日々草子 イリエアン・デイズ 6

イリエアン・デイズ 6

いかがでしょうか?
好評だったイリエアン・ナイトの続きなんですが…楽しんでいただけてますか?
ちょっと最近不安…。








「しまった、どこの家の娘か聞き出すのを忘れていた。」
古ぼけた小屋で、男たちがヒソヒソと話し合っていた。
「起こして訊くか?」
「いや、騒がれたら困るしな。」
床に寝かせられているのはコトリーナである。薬が効いているのか目覚める気配は一向になかった。
「運んでくる途中に“まな板”って繰り返してたけど?」
「まさかまな板職人の娘だったとか?」
「貴族か大商人の娘じゃねえと、貰うもん貰えねえな。」
「何か身元が分かる物を身につけてないか?」
一人がコトリーナの服に手をかけた時だった――。

バァン!!
ドアが突然開かれ、男たちは一斉に顔を向けた。
「何だ、こいつは?」
やってきたのは、綺麗な顔立ちの青年だった。それはナオキヴィッチであった。
ナオキヴィッチは小屋の中に素早く目を走らせた。すると小屋の片隅にコトリーナが青ざめた顔で寝かされている。しかもスカートの裾はまくれ上がり白い足が見えていた。そして男がそこに手をかけている――ナオキヴィッチの血が逆流を始めるには十分すぎる光景であった。

「何だよ、もしかしてこの女の連れか?」
「いいじゃねえか。こいつも金持ちそうだ。」
「二人合わせればかなりの金をいただけるだろう。」
ハハハと笑う男たち。
「じゃ、こっちでお前もおとなしくしててもらおうか。」
男の一人がナオキヴィッチの腕を引っ張ろうとした。が、その手をナオキヴィッチは振り払った。

「…てめえ!!」
ナオキヴィッチはコトリーナに触ろうとしていた男の襟を引っ張り上げた。
「何だ、お前は!」
これを見た仲間たちが棍棒を手にナオキヴィッチに襲い掛かる。
ナオキヴィッチは自分が掴んだ男を盾にする。棍棒の一本が男の肩を打った。
「ふざけた真似しやがって!!」
別の男がまたもや棍棒を手にナオキヴィッチに襲い掛かった。素早くナオキヴィッチはよけた。と同時に男の腹に膝を入れた。
「うぐっ!!」
美しい顔をした世間知らずのドラ息子かと油断していた男はうめき声を上げると手から棍棒を落とす。それをナオキヴィッチが拾い上げた。

「邪魔するんじゃねえよ!!」
盾にされた男がナオキヴィッチに拳を振り上げた。ナオキヴィッチはサッとしゃがみ込むと突進してくる男のすねを思い切り棍棒で打ち付ける。激痛に男は倒れ込んだ。
「こ、このお!!」
最後に残った男が小屋にあったスコップを取り上げ、ナオキヴィッチの背後から攻める。
「危ない!」
ガッキー王子が声を上げると同時に、ナオキヴィッチが振り返りスコップを棍棒で防いだ。
「ぐぐぐ…。」
どう考えてもスコップの方が大きく有利なはずなのに、ナオキヴィッチの棍棒はびくともしない。
「くそお!!」
男は力任せにスコップを押し付けた。スッとナオキヴィッチが棍棒を引くと途端にバランスが崩れる。その背中をナオキヴィッチは棍棒で打ち付けた。

しかしナオキヴィッチの怒りはこれでおさまることはなかった。
「…立てよ。」
夜叉のごとく冷たい顔でナオキヴィッチは唸り続ける男たちを見下ろす。
「俺の女に触った罪がいかに重いか教えてやるから、立て!!」
男たちはナオキヴィッチを恨めしそうに見るのが精いっぱいである。
「…だったらこっちから行くぞ。」
ナオキヴィッチが棍棒を振り上げた時だった。その腕をガッキー王子が止めた。
「落ち着け、ナオキヴィッチ。」
「離して下さい。」
「落ち着け、お前が手を汚すような相手じゃない。それに。」
ナオキヴィッチの腕を掴んだまま、ガッキー王子は倒れているコトリーナを見た。
「コトリーナは無事だ。お前が思っているようなことは起きていない。息もちゃんとしている。」
「え?」
ナオキヴィッチはようやく腕をおろし、コトリーナを見た。
小屋でコトリーナを見つけた時、その姿から男たちに汚されたとナオキヴィッチは思い込んでしまったのだった。普段の彼であれば冷静に考え確認しただろう。しかし、コトリーナのこととなると冷静さは消え失せてしまったのである。

