日々草子 入江法律事務所 4

入江法律事務所 4

11月27日14時にアップしたのですが、思うところあっていったん下げておりました。
気にする方などいないと思っていたのですが、「入江弁護士は?」というお声があったのが嬉しかったです。
日陰作品ベスト3に堂々ラインクインしそう(笑)

「これかよっ!!」という叫びが聞こえますが、すみません^^;

謎解きは一切ないと思います。
書きたかったのはキャラ同士のコミカルなやり取りなのです。

そして、現在投票を行っております。
パソコンからしかできませんが、もしお時間があったらお立ち寄りいただけたら嬉しいです。
感想が入ったお話など自分でも読み返しているのですが、『君と綴る文字』は書いた私も読み返せません。
琴子ちゃんがかわいそうすぎる…なんでこんな可哀想な琴子ちゃんを書いたんだ、当時の私。

ちなみに、上位にランキングしたお話の続編(短編)を書けたらいいなあと思いながら、推移を見守っております。








都心にある小さな法律事務所。名前は入江法律事務所。

「次の事件は刑事事件だ。」
コーヒーを運んできた秘書兼事務員の前で、事務所の主の弁護士が机の上に記録をドサッと置いた。
「刑事事件。先生のお知り合いが捕まっちゃったんですか?」
「いいや、国選で回ってきた。」
「国選?」
その秘書兼事務員、相原琴子は「国選…国選…」とお盆を手に首を傾げる。
「ったく、それも知らねえのか。」
「なんかテレビで聞いた記憶はあるような。」
弁護士・入江直樹はふと思う。そういえば琴子がここに来てから、すなわちこの事務所を開設してから刑事事件を扱うのは初めてであった。
「国選ってのは、被疑者や被告人が弁護士を雇えない時に国が弁護士をつける制度だ。」
「それで先生が?」
「そういうこと。」
ふうん、なるほどと思いながら、琴子は記録をめくった。
「あとで接見に行くから…。」
「嘘!!」
突然上がった琴子の声に、直樹はコーヒーを噴き出しそうになった。

「何だよ、一体!」
「だってここ、ここに啓太くんの名前が!」
「啓太って、お前被告人と知り合いなのか?」
その記録の被告人の名前は「鴨狩啓太」と記載されていた。
「はい、前に同じバイトでした。」
そして琴子は直樹の机に両手をつき、きっぱりと言った。
「先生、啓太くんはこんなことする人じゃありません!私が保証します!」



事件の概要は以下のとおりである。
鴨狩啓太はレストランでコックとして働いている。
定休日にたまたま、忘れ物を取りにレストランへ来たところ、倒れているオーナーを発見した。
オーナーは何者かに殴られて絶命、その場にいた啓太が事情を聞かれた。
ところが調べが進む中、このオーナーは強欲で女にだらしないことで有名。しょっちゅうウェイトレスに手を出そうとし、啓太がよく庇っていたのだという。啓太は他の従業員の人望厚く、オーナーはかねてよりそれを恨んでいたとのことだった――。



「だからといって、啓太くんはそんなひどいことしません!先生、何とかして助けてあげてください!私、そのためなら何でもしますから。」
懇願する琴子をよそに、直樹は啓太が拘置されている拘置所へ接見へ行く準備をしていた。
「…ずいぶん親しいんだな。」
「え?あ、まあ…それは…ええ。」
なぜかそこで琴子が顔を赤らめた。
「何だよ?」
「いえ、別に。」

バイトが同じだった、正義感の強い男。もしやその男に琴子は…?

「それじゃ行ってくるから。」
「ちょっと待ってください、先生。」
琴子が直樹を呼び止めた。
「あの、啓太くんの洗濯物とかがもしあったら、私が洗ってあげると伝えて下さい。それで先生には悪いのですが持って帰ってきてもらえたらと。」
「何でお前がそこまで!」
「だって不便だと思うんです。」
なぜそこまで琴子は啓太の世話を焼こうとするのか。直樹はイライラしてきた。
「ね?だから…。」
「年頃の女が軽々しく男の下着を洗う真似、するんじゃねえ!」
苛立ちが募り、思わず直樹は琴子を怒鳴りつけていた。
「え?平気ですよ、そんなこと。」
ところが琴子は直樹に怒鳴られても、平気な顔をしている。
「だって私、いつも父の服を洗ってますもん。もちろん下着だって。」
「そういう問題じゃないだろうが。」
「じゃあどういう問題?」
「じゃあ俺の下着も持ってきたら洗ってくれるのか」と思わず口にしそうになった直樹は、我に返った。

