日々草子 シンデレラ・コトリーナ 4

シンデレラ・コトリーナ 4

コメントと拍手、ありがとうございます!!
この時期は更新できないことに心苦しさを感じて、ブログの続行にも悩むことが多々あるのですが、こうして感想や拍手をいただけると本当にやる気がでます!!










コトリーナは城内の図書室の前に立っていた。
「ここって、やっぱり許可がないと入れないわよね…。」
固く閉ざされたドアの前でコトリーナは溜息をついた。そのドアはまるで自分を拒んでいるかのように重厚なものであった。
「許可って、やっぱり王様とか王子様じゃないとだめかしら?」
怖いナオキヴィッチの表情を思い出すと、絶対許可などもらえないと思う。
「王妃様にお願いしてみようかな。」
王妃の部屋へと向かおうとしたコトリーナの前で、重厚なドアがカチャリと音を立てて開いた。
「何か御用でしょうか?」
図書室の係だろうか?中年の男がコトリーナを不思議そうに見ていた。
「あ、あの…こちらの図書室で本を読みたいのですが…だめ…ですよね?」
「あなたは?」
「私は王妃様にお仕えする特別女官のコトリーナと申します。」
コトリーナの身分は王妃付特別女官というものであった。これはいくら王妃の目に留まったからとはいえ、理由がないとコトリーナを城に滞在させることはできないということから考えられた身分であった。
女官といっても身の回りの世話をすることはなく、王妃の話し相手のようなものである。

「王妃様にお許しを得てから出直してきたら大丈夫でしょうか?」
「いえ、許可など特に必要はありませんよ。さあ、どうぞ。」
「え?」
図書室の司書と名乗った男はにこやかに、戸惑うコトリーナを中へと招き入れた。

「わあ…すごい本。」
外からはまったく様子がわからなかったが、想像を超える広い部屋。その壁にそって書棚がびっしりと並んでおり本がぎっしりと並んでいる。そして部屋の中にも高い本棚が並んでいる。まさしく本だらけの部屋。
「こんなにたくさんの本を、私も読めるのですか?」
「ええ。こちらにお名前だけお願いしますね。」
司書が差し出す名簿に、コトリーナは名前を記入した。

「城にいる人間は、誰でも自由にこの図書室に入って本を読むことができるんです。」
「誰でも?」
「はい。王子様のお考えで。」
「王子様ってナオキヴィッチ様ですよね?」
「そうです。最初は王族方の許可を頂く決まりであったのですが、王子様が規則を変えられました。知識を吸収したいと思う者が自由に遠慮なく、出入りできる図書室にするようにと仰られて。」
「自由に遠慮なく…。」
「知識を得たいという思いは大変尊いものである。沢山の人間が本から学ぶことによって、さまざまな考えを抱き、それがご自分に影響を与える時もあるだろう、学問は平等であるべきだと仰られて今の規則になりました。」
ただ、管理の上に名前だけは記録しておくのだと司書は名簿をしまいながら説明してくれた。



「…ですって。本当に王子様って色々なことを考えていらっしゃるのね。」
うっとりとした顔で司書の話をコトリーナはモトへ説明をしていた。
「捨て猫の件といい、図書室の件といい、王子様はやはり本当は優しい方なのよ。それなのにどうしてそれが広まらないのかしら?」
「…性格と口のきつさが、そのささやかな優しい性格を全て覆い隠してしまうからでしょうね。」
「んま、何てことを。」
「それより、アンタはそこで何を借りてきたってわけ?」
コトリーナの前に積み上げられた本の背表紙をモトはなぞった。
「政治学?経済学?外交史?何、こんな難しい本がアンタの愛読書なの?」
「ううん、さっぱりわからない。」
コトリーナは積み上げられた本の上に顎を乗っけた。
「じゃあなんで?」
「それは…。」
「ムフフ」とコトリーナは意味ありげな笑いを浮かべる。
「何よ?」
「王子様のお力になりたいなと思って。」
「力?」
「そう。王子様が悩まれた時に私が“この本にこんなことが書いてありましたよ”ってサラリと助言できたら素敵だと思わない?王子様のお力になれたらと思うと…。」
「サラリと助言…ねえ。」
「すぐには無理だけど、努力を続けたらいつかはそんな日がと思って!」
「到底無理」と顔に書いてあるモトに向かって、コトリーナは懸命に主張した。



「これは王子様。」
「少し調べたいことがあって。」
ナオキヴィッチの声に、奥の書棚の前に座り込んでいたコトリーナはハッと顔を上げた。
「ど、どうしよう…また何か言われるかも。」
愛しいナオキヴィッチに会えたことは飛び上がらんばかりに嬉しかったが、バカにされることは間違いない。
だがこんな広い図書室、息を潜めてここにいれば見つかることはないだろうとコトリーナは考えた。
ところが。

