日々草子 請求する後輩

請求する後輩

ご存知の方はほぼ皆無かと思いますが、先週より某放送局にて某マンガの作家先生の特集が放送されております(笑)
まあそういうことで、このシリーズを記念(?)に。
今回は後輩じゃなく、その奥様が大活躍しております。

教えてくださった紀子ママさん、anpanさん、佑さん、本当にうれしかったです!
何が嬉しいって私の趣味を優しく認めてくださっている(?)そのお心です!!









僕はどうしても我慢できなかった。
いくら考えても納得いかない。
これを追及できるのは、僕しかいないだろう。

「琴子ちゃん!」
病室から出てきた琴子ちゃんは振り返った。
「西垣先生、何か?」
小首を傾げて僕を見る琴子ちゃん。くそ、可愛い。
何でこんな可愛い子をあの男は好き勝手にいじくりまわしているんだ!僕はムカムカしてきた。

「琴子ちゃん!」
僕は琴子ちゃんの華奢な両肩をガシッと掴んだ。
「…目を覚まそう?」
「え?寝てませんけど?」
「違う、そうじゃなくて。君は騙されているんだ!」
「騙されている?」
「そう、君は入江の野郎に騙されているんだよ。」
何が肉体要員だ。結婚しているから何でもしていいってわけじゃないだろ?

「いくら妻だからって夫からの理不尽な要求にこたえる必要はないんだよ。」
「どういう意味ですか?」
「どこでも体を提供する必要はないってことだよ!」

琴子ちゃんが大きく目を見開く。
と、同時に僕の尻に大きな衝撃が走った――。



「…あれは完全にセクハラです。」
医局で僕の尻にペタンと湿布を貼ってくれているのは、桔梗くんだった。湿布の冷たさがやけにこたえる。
「患者さんもたくさんいたところで、あれはないっすよ。」
桔梗くんに湿布を渡しているのは鴨狩くんだ。

「解雇されなくてよかったですねえ。」
「…僕は正論を言ったまでだ。」
僕の大事な尻に蹴りを入れてきたのは、憎き男入江直樹だった。
「くそ、入江の奴。手加減を知らないんだ。」
「そりゃあ手加減するわけないでしょう?」
やれやれと言いながら、桔梗くんは「はい、おしまい」とペチンと僕の尻を叩いた。
「痛い!!」
「あら、失礼しました。」
て、その言い方は全然反省してないし。

「でも入江先生が部長にとりなしてくれたから、謹慎で済んだんですよ。」
いつの間にか、医局のコーヒーを勝手に飲んでいる鴨狩くん。
「…分かってるよ。」
「“入江くんの旦那さんである入江先生がそう言うのなら”って部長は言ってたんでしょ?」
そうだよ。だけどさ、あいつは「また新しく医者を雇っても、現場に慣れるまで時間かかるから」みたいな理由で僕を引きとめただけなんだ。僕に気を遣ったわけではない。

「何で琴子ちゃんは入江の肉体要員にされても不満じゃないんだ。」
いくら入江の正体を知らないからといっても、おかしいだろ?
「それが琴子の喜びなんですよ。」
「え?」
「入江先生を愛し、愛される。それが琴子の喜びなんです。」
桔梗くんがはっきりと言う。
「そんな、だからって。」
「仕方ないでしょ、本人がそれで幸せを感じているんですから。」
と、またもやコーヒーを勝手に飲む鴨狩くん。



「そもそも、どうして僕ばかりこんな目に遭うんだ。」
まだ痛みが引かない尻を丸出しにしたまま、僕はうつぶせになって呟いた。
「君たちのように、僕だって入江の役に…。」
「立ってませんね。」
「立ってないです。」
同時に言わなくたっていいだろ。

「だけど君たちよりずっと僕の方があいつと一緒にいるわけだ。それなのにどうしてあいつはこんな仕打ちをするんだ。」
「そりゃあ、あたしたちにあって西垣先生にないものがあるんですよ。」
「何、それ?」
「入江先生と俺たち、入江先生と西垣先生、比べりゃ一目瞭然でしょ?」
「比べたら?」
うーん、何だ?何だ?

