日々草子 入江法律事務所 2

入江法律事務所 2

昨日は温かいコメントをありがとうございました。
皆様、お優しい言葉を本当にありがとうございます♪
おかげでだいぶよくなってきました。

ただ、あの話の続きを書くにはテンションがまだ完全ではなく…。
一週間近く休んでいたブランクが結構大きいのと、乗っていたところで一旦止めてしまったことで調子がなかなか出ない感じです。
シリアスは本当にテンションをMAXにもっていかないと、なかなか書けないものでして。

ということで、「いとし」の続きを待っていてくださる方には本当に申し訳ありませんが、まだ自主トレということで。

理想としては自主トレ→キャンプイン→一軍スタートと進みたいところなのですが。
(自主トレ→キャンプイン→キャンプ中に故障→二軍スタート→出番なし→戦力外通告→『プロ野球を○になった人たち』という番組出演…になったりして)

思っていた以上に評判がよく『続きを』というお声もやや(←ここ注目(笑))いただいたので、調子に乗って書いてみました。
すみません、こんな時はコメディを書くのが一番よくて。
続きを待っていてくださる方、今回も期待を裏切ってしまい申し訳ございません!!










「…ではAさんと肉体関係があったことを認めるんですね?」
直樹の低い声が法廷に響き渡る。女性は俯いたままであった。
「ああ、法廷での先生は何て素敵…。」
そして傍聴席の一番前で、琴子は直樹の姿をうっとりと見つめていた。
「終わります。」
直樹は自分の席に戻った――。


「肉体関係とか、ああいう場所で聞くと生々しいですよね。」
自分たち以外に誰も乗っていないエレベーターで、琴子が直樹に話しかけた。
「お前、まだ慣れないのかよ。」
「いや、でもなんていうか…。」
琴子はポッと顔を赤く染めた。
「聞くのが嫌だったらついてこなければいいだろ。お前は本来事務所で留守番をしなければいけないんだから。」
「そんな!先生の勇姿をしかとこの目で見たいんです!」
「フン、物好きな奴。」
直樹のほとんどの法廷を琴子は傍聴しているのである。
「でも先生、すごかったですよね。これでCさんの勝ちですね!慰謝料もバッチリ!」
「まあな。」
「相手の弁護士さん、もう先生の迫力にタジタジでしたもん。裁判官も“ほぉっ”って先生に感心していた感じですし。さすが入江先生!さすが法曹界伝説の男!」
「ったく、何を騒いでいるんだか。」
しかし琴子の言葉はお世辞ではないことは直樹にもよく分かっている。琴子は裏表がなく正直なところが取り柄である。
それに琴子に褒められると、なぜか直樹の中に格別の嬉しさが広がるのである――。



裁判所の玄関がある一階まで直通で降りるかと思ったエレベーターが、途中の十二階で止まった。
「あ、誰か乗ってくるのかな?」
琴子がそんなことを口にした時、エレベーターのドアが開いた。

「おや、これは。」
エレベーターを待っていたのは、眼鏡をかけた神経質そうな男であった。直樹の姿を見て驚いているようである。
「誰かと思ったら、入江くんじゃありませんか。」
男は眼鏡をクイッと上げて、嫌味ぽい笑みを浮かべた。
「船津、東京に戻ってきてたのか。」
どうやら直樹とこの船津という男は知り合いらしい。二人の間に入る形で立っている琴子は、それぞれの顔を見比べた。
「ええ、あまりに優秀だったので東京地検へ呼ばれましてね。」
東京地検ということは、この船津は検事らしい。
「それにしても入江くん、君という男は。」
船津は直樹をジロジロと見た。
「僕が留守にしている間に、大手事務所をクビになったという噂は本当だったようですね。」
「先生はクビになったんじゃありません!」
たまらず琴子が声を上げた。
「先生は自分から辞めて独立を果たしたんです!誤解しないで下さい!」
「おやおや。入江くんともあろう者が神聖な法廷に女連れで来るとは。」
船津は肩をすくめた。
「しかし入江くんのような男が、こんな冴えない女性を選ぶとは思いもしませんでしたよ。」
「冴えない…。」
何とひどい言われ様であろうか。琴子が言い返そうとした時であった。
直樹の指が二人の間を横切り、エレベーターのボタンを押した。