「う…ん…。」
その時、コトリーナの声から声が漏れた。
「ここは…?」
コトリーナはゆっくりと起き上がりあたりを見回す。そしてナオキヴィッチの姿を見つけたと同時に自分が攫われたことを思い出した。
「王子様!!」
ナオキヴィッチの名前を呼ぶとコトリーナの目から涙がこぼれる。
「王子様!!」
コトリーナはナオキヴィッチに抱きついた。ナオキヴィッチもしっかりと抱きしめる。
「王子様!!」
「大丈夫だ。もう大丈夫だから。」
男たちに対する声とは正反対の、とびきりの優しい声でナオキヴィッチはコトリーナを慰める。しかしまだ興奮状態のコトリーナは泣きやまなかった。

「それじゃ、僕は護衛たちを迎えに行ってくるから。」
男たちを縄でしっかりと縛り上げた後、二人きりにした方がいいだろうとガッキー王子は小屋を出て行った。



「怖かっただろう。」
「…はい。」
コトリーナは頷いた。
「とっても怖かった…。」
泣きじゃくるコトリーナの髪や背中を撫で続けるナオキヴィッチ。
しばらく泣き続けた後、コトリーナはようやく顔をナオキヴィッチの胸から離した。

「お弁当…。」
小屋の入り口の所に転がっているバスケットをコトリーナは見つけた。ナオキヴィッチが拾ってそのまま持ってきたものである。
ナオキヴィッチハバスケットを取ってくると、コトリーナと自分の間に置き蓋を開けた。
「やっぱりぐちゃぐちゃ…。」
せっかく泣き止んだのに、また泣き出すコトリーナ。確かに中はぐちゃぐちゃになっていた。
「何を作ってきたんだ?」
「ポテトサラダとか、ローストビーフとかゆで卵とか…薄く切ったパンに好きな具を載せて食べてもらおうと思って。今朝五時から頑張ったのに…。」
ぐすっぐすっとコトリーナは泣き続ける。
ナオキヴィッチはバスケットの中に手を伸ばした。
「王子様?」
ナオキヴィッチはバスケットの中からパンを出すとポテトサラダを載せて口に入れた。
「ぐちゃぐちゃなのに。」
「平気。ああ、悪くない味かも。」
もぐもぐと口を動かすナオキヴィッチ。その後もコトリーナが作ってきたおかずを頬張る。
「これはちょっとしょっぱいな。」
「王子様、味がぐちゃぐちゃでもうだめよ。」
コトリーナはバスケットの蓋をパタンと閉めようとした。が、ナオキヴィッチが手を入れた。

「お前が俺のために作ってくれたんだから、まずいわけがない。」
「嘘。」
コトリーナはナオキヴィッチを見た。
「この間、犠牲になってるって。確かにそうかもって私、反省したの。」
「あれはまあ…言い過ぎた。」
「ううん。本当にそうだったの。誰が食べたいと思うんだっていうような出来だったし。いつもそう。ちっとも上手にならない。」
コトリーナはうなだれてしまった。
「誰も食べなくたって、俺が食べるから構わない。」
うなだれるコトリーナの頭をナオキヴィッチはポンポンと叩いた。
「というか、俺以外に食べさせたくないけどね。」
その優しい言葉にコトリーナが顔を上げた。
「お前の独創的なお菓子を食べる権利は未来永劫俺だけに与えてほしいね。」
ナオキヴィッチは笑顔でコトリーナを見つめる。
「お菓子に限らず、お前の手料理全てを食べられるのは世界中でこの俺だけだ。」
「王子様…本当に?」
「ああ。」
そしてナオキヴィッチはまたバスケットに手を伸ばし、今度は薄くスライスされたゆで卵を口にした。
「ゆですぎ。」
「…エヘへ。」
コトリーナの顔にやっと笑顔が戻った――。



コトリーナを攫った男たちはイーリエ王国の人間ではなかった。
よその国から、豊かなイーリエ王国の人間を狙って事件を起こすつもりだったとその後の取り調べで白状した――。



