍手をありがとうございます。
私もこっそりと自分で書いた『マドカメ』を読み返してました(笑)

久々の創作なので文章がうまく書けない…(いつものことか)
久々がこんな話ですみません。予告とも違ってすみません。

ゴルゴの名言をただただ、入江くんに言わせてみたかっただけなのです。
でも先日のご挨拶で「ひそかに好き」とおっしゃってくださった方がいらしてすごく嬉しかったです。








【More】




しんと静まりかえった医局。僕以外に誰もいない。
ちょうどよかった、ゆっくり休めそうだ。医学書でも読みながらコーヒータイム…と思った時、ドアが開いた。

「何だ、お前か。」
ゆっくり休めないこと、確定。
現れたのは、ふてぶてしいことこの上ない、憎たらしい後輩だ。

でも僕は邪魔されたくらいで顔に出したりしないのさ。
こいつと違って人間ができているからね。

「ほら、お前の分も淹れてやったぜ。」
できた先輩の僕は、この生意気な後輩の分もサーバーからコーヒーを淹れてやった。

ところが。
「…先に飲んで下さい。」
「何?」
それって。
「僕に毒見しろってことか?」
「いいから。」
「ったく、何だよ。」
一体何様なんだ、本当に!
先に毒見をしないと口につけないってことですか、ああ、そうですか。

「分かったよ。しょうがないな。」
僕は人間ができてるからね。こんな馬鹿なことでも従ってやるよ。
この僕が毒なんて入れるわけないじゃないか。
いいだよ、飲んでやるよ。
僕はコーヒーを一気に喉に流し込んだ。

「ほら、これでいいだろ?」
僕が飲んだのを見ると、後輩は漸くコーヒーを受け取った。
そして口につけようとした時――。

バタンッ!!

「ちょっと待ったあ!!」
医局のドアが大きな音をして開いたかと思ったら、琴子ちゃんの声が響いた。
「入江くん、そんなコーヒー飲んだらだめ!」
琴子ちゃんは入江からコーヒーを奪う。
「これって泥水みたいな味がするコーヒーなんでしょ?こんなの入江くんが飲んだらだめ!」
そして奪ったコーヒーをなぜか僕へと押し付ける琴子ちゃん。
僕は泥水をすすってもいいのかい?

「入江くんにはこれ、琴子特製スペシャルコーヒー!」
琴子ちゃんは愛おしそうに頬ずりした青いタンブラーを、入江に渡す。
そして入江の奴はそれを黙って飲んだ。おい、毒見はどうした!
ああ、そうですか。はいはい、琴子ちゃんはお前の飲み物に間違っても薬なんて仕込まないもんな。

「味はどう?」
琴子ちゃんの問いかけに入江の返事、それは。

チュッ。

…キスで返しやがった!

「うふ。お口に合ってよかった。」

…よかったね、琴子ちゃん。僕は泥水をすするさ。
僕は泥水コーヒーを手に机に戻った。
やれやれ、医学書に集中して…。

バタンッ!!

「あ、琴子も来てたのね!」
次に姿を見せたのは桔梗くんと品川くん。
「入江くんにスペシャルコーヒーを差し入れしてたの。どうしたの、二人とも?」
「アタシたちは医局の泥水コーヒーをすすりにきたのよ。」
と、桔梗くんと品川くんはコーヒーサーバーに近づいた。

「ほら、ここのコーヒーのまずさってすごいじゃない?」
桔梗くんが注いだコーヒーを品川くんに渡す。
「モトちゃんと啓太に話を聞いたら、一度飲んでみたくてね。ほら、まずいものって何か興味を引かれるっていうか。どれくらいまずいのかなって。」
そう言って品川くんはカップに口をつけた。

「うえぇぇ。何、これ?」
「でしょ、最強の味でしょ?」

それを毎日飲んでいる僕って一体…。
というか、僕の存在なんて誰も目に入ってないでしょ?ね?ね?

「こりゃまずいわ。でも癖になる。うわ、やっぱまずい。」
口をつけながら顔をしかめる品川くんと桔梗くん。そしてそれを眉をしかめながら見る琴子ちゃん。三人は入江も一緒にソファへと腰かけた。

「そうだ、入江先生に一度聞いてみたいことがあったんです。」
桔梗くんがまずいコーヒーを手に入江を見た。
「入江先生の思うプロの条件って何ですか?」
「あ、それ私も聞いてみたかった!」
同調する品川くん。
「入江先生ほどの名医となるとやっぱりそれなりの条件とかあるんでしょうね。」
「そりゃそうよ。入江くんだもん。」
と、胸を張るのは琴子ちゃん。

「プロの条件…。」
入江は琴子ちゃんの特製コーヒーをすする。そんな入江の答えを待つナース三人。

入江は口を開いた。
「10%の才能と20%の努力、30%の臆病さ…残る40%は運だろうな。」

「キャーッ、何て素敵!!」
「渋い、渋いわ、入江先生!」
「入江くん、最高にかっこいい!!」

入江の答えに狂喜乱舞する三人。

…ちょっと待ったあっ!!!
僕は心の中で叫んだ。
君たち、この答えは喜ぶところじゃないだろ。

10%の才能と30%の臆病さは置いておいて。
20%の努力?おい、もっと努力しろよ!医者なんてもんはな、生涯努力の連続なんだぞ?
そして最大の問題なのは。
…40%の運って、何だそりゃあ!!
医者が運とか口にしたらダメ、ダメ、ダメ!!
しかも運の割合が努力の倍って何だよ、おいっ!!



