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2012.12.03 (Mon)

入江法律事務所 7

うふふ。
今回は久々に挿絵つきでございます♪
ぴくもんさ~ん、本当にありがとうございます!このシリーズをイメージして書いて下さったことが嬉しく、ちゃーんと追加したものをダウンロードさせていただきましたよん。これがないと、入江先生はお仕事できませんものね!

またいつでもお待ちしております!!





【More】


「あれ?先生、それどうしたんです?」
出勤してきた直樹を見て、琴子は驚いた。
「お前が言っていただろうが。」
「私?」
「俺の顔をジロジロと女が見ていくって言ったの、お前だろ?」
直樹に言われ、琴子は思い出した。
この間、夕食をごちそうになった時自分が言ったことを思い出した。
夕食の席でもそうだったし、その帰途もそうだったのだがすれ違う女性たちが皆、直樹の顔を見ていくのである。琴子はそれが気になって仕方がなかった。それで直樹につい「先生の顔を皆見ていきますね」と漏らしてしまったのである。

「だからといって、眼鏡なんてかけなくても。」
視力に問題がないのに、今日の直樹は眼鏡をかけていた。
「眼鏡でもかければ少しは見られなくなるかと思ってね。」
顔は生まれつきのものだからどうしようもない。確かに視線を感じることは多い。ならば眼鏡でもかけてみたら少しはましになるかと直樹は思ったのである。

houritujimusyo


「少しは目立たないと思うが。」
「いや…それはそれで。」
「何だよ、お前が変なことを言うからじゃねえか。」
「いや、眼鏡だけじゃ足りないかと。」
「何だと?」
眼鏡をかけたらかけたで、これまたインテリさが増して男ぶりが上がっている直樹である。視線が余計に集まると琴子は思う。
「そうだ!」
琴子は手をポンと叩いた。
「鼻だ、鼻もつけたらどうでしょ?私、東急フッズまで行って買ってきましょうか?」
直樹のあまりのかっこよさに、琴子はかなり舞い上がってしまっているようである。
「そうしたら、きっと誰も先生を気にしないと思います。」
気にしないというより、皆見て見ぬふりをするに違いない。
「お前、そんなふざけた顔の男の元で働きたいか?」
「うーん…。」
確かに言われてみたら、その通りである。
「でも、先生がそういう顔で働くと仰るのならば、私もその覚悟を受け入れたいと…。」
「受け入れなくていい!」
苦渋の決断をするといった顔の琴子に、直樹は怒鳴った。



読者はすっかりお忘れだと思うが、直樹は敏腕弁護士である。
仕事は山のようにあり、鴨狩啓太の事件だけにかかりきりになっている暇はない。
ということで、今日も午前中、直樹は重要な取引などに立ち会ったりして、昼過ぎに事務所へ戻ってきた。

「何だ、お前の昼はそんなのかよ。」
琴子の手にあるコンビニのおにぎりを見て、直樹は眉をひそめた。
「ちゃんと食わねえと、知らねえぞ?」
「ちょっとお金が…。」
「えへ」と笑いながら、いそいそとコーヒーを淹れる琴子。
ふと直樹は思った。そんなに高い給料は払っていない。実家暮らしの琴子は家にお金をきちんと入れているのかもしれない。そうなると、昼食もこのような形になってしまっても無理はないのでは。

「…少し給料上げるか。」
「え?何ですか?」
コーヒーを手に琴子が戻ってくる。

「そうそう、啓太くんの事件はどうなりますか?」
「目撃者がなかなか見つからないのがな。」
犯行時刻に啓太が現場にいなかったと誰かが証明してくれたらと思うのだが、なかなか見つからない。
「そうだ、私が証言しましょうか?」
「お前が?」
「ええ。犯行時刻にいなかったということは無理ですけれど、啓太くんがそういうことをする人じゃないってことはよく知っているし。」
「情状酌量を求める方向だと、有罪だと認めるもんだぞ。」
「でも…啓太くんはまっすぐで嘘はつかない人なんです。」
「ふうん。」
よく知ってることでと思いながら飲むコーヒーの味はいつもより苦いと、直樹は思った。
「ただ、燃え上がるとまっすぐ前しか見られなくてちょっと手に負えないところがあると私が証言しますよ。」
「…お前、船津の味方をする気か?」
そんなことを言われたらますます立場が悪くなる。

「はあ…それじゃあ、何ができるのかなあ?」
「とりあえず、できることから地道にやっていくしかねえな。」
「そうですね。何でも言って下さい、準備はしてますから!」
落ち込んだかと思った琴子がすぐに立ち直った。
「準備?」
「ええ。」
そして琴子はバッグから「ジャーン」という声と共に、手帳を取り出した。
「ほら、手帳も新調したし!」
「なぜ?」
「だって、聞き込みとか行くと手帳にメモするでしょ?ドラマでよく見るじゃないですか。弁護士の“美人秘書”が手帳片手に色々探る場面。だからいい手帳じゃないとカッコつかないと思いません?」
「いい手帳…。」
「これ、ちょっとお値段張ったんですよ。何せフランス直輸入とからしくて。でも素敵だから思い切って買っちゃいました!」
「お前、それで金がないのか?」
「あ、そうなんです。」
そして琴子は「まだ、秘密兵器はありますよ」とバッグを探った。