チーン。

「ほら、船津。お前が下りる階だ。」
「え?」
船津はエレベーターの階数表示を確認する。
「お前のことだ、下りるのは二番…じゃない二階だろ?」
「に、二番ですってえ!!」
これまで琴子をいびっていた船津の顔が真っ赤になった。
「お前は修習の頃から大好きだったよなあ。“二”がつく言葉がさ。」
直樹は意地悪くニヤニヤと笑う。
「誰が好きだ!誰が二番だ!!ふざけるなあ!!」
当然船津は二階で降りることがなかった。そして再び動き出したエレベーターの壁に「僕は常に一番なんだあ!」とわめきながら頭をゴンゴンとぶつけて出す。
船津の頭突きの音と共に、エレベーターは一階へと到着した。

「船津。」
直樹が船津を睨んだ。船津は赤くなった額を直樹へ向ける。
「うちの大事な職員を今度侮辱したら、こんなもんじゃ済まないからな。」
――大事な職員。
この言葉は琴子の中で何度もリピートされた。

「入江、今度会ったら覚えていろ!!」
エレベーターを待っていた人々が驚く中、船津が叫んだ。
「他に覚えることがあるので、脳に余裕がない。」
直樹は船津を見ることもなく、スタスタと歩き出す。琴子は船津を放っておいていいのかと心配している。
「ほら、行くぞ。」
その琴子の手を直樹が強引に引っ張った。船津はまだ背後でギャーギャーと騒いでいるようであったが、すぐにその声は遠ざかって行った。



「船津検事って、先生の同期なんですか!」
事務所へ戻った後、直樹と自分のコーヒーを淹れながら琴子は驚いていた。
「ああ。いつも俺に勝てずに成績が二番止まりだったのが気に入らなくてよくからんできたよ。俺の顔を見るといつもあんな調子だ。」
直樹は疲れた様子で自分の肩を揉んだ。
「それで二番とかいう言葉にあんなに怒りだすわけですね。」
「そういうこと。俺のやることなすこと全て気に食わない奴なんだ。だからお前も気にするな。」
「大丈夫です。私、根に持つタイプじゃないですもん。」
何より直樹が自分を庇ってくれたことが嬉しい琴子は、上機嫌で直樹のカップをテーブルに置いた。

「しかし想像以上に東京に戻るのが早かったな。」
琴子のコーヒーを味わいながら、直樹が言った。
「そんなに早いんですか?」
「ああ。任官後十年くらいは地方を転々とするもんだけどな。まあそれだけ優秀なんだろう。あんな陰気くさい顔している割には。」
「先生、顔は関係ないんじゃ。」
直樹の口の悪さに琴子も驚く。
「一応、敏感検事って感じみたいですし。」
「それ言うなら敏腕検事だろ?」
「あ、そっか。」
「まあ、あいつもくだらねえことには敏感だから、あながち間違っちゃいねえけど。」
先程まで法廷での自分を「かっこいい」「さすが法曹界伝説の男」と褒めていた琴子が、船津を「敏腕」と褒めたことが何だか直樹は気に入らなかった。

「でもお二人ってあれですね。」
「あれ?」
「宿命のライバル!」
指を立てて、満面の笑みで琴子が言った。
「ライバル?俺と船津が?」
「ええ、そうですよ!一位と二位を常に争ってきたライバルじゃないですか!」
「争った記憶は一切ない。俺はあいつに負けたことは一度もない。一位から陥落したこともない。その時点で俺はあいつより優秀だ。ライバルという表現はそもそも、同じ能力を持った者同士に使う言葉だから間違っている。」
「同じ能力を持っているからこそライバル…どっかで聞いたような?」
琴子は腕を組み「うーん」と考え込んだ。
「おい、俺の話を聞いているのか?」
「あ、そうだ。思い出した、“ガラスの能面”だ!」
「何だそれ?」
「ええ、知らないんですかあ?あの有名な少女マンガを!」
「知るかよ!!」
「んもう、勉強ばかりしていたからですよ。たまには息抜きでマンガも読んだ方がいいですよ?」
「たとえ息抜き目的でも、そんなくだらないタイトルのマンガは選択しないね。何だよ、大体。タイトルからして登場人物全員無表情な不気味な作品ぽい。」
くだらないと言わんばかりの直樹の態度に、
「何てことを!この物語は二人の天才女優が火花をぶつけあっていく素晴らしい物語なんですよ!」
と、琴子が猛烈に抗議した。