「こんなプロ意識の高い入江先生と一緒に働けるなんて、私たちって幸せ者だわ。」
「本当!」
そしてそんなことに気づかずキャーキャーと騒ぎ続けるかしましナースたち。
フン、何が幸せなんだか。

「でも入江くんがこんなに頑張っているのに、どうして病気はなくならないのかしらね?」
と、首を傾げる琴子ちゃん。
そりゃあそうだよ。入江がいるからって病気が減るもんじゃあるまいし。

「世界に俺がいるから病気が起こるわけじゃない…。」
入江はまた口を開いた。
「…病気が起こるから俺が存在するんだ。」

「キャーッ!!またもや素敵発言!!」
「何て自信たっぷり、でもさすが入江先生!」
「入江くん、もうどこまで私を夢中にさせるのー!」
琴子ちゃんに抱きつかれる入江。それでもこの男は表情一つ変えやしない。

まったく聞いていられないよ。
僕はわざと音を立てて席を立った。それでも誰も気づきやしない。



「うん、これなら来週には退院できますね。」
「ありがとうございます、西垣先生。」
医局のバカ騒ぎに付き合っていられなかった僕は、病棟で田村さんという患者さんの様子を見ていた。
「本当に先生がよくしてくださっていたから。」
「いやいや、田村さんが真面目に治療を受けて下さったからですよ。」
田村さんは七十代のおばあちゃん。
「おばあちゃん、いい先生に診ていただけてよかったね。」
そして傍にいるのは二十代のお孫さん(なかなかの美人)。
うんうん、これが本来あるべき医者と患者の姿なんだ。大金積ませて尻に薬ぶちこむなんて間違ってるよ。

「西垣先生、ありがとうございました。」
お孫さんが僕に熱い目を向ける。その目には何か他にもあるんじゃないかなあ、なあんてね。
「西垣先生が主治医ならこれからも安心です。」
「そんな、田村さん。」
僕はコホンと咳払いをした。

「世界に病気が起こるから僕がいるんじゃありません。僕が存在するから病気が起こるんです。」

…入江の台詞、パクッちゃった。てへっ。

でも決まっただろ?あの台詞は僕のような真っ当な医者が言うからこそ、価値が出る台詞なんだ。
田村さんとお孫さんの僕を見る目がまた熱くなっているだろうな…と僕は二人を見た。
惚れ直したかい?なあんて?

「僕が存在するから…。」
「病気が起こる…。」

そこには僕を惚れ直すどころか、冷めた目で見る二人の姿が…。
…あれれ?




「…君はこの病院をつぶしたいのかい?え?何か恨みがあるのかい?」
「恨みなんて何も…。」
「じゃあ、何でこの間から変なことばかり言って、患者を惑わせる?患者を減らして何をしたいんだ?」
「減らすなんてとんでもない!」
「“この病院は怪しいウィルスを持っている医者が勤めている!”って病棟は大騒ぎだ。」
「ウィルスなんてもってないですよ!」
「それじゃあ、これを脱いでもいいかね?」
「どうぞ、どうぞ。」
僕が答えると、目の前に座っている外科部長は防護服のフードを外し、眼鏡を取って「ふう」と息をついた。
「何でこんな暑い日にこんなもんを着させられる羽目になるんだか。」
…誰も着ろなんて言ってないじゃん。

僕は入江の台詞を完璧にコピーしたつもりだった。それなのに、どこでどう狂ったかどうも意味を間違って取られたらしい。
おかしいなあ。どこか間違って言ったんだろうか。



ようやく外科部長から解放され、医局に戻った僕を出迎えたのはあの後輩だ。
「…呆れた人ですねっていう台詞も、言うのに飽きてきました。」
「…誰も言ってくれなんて頼んでないよ。」
「これ以上仕事を増やさないでほしいんですけれどね。」
僕の患者はこぞって、主治医の変更を求めた。結果、入江の担当が増えてしまったわけで。

「お前が悪いんだろ!琴子ちゃんたちに褒められて有頂天になって変な台詞ばかり言うからっ!」
八つ当たりかもしれないけど、言わずにいられない。
お前が変なことを口にしなければ僕だってあんなこと言わなかった。
ああ、そうだ。お前のせいだ!

「クスッ。」
入江の口からは台詞の代わりに、意地悪な笑みがこぼれた。
「何だよ、何がおかしいんだ?」
「どうせ俺の台詞をまんま真似ようとして肝心な部分を間違えたってところでしょ?」
「なっ、どうしてそれをっ!」
図星なだけに僕は他に言い返せなかった。

「思い付きだけで行動するのは愚か者のすることです。」
「なっなっ何だってえ!!」
「…それを得意気に話すのは、もっと愚か者のすることです。」
「入江、てめえ…!!」
怒る僕を無視して、入江はスタスタと医局を出て行ってしまった。
くそっ!!また入江にやられたぁぁぁ!!
















☆ゴルゴ13の名言

その1
プロの条件を聞かれて
「10%の才能と20%の努力…30%の臆病さ…残る40%は…運だろうな。」

その2
「世界に俺がいるからテロが起こるのでは、ない。テロが起こるから、俺が存在するのだ…。」

その3
「思いつきだけで行動するのは…愚か者のすることだ…それを…得意気に話すのは、もっと愚か者のすることだ…。」


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 |  2013.07.08(Mon) 22:55 |   |  【コメント編集】

★たまちさん、ありがとうございます。

たまちさん、お久しぶりです。
太郎くんのことまで覚えていてくださってありがとうございます。
たぶん、ガッキーは認めたくないでしょうがガッキーの目からも入江くんはかっこよく見えるんですよ。だからつい真似をしては失敗するという…。
本当に懲りない人です。でもガッキーのおかげでゴルゴ入江シリーズは何とか続いているわけだから感謝しないと(笑)
水玉 |  2013.07.09(Tue) 23:34 |  URL |  【コメント編集】

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 |  2013.07.27(Sat) 20:59 |   |  【コメント編集】

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