「行ってくる。」
「行ってらっしゃい。」
心配そうな琴子に見送られながら、直樹は事務所を出た。

「先生、俺は何もしていません!あの場にたまたま居合わせただけなんです。」
鴨狩啓太は、琴子の話通りの熱血タイプな男であった。見た目も悪くなく話し方もはっきり。これならば人望も集まるというものと直樹はそこは納得した。

「全力を尽くします。」
記録を読む限り、直樹も啓太は無実だと確信している。ここは弁護士として何とかせねばなるまい。

「ところで鴨狩さん。」
「はい。」
「相原琴子って知ってますか?」
「え…?」
啓太の顔がポッと赤くなったところを、直樹は見逃さなかった。それは先程の琴子と同じではないか。

「あの、弁護士の先生がなぜ琴子を?」
しかも啓太は「琴子」と呼んだ。それだけで二人の親密度が分かるというもの。
「今、うちの事務所で働いているので。」
「あいつが!へえ、すげえなあ。」
啓太は心底感心している様子である。
「あの不器用な琴子が、先生の下で働いているなんて。一緒にバイトしていた時はあいつ、妙な特技で皿運びをこなしていたんだけどなあ。」
啓太のなつかしそうな口ぶりに、直樹は自分の知らない琴子を知っているこの男が憎らしく思えてくる。

――いけない、俺は弁護士だ。

直樹は懸命に自分に言い聞かせた。



「ほらよ。」
結局、直樹は琴子に言われた通り啓太の洗濯物を持ち帰ってきた。
「すみません。」
琴子はそれを受け取る。
「啓太くん、元気でしたか?」
「まあな。」
「よかった。」
――よくねえよ。
一体この二人、どういう関係なのだろうか?



やがてあっというまに公判の期日となった。

裁判所で直樹はイライラしながら、腕時計に何度も目をやった。その直樹の肩が不意に叩かれた。
「入江先生、調子はどう?」
「…あなたの顔を見たら、一気に調子が下がりました。」
それは先輩弁護士の西垣であった。

「何しに?」
「お前の晴れ舞台を見に。で、何をイラついているわけ?」
「あのバカが来ないんですよ。」
「あのバカって琴子ちゃん?」
「そうですよ。」
そして直樹はまた時計を見た。あと少しで公判が始まってしまう。

「何、お前、毎回裁判に琴子ちゃん連れ回しているわけ?」
「んなことするわけないでしょ。今回はあいつが特別関心持っている事件だから。」
「琴子ちゃんが特別な関心?」
現地集合ということにしたことが間違いだったと、直樹は後悔した。琴子は一体どこにいるのか。

「先生!!」
そこへ息を切らして琴子が走ってきた。
「すみません、うっかり寝坊しちゃって!」
朝一番の公判である。
「すみません、本当に。あれ、西垣先生?」
「おはよう、琴子ちゃん。いや、寝起きの琴子ちゃんも可愛いんだろうねえ。」
と、ふざけたことを早速口にする西垣の足を直樹は思い切り踏んづけた。
「痛え!!」
「え?どうしたんですか?」
「ったく、寝坊とかするなよ。中学生か、お前は。」
直樹はとっさに琴子の気をそらす。
「いえ、夕べは徹夜しちゃって。」
「徹夜?」
もしや琴子なりに何か勉強したいたのかと直樹は思った。

「ええ、これを作っていたら…。」
と、琴子はゴソゴソとバッグを探った。そして中から取り出したのは…。
「ジャーン!!」
アイドルのコンサートでファンが手にする、大きめのうちわであった。
直樹と西垣の目が点になる。

「『ファイト!直キ』…なぜ最後だけカタカナ?」
西垣が不思議に思うのも無理はなかった。そのうちわには蛍光色で文字が描かれ、最後の直樹の樹の部分だけカタカナだったのである。

「これですか?結構難しくて。何せ直が画数多いでしょ?そこでかなり苦労しちゃって、そしたら次が樹じゃないですか。もっと画数が多いのに材料が足りなくなっちゃって。それでカタカナにするしかなかったんです。ごめんなさい、でも読めますよね?」

「なぜ、そんなもんを徹夜してまで作った?」
直樹が訊ねると、
「だって、今日は宿命のライバル、船津検事が相手でしょ?負けてられないと思ったんです。私、先生の傍に座れないからせめて離れた場所から応援しようと思って。」
と、琴子はうちわを大きく振った。