「で、その二人が宿命のライバルなんですけれど。」
「ったく…。」
話を止める様子が全くない琴子。直樹はあきらめて話を聞くしなかいことを悟った。
「南島マヨと姫山アユコっていうんです。」
「あ、そ。」
「マヨは貧しい境遇に負けずに演じることに目覚め、その才能を開花させていくんです。普段は全然冴えない、目立たない存在なのに…あ、これって船津検事ぽいですね。」
「俺よりひどい言い草だな。ていうか、お前やっぱり先程のことを根に持っているだろ?」
コーヒーカップの陰から直樹は琴子をジロリと睨んだ。
「で、アユコってのは芸能人一家に生まれて頭もよくて美人で何でもできちゃって幼い頃から天才少女って言われているんです。あ、これは先生ですね。」
「俺?」
「ええ。だって先生も実家お金持ち。」
直樹の実家はおもちゃ業界トップの大企業の創業家であり父はその社長である。
「あと…ハンサムでかっこいいし。」
ここを口にするとき、琴子はなぜか照れていた。
「まあ天才とは言われてきたけどな。」
「…自分で言うかな、それ。」
呟きつつ、琴子は『ガラスの能面』へ話を戻す。
「で、その二人が幻の名作“紅天狗”の主役を争う話なんですよ。」
「天狗!?」
「はい。“紅天狗”。ここまでの道のりがとにかく長いのなんの。」
「ていうか、女二人が何で、よりによって天狗の役を奪い合うのか、そのストーリー設定が俺は理解でない。」
額に手を当て、「話を聞いた分の時間を返せ」と直樹は文句を口にした。

『ガラスの能面』の話ができたことに満足したのか、その後琴子はおとなしくコーヒーを飲んでいた。
「…でも先生、やっぱり姫山アユコタイプですね。」
「まだ言ってるのか、お前は。」
仕事に戻ろうとした直樹は琴子を見た。
「だって、見えない所で努力してらっしゃいますもん!」
カップを握ったまま、琴子がニッコリと直樹に笑いかけた。
「…。」
思わずその言葉に、書面を作ろうとしていた直樹の手が止まった。

「先生、いつも夜遅くまで難しい法律の本を読んでいるでしょう?先生くらい天才だったらもう努力しなくていいんじゃないかなって凡人の私からは思うのに。どんな小さな事件だって絶対に手を抜かない。いつも依頼人のためには全力を尽くす。そこがアユコみたい。」
琴子は心底、直樹を尊敬していた。
「アユコもね、天才って言われているんですけれど、本当は人一倍努力しているんです。でもそこをみんな見てないから、天才って一言で済ましちゃう。先生と似てません?」
フッと直樹は笑った。
――結構、俺のことをちゃんと見てるんじゃねえか。
今までそんなことを誰にも言われたことがなかったので直樹は驚いていた。まさかそれを琴子に全て気づかれていたとは。
「…生意気な奴。」
「ちょっと、褒めているのに!!」
琴子はプーッと頬を膨らませた。それに直樹の頬がまた緩む。
――こいつが気付いてくれてよかった…。
ふとそんな思いが直樹の胸によぎった。