「王子様、いらっしゃいますか?」
その晩、コトリーナはナオキヴィッチの書斎のドアをノックした。
「いらした!」
ナオキヴィッチの姿を見つけたコトリーナはトコトコと歩いてきた。ナオキヴィッチは机の上で手を組んで考え事をしていた。
「今、お邪魔でしたか?」
難しい顔をしているナオキヴィッチを見て、コトリーナは邪魔をしたかと心配になった。
「…いや。俺の方からお前の元へ行こうと思っていたところだ。」
「そうでしたか!」
コトリーナの顔がパーッと輝く。しかしナオキヴィッチの顔は少し曇った。
「あの、明日のお茶のお菓子なんですけれど。やっぱりマフィンの方がいいですか?それともクッキーとか?」
ナオキヴィッチにお菓子が嫌じゃないと言われ、さっそくコトリーナはやる気満々になっている。
ナオキヴィッチはフッと笑ったが、すぐにその顔が厳しいものとなった。
「王子様?」
どこか具合が悪いのかと、コトリーナは心配になった。
「コトリーナ…。」
ナオキヴィッチは机から手を伸ばし、コトリーナの両手を取った。
「俺との婚約、なかったことにしてほしい。」
「え…?」
コトリーナは耳を疑った。
「王子様…?」
その話は冗談ということになったのではなかっただろうか。
「もう一度…仰って下さい。」
「婚約は白紙に戻そうと言っている。」
ナオキヴィッチの顔は真剣そのものであった。





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凄〜く楽しんでいま〜す!でも、この展開は?ちょっと心配ですね〜

何がどうなってるの?

こんばんは。お久しぶりです。続き楽しみに待ってました。やっと仲直りしたのに何がどうなってしまったの?このまま結婚式で終わりと思ってたのにまさかこの後はあの方が登場するのでしょうか?出来ることならあまり登場してほしくはないけれど出て来ないと盛り上がりに欠けるのかな?出来ればコトリーナちゃんが傷つかないよう祈ってます。続き楽しみにしています。

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???

おはよーございます。続き楽しみに待ってました。が、この展開にはビックリ!なぜ??せっかく仲直りしていい雰囲気なのに…。最後にはパッピーエンドになりますように。

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水玉さん♪
怒涛の更新、とっても楽しみにしていますよ♪
本当にいつもありがとうございます。

このシリーズ、ちょっと腑抜けなところがかわいくて大好きです。
私に画力があれば絵でも描いて水玉さんにプレゼントしたいのに!!!!

で、前回までの喧嘩もまな板娘とパンツ王子だったのに
急展開!!
直樹さんが真剣に・・・・・いったい何が原因なんだろうか??想像もつきません・・・・
かわいい琴子ちゃんの笑顔を曇らせることは、許しませんよ!!!直樹さん!!

kazigonさん、ありがとうございます。

ありがとうございます!安心しました~♪
ぜひ最終話も楽しんでいただけますように!

ちあきさん、ありがとうございます。

あの人…は出てきません(笑)
コメディには不向きなので笑やっぱり彼女はシリアスに出ていただかないと!
なんか「どうなる」と皆様に期待していただいた割には「え?これで?」と拍子抜けされそうな終わり方になっておりますが、楽しんでいただけたらいいなと思っております。

ゆうさん、ありがとうございます。

すごく楽しんでいただいているとのこと、安心しました!
そしてお久しぶりです!体調いかがですか?お声が聴けて少し安心しました。

ナオキヴィッチは何か考えているとは思います。
きっとコトリーナちゃんも気づくはず!

ぜひぜひ最終話まで読んで、ゆうさんの心の中が晴れますように♪

sayuさん、ありがとうございます。

大丈夫です!シリアスにはなりませんので(笑)
でもそろそろシリアスが恋しいな~。

ぴろりおさん、ありがとうございます。

直樹スキーなぴろりおさんに興奮していただけて、とてもうれしいです!
棍棒片手に倒していくところは、ゴルゴと時代小説の影響がかなり出ています(笑)
でも描写は難しい!
ぐちゃぐちゃのお弁当を食べるところで、入江くんの優しさを表現してみました。
気づいてくださって嬉しかったです。最高だなんて、もったいない!!

