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2012.12.24 (Mon)

宇宙へ飛んだ後輩

クリスマスにこれをUPする私って一体…。






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その夜、彼は愛する妻とベッドを共にしていた。
「入江くん…。」
恍惚に眉を寄せる妻に彼は満足する。ここは二人の家ではなく、勤務先の仮眠室である。
だが場所など彼にとっては何の問題もなかった。
「ああ…愛の斗南大病院!!愛の斗南大病院!!」
いつもの台詞が妻の口から飛び出す。これを聞いた彼は微笑を浮かべた。
その時――。

「…十三個に分離。」
なぜかつけっぱなしになっていたラジオからの声。
「静止軌道衛星を「13」のパーツに分離させ、大気圏で燃やすそうです…。」
アナウンサーがニュースを読み上げている。彼は妻から体を離しラジオに耳を傾けた。

「どうしたの…?」
途中で行為を止めた夫を妻は気遣う。
「琴子…呼び出しだ。」
「え?PHS鳴った?」
どうやら妻の耳にはニュースは聞こえていなかったらしい。彼女は脱ぎ捨てられている夫の白衣に目を向ける。
「…しばらく出かけなければいけないみたいだ。」
「しばらく…。」
シーツを胸元まで上げながら、妻は起き上がった。その口に彼はキスを落とす。
「さびしい思いをさせるけれど。」
「ううん。それだけ入江くんが必要とされているんだもの。私のことは気にしないで。」
妻に見送られ、彼は素早く着替えて仮眠室を出て行く――。



************

「へえ、流れ星になるわけか。」
帰ろうとしていた僕はラジオのニュースを聞いて、それはロマンチックだと思っていた。
「僕の部屋でどう?とか誘えるかもしれないなあ。」
今すぐ誘えそうな女の子の名前を頭の中に呼び出していると、医局のドアがバタンと開いた。
「何だ、お前まだいたのか?」
とっくに帰ったと思っていた生意気な後輩が不機嫌そうに入ってきた。
「ええ。」
「何をしてたの?」
「琴子と寝てました。」
「…。」
堂々と言う所がすごいよな。ここ、職場だってこと忘れてない?と言ってももう無駄だと知っているので僕は黙る。

「ったく、こんな緊急な呼び出しをかけられたから、途中で引き上げる羽目に。」
「緊急?」
おかしい、急変とかだったら僕に連絡が来るはずだが。いや待て待て。今「途中で」と言ったよな?

「それじゃ、続きは僕が…。」
しめしめ。ということは琴子ちゃんは例の仮眠室にいるわけだ。しかも…ムフフ。
きっと半分寝ぼけているだろうから、僕が誰かも分からないかも。
「んなこと、させるわけないでしょうが。」
「へ?」
ドシンという衝撃があったと同時に、僕の意識は失われた――。



「ん…?」
何かすごく体が冷たい。僕は目を開けた。
「え?何で床に?」
冷たいはずだ。僕は床の上に寝ていた。
「何だよ、入江の奴。僕を床へ放置していて…。」
頭を殴られたのか、まだ痛みが残っている。くそ!あいつは琴子ちゃんが絡むと本当に容赦ねえからな。

「あれれ?」
頭を押さえながら起き上がった僕は首を傾げた。
なぜって?だって僕の前に立っているの、みんな日本人じゃないんだもん!
「ここ…病院じゃないの?」
「…違います。」
聞き覚えのある、意地悪な声に僕は振り返った。
壁にぴったりと背中をくっつけて、入江が僕を冷たく見ている。
「じゃ、どこ?」
「…NASAです。」
「ナ…サ?」
あれ?NASAってどこにあるんだっけ?え?アメリカじゃなかったっけ?

「そうです、アメリカですよ。」
てことは、僕は気を失っている間にアメリカに連れて来られたってこと!?

