日々草子 大蛇森の錯乱

大蛇森の錯乱

“将を射んと欲すればまず馬を射よ”

僕は作戦を変更することを決めた。
この言葉が全てを語っている。
この場合、“将”はもちろん、入江先生。そして“馬”は、チンチクリンだ。あいつの場合、馬よりもロバって言った方がしっくりくるけれど。
とりあえず、ロバを射る為にはデータを収集せねばなるまい。
データベースに問い合わせるか…。

「で、何が知りたいんです?大蛇森先生。」
データベースこと、西垣先生の前に僕はいた。この先生は病院の女性全てのデータを手に入れているということで有名だからだ。
「ロバ…じゃない、入江琴子についてです。」
「珍しいですね。琴子ちゃんのことが知りたいなんて。」
一番いいのは、ロバの弱点なんだが。

「ちょっと待って下さいね。」
そう言いながら、西垣先生は手帳を取り出しページをめくり始めた。
「西垣先生はパソコンを使いこなしていると思ってたけど?」
僕は先生の様子を見て尋ねた。
西垣先生は最先端を行っている気がしたから。手帳を使っているなんて意外だ。
「ああ。パソコンも使いますけどね。パソコンにこういった個人情報を入れておくと、万が一ウイルスに感染したりしたら、データ流出が避けられないじゃないですか?だから手帳みたいなアナログな方法が一番いいんですよね、特に女性関係は。」
そこまで心配するなら、最初からデータなんて記録しなければいいのに。
「えーと、琴子ちゃんは入江だから、あ行、あ行…。あった。」
五十音順に記録しているんだ。そのマメさをどこかへ役立てればいいものを。
「誕生日ですか?まずは。」
「いやそれは結構。」
プレゼントを贈るつもりは毛頭ないから、誕生日なんて知る必要はない。
「じゃ、血液型?」
「それも結構。」
別に相性占いするつもりないし。
「そうだな、趣味とか…。」
「趣味?趣味は入江直樹でしょう。」
「何ですって?」
「いや、見てれば分かるでしょう。琴子ちゃんの頭の中、入江先生しかないし。」
「じゃ、特技は?」
「それも入江直樹でしょう。素晴らしきディフェンダーぶりで入江先生を守っていますよ。」
「じゃ、弱点は?」
「入江直樹。」
…役に立たないな、このデータベース。
「琴子ちゃんはあまりデータがないんですよね。だって収集しようとすると、強力なセキュリティソフトが立ちはだかるから。」
「セキュリティソフト?」
「入江直樹っていうセキュリティソフト。」
「そこをうまくハッキングできないんですか?」
「半端ないセキュリティですよ。下手に突っ込むと、当局へ通報されそうだし…。」
…当局って、どこ?
「ところで、ロ…入江琴子って、入江先生を押し倒して結婚したって聞きましたけど?」
僕は核心に迫ることにした。
「押し倒す…?いや、普通に結婚したんでしょ?多分。」
西垣先生も、あまりその辺の話は詳しくないらしい。

「とりあえず、何か情報が入ったら連絡もらえます?」
僕は早々の話を切り上げることにした。

「桔梗くん!」
「あら、西垣先生!」
僕は琴子ちゃんの同期の桔梗くんに声をかけた。
「あのさ、ひとつ聞きたいんだけど…。」
「何ですか?」
「琴子ちゃんのスリーサイズって知ってる?」
大蛇森先生に依頼された以上、ちゃんと調べておかないとな。
普通、女性について知りたいことといえば、スリーサイズのことだろう。
あの先生も一応男だったってことか。
「いやだ!そんなの話したら入江先生に殺されちゃいます!」
「いやいや。知りたいのは僕じゃなくて、大蛇森先生。」
「え!?」
ま、大蛇森先生の依頼にかこつけて、僕も知りたいだけなんだけど。
「それからさ、あの二人って、琴子ちゃんが入江先生を押し倒して結婚したって本当?」
さっきの大蛇森先生の話が、僕はちょっと引っ掛かっていた。
「押し倒す!?何ですか、それ?」
桔梗くんも知らないらしい。大蛇森先生、どこから聞いてきたんだろう?
「ま、そういうわけだから、何か分かったら僕に教えてよ。」
そう言い残して、僕は桔梗くんの前から立ち去った。