「名簿を。」
「何ですって!?」
思わず叫びそうになる声をコトリーナは必死で堪えた。
「かしこまりました。王子様でしたらお名前を記入していただかなくとも結構ですのに。」
「規則は守らねば。」
「左様でございますか。」
「何て真面目な王子様…。」
とコトリーナは額に手をやった。

「ん?」
名簿に名前を記入したナオキヴィッチは、すぐ上に書かれた名前に目を止めた。
「コトリーナ…?」
「王妃様の特別女官の方です。」
「特別女官…あの追い剥ぎ女、そんな身分か。」
「追い剥ぎ?」
「いや、何でもない。まだこの者はいるのか?」
「はい。おそらく。」
「ったく。」
ナオキヴィッチは眉をひそめて、書棚の方へと足を向けた。



「…昼寝にちょうどいいとか思って入り浸っているんじゃねえだろうな。」
部屋の隅で小さくなっていたコトリーナを見つけたナオキヴィッチは、相変わらずの意地悪な言葉を投げつけてきた。
「違います。」
「じゃあ、何だ?」
「私は…。」
「何だよ?」
ナオキヴィッチの手伝いがしたいから難しい本を読み解こうとしているなど、コトリーナの口からはとても言えなかった。
「…何か物語とかないかなと。」
「子供向けはあっちだ。」
ナオキヴィッチは顎を動かすと、コトリーナが調べていた書棚の前に立った。

「…ないな、貸し出し中か?」
どうやら目当ての本がなかったらしい。ナオキヴィッチは司書を呼ぶとコトリーナには意味も分からない題名の本の所在について尋ねた。
「ああ、その本でしたら…。」
いつも朗らかな司書がなぜか顔を曇らせた。
「どうした?」
「その…著者の博士がお城を出られた時に一緒に…。」
「あのクソジジイ!!」
王子らしからぬ言葉に、コトリーナは驚いた。
「ったく、汚いことをしやがって!」
「お、王子様?」
オロオロするコトリーナなど無視し、ナオキヴィッチは図書室を出て行ってしまった。



「あの、今のは一体?」
「ああ…。」
汗をふいていた司書にコトリーナは訊ねた。
「王子様が探しておられた本は、その昔、王子様に専門的な分野を教えておられた博士の著作なのです。」
「それでその…クソジジイって?」
「博士は非常に気難しいお方で有名で。王子様は非常に御優秀なお方。まあどこがどうなったか、お二人は言い争いの上に…。」
「博士がお城を出られたわけですね。」
コトリーナの言葉に司書は頷いた。



「ああ、そうそう。そんなことがあったわねえ。」
魔法でネイルの筆を動かしながら、モトが遠い目をした。
「頭がいい方たちって、難しいのね。」
「いや、そういう問題じゃないのよ。」
「え?」
「カマ~」とのんびりとした声をモトが出すと、ネイルの瓶はサッと片付けられた。
「問題は頭じゃなくて性格。」
「性格?」
フーフーと爪に息をかけながらモトは説明を始める。

「頑固ジジイと頭でっかち王子がぶつかっただけ。」
「頑固ジジイ、頭でっかち…。」
「ほら、王子様ってアンタもよく知っているあの性格じゃない?爺さま学者相手に、自分の意見を率直にぶつけたわけよ。」
「それっておかしいことじゃないわよね?」
議論をすることは悪くないとコトリーナは思う。
「でもね、相手の年齢とかを王子様は気遣わなかったわけよ。博士の方も“この若造が”って態度だったから余計腹が立ったんでしょうね。“若造”“年寄”とお互い言い合って、はいサヨナラ~。」
モトは手をヒラヒラとさせた。博士は山奥へと引っ込んでしまったという。

「王子様が探していた本は、博士の代表作みたいなもんなのよ。思い入れがあったから図書室から持ち出して行ったんでしょうね。」
「売ってないの?」
「ええ。あんな難しい本を読めるのはあの王子様くらいなもんよ。」
「王子様が博士の元へ借りに行かれる…。」
「絶対しない!」
「…よね。」
そんな大ゲンカをした間柄なのだから、王子が頭を下げるわけがない。それはコトリーナにもよく分かることであった。



それから数日後――。

「コトリーナ、この間うらやましがっていたネイル、アンタにもしてあげる。」
コトリーナの部屋にやってきたモトであったが、部屋は空っぽであった。
「あら?」
一体どこへ行ったのかとその姿を探すモトの目が、テーブルの上に止まった。そこには手紙が置いてあった。

『モトちゃんへ。
博士の所へ本を借りに行ってきます。すぐに戻るから心配しないでね。あ、他の人には内緒にしておいてね。特に王子様には絶対言わないでね、驚かせたいから。
コトリーナ』




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水玉

Author:水玉
『イタズラなkiss』のほかには『ゴルゴ13』が好きです☆
多数あるイタキスの二次小説の中で邪魔することなく、ひっそりとマイペースで我が道をゆきつつ生息しております。
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