「な、何で僕まで!?」
「あなたをあそこに残していたら、琴子の体が危なかったから。」
「それだけのために!?」
「それ以上大事なことはありませんから。」
そして入江は、僕の耳にイヤホンをつけた。
「何、これ?」
「どうせ英語分からないんでしょ?」
うっ!…少しは分かるもん。大体、日本の学校の英語教育が実践的じゃないから悪いんであって。
「通訳している暇ないので、それ付けておいてください。」
同時通訳ってやつか。
そもそも、どうして入江はNASAにいるんだ?また変てこな仕事でも受けたのか?今度は誰の尻に座薬をぶち込むっていうんだか。


「…そろそろ話をしていいだろうか。」
イヤホンから声が聞こえてきた。うん、日本語だ。
「構わない。」
入江が英語で返す(勿論、これも日本語に訳されている)。
「これを見てほしい。」
いかにも役人風のアメリカ人(ここにいるんだからきっとそうだろう)が、手を上げると部屋が真っ暗になった。そして前方の大画面が起動した。

「これは宇宙にある、我が国の衛星だ。」
ふーん、衛星か。
「これのプログラムに異常が発生し、軌道を逸れ始めた。」
うわ!そりゃあ大変。

「それで俺にどうしろと?」
入江がまたもや英語で聞き返す。くそ!かっこいいから僕も帰国したら英会話に通おう!

「このままだと、この衛星は地球めざしてやってくる。」
「嘘!」
思わず僕は声を上げてしまった。アメリカ人のおっさんたちと入江が僕を睨む。
「…すみません、先をどうぞ。」
僕は腰をかがめて手を出し、へこへこと頭を下げた。

「地球に衝突したら大変だということは分かるだろう?」
「子供だって分かることだ。」
入江の返事に僕は頷いた。

「君にこの衛星の軌道を直してほしい。」
「どうやって!?」
また僕は叫んでしまった。
アメリカ人のおっさんたちが一斉に肩を竦めた。その顔には「うるさい」という文字が浮かんでいる。
「…すみません、どうぞ、どうぞ。」
またもや僕は腰をかがめ手を出して、へこへこと頭を下げた。

「君に宇宙に飛んでもらって、その腕で軌道を直してほしいんだ。」
つまり入江がこの衛星のどこかを狙撃して軌道を直せってことらしい。
てことは、こいつが宇宙に行くってことか!

「…いいだろう。」
あっさりと入江は受けてしまった。
「おお!感謝する、ゴルゴ入江!!」
おっさんたちが一斉に拍手した。
おいおい、いいのか?



「なあお前、宇宙になんて言ったことないだろ?」
入江と二人だけになって、僕は訊ねた。
「当たり前です。」
「じゃあ、どうやって?大体宇宙飛行士はすごい訓練を積まなければならないんだぞ?海外旅行感覚なんじゃないのか?」
「…んなわけないでしょうが。」
入江が冷たい顔で答える。
「あなたじゃあるまいし、宇宙がどんなところだか分かっています。」
「命かかっているんだぞ?」
「俺はいつも命をかけてますから。」
「それに、お前は医者なんだぞ?」
そうさ、お前は医者だ。これまでの依頼は手術だったり座薬をぶち込んだりと医療行為だった。
だが今度は違う。衛星の軌道を変えるなんてもう医者の仕事じゃないだろうが!

「これだから視野の狭い人は。」
入江は「フッ」と鼻で笑った。
「衛星の軌道を変えることで、地球が救われるんですよ。医者は患者を救う。今度の俺の仕事は地球を救う。救うことに変わりはない。」
…うわ。何て広い視野。つうか、それ屁理屈って言うんじゃないのか?
地球を救うって、お前はチャリティーマラソンランナーか?俺はあの歌でも歌った方がいいのか?え?


とかなんとか言っているうちに、入江はさっさと支度をして宇宙船に乗り込んでしまった。
僕は大画面で発射の様子を見守ることになった。
「スリー…ツー…ワン!!」
宇宙船が飛び立った!
ああ、入江…無事に帰ってこいよ!!

