日々草子 いとし、いとしと言う心 22
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水玉

Author:水玉
『イタズラなkiss』のほかには『ゴルゴ13』が好きです☆
多数あるイタキスの二次小説の中で邪魔することなく、ひっそりとマイペースで我が道をゆきつつ生息しております。
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当ブログは、『イタズラなkiss』の二次創作をメインとしておりますが、時折管理人の趣味や日々の出来事についての記事も書いております。

原作者様や関係各位とは一切関係ありません。

二次創作については、いわゆる原作の隙間をぬった作品もありますが、主人公以外のキャラクターをメインとしたものや オリジナルキャラクターが出てくるものもございます。

そして、原作と違った時代(平安や明治やその他の時代を舞台にしております)、異なる設定(主人公を医者と看護師じゃない職業にしております)で書いてあるものが多いですが、原作を冒涜しているつもりは全くございません。

二次創作が苦手という方及び原作のイメージと合わないと思われる方はどうぞお引き取り下さいますようお願いいたします。

コメント及びメールなどでの苦情及び批判は公開、非公開を問わず、私へ告げることはご遠慮いただけますよう、お願い申し上げます。

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琴子はずっと家に籠りきりでも何もすることはない。女学院も休学中でこのまま退学となるかもしれない。それでも構わなかった。
食事以外は自分の部屋に籠って、好きな少女雑誌を眺めたりする日々を送っている。
その娘を心配した重雄が「たまには気晴らしでもしてくるといい」と帝劇の芝居の切符をくれた。一人で観に行ってもと思ったが、重雄なりに心配してくれているのだろうとその言葉に甘えることにした。

久しぶりの観劇は楽しかった。芝居は直樹と観覧したことがなかったことも幸いしたのかもしれない。もし直樹と共に出かけた思い出があったらとても辛くてたまらなかっただろう。

「葉書でも買おうかしら?」
せっかく出てきたことだから、何か記念になるものでもと売店へ行こうとした時だった。
「琴子さん?」
人ごみであふれたロビーの中から自分の名前を呼ぶ声が聞こえ、琴子は足を止めた。
「やはり琴子さん。」
「みさをさん!」
ショールを手に、淡い藤色のお召姿のみさをが琴子に笑いかけていた。

「琴子さんもいらしていたなんて。」
「ご無沙汰してしまって。」
二人は互いに挨拶しあった時、
「ここにいたのかい?」
みさをの姿を見つけ、背広姿の二十代後半の男性が近寄って来た。
「はぐれたかと思い心配したよ。」
「まあ、申し訳ありません。」
みさをが謝ると、男性はメガネの奥から優しい視線を注いだ。

「こちらは?」
男性が琴子に気付いた。
「お話したことがあると思うのですが、琴子さん。」
「ああ、こちらが琴子さんか。」
どうやらみさをは男性に琴子の話をよくしているらしい。
「もしかしたら…。」
「主人ですの。」
「やっぱりそうでしたか。」
琴子は笑顔を見せた。

「この間は弟のお墓参りをして下さって、ありがとうございました。」
みさをとその夫が改めて礼を述べた。
「いえ、そんな…というか、どうして私がお参りしたことを御存知なのでしょうか?」
お墓に自分の名前を書いてきた記憶もないのにと琴子は怪訝に思った。それに対してみさをは笑顔を浮かべているだけで何も言わない。

「せっかくだから、二人でお茶でも飲んでおいで。」
みさをの夫が二人に気を利かせてくれた。
「僕は書店でも回っているから。」
「すみません。」
みさをは夫に軽く頭を下げると「琴子さん、お時間は?」と確認を求めてきた。
「暇を持て余している身ですので。」
琴子が笑うと、みさをも笑った。



二人はすぐそばのパーラーへと入った。
「…琴子さんがいらした後、すぐに入江様や私共、渡辺様があの場に。」
注文したアイスクリームをスプーンですくいながら、みさをから話が始まった。
「そうでしたか。」
一足遅かったら、直樹と鉢合わせしたいたのかもしれない。それが嬉しいことかどうかは琴子には微妙なところである。