「ちょっと先生ってば!」
「そこまで言うなら、その能面マンガ、読んでみるか。」
「本当ですか!」
琴子の目が輝き出した。
「あ、じゃあ。この本棚、ここ一段丸ごと空けてもいいですか?」
「ここ?」
直樹の目が丸くなった。
「はい!だってあのマンガ、今のところ78巻まで出ているんです。一段で足りないかな。いや、それよりも78冊どうやって買おうか…ネット書店のジャングルで一括注文すれば…。」
「そんなくだらないものを78冊も読む暇は、俺にはねえ!!!」
琴子の耳を引っ張って、直樹が怒鳴ったのは言うまでもなかった――。



「ったく、くだらねえことを考える暇があったらコーヒーのお替り。」
「…はあい。」
野望が断たれた琴子は、しょんぼりとしながら給湯室へと向かった。
「…先生?」
ひょこっと顔を出して、琴子は直樹を見た。
「何だ?」
「あの…私、まだここに雇ってもらえますよね?大丈夫ですよね?」
やはり船津から「冴えない」と言われたことが気になっている琴子である。
「フン。」
直樹は「くだらないことを」と呟いた。
「先生、私っていつかクビに…。」
「お前よりうまいコーヒーを淹れる奴が現れるまでは、仕方ねえから雇ってやるよ。」
「やったあ!!」
それではとびきりのを淹れますねと琴子は上機嫌になった。やがてコーヒーのいい香りが直樹の元まで漂ってきた。



数日後、琴子が直樹の元に資格取得をめざしたいと告げてきた。
「やっとやる気を出したのか。」
船津の件が琴子に発破をかけることになったらしい。これで少しはまともな法律事務所職員になってくれるかと期待しつつ、何なら取得にかかる費用も負担してやってもいいと考えながら、直樹は琴子が出してきた資料を見た。

が、すぐにその目が点となった。

「…バリスタ?」
その資格は法律事務と何一つ関係のないものであった。
「はい!先生にすごくおいしいコーヒーを淹れられるようになりたくて!」
ニコニコと笑いながら琴子は続けた。
「あの、資格を取ったあかつきには資格手当っていうのを出してもらえます…。」
「出すわけねえだろうが!!」
直樹がバリスタに関する資料を真っ二つに破いたことは、言うまでもなかった。

「チェッ、お給料もアップしてもらって先生のお役にも立てて、一石二鳥だと思ったのに。」
席に戻った琴子は、顎を机の上に乗せブツブツ文句を言っていた。
「やっぱりこいつはこいつだ。」
これではいつ使い物になる日が来るのだろか。永遠に来ないような気がする。
「…やっぱり新しい秘書を雇うか。」
「仕事します!」
直樹の言葉に琴子は姿勢を正し、ファイルをめくり始めた。
「単純な奴。」
プッと吹き出しながら、直樹も自分の仕事に戻ったのだった――。







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歯科仲間の水玉さん♪
楽しく読ませていただきました♪
大変のなかこうやって更新される水玉さんが本当にすごい!!と思いました。

私も、琴子ちゃんが資格をとる意気込みがすごく成長を感じうれしく思い
入江君のように感動までしたのに・・・・・バリスタ。。。
素晴らしい展開に笑っちゃいました。
頑張れ入江君!耐えるんだよ入江君!!
でも琴子ちゃんは最高だよ♪

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プロフィール

水玉

Author:水玉
『イタズラなkiss』のほかには『ゴルゴ13』が好きです☆
多数あるイタキスの二次小説の中で邪魔することなく、ひっそりとマイペースで我が道をゆきつつ生息しております。
そっと見守っていただけたら嬉しいです。

※当ブログに掲載されている文章及びイラストの無断転載・使用はご遠慮下さい。

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当ブログは、『イタズラなkiss』の二次創作をメインとしておりますが、時折管理人の趣味や日々の出来事についての記事も書いております。

原作者様や関係各位とは一切関係ありません。

二次創作については、いわゆる原作の隙間をぬった作品もありますが、主人公以外のキャラクターをメインとしたものや オリジナルキャラクターが出てくるものもございます。

そして、原作と違った時代(平安や明治やその他の時代を舞台にしております)、異なる設定(主人公を医者と看護師じゃない職業にしております)で書いてあるものが多いですが、原作を冒涜しているつもりは全くございません。

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