日々草子 愛されていることを自覚した時から始まる恋 2

愛されていることを自覚した時から始まる恋 2

お待たせして申し訳ありませんでした。
お待たせした割には、「なんじゃこれ!」って内容でお恥ずかしいのですが…どうぞ!!
あと、某所も先日更新しました。よろしければ…どうぞ!!













琴子と直樹、お互いに勘違いをしながら数日が経過した時のことだった。

「はあ。」
琴子は自分の部屋のベッドに寝転がり、天井を見つめながら溜息をついていた。もう毎日つきすぎているくらい溜息ばかりが出てくる。
「入江くんが…。」
考えることはいつも同じことだった。直樹の名前を浮かべると最近ではセットで青木まで浮かんでくる始末。
「恋愛は自由だものね…。」
ごろりと横を向いてそう考えようとするのも、もう何度目か。
これまでも直樹が自分ではない女性を愛するようになったらと考えたことはあった。その相手が松本裕子だったり、はたまたテレビで見かけるアイドルの顔を複数組み合わせてみたり。いずれにせよ、そういう時に想像する直樹の相手は自分よりもはるか美しい人間であった。
もしその想像が現実のものになったとしたら、琴子は自分がどう振る舞うか。
――琴子、悪い。俺が選んだのは彼女なんだ。
きっと直樹ははっきりと自分にそう告げるに違いない。それが自分を想い続けている琴子への誠実な対応だと直樹は考えるからである。
――そっか…入江くんが好きな人ってやっぱりきれいな人なんだね。
涙をこらえて笑う自分。
「うう…。」
そこまで想像するといつも目に涙が浮かぶ。考えたくないことである。
「それがまさか…。」
まさか、美女ではなく男だったとは。男に負ける自分を想像はさすがの琴子もしたことがなかった。
そんなことを考えるうちに、ベッドの上という状況から琴子はいつしかまどろみ始めていた――。



その時、直樹は大学から戻ったところだった。
玄関に琴子の靴があったので、どうやら先に戻っているらしい。
リビングに顔を出してみたが、そこに琴子はいなかった。ということは自分の部屋にいるのだろう。
「今頃…。」
二階へのぼりながら、直樹は琴子が何を考えているのかを想像する。
「あいつのことでも考えているのかよ?」
そう思うと腹の中にどす黒いものが広がっていく。どうしてそのような気分になるのか、自分でも分からない。
あの日以来、何となく琴子が自分を見る目が変わった気がする。おそらく自分から青木に心変わりしたことをいつ打ち明けようか、どういう表現をしようかと迷っているのだろう。
琴子のことだ、今まで自分に迷惑をかけてきたというのに心変わりをしたお詫びの一つでも言いたいに違いない。
「余計なことしなくていいのに。」
別に付き合っているわけでもないのだから、そのまま青木にスライドしてしまえばいいものを。わざわざ心変わりしたことを謝ろうとするその気遣いが直樹には鬱陶しいものだった。



「入江くん…?」
琴子は目を見張った。そこに立っている直樹は今まで見たことのない服を着ていた。それは唐草模様。そしてその隣には同じ唐草模様のシャツを着た青木が立っている(おそらく、琴子の中では青木と矢野が混乱しているのだろう)。
直樹と青木の首には、琴子が編んだあのマフラーが巻かれていた。それも二人で一本のマフラーを巻いているのだった。いくら琴子が不器用ではあるとはいえ、長さは通常のマフラーの長さのため、かなりきつそうである。
「入江くん…あの、マフラー、苦しくない?」
こんな時になぜ、マフラーの心配などしてしまうのだろうか。琴子は自分を愚かだと思いつつ他に言葉が浮かばなかった。
「いいんだ。苦しいからこそ、こうやってくっつけるから。」
直樹が青木の肩を抱き寄せる。すると青木が「ムフッ」と何とも言えない声を上げた。
「俺たち、今日からこの家で一緒に暮らすことにしたから。」
「え?そうなの?部屋、足りるかなあ?」
どうしてここで部屋の心配をしてしまうのか。
「いいんだ。俺の部屋で一緒に寝るから。」
「で、でもベッド一つしかないじゃない?折り畳みベッドでも入れるの?」
「野暮なことを言うなよ。本当にお前は馬鹿だな。」
直樹が琴子を冷たく見下ろした。
「俺たちにはベッドは一つで十分さ。な?」
「うん。」
青木が照れ笑いを浮かべた。そんな青木を優しく直樹は見つめている。
「青木、こいつもいるけど気にしないでくれよな。俺たちの邪魔をしないようきつく注意しておくから。」
「いいんだ。置物だと思うから。」
「お、置物…?」
青木の言葉に琴子は愕然となった。
「そうだな。こいつは置物だ。」
直樹まで青木に同調する。
「ところでさ、俺たち結婚はできないじゃん?」
琴子を無視して、直樹が青木に話しかけた。
「でもせめて苗字くらいは変えようかと思うんだ。」
「入江くんが?」
無視されても口を挟まずにいられない琴子。
「青木直樹って、結構合っていると思わない?」