「それは…。」
「分かった、金だ!!」
「…え?」
そうだ、分かったぞ。桔梗くんたちと入江の間に存在して僕と入江の間に存在しないもの、それは金だ、金だろ、金、金、金、マネー!」
そうだよな。
ただで物を頼むのと金銭が発生するのとでは大違いだ。
入江は僕に金を払っていないから、つれない態度を取るんだ。そうに違いない!
「ちょっと西垣先生。」
「マネーだ、よっしゃあ!」
「西垣先生、それじゃやばいって!」
二人が止めようとする。大丈夫、僕の尻はもう痛みが引いているから安心して。
僕は医局を飛び出した。
病棟へと走っていくと、ちょうどそこに入江がいた。

「入江!」
入江が振り返る。僕はありったけの声で叫んだ。

「僕の体を金で買ってくれえ!!!」

ドカッ!!ドカッ!!ボキッ!!



「…医者って頭がいいわけじゃないんですね。」
心底呆れ果てた桔梗くんの声。
「勉強ができると、賢いは違うんだな。」
同様の鴨狩くんの声。
「いいから湿布!」
さっきよりずっと尻が痛い。もうだめだ、当分椅子に座れない。
「はいはい。」
「大体、君たちが言ったんだぞ?」
「お金で体を売れなんて言ってませんよ!」
ベチーンと勢いよく湿布を叩きつける桔梗くん。

「じゃあ、何だよ?」
「入江先生とあたしたちの間にあるのは信頼関係ですよ。」
「信頼?」
「そうっすよ。西垣先生は全然信頼されてないでしょ?」
と、もう片方の尻にベチーンと鴨狩くんが湿布を叩きつけた。
…この手荒な看護、こいつら、本当に看護師か?



「それにしても、琴子の奴すごかったな。」
「本当、あの点滴台の扱い方!まるで如意棒を操る孫悟空のよう!」
「俺も同じこと思った!頭の中でモンキーマジックが流れたぜ。」
「啓太も?でもあたしはガンダーラの方だったわ。」

…モンキーマジックだろうがガンダーラだろうが、知ったこっちゃないね。
今度僕の尻にダメージを与えたのは、琴子ちゃんだった。
病室から点滴台を回収してきた琴子ちゃんが現場にでくわしたのは運が悪かった…。

「変態、変態!!入江くんに何をするのよ、近寄らないで、この変態!!」

琴子ちゃんの叫びがまだ僕の耳にこびりついている…。

「そりゃあ、あんな恰好で。」
「あんな言葉を叫んだら、変態呼ばわりされても仕方ないでしょう。」
「下半身丸出しでね。」
「信じられねえ。俺たちが止めるのも無視して飛び出して行くんだから自業自得ですよ。」

…迂闊だった。
手当してもらうためにズボンとパンツを脱いでいたことを僕はすっかり忘れていた。

「通報されなかっただけでも、ましだと思って下さいよ。」
「そうそう、今ここにこうしていられるだけでもね。」
「…君たち、そんなことを言うためにここにいるわけ?」
何だよ、僕が心配で来てくれたんじゃなかったのか?

「だから言ったじゃないですか。琴子の喜びは入江先生を愛し、愛されることだって。」
「それを邪魔したんだから、琴子の怒りが爆発するのも無理ないな。」

あの騒ぎの後、入江がしっかりと琴子ちゃんを抱きしめていたのを僕はこの目でしかと見た。
「入江くん、あたしの入江くんが変態に…。」
「落ち着け、琴子。」
泣きじゃくる琴子ちゃんを慰める入江。
「俺があんな変態の餌食にやすやすとなるわけないだろ?」
「で、でも…。」
「大丈夫、俺はお前だけのものだから。」
と、キスをしてたっけ。