「御事情もその時に入江様から伺いました。」
琴子を追いかけた後、直樹はすぐに墓前へ戻って来た。さすがに黙っているわけにはいかなくなり、その後の昼食の席で直樹はみさをに琴子と離婚したことを打ち明けたのである。

「出戻りです、私。」
みさをを深刻な気分にさせぬよう、琴子はわざとおちゃらけて見せた。
「私のようにはならないで下さいね…と、みさをさんに限ってそんなことはありませんね。」
「出戻りたくとも、婿を取った身ですもの。」
琴子の気持ちを汲み、みさをもそのような冗談を口にする。

「私が至らなかったばかりに、このようなことになってしまいました。」
「そのようなことは…。」
「いえ、私がもっと賢く振る舞うことができれば…。」
そこで琴子は口をつぐんだ。賢く振る舞えれば、入江家がバラバラになることはなかっただろう。
「もっと直樹さんの力になりたかったのですが…。」
ホロリと琴子は涙をこぼした。みさをは、
「充分、充分お力になったと思います。私には分かります。」
と、妹を慰めるかのように優しい言葉を琴子へかけた。
直樹からは、離婚の原因は自分が勘当されたからだとしか聞いていない。だからといって具体的なことを琴子に詰め寄るような真似をみさをはする気もなかった。
それにあの時直樹は琴子を追いかけて行った。それだけで直樹が琴子を憎んで離縁したわけではないことは、あの場にいる全員が分かっている。
それを琴子へ打ち明けられたらどんなにいいだろうかと、ハンカチを目に当てている琴子を前にみさをは思った。しかし、他人がそのような口出しをしていいのだろうかとも思う。
夫婦には夫婦にしか分からない事情もあるだろうとみさをは思う。

「みさをさん、笑って下さい。」
涙をふき、琴子が顔を上げた。
「私、離縁されても…それでも直樹さんのことが忘れられないのです。愚かですよね?」
琴子は自嘲するかのように笑った。それを見てみさをの胸が痛くなる。
「愚かだなんて、とんでもない。」
テーブルの上でみさをは琴子の手を取った。
「それほど愛せる方と巡り合えたことは、幸せだと思いますよ。琴子さんはきっと、入江様のためにと全力を尽くされたのでしょうから。」
「全力を…。」
琴子の顔から笑みが消えた。
「琴子さん?」
直樹のために全力を尽くしたといえるのだろうか?琴子は自問自答を始める。まだ他にできることがあるのではないだろうか。

「みさをさん。」
「はい?」
「…お願いがあるのですが。」
たとえ二度と会えなくとも、自分にできることを全力でせねばと琴子は決意していた――。



「琴子、お前何をしてたんだよ!!」
裕樹は開口一番、琴子に怒りをぶつけてきた。しかし、それは憎くて言っているわけではない。琴子を心配してからのことである。
「琴子ちゃん!!まあまあ…。」
「お義母様!」
かつての姑と琴子は抱き合い再会を喜んだ。
――お義母様、お痩せになられて。
その細さに琴子は泣きそうになるのを堪えた。

「琴子ちゃん。」
静かな声に、琴子と紀子は身体を離した。
「…久しぶりだね。」
「お義父様、お久しぶりでございます。」
重雄もどこかやつれたようであった。しかし琴子がいた頃と変わらない優しい顔である。