「ジャーン!」
と、琴子が取り出したのは、時刻表であった。
「それを何の目的で?」
「何って、必需品でしょ?」
時刻表をペラペラと琴子はめくった。
「札幌まで行くにはこの列車の他にあちらの列車があった!とか、調べるのに必要じゃありませんか!」
「…事件は都内で起きているんだが?」
「あん!でもいつか、崖まで行くことがあるかも…。」
直樹は琴子の耳を引っ張り、怒鳴った。
「お前は手帳より、小遣い帳をつけろ!!」



「ったく、お前相手じゃ解決できる事件も迷宮入りだ。」
「そんな言い方しなくても。」
琴子は新品のフランス製手帳を眺めた。
「いつか先生とデートする予定を入れることができれば…。」
「何を入れるって?」
「いえ、何でも。」
「つまらねえ妄想してねえで、あいつを呼べ。」
「あいつって、あの人?」
「そう、あいつの力を借りる。」

そして一時間後――。

「お久しぶりです。」
と、一人の美女が事務所に現れた。
「モトちゃん、久しぶり!!」
「ああら、あんた、相変わらず形から入っているようねえ。」
「え!なんでわかったの?」
モトちゃんと呼ばれた美女は、琴子の手にしている新品の手帳を見て笑った。
モトちゃんこと、桔梗幹は入江法律事務所が信頼する腕利きの興信所の所長である。つまり探偵。

「あら、先生!今日はまた一段と男前で!」
早速直樹の眼鏡姿に気付いた幹が頬を染める。
「どうしちゃったんです?」
「気分転換。」
直樹はそっけなく答えた。

「ねえねえ、ものは相談なんだけど。」
琴子は幹にすり寄った。
「何よ?」
「大蛇森検事部長をうちの先生から遠ざけること、できない?」
「んなこと、できるかよ。」
琴子の相談内容に直樹は呆れている。

「あの部長、まだ入江先生に付きまとってるの?」
「そうなの!こないだなんて花を渡そうとしてた!」
と、あの時のことを思い出し琴子は眉を潜めた。

「ね、東京から遠ざける方法とかない?」
「うーん、あんたの給料一年分は軽くいただくことになるけれど?」
「あるのかよ!」
思わず二人の会話に直樹は突っ込んでしまった。
「一年分かあ。うち安月給だからなあ。」
「お前、それを上司の前で平気でよく言えるな。」
本気で悩む琴子に、直樹は開いた口が塞がらない。

「そんなことより、俺の用件だ。そしてお前は郵便を出して来い。」
「あ、忘れてた。」
顧問先への書類を出すため、琴子は「モトちゃん、ごゆっくり」と言い残し事務所を慌ただしく出て行った。

「…成程、目撃者探しですか。」
一通り事件の概要を確認した後、幹は頷いた。
「ほかならぬ入江先生の頼みです、何とかやってみますね。」
「頼む。」
幹にはこれまでもいろいろ協力してもらっているので直樹は信頼している。

「あと…。」
「琴子と啓太の関係を調べてくれ」と直樹は言いそうになった。
「あと、何か?」
「いや、別にそれだけだ。」
「何だ、てっきり。」
「てっきり?」
「琴子とこの事件の被告人の関係でも調べてほしいと言われるのかと。」
「何でそう思った?」
直樹は冷静さを崩さず、幹を見た。
「新品の手帳、そして時刻表。」
琴子の机の上に置かれているそれらを、幹が指差す。
「あの子があそこまで準備して協力するってことは、何か関係のある人物が被告人なのかなと。」
「…成程、有能な探偵なだけあるな。」
幹は「フフフ」と笑った。

「でも、どうしてそれを入江先生が気にするかが疑問ではありますけれど?」
挑戦的な目つきを幹は直樹に向ける。
「…あの間抜けな職員が、何かしでかさないかと心配なだけさ。」
「…今はそういう答えで納得することにしましょう。」
笑みを交わす二人。

「先生、モトちゃん!そこのお店でクッキーが半額だったので買ってきました!」
息を切らして琴子が事務所に入ってきた。
「だからお前は小遣い帳をつけろ!」
そう言いつつ、これくらいは自分が後で払ってやろうと思いながら直樹は琴子を叱る。
「モトちゃん、コーヒー淹れるね。」
「ありがと。」
なんだかんだと、琴子は可愛いと幹は思った。





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