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2013.04.27 (Sat)

シンデレラ・コトリーナ 6

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モトがどうしようと悩んでいるうちに、資料を持った男が到着した。

「わざわざすまなかった。」
客と会う専用の部屋にて、ナオキヴィッチは男に礼を述べる。
「とんでもございません。それにしても、私のまとめたこの資料が王子様のお役に立てる日が来るなんて光栄でございます。」
何でもこの男はその昔、博士から教えを乞うたことがあり、その際に博士の例の本をまとめたノートを作っていたのだという。

「ああ…何てことを。」
姿を隠してその様子を見ていたモトは肩を落としかけた。が、その脳裏にズタズタのボロボロになったコトリーナの顔が浮かぶ。
「こうしちゃいられない!」

「では、どうぞ。」
男がノートを王子へ差し出した時である。
「カマ、カマ、カマ~!!!」
モトは杖を高く上げ呪文を唱えた。

「…。」
男のノートを出す手が止まった。
「どうした?王子様がお待ちかねだというのに。」
ナオキヴィッチの傍に控えていた侍従が怪訝な顔をして、男の元へ近づいてきた。ナオキヴィッチも首を傾げている。

「さ、こちらへ。」
と、侍従がノートを掴んだ。が、男はノートを自分の胸に抱え込んだ。
「こんな…こんなものを…。」
男はノートをめくり、深い溜息をついた。
「こんな下手くそな字を、私は王子様へお見せしようとしたなんて!!」
「え?」
突然豹変した男の態度に、ナオキヴィッチと侍従が驚いた。
「こんなもの、とてもまとめなどと呼べない!!ああ、私は何てことを!!」
男は叫ぶと、ノートをビリっと引き裂いた。
「ああっ!!」
思わず叫ぶ侍従。
「こんなものをお目にかけるわけにはいきません。王子様の目が穢れます!」
男は暖炉の中にポイッとノートを放り込んだ。パチパチと音を立ててノートは瞬く間に炭と化した。
「私は達筆になるための修行に出ます。それではっ!!」
意味不明な言葉を残し、男は足早に立ち去って行った。
ナオキヴィッチと侍従は、それをポカンと見送るしかできなかった――。



「ふう、さすがアタシ。できる魔女は違うわよねえ。」
自画自賛しながら、モトはこっそりと部屋を出た。と、ちょうどそこにコトリーナが姿を見せた。
「モトちゃん!」
「ああ、グッドタイミング。」
ナオキヴィッチはそこの部屋にいるというと、コトリーナは嬉々としてそのドアを開いた。

「王子様!」
「うわ、何だ、その恰好は!」
侍従も出て行ったその部屋で一人だったナオキヴィッチは、コトリーナの姿にさすがに表情を変えた。
「あ、大丈夫です。追い剥ぎにあったわけじゃありませんから。」
モト、博士から続けて追い剥ぎにあったと思われたので、ナオキヴィッチも同じことを考えたのだろうと、コトリーナは先回りをした。
しかし、
「そんなことは思っていない。お前は剥がされるより剥ぐ方が好きだろうが。」
とナオキヴィッチは相変わらず冷たい。
「どうせ庭で暴れていたんだろう。」
「違いますよ。」
「じゃ、何だ?」
「これを王子様にお見せしたくて。」
コトリーナは背中から本を下ろして、「はい!」とナオキヴィッチの前にそれを出した。
「これは…。」
「博士が下さいました。」
ナオキヴィッチは本とコトリーナを見比べた。
「大丈夫、本はきれいですよ。」
コトリーナは自分がこんな姿だから、ナオキヴィッチが本の状態を気にしているのだろうと思っていた。

「…よくこの本が必要だってわかったな。ああ、そうか。あの時図書室にお前もいたからな。」
「ええ。司書さんに教えてもらって。ああ、私が無理矢理聞き出したんですけどね。」
司書が叱られないようにとコトリーナが庇ったことに、ナオキヴィッチは気づいた。
「きっとお仕事に必要な本なんだろうなと思って。王子様はお忙しいでしょうから、私が代わりに。」
「よくあのクソジジイが渡したもんだ。」
「モトちゃんと一緒にお願いしたら大丈夫でした。」
「ふうん。」
「私の王子様への恋心を理解してくれたみたいですし。」
ポッと頬を赤く染めるコトリーナ。
「恋心、ね。」
絶対自分が行っても出して来なかったに違いない。あの頑固博士の心を一体どうやって溶かしたのだろうか。

「…とりあえず、風呂に入って来い。」
「え?」
そこでコトリーナはハッとなった。この豪華な部屋に、ボロボロの自分は明らかに似合わない。体も汚れている。
「あ…すみません。匂い…ますね?」
好きな男の前になんて格好で現れたのだろうと、コトリーナは今更ながら恥ずかしくなった。きっとナオキヴィッチも不潔だと思っているに違いない。
「ごめんなさい。すぐに目の前から消えますね。」
「風呂に入らないと疲れも取れないし、疲れがとれなかったらぐっすりと眠れないだろう。」
ナオキヴィッチの口から優しい台詞がもれた。
「一晩中、迷っていたんだろう?あのジジイ、何が楽しいのが知らないが山奥に引っ込みやがったし。お前の足じゃ苦労しただろう。」
「…いえ、そんな!」
労いの言葉をかけられたコトリーナは、ブンブンと手を振った。
「大丈夫です。元気いっぱいですから。」
両腕を上げ、笑って見せるコトリーナにナオキヴィッチが続ける。
「ありがとう。」
初めてナオキヴィッチから優しくされ、コトリーナは、
「あ、ええと…お風呂!お風呂に入ってきます!」
と、あたふたとなってしまった。
「でも、この格好で歩いたらお城の人たち驚いちゃいますよね。どうしよう、どこか人目につかない道とかないかしら?」
「堂々と、胸を張って歩けばいい。」
ナオキヴィッチの口調はいつもの意地悪な感じではなかった。
「構うことはない。大広間だって出たければ出ればいい。今のお前を笑う奴がいたら、俺は殴り飛ばすだろう。」
「王子様…。」
ナオキヴィッチとコトリーナは、それから何も話さず、お互い見つめ合ったままだった。


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 |  2013.04.27(Sat) 17:49 |   |  【コメント編集】

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 |  2013.04.27(Sat) 19:02 |   |  【コメント編集】

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 |  2013.04.27(Sat) 21:58 |   |  【コメント編集】

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 |  2013.04.28(Sun) 23:41 |   |  【コメント編集】

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 |  2013.05.04(Sat) 00:26 |   |  【コメント編集】

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