この日、琴子は入江家を訪問したのだった。



「今日は会って下さり、本当にありがとうございます。」
改めて琴子は義両親に頭を下げた。
「それはこちらの台詞だよ。」
「そうですよ。」
重樹と紀子が言う。
「こんなことになって、もう会えないかと思っていたのだから。」
重樹は琴子の顔を上げさせた。
「本当に、馬鹿息子のために琴子ちゃんの人生を狂わせてしまった。会わせる顔がないものだから失礼なことまでして、申し訳なかった。許してくれとはとても言えない。」
「そのようなことは決して。」
琴子は慌てた。
「私の方こそ、離縁されてもこうして厚かましくお邪魔してしまったのですから。」
「そんな。」
「さあさあ、もうよしましょう。」
二人の会話を、紀子が明るい声で止めた。
「せっかくこうして琴子ちゃんが来てくれたんですのよ。楽しいお話を沢山しないと。」
「…そうだな。」
重樹にとっても琴子は実の娘のような嫁であったのである。

「それで、琴子ちゃん?どうしたんだい?」
何か目的があって来たのだろうということは重樹にも分かっている。
「お義父様にお願いがあって。」
「何だろう?琴子ちゃんの頼みならば喜んで聞きたいが。」
重樹の機嫌のよい顔に、琴子の胸が痛んだ。まもなくその顔がくもることは間違ない。

「直樹さんのことです。」
琴子がその名を出した途端、重樹の顔が機嫌の悪いものへと変化した。それに気付いた紀子が戸惑っている。

「…誰だ、それは?」
「あなた!」
さすがに紀子が声を上げた。
「知らん!わしは知らん!」
重樹が席を立とうとする。すかさず、
「お義父様、お待ち下さい!」
と、琴子が止めた。

「お願いです、お義父様。」
琴子は悲痛な眼差しを重樹へと向けた。
「お義父様は私に申し訳ないと仰って下さいました。もし私を哀れだと思って下さっているのでしたら、どうぞ私の話を最後まで聞いて下さい。」
「しかし、琴子ちゃん。」
「お願いします、お義父様。」
琴子の懇願に、重樹は再び席に着いた。

琴子はテーブルの上に、持参した紫色の風呂敷包みを出した。
「こちらをご覧ください。」
そして風呂敷を解く。中から現れたのは、数冊のノートであった。
「こちらは、直樹さんがお友達のために作ったノートです。」
「友達?」
「お二人も御存知だと思います。直樹さんの一高時代のお友達の服部様です。」
「ああ、彼か。」
重樹が思い出した。
「御病気の服部様のために、直樹さんが一日も欠かさず作り続けた学校のノートです。」
「一日も欠かさず…。」
「直樹さんが…。」
重樹と紀子はそれぞれ一冊を手にとり、大切にページをめくる。どのノートも几帳面に字が綴られている。

「直樹さんは服部様が必ず回復して、学校に戻ることを信じてこのノートを作り続けたそうです。服部様が亡くなる前日まで。」
「前日まで?」
「はい。」
琴子は頷いた。
「そのノートを、お義父様とお義母様にご覧いただきたくて、今日は服部様のお姉様にお願いして、お借りしてきました。」
重樹と紀子は黙ってページをめくっている。琴子はその様子を見つめた。

「…なかなか出来ないことだと思います。」
しばらくして琴子が口を開いた。
「どのページも直樹さんの優しさがあふれていると思われませんか?」
琴子の言葉に、紀子が涙ぐむ。重樹も俯いたままだった。

「直樹さんがお医者様になろうと思ったのは、服部様のことが一因でもあるそうです。」
「そうなの?」
「はい。直樹さんは教えてくれました。自分は何でも器用にこなせることから、特にこれがしたいという将来の目標がなかったと。」
ここで琴子は重樹の様子を窺う。やはり重樹の心を傷つけてしまうことは避けられないだろう。
しかしここで躊躇しているわけにはいかない。琴子は勇気を振り絞る。

「その時、服部様に言われたそうです。直樹さんはやりたい事ができる力も、時間もあるんだから、好きなことをしろと。それで自分は何て恵まれた身なのだと思ったそうです。」
「それでお医者をめざそうとしたの?」
紀子の問いかけに琴子は頷いた。
「病気の方たちの役に立ちたいと思ったそうです。」
「そんなことを考えてお医者様になろうとしていたのね。」
三人はしばらく黙り込んでしまった。