大画面には宇宙の様子が映し出されている。
入江は大丈夫だろうか?可愛くない奴ではあったが、そこそこ病院の役に立つ男だ。
宇宙の藻屑となるにはまだ早い。
僕の心臓はバクバクと鳴っている。

そのうち、宇宙船から人が出てきた。
「入江!!」
宇宙服に身を包んでいるが、間違いない。入江だ。手には何か持っている。
そう、あいつの愛用しているアーマライトM16だ!
僕はつい先ほどの入江の話を思い出した。

「ところで、お前はどうやって衛星の軌道を元に戻すつもりなんだ?」
「どうやってって、あそこを撃つんですよ。」
入江は画面の中の衛星の一か所を指した。
「何で?」
「これで。」
そして入江が出したのは、いつもの座薬だった。
「座薬で!?」
何、これ?宇宙でも通用する座薬なの?
「親父に急遽作ってもらいました。もちろんこれも改良済です。」
入江は愛用のアーマライトM16を見せた。
すげえ、入江の親父さん!宇宙でも通用する武器と座薬を作れるなんて!
何でおもちゃ会社なんて経営しているんだろう!



そんなことを思い出しているうちに、入江がアーマライトを構えた。
そして座薬が発射された。見る見るうちに衛星が軌道を修正していく――。

「ブラボー!!!」
たちまち部屋は歓喜の渦に包まれた。成功したらしい。
「ブラボー、ゴルゴ入江!!」
お互いの肩を叩きあうNASAの人たち。

…座薬、すげえ。



入江の乗った宇宙船が戻ってきた。
僕の頭の中には映画『アルマゲドン』のテーマソングが流れている。そう、あのラストは感動的だった。
オレンジ色の宇宙服を着た入江が降りてきた。まさしく映画そのものだ。
そういえばあの映画はリヴ・タイラーが恋人ベン・アフレックを迎えていたっけ。
そうだ、僕もそうしてやろう!
今僕の頭の中では、エアロスミスが声高々に「I don’t wanna close my eyes」と歌っている!
そうだ、僕はリヴ・タイラーなんだあ!!

「入江え!!」
僕はエアロスミスと共に駆け出した!
入江の姿がどんどん近くなっていく。待っていてくれ、入江!!僕のベン・アフレック!!

「入江!!」
僕は両腕を伸ばして、入江に抱きつこうとした。
すると入江は冷たい顔で僕の下半身に膝を入れてきた。
「ぐふっ!!」
「気色悪い!!」

入江の声、冷たい顔…僕は下半身を押さえ地面に蹲った…。
そうだ、僕は…男だった…。



「入江くん、お帰りなさい!!」
斗南大病院に戻ったら、入江のリヴ・タイラーが白衣姿で駆け寄ってきた。
勿論、入江は膝など入れず琴子ちゃんの体をしっかりと抱きしめて、ブチューッとキスをする。そう、ここが病院の玄関であろうが気にしない二人。

「入江くん、患者さんは大丈夫?」
「ああ。大成功だ。」
「よかった!さすが入江くん!」
うん、琴子ちゃん。地球という名の患者は救われたよ、なあんてね。

「入江くん、どこまで行ってきたの?一週間も留守なんだもん。」
「大した所じゃないよ。」
そうそう、大した所じゃないよ、琴子ちゃん。宇宙なんてアポロ13号が月面着陸した頃に比べたら近くなったさ。

「疲れを癒してくれるか?」
「勿論!あたし、それくらいしか入江くんの役に立てないから。」
「それが一番大事なんだ。」
また二人はキスをブチューッとすると、手を取り合いあの仮眠室へと消えていく。

「ああ、愛の斗南大病院っ!!」

…つうか、家に帰ってやれよっ!!!









☆ゴルゴ13豆知識

ゴルゴ13とコンタクトを取る方法で衛星を13個に分裂させ流れ星にするという方法がとられた。

ゴルゴは宇宙に数回出向いている。もちろん、訓練など一切していない。
宇宙で酸素ボンベ(?)を切断されても、見事に助かった。


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