日々草子 シンデレラ・コトリーナ 7

シンデレラ・コトリーナ 7

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コトリーナが博士からもらった本を、早速図書室へと納めたその帰り、前方から高く積まれた本がヨタヨタと動いてくる光景をナオキヴィッチは発見した。
崩れるのも時間の問題だとナオキヴィッチは思った。しかし、崩れそうで崩れない。
「何だ、あのバランスの良さは…。」
見ているこちらがハラハラしてしまう。
「おい。」
思わずナオキヴィッチは本の向こうから声をかけた。一体誰が運んでいるのだろうか。
「え?あ、王子様?」
本の向こうから顔を見せたのは、コトリーナだった。
「まあ、こんな所で…。」
と口にした途端、驚きと嬉しさのあまりにコトリーナはバランスを崩してしまい、本を全て落としてしまった。

「本は大事にしないとだめだろ。」
一冊、一冊、埃を払いながら拾っていたコトリーナの目の前に、ナオキヴィッチは落ちていた本を取り上げた。
「ごめんなさい!」
「ったく、誰かに命じて返却させればいいのに。」
「そんな、女官の立場ではそんなことできません。」
女官とはいえ特別女官、王妃の客人と同等であるからそんな遠慮は必要ないはずだと、ナオキヴィッチは思った。
「それに司書さんに色々相談しながら本を探すことも楽しいですから。」
ナオキヴィッチは拾った本の表紙に目をやった。
「イーリエ王国外交史…?こっちは政治学概論。何だ、こんな本を読んでいるのか?」
コトリーナにはとても似合わない本ばかりであった。
「お前、内容理解できてるわけ?」
「いえ、まあ…全然。」
「睡眠薬の代替品に使っているのか。」
「そうじゃなくて。」
「じゃあ何の目的で?」
ナオキヴィッチに問い詰められたコトリーナは、
「…王子様のお役に立てたらいいなと思って。」
と、とうとう白状する羽目になった。
「俺の役に?」
「はい。その…今すぐは無理ですが、いつか王子様が壁にあたった時に私がアドバイスなどできればいいなあと。」
「お前にアドバイスを求めるようになったらおしまいだな。」
「そう言われるとは分かっていますけれど。でも王子様のお役に立ちたいんです。どんな小さなことでもいいから、王子様のお力になりたいんです。」
と、コトリーナは本を積み重ねていく。

「俺、お前のこと好きにならないってはっきり言ったよな。」
「…はい。」
ナオキヴィッチはその場から立ち去らずに、廊下に座り込んでコトリーナと同じ目線になった。
「それなのに、何で俺にそこまで尽くそうとするわけ?」
「それは、王子様のことが好きだからです。」
もう何度目になるか分からないセリフを、またもやコトリーナは頬を染めながら言った。
「その台詞を繰り返せば、俺の性格が少し柔らかくなるとでも思っているとか?」
「まさか!」
コトリーナは笑った。
「じゃあ、どうして性格と口の悪い俺をこんなことをしてまで追いかけるんだ?俺にはどうしてもそこが理解できない。」
本を突きながら、ナオキヴィッチはコトリーナに訊ねた。すると、
「性格がどうであろうと、王子様が好きなんですからしょうがないです。」
という答えがコトリーナから返って来た。
「性格が悪くても、口が悪くても、私は好きなんです。そんな王子様を好きになってしまったんです。好きになったことに理由なんてつけられません。」
「…やっぱり変な奴。」
あまりにきっぱりとしている答えに、ナオキヴィッチの方が面くらってしまった。

「今突然優しくなってしまわれたら、それこそ私は困ってしまいます。“え?王子様、頭でも打ってしまったのかしら?”って心配してしまうかも。」
「大丈夫だ、優しくなる予定は全くないから。」
「ならよかった。」
「いいのか?」とナオキヴィッチは心の中で疑問に思ってしまった。

「王子様。」
ナオキヴィッチに手伝ってもらって本を全部積み上げることができたコトリーナは、ナオキヴィッチに声をかけた。
「何だ?」
「ご自分が思っておられるほど、王子様は性格が悪くありませんよ。」
「え?」
またもや意外なことを言われ、面食らうナオキヴィッチ。それに構うことなく、コトリーナは続ける。
「だって、捨て猫の件。もし王子様が本当に性格が悪かったら、“俺の城を捨て猫で汚した!”って、捨てた人を探し出して八つ裂きにしているはずでしょう?猫だって知ったことではないって放置しているはず。」
「…お前の悪人レベル、高すぎ。」
さすがにそんなことはしないナオキヴィッチである。
「あら、本当の悪人なんてそんなもんですよ。でも王子様は動物が捨てられないようにと色々考えられたじゃないですか。」
「それは別に性格の良し悪しは関係ないことだと思うが?」
「ありますよ。図書室の件だってみんなが使えるようにして下さったり。きっと見つけたら沢山あると思います、王子様のいい所。私はお傍にいて、そういう所をたくさん見ることができたら幸せなんです。」
「…やっぱ、お前変わってるわ。」
「そうですか?自分ではそう思わないんだけれど。」
「えへへ」とコトリーナは頭に手をやって笑った。

「ええと、つまり王子様は今のままでいいですよってことをお伝えしたかったんです。」
「そりゃどうも。まあ、お前にいわれなくても変わるつもりはないけどな。」
「ええ、そうですよ。変わらなくて大丈夫です。そこが好きですから。」
自分で言っておきながらまたもや「きゃっ」と頬を染めるコトリーナである。

「お前と付き合ってると、何かおかしくなりそうだからそろそろ行くわ。」
立ち上がるナオキヴィッチに、
「王子様!最後にもう一つだけ。」
とコトリーナが声をかけた。
「何だよ?」
「あの、この先何かされたとして…それが沢山の人に反対されたとしても、私だけは王子様の味方ですから。」
ニッコリと笑うコトリーナに、ナオキヴィッチの表情が少し変わった。
「味方?」
「はい。世界中の人が王子様は間違っている、おかしいって言っても、私だけは間違っていない、王子様はおかしくないって胸を張って主張しますからね!」
自信たっぷりなコトリーナの顔を、ナオキヴィッチは綺麗な顔で見つめた。何も言葉が発せられない状況に、かえってコトリーナの方が緊張する。

「あ、あの…。」
何とかして、この状況を変えねばとコトリーナも立ち上がった。
「た、たとえるなら…ええと…王子様が何かして、誰かに追われて下水道を走ることになったら、私も一緒に走ります!臭くても我慢して!」
「そんな場所、絶対走らねえよっ!!」
「そうですよね。ハハハ。」
いつものナオキヴィッチに戻ったことで安心したコトリーナは、またもや笑った。
「お前、やっぱり俺のこと、相当の悪人だと思ってるだろ?」
追われて下水道を走るなんて、どんな悪行を重ねた自分を想像しているのかとナオキヴィッチは呆れる。

「ったく、お前の想像はどこまで突っ走るんだか。」
「…すみません。」
本をまた抱えようとしたコトリーナ。その3分の2がひょいとナオキヴィッチの手に渡った。
「また落とされたらたまらねえからな。」
コトリーナの顔を見ずに、本を抱えて前を歩きだすナオキヴィッチ。
「…そういうところが好きなんです。」
またもやナオキヴィッチの隠れた優しさを発見できたコトリーナも本を抱え、その後ろを歩き出したのだった。





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Author:水玉
『イタズラなkiss』のほかには『ゴルゴ13』が好きです☆
多数あるイタキスの二次小説の中で邪魔することなく、ひっそりとマイペースで我が道をゆきつつ生息しております。
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