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2012.10.26 (Fri)

入江法律事務所 1

更新停滞してしまってすみません。
ちょっと本当に風邪をひいちゃって、鼻にきちゃって。微熱も出たり喉も痛くなったりと病院のお世話になっちゃいました。
鼻がとにかくつまって、そうなると思考力が低下して。
体がおかしくなると歯もおかしくなるし(歯医者キャンセルする羽目になったし)。

それでシリアスなストーリーを書く気力が出ません。
まだ本調子じゃないので、休みながら読みふけっていた小説の影響からちょっと気まぐれにパラレルを一本書いてみました。

お試しなので、続きは特にありません。一応考えてはいるのですが、なんかうまくいくかどうか…。

「いとし…」の続きは鼻と歯が落ちついたら頑張りますね!お待たせして申し訳ございません。









【More】



ここは東京都内にある、とある法律事務所である。
所属する弁護士は一名。

この事務所の名前は『入江法律事務所』。所長である弁護士の名前は入江直樹という二十代の若者であった。

「先生、おはようございます!」
今朝もその弁護士を、職員が笑顔で出迎えた。
「コーヒーをどうぞ。」
「サンキュ。」
職員の名前は相原琴子。この事務所唯一の職員。つまりこの事務所は弁護士一名、職員一名という小さな小さな事務所なのである。

しかし、小さいとはいえ侮るなかれ。
入江直樹は大学在学中に一発で司法試験を突破、卒業後の司法修習も常に一位、そして日本最大の大手法律事務所から熱烈なスカウトを受けた末に入所を果たした優秀も優秀、これ以上優秀な男はいないと法曹界の伝説となった男なのである。

では、その彼が雇う唯一の職員である琴子もさぞ優秀なのだろうと読者は思われるだろう。

そう話がうまくいくわけがない。

「先生、今度の訴訟の資料をファイリングしておきました。」
この日も琴子は自信たっぷりにファイルを直樹へと差し出した。
「…字が間違っている。」
「え?どこ?」
「ここだ、ここ。」
直樹がトントンと指さした箇所。そこは『○×遺産相続事件』となるべきところが『○×遺産相終事件』と、なっていた。

「ああ、やり直しだあ!!」
慌ててファイルを受け取ろうとする琴子を直樹は手で制した。そしてファイルの表紙をめくった。
「…お前、俺が言ったことを忘れたのか?」
直樹がファイルの陰から琴子を睨んだ。
「忘れませんよ!」
「じゃあ、これは何だ、あ?」
直樹はファイルの一ページ目を広げた。それは相続人の関係図のページである(誰と誰が夫婦で、誰の子はこの人で…といったものを系図のように表わしたもの)。
「似顔絵はあれほどいらねえっていっただろうが!!」
その関係図に書かれた個人名の横には琴子の手による似顔絵が全てついていたのである。

「だって、みんな斉藤さんでしょ?たまに鈴木さんや村田さんも出てきますけど。似た名前ばかりだと先生も顔の区別がつかないんじゃないかなって思って。」
両手の人差し指をツンツンと当てながら、琴子が口を尖らせた。
「お前と違って区別がつくんだ、俺は。それにこれは何だ!“目印は見事なバーコード頭”とか、こんなもんを本人の前で広げられるか!」
「関係図も作り直し」と直樹は琴子に命じたのである。



「よう、元気?」
入江法律事務所のドアを開けて入ってきたのは、海外ブランドのスーツを着た、くせ毛のメガネの若い男性である。
「西垣先生!」
「ああ、琴子ちゃん。今日も可愛いねえ。」
西垣と呼ばれた男はすかさず琴子の手を握ろうとした。が、琴子が笑いながら手を引っ込めたので未遂に終わった。

「どう?こんなちっぽけな事務所辞めてさ、我が西垣総合法律事務所へ来ない?僕の個人秘書として優遇するよ?」
「だめです。私は入江先生のあれなんですから?」
「あれ?愛人?」
西垣が小指を出した。
「違いますよ!」
琴子は顔を赤くしてブンブンと横に振る。
「じゃあ、何だい?」
「あれです。あのええと…パーガール!」
琴子は胸を張って答えた。

「…自分のことが良く分かってるじゃねえか。」
直樹は意地悪く琴子に笑いかけた。
「琴子ちゃん、それを言うならばパラリーガルじゃないかなあ?」
西垣が笑いながら訂正する。パラリーガル、それは弁護士の仕事を専門的に手伝う職員のことである。
「ほら、さっさと仕事に戻れ、パーガール。」
「違います、パラリーガルですってばあ!」
抗議しながら、琴子は西垣の分のコーヒーを淹れるために給湯室へと向かった。