「お願いします、お義父様、お義母様。」
琴子は頭を下げた。
「直樹さんはこんなに優しい心の持ち主なのです。お二人の御子息は素晴らしい心を持っています。どうぞ誇りを持って下さい。」
「琴子ちゃん、頭を上げて頂戴。」
紀子が言っても、琴子はそのまま続ける。
「その素晴らしい直樹さんの夢を理解してあげて下さい。直樹さんは必ず日本一、いえ世界一の名医になります。」
「琴子ちゃん…。」
「ご自分の後を継いでくれると期待されていたお義父様のお気持ちは分かります。でも直樹さんの選んだ生き方もお義父様に負けないくらいの立派な生き方だと私は思います。そして。」
琴子は顔を上げ、
「私はそのような立派な方の妻になれたことを、これからも誇りに思って生きていくことができます。」
と、笑顔を二人へ見せたのだった。



自分にできることは全てやった――入江家を出て琴子は息をついた。
直樹と縁を結んだ自分が最後にできること、それは直樹の選んだ道を重樹と紀子に認めてもらうためのことだと、みさをと話していて気付いたのだった。
これで重樹が勘当を解いてくれたら、言うことはない。たとえ沙穂子を妻にしても共に受け入れてくれるだろう。
不器用ながらもこれが琴子が見せることのできる、精一杯の直樹への愛情の証であった。



「直樹様、入ってよろしゅうございますか?」
沙穂子の声に直樹は参考書から顔を上げて「どうぞ」と返事をした。
作法通りに襖を開け、沙穂子が入ってきた。
「お茶をお持ちしました。先日、この時間にお茶をお飲みでしたので。」
お盆の上には美濃焼の湯飲みともう一つ。
「お勉強で少しお疲れになっているのではと思い、甘いものをご用意いたしたのですが。」
沙穂子の気遣いで、羊羹が添えられていた。

「ありがとうございます。」
「甘いものはお好きでしょうか?こちらの羊羹は祖父が贔屓にしておりまして、お口に合えばよいのですが。」
「大丈夫です。いろいろお気づかい下さりありがとうございます。」
「とんでもございません。」
直樹が湯呑を手にしても、沙穂子は下がろうとしなかった。
「直樹様。」
「はい。」
「どうぞ御遠慮なく、お好みをお申し付け下さいましね。」
大和撫子とは彼女のことを言うのだろうと、直樹は思った。奥ゆかしく控えめ。お嬢様育ちだというのに何と気が利くことか。
「恐れ入ります。」
「お茶も玉露でよろしいでしょうか。他にお好きなものがございましたら。」
「玉露など今の俺には勿体ないくらいです。」
不安に思う沙穂子を安心させるため、直樹は笑顔を作った。
琴子と二人で暮らしていた頃は、とても玉露など飲めなかった。だが琴子が淹れると不思議なことに、安い茶葉も玉露のような味が出た。
と、また琴子のことを思い出してしまい直樹は自分を叱りつける。

直樹は羊羹を一口食べた。甘さが口中に広がる。
「お味はいかがでしょう?」
「おいしいです。さすが大泉家が御贔屓にされるだけありますね。」
直樹の返事に沙穂子は安堵の笑みを浮かべた。
羊羹を食べながら直樹は、いつか食べた苦いパウンドケーキの味を懐かしく思い出していた。









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コメント

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水玉さん♪いつもありがとうございます。
なんだかもう直樹さんがもう!!言葉にならない・・・・
叱っりして欲しいよぉ~

直樹さんの知らないところで琴子ちゃんは一生懸命行動を起こしているのに!!
お嬢様のお茶を飲んで感傷的になっている暇はないはずだよ!!
はぁ~直樹さん・・・
琴子ちゃん頑張れ!!!必ず幸せになれると信じているから!!

こんな私だけどナオキストだよ♪

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