「青木!!!」
琴子は自分の叫び声で目を覚ました。
「あ、夢か…。」
辺りを見回すと、そこは自分の部屋だった。どうやら転寝をしていたらしい。
「なんてリアルな…。」
琴子は息を荒く吐きながらベッドの上に半身を起こした。汗までかいている。
「青木…青木…苗字が…青木。」
ブツブツと琴子は呟いた。
「青木直樹…舌噛んじゃいそう。」



「そんなに叫ぶほど、あいつのことが好きなのかよ。」
琴子の部屋から聞こえた「青木」という声に、直樹は思わず足を止めてしまった。
しかもその後、「青木」と何度も繰り返している(肝心の青木直樹という部分は聞こえなかった)。
「そんなに青木って苗字になりたいわけか。ああ、そうかよ。」
腹立たしさを覚えながら、直樹は乱暴に自分の部屋のドアを開けた。そしてカバンを床へ放り投げ、ベッドへドサッと横になった。
「青木琴子?何だよ、変じゃねえか。普通すぎ。あいつの名前はあいつ同様アホッぽいんだからもっとましな苗字の方が…。」
そして直樹は呟く。
「池沢琴子…だめ。渡辺琴子…平凡すぎ。須藤琴子…“どー”って伸びるところが間延びしているよな。」
知り合いの名字と琴子の名前を次々組み合わせては、直樹は却下していく。
「…入江琴子。うん、なんか妙にしっくりくるな。すっきりしているし。」
そこで直樹はハッとなった。
「それじゃ、俺があいつと結婚するみたいじゃねえか。俺、何を考えているんだ?」
直樹は「バカバカしい」とそこでくだらない考えをやめ、枕元に置いてあった文庫本のページをめくった。



琴子が自分を見る目が怯えている――。
それはいつ直樹から青木との愛を打ち明けられるか、琴子が怯えていたからである。しかし直樹はそうは受け取っていない。直樹は直樹で、いつ琴子から心変わりを打ち明けられるのかと思っていた。
だからだんだんと、琴子のその視線に直樹は苛立ちを募らせるようになっていた。
それは琴子へ向ける言葉となって現れた。

「ったく、お前は本当にイライラする奴だな。」
「鬱陶しい。どけよ。」
完全に八つ当たりであるが、直樹にはそれが分かっていない。琴子から打ち明けられることを避けるために、わざと冷たい言葉を浴びせているのである。浴びせた後に琴子が悲しそうに「ごめんなさい」と謝るのを見て、少し胸が痛む。
が、すぐに「どうせ青木に慰めてほしいとか思っているんだろう」「青木だったらこんなことを言わない」と琴子が考えるのだろうと思うと、痛みよりも苛立ちが勝ち始める。

琴子は琴子で最近の直樹の冷たさを、きっと自分が青木との恋路を邪魔しているからだと思っていた。
「あたしがいなければ、青木の胸に飛び込めるのにと思っているのよね。」
自分が邪魔者だとは分かっている。だからといってそんなにあっさりと身を引けるほど琴子の想いは軽いものではない。
「入江くんの幸せのためには身を引かなければいけないんだろうけど…でも…。」
まさか男に奪われる日が来るとは。どうしてもそれを信じることができずにいる琴子だった。

こうして二人の勘違いは続いて行ったのである――。





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楽しすぎます

なんなんですか!この青木の単語の多さ
もう笑いっぱなしにやけっぱなしです
入江君の八つ当たりに琴子のホモ疑惑に対する落ち込み。二人を挟んでの青木の三角関係に 続きが 目が離せません
また 楽しみに待ってます

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さくらこさん、ありがとうございます。

ありがとうございます!
本当に「青木」のオンパレードで。青木もくしゃみが止まらなかったんじゃないでしょうか(笑)
まさかイリコトが青木をめぐって悩むなんて。
楽しんでいただけていることを知って、安堵しました!

紀子ママさん、ありがとうございます。

そうなんですよ!
青木直樹って実際口にしてみると舌噛みそうだなあって。「き」が重なるからですかね?
入江くんも普通に考えたら、琴子ちゃんがまさかと思いそうなもんですよね。
というか、琴子ちゃんの性格からしたら青木に乗り替えたらさっさと追いかけていそうだと思うのですが。

ガプス、またドラマに出ているんですか!
しかもホームドラマ…いい人の役だといいのだけれど(笑)


まあちさん、ありがとうございます。

も~青木にからんでくれるの、まあちさんだけですよ。
さすがオタク部名誉会員のまあちさん♪
本当にドンとコトリンがこんなに自分のことで頭をいっぱいにしているなんて。青木のくせに幸せ者~!!
耳打ちしてあげてください。きっと大喜びですよ!

あやみくママさん、ありがとうございます。

はい、とことん果てまでいっております♪
でも絶対入江くんは自分がそんな誤解をしていたなんて、口が裂けても言わないでしょうね。
ただ自分が青木を好きだと琴子ちゃんが思っていたことを知ったら、どう思うのか…。
愕然としそうです(笑)
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Author:水玉
『イタズラなkiss』のほかには『ゴルゴ13』が好きです☆
多数あるイタキスの二次小説の中で邪魔することなく、ひっそりとマイペースで我が道をゆきつつ生息しております。
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