「さっぱりわからない…」で私の脳内にはあの曲が流れてましたよ(もちろんまちゃはるの作曲よ)。
ついでにメガネを指でクイとあげてみました(笑)

なかなかぴろりおさんのようにかっこよくて甘い入江くんは書けませんね。
でもそれでいいのかも。
目標というのは追いつこうと頑張るものであって、追いつけないものなのかも!
私はぴろりおさんの背中を見て走り続けます(笑)サライーの空へ~♪

anpanさん、ありがとうございます。

ハハハ!!
唐突すぎますよね、自分でもそう思いました!
しかしこうなったらもう強引に行くしかないかと!
最後、見届けていただけたらと思います。

紀子ママさん、ありがとうございます。

頭脳を無駄に…ぷぷぷ。
琴子ちゃんのことに関すると、IQ200もフル回転しなくなっちゃうのが入江くんですもんね!
いつもコメントありがとうございます!励みになっております♪

ゆみのすけさん、ありがとうございます。

おお、ゆみのすけさんまで!!
やっぱりゆみのすけさんのお名前見るとホッとします~♪お元気そう!
画力めちゃめちゃあるじゃないですか!!
いつでもプレゼント待ってます!私なんてコトリーナちゃんのマフィンすら絵にできなくて。
本当に画力あれば、挿絵もバンバン描いちゃうんだけどな…うう。

まな板娘とパンツ王子が一転、シリアス…かと思いきや~という結末になっております!
大丈夫、ゆみのすけさんに怒られないように仕上げましたから。

でもそろそろ、直樹いじめ同好会の活動をしたいところだわ~。

これぞ水玉ワールド~♪

最終話まで読ませて頂いたのですが コメ欄が無かったのでこちらに失礼します。御許しを。
とってもとっても楽しませて頂きました。素敵なお話を有難うございました。
コトリーナちゃんがおきゃんで(古い!笑)愛らしくてベチョベチョマフィンがトレードマークで、 そしてナオキヴィッチはイケずな癖に実はべた惚れで焼き餅焼いちゃって。でもいざとなるとカッコいい――!目がハートになってルンルンワクワクして読みました。
テンポ良くドンドンお話が進むので 毎日更新して下さるのが嬉しくて 日参していたのですが 後でゆっくり読み返してコメントをなんて思っている内に遅くなってしまいました。すみません。もしかすると昨夜も嬉しい興奮の余り 読んだのに拍手ボタン押し忘れてたりするかもです。ごめんなさい~♪
水玉さんが乗って書いてらっしゃるのもびしばし伝わって来ました!(^^)!
そして私は何でもついつい長く書き過ぎてしまう癖があるので 連載もこれくらいの長さでテンポよくお話が展開するって 凄くいいなあっとうっとりしながら 目をハートマークで読んでました。でもそれって水玉さんだから出来ることで 誰にも真似できることではないんですよね。 改めてその筆力に感嘆しつつ 読ませて頂いた感謝を置いて参ります。有難うございました。m(__)m 

ひろりんさん、ありがとうございます。

お返事が遅くなり本当に申し訳ございませんでした。
このお話は私もかなりノリに乗って書いていたので、楽しんでいただけてうれしいです。
コトリーナちゃんのトレードマークのベチョベチョマフィンはきっとおいしくなることはないでしょうね(笑)
婚約しても相変わらずな二人ですけれど、ナオキヴィッチはぞっこんなんですよね。
この調子で結婚まで続けられたらなと思っております。
ひろりんさんもお忙しい中訪問してくださりありがとうございました!
私の方もなかなかコメント残せずに申し訳ありませんでした。
でも読んでますよ~!!お誕生日のお話もとても素敵でした♪
プロフィール

水玉

Author:水玉
『イタズラなkiss』のほかには『ゴルゴ13』が好きです☆
多数あるイタキスの二次小説の中で邪魔することなく、ひっそりとマイペースで我が道をゆきつつ生息しております。
そっと見守っていただけたら嬉しいです。

※当ブログに掲載されている文章及びイラストの無断転載・使用はご遠慮下さい。

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このブログについてのお願い
当ブログは、『イタズラなkiss』の二次創作をメインとしておりますが、時折管理人の趣味や日々の出来事についての記事も書いております。

原作者様や関係各位とは一切関係ありません。

二次創作については、いわゆる原作の隙間をぬった作品もありますが、主人公以外のキャラクターをメインとしたものや オリジナルキャラクターが出てくるものもございます。

そして、原作と違った時代(平安や明治やその他の時代を舞台にしております)、異なる設定(主人公を医者と看護師じゃない職業にしております)で書いてあるものが多いですが、原作を冒涜しているつもりは全くございません。

二次創作が苦手という方及び原作のイメージと合わないと思われる方はどうぞお引き取り下さいますようお願いいたします。

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