「聞いたか?大蛇森先生の話。」
数日後、トイレの個室にいた僕の耳に、僕の噂が飛び込んできた。
「聞いた、聞いた。」
話しているのは、多分医者だな。
「ナースの間でも大騒ぎだもんな。」
え?何か僕したっけ?
「“大蛇森先生が入江琴子の全てを欲しがっている”ってやつだろ?」
はあ!?
いつ、どこで、僕がロバを欲しがった!?
何でそんな噂が流れているんだ!?
「スリーサイズまで聞き回っているんだろ?命知らずもいいところだな。」
「え?俺は大蛇森先生が入江琴子を押し倒したって聞いたぞ。」
「どっちにしても、入江先生の耳に入ったら、命はないね!」
そんなことを言い残して、彼らはトイレから出て行った…。
ちょっと、待て…!
スリーサイズなんて聞き回った記憶はない!それに入江先生を押し倒すならまだしも、何で僕がロバを押し倒す必要があるんだ!?
一体、どこからそんな話に…!あいつか!

「西垣先生!」
僕は西垣先生を見つけるなり、叫んだ。
西垣先生はお弁当を食べているところだった。
「このエロガッパ!悠長にトンカツなんて食べている場合ね!」
「…こ、これ、チキンカツ…。」
「どっちだってよか!」
僕は叫びながらエロガッパの白衣の襟を掴んだ。
「あんた、一体何を吹聴して回ったと!」
エロガッパの襟を掴んだまま、ユサユサと振った。
「な、なんのこと…。」
「とぼけんじゃなか!なんで僕がロバと噂にならんとあかんね!」
「ろ、ロバって何ですか…?」
「ロバはロバたい!入江琴子のことたい!」
この期に及んで、まだ白を切る気か!このエロエロガッパ!
「誰が、いつ、あいつの全てを欲しいなんて口にしたね!このバカチンが!」
そうだよ。熨斗つけたって、いらないよ、あんなロバ!
「あ、あの…。」
エロガッパが何かを言おうとしている。言い訳するとは、なんて女々しいんだ!
「あのロバ…入江琴子に乗りたがる物好きな人間、どこにおるか言うてみんしゃい!」
その時、エロガッパの手が何かを指した。
「あ-ん?」
僕は振り返った。

「…物好きで悪かったですね。」
入江先生が僕の真後ろに立っていた…。

皆さん、良いお年を。来年僕が無事だったらまたお会いしましょう…。
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終わり方がおもしろいですね~(*^_^*)
大蛇森~入江くんにやられてしまええ~!と思う反面、来年また会いたいから無事でいてと思ったり(笑)

…haさん、実はこれ続きあります。

続きがあっとね!?
はよぅ上げんね!!
それとももうどっかにあげちょっと?

大蛇森瞳風に(笑)
タメ口ですみません。

来年もよろしくお願いします。
楽しみにしてます。

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入江くんきっとすごーく睨みをかましていたのでしょうね。
「大蛇森先生いい加減に琴子を目の敵にするのはやめた方がいいですよ!」
と言いたくなっちゃいます。

はまってます

大蛇森先生、嫌いなキャラなんですが、すっかりこのシリーズにはまりました。
でも、一番好きなのは、ツンデレな入江君です。

入江君が、このこと、知ったら!大蛇森先生、怖いですよ、生きて帰れません。
プロフィール

水玉

Author:水玉
『イタズラなkiss』のほかには『ゴルゴ13』が好きです☆
多数あるイタキスの二次小説の中で邪魔することなく、ひっそりとマイペースで我が道をゆきつつ生息しております。
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そして、原作と違った時代(平安や明治やその他の時代を舞台にしております)、異なる設定(主人公を医者と看護師じゃない職業にしております)で書いてあるものが多いですが、原作を冒涜しているつもりは全くございません。

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