「あ、忘れてた。」
桔梗くんがポケットをゴソゴソと探す。
「これを渡すために来たんでした。」
と、出してきたのは…。
「請求書!?」
「そうですよ。あの点滴台はぐにゃっと曲がってもう使い物にならないんですから。新しいものを早く入れるためにも。」
「ちょ、ちょっと待て。あれは琴子ちゃんが壊したんだろ?この宛名は僕じゃなくて琴子ちゃんだ!」
「だって原因作ったの、西垣先生じゃないですか。」
鴨狩くんがひん曲がった点滴台を僕の前に出す。
「だから請求先は西垣先生だって、入江先生が。」
「あいつが言ったのか?事務、事務に抗議だ!」
「無駄ですよ、先生。」
ひん曲がった点滴台に哀れな視線を向けながら、桔梗くんが溜息をついた。
「事務はほとんど女性ですからね。入江先生に言われたら従う子ばかりですよ。」
「そんなあ。」
「あきらめた方がいいですよ。どうせ当分謹慎なんだから金も使うとこないでしょ?点滴台の一台や二台くらい。」
事もなげに言う鴨狩くん。
「ふざけるなあ!!」

こうして僕の謹慎期間は一週間だったところ、二週間に延びてしまった。

「あ、もう一個。」
医局を出ようとした桔梗くんが言った。
「湿布代、あとで取りに来ますから。」
「はあ!?」
「当然じゃないですか。医者だからって医薬品を自由に使えるとは思わないで下さいね。」
と呆れる鴨狩くん。
おい、お前はさっきから医局のコーヒーをがぶ飲みしてるじゃないか!

「ここのコーヒー、味いまいちだな。」
散々飲んでおいてその感想はなんだ!僕は毎日それを飲んでいるんだ。
「だから入江先生、琴子のコーヒーに目がないのね。」
「この味じゃ無理ないな。独身者は哀れっすね、西垣先生。」
そんな目で僕を見るんじゃない、鴨狩!!

「それじゃお大事に。」
「今度こそ、ちゃんと家に帰って引き籠っていてくださいね。」

…ざけんなあぁぁぁぁぁ!!!





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YKママさん、ありがとうございます。

貴重なコメントありがとうございます。
よかった、おひとりでもコメント下さって(笑)
見捨てずにいてくださり嬉しいです。

そうなんです、天下のN○Kで特集されました。ついでにN○Kとは思えない言葉まで放送されてました(笑)
変わったな…N○K。

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anpanさん、ありがとうございます。

いえいえ、そんなお名前出していいならいくらでも出しますよ(笑)
本当にありがとうございます。
この話、ゴルゴ入江シリーズで異例の拍手数でした!何がよかったんだろうか?
ガッキーのサービスカットでしょうか?誰か教えて~!!

紀子ママさん、ありがとうございます。

そうそう、宇宙編ね。
あれは二度目なんですよ。初期でもゴルゴは宇宙へいっておりますから。あの武器職人の爺様が宇宙で抵抗少ない銃を開発したのがすごいのなんのって。
兄ちゃん、すごかったですよね。確かに映画って見たらその気になりますけれど。その昔ボディガードって映画を見に行ったときは私もボディガード気分で誰かを守りたくてたまりませんでしたけど。
そしてイチャコラ(爆笑)
記念すべき第一話ですね。ちなみにゴルゴが笑ったシーンは数回あります。南アフリカの刑務所でつるされながら笑ってました(笑)
や~すみません、つい話しすぎました!!
プロフィール

水玉

Author:水玉
『イタズラなkiss』のほかには『ゴルゴ13』が好きです☆
多数あるイタキスの二次小説の中で邪魔することなく、ひっそりとマイペースで我が道をゆきつつ生息しております。
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二次創作については、いわゆる原作の隙間をぬった作品もありますが、主人公以外のキャラクターをメインとしたものや オリジナルキャラクターが出てくるものもございます。

そして、原作と違った時代(平安や明治やその他の時代を舞台にしております)、異なる設定(主人公を医者と看護師じゃない職業にしております)で書いてあるものが多いですが、原作を冒涜しているつもりは全くございません。

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