「琴子ちゃんは本当に楽しいなあ。」
「…暇つぶしにうちに来るのやめてもらえます?」
応接用のソファにて足を悠々と組む西垣を睨みながら、直樹は前に座った。
「暇じゃないよ。こう見えても僕は大忙しでね。今だって裁判所へ行く途中に寄ったんだから。」
「ははん。ここへ来ると言うことは今日の事件の担当判事は男ですね。」
「うっ。」
図星をさされた西垣は返事に困った。
「ったく、判事、または検事が美人の時はいそいそと時間前に行くくせに男だとやる気なくすんですよね。」
「仕事に潤いは必要だよ。」
「潤いすぎて腐ったりして。」
「お前は相変わらず口の減らない奴だな。」
西垣が直樹を睨み返す。

「大体、あの大きな事務所で大企業のM&Aや海外企業との提携やらをバリバリとこなしていて、末は最年少パートナー(事務所の出資者)も夢じゃないってところで、何を思ったのか突然辞めて独立しちゃったんだから。」
「爺さんたちのご機嫌伺いから逃れられて最高ですよ。」
「しかも当時の顧問先もお前についていくって何だろうなあ、一体。」
「俺は誘ったりしてませんから。」
「そんな優秀な男が、雇っている唯一の事務職員が琴子ちゃんってのは不思議なところだよな。」
優秀な直樹が雇うのだから、さぞ優秀な職員だろうと思っていたら、蓋を開けたら琴子である。
「仕方ないでしょう。母親に頼まれたんです。」



話は一年前にさかのぼる。
大手事務所を辞めて独立すると両親に報告した時であった。
「あら、それならば事務をしてくれる人が必要よね?」
辞めて食べていけるのかと心配することもなく、母紀子が弾んだ声を出した。
「それはまあそうだけど。」
「ちょうどいい子がいるのよ。待っていて。」
紀子はいそいそと電話をどこぞへかけた。それから三十分後――。

「はじめまして、相原琴子です。」
直樹の前で琴子が頭を下げていた。
「この度は雇って下さりありがとうございます。精一杯頑張ります!」
「ちょっと待て。俺はまだ雇うとは一言も。」
「こちら、パパの親友のお嬢さんなの。」
「アイちゃんは元気かい?」
「はい、とっても!」
「そうかいそうかい。」
「ちょっと待って、親父。今そういう場合じゃないから。」
和やかな場面になりかけているところを、直樹が割って入った。
「あら、探すのも大変よ。履歴書だけじゃ人の本性は見抜けなくってよ。」
紀子が何か文句があるのかと直樹を睨んだ。
「面接もするけれど。」
「そんなのだめよ!面接の時は猫を被る人だって多いわ!それに比べたらこの琴子ちゃんを御覧なさい!パパの親友のお嬢さんだから身元はしっかり、人柄はこの通り。見た目も可愛い。パーフェクト!」
「いや、それはまだ…。」
「んまあ、お兄ちゃんはパパのことを疑うわけ!そんな息子に育てた覚えはなくってよ!」
ギャーギャー喚く紀子を抑えることは法曹界伝説の男にも不可能であった。
こうして琴子は半ば強引に、直樹に採用されたのである。



「だったら、さっさとクビにしちゃえばいいじゃん。」
西垣が笑った。
「何で雇っている訳?」
「それは…。」
「お待たせしました!」
そこへコーヒーを琴子が運んできた。

「はい、先生のも淹れなおしてきましたよ。」
なぜか客の西垣より先に直樹へコーヒーを出す琴子である。

「さっきの答えですけれど。」
コーヒーを一口すすった後、直樹が答えた。
「…毎朝うまいコーヒーを飲めるからです。」
「何だそれ?」
西垣がクククッと笑った。
「何ですか、一体?」
お盆を抱え小首を傾げる琴子。
「お前に関係ない話だ。さっさと仕事しろ、パーガール。」
「…パラリーガルですってばあ。」
頬を膨らませながら自分の机の戻る琴子に、西垣は「アハハ」と笑い声を立てたのだった。












本当は事件を二人が解決するってものを書いてみたいのですが。

まあ、これが考えるのが難しいの何の!!

推理小説を読んじゃ「ああ?何これ、結末強引すぎ!」「犯人の動機よくわからなーい!」と文句を垂れているのと自分で考えるのは大違いです。

謎解きを書かれる方、尊敬します。



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