「どうでしょう、先生?出来は…。」
と琴子が言いかけたところで、直樹はうちわを奪い、膝でそれをバキッという音と共にぶち破った。
「ああ!!私の努力の結晶を!!」
真っ二つに割れたうちわを手に、琴子が悲痛な叫びを上げる。
「何が努力の結晶だ!こんなもん作ってる暇があったらもっと別なことに時間を使え!この大馬鹿野郎!!」
「だって、先生を励ましたくて!」
「神聖な法廷を何だと心得てるんだ!こんなもん出したらお前、即刻退場だぞ!」
「まあまあ、入江。琴子ちゃんだって悪気があったわけじゃないんだから。」
「ねえ」と西垣が琴子を慰める。
「そうだよなあ。宿命のライバルの戦いを琴子ちゃんなりに心配しているんだよね。」
「はい…。」
ぐすんと鼻を鳴らしながら、琴子はしょんぼりと割れたうちわをしまう。

「あいつなんか宿命のライバルじゃないって言ってるだろうが。」
まだ何も始まっていないというのに、直樹はもう疲れを感じ始めていた。





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この雰囲気が好きなのよねぇ~
啓太が出てくるところなんて!!もう!!
続き読みたくてイライラしちゃいますわ♪
もう!水玉さんたら!!(笑)
このようにして直樹さんも琴子マジックにはまっていくのね。

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YKママさん、ありがとうございます。

私も求められても困るので、そういっていただけて安心しました(笑)
謎解きもちょっと考えてみたのですが、全然だめでした。
元々書きたかったのが、登場人物の会話なのでその辺は気にしないでいこうと。
入江くんのやきもきがメインになると思います!

ゆみのすけさん、ありがとうございます。

ありがとうございます!!
啓太には気の毒なのですが、今回は被告人役で。
啓太が出ないとやっぱり入江くんが燃え上がらないんですもの!
琴子マジックにはまる入江くんは楽しいですな~!

たまちさん、ありがとうございます。

お~下げたことに気付いてくださっていたんですね。
ひっそりと人気もなく消えていくかと心配しているところなのです(汗)
そして、池沢刑事まで!!すごくうれしいです。
きっとそうですよ、池沢刑事が取り調べしたから啓太はこんな目に遭っちゃったんですよ~(笑)
お蔵入りにならなければいいなあと思っているのですが、どうなることやら。

ぴくもんさん、ありがとうございます。

だって、ぴくもんさんのところにイラストを早くアップしていただきたかったんですもーん!(^^)!
うちでもUPするのが楽しみです。おかげでまた、二人の会話を思いつくことができました(≧m≦)

本当に琴子ちゃんはよくパンツやらふんどしを洗ってますよね。
今回は啓太のパンツまで(笑)
何てかわいいと思うのは私だけでしょうか?

うちわ!勿論それをイメージしましたよ!
あれが手作りと知った時の衝撃といったら!ファンの方ってすごいですよね。
お友達、気づいてもらえてよかったですね!嬉しいですよね!

琴子ちゃん、力尽きた、その通りです!
あの樹を作るのはすごく難しいと思いますもん♪

このシリーズを好きだと言っていただけて、すごく嬉しいです!

ナイトさん、ありがとうございます。

誰も気づいてくださらないと思っていたので、あの一言はすごく嬉しくて!
いそいそと再掲載しましたよ!よかった、楽しんでいただけて!

投票、特に一票だけとかは決めていないのですが…今思うと決めた方がよかったのかな?
決めなくても、そんな連続で同じ作品に入れるような方はいないと思うので、気軽に入れていただけたらと思います♪でも連続投票はできないと思うので、時間をおいてみてくださいね。

下位のお話もどうぞ気にしないで、お心のままに♪
下位でも私にとってはかわいいわが子同然のお話たちなので、いれていただけたらとてもうれしいです。

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プロフィール

水玉

Author:水玉
『イタズラなkiss』のほかには『ゴルゴ13』が好きです☆
多数あるイタキスの二次小説の中で邪魔することなく、ひっそりとマイペースで我が道をゆきつつ生息しております。
そっと見守っていただけたら嬉しいです。

※当ブログに掲載されている文章及びイラストの無断転載・使用はご遠慮下さい。

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そして、原作と違った時代(平安や明治やその他の時代を舞台にしております)、異なる設定(主人公を医者と看護師じゃない職業にしております)で書いてあるものが多いですが、原作を冒涜しているつもりは全くございません。

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