日々草子 傘と長靴

傘と長靴

あまり書けないうちに…梅雨が明けてしもうた!!

今回は某所からあのファミリーを出張させてみました。













雨が電車の窓を叩いている。
「ああ、うっとうしいなあ」という顔をする乗客たちの中で、直樹一人はなぜか楽しげであった。

――きっと、今日はごきげんだろうな。

そんなことを考えながら、一週間ほど前のことを直樹は思い出していた。



「まーくん、これはどう?」
琴子が棚から取り上げた長靴は、折り返した部分がチェック柄の紺色のものだった。
「履いてみる!」
真樹は「んしょ」と足を長靴に入れる。そしてカポカポと鏡の前に立ち、ポーズを取り始めた。
「ぷっ」と直樹が噴き出す。
「ああいうとこ、お前そっくり。」
「そう?」
両親のそんな会話に気づくことなく、真樹は横を向いたり足を上げたりと、色々ポーズを取っている。その顔は真剣そのもの。
「これにする!!」
再びカポカポと音を立てて両親の前に戻ってきた真樹は、満面の笑みで言った。

「よし、それじゃ今度は傘だな。」
傘が並んでいるコーナーへと三人は移動する。
「傘はパパと選ぶぞ。」
「うん!」
真樹の物を二つ買う時は、琴子と直樹、それぞれ一つずつ選ぶのがいつの間にか暗黙の了解のようになっていた。長靴は琴子が選んだので傘は直樹の番というわけである。

「どれがいい?」
「迷っちゃう。」
幼児用の色とりどりの傘を、真樹はゆっくりと見る。
「あ、これなんてどうだ?」
直樹がそのうちの一本を取り出した。
「あら、柄にくまちゃんがいる!」
「本当だ!」
直樹が選んだ傘の柄には、真樹の大好きなクマの顔がついていた。直樹はそれをゆっくりと広げた。
「あ、お耳もついてる!」
真樹が指差した先には、広げた傘の上にクマの耳がちょこんと飛び出ていた。立体タイプの傘で薄い黄色である。
「真樹、持ってごらん。」
直樹は真樹に傘を持たせた。
「まーくん、可愛い!」
琴子が手放しで褒める。真樹はクルクルと傘を回してみせた。その後、鏡の前へ移動し、またポーズを取り始める。
「どうだ?」
「これにする!」
真樹は即答した。大好きなクマの傘で上機嫌である。

それからというものの、真樹は外を眺めては「雨降らないかなあ」と呟く毎日だった。新しい長靴と傘を早く試したいのである。しかし真樹の願いとは裏腹に、太陽が輝く日々が続いていた。



そして今日、ようやく真樹の念願の雨が降っている。
日曜日であったが、直樹は出勤だった。きっと日中、琴子と一緒に出掛けたに違いない。主婦の琴子からすると洗濯ができなくてがっかりの空模様であるが、真樹は大喜びだっただろう。
そして電車は直樹の家の最寄駅へと到着した。

改札を出たところで、
「パパ!!」
と呼ぶ声が聞こえた。
「真樹!」
そこには新しい傘と長靴姿の真樹がニコニコしながら立っていた。
「パパ、お帰りなさい!」
耳がぴょんと飛び出た傘を振る真樹。直樹は急いで真樹の側に駆け寄った。
「まーくんがね、どうしても傘と長靴をパパに見せたいんだって。一番にパパに見せたいって。」
琴子が説明する。
「パパ、まーくん可愛い?」
「ああ、可愛いよ。よく似合ってるぞ。」
「やったあ!」
真樹は琴子の顔を見上げた。琴子が笑いかける。

「それでね、入江くん。」
「ん?」
「夕食、外で食べない?」
「いいけど?」
せっかくここまで出てきたのだからと、直樹も異存はなかった。
「あのね、パパ。ママね、お鍋焦がしちゃったの。」
「こら、まーくん!」
琴子は真樹に「内緒って言ったでしょ」と言ったが、もう遅い。
「なるほど。失敗したから外で食いたいわけか。」
「あ、うん…そう。えへへ。」
琴子は頭に手をやって笑ってごまかす。
「ようし、それじゃあ真樹の大好きなプリンを食べに行くか。」
「わあい!」
真樹は傘を振って喜びを体いっぱいで表現する。



「プリン、プリン。おいしいプリン。」
歌いながら真樹は水たまりを見つけては、その中にザブザブと入っていく。
「子供って水たまりを見つけると絶対中に入るよな。」
「そうね。」
自分にもそんな頃があったなと、琴子と直樹は懐かしく振り返る。
「なんか、まーくんがあんなにはしゃいでいるのを見たら、雨も悪くないなって思ったわ。」
「俺も。」
自分たちが選んだレイングッズをあんなに喜んでくれるなんてと、二人は嬉しかった。

「ママ、三色のプリン頼んでいい?」
水たまりの中から真樹が琴子に訊ねた。
「うーん、お子様ランチについているでしょう?」
その点は琴子は変わらず厳しい。真樹は直樹の顔をじっと見つめる。直樹は笑いながら言った。
「…パパ、今日はプリンがすごく食べたいかも。」
「入江くんはすぐに甘やかす!」
琴子が直樹を軽く睨む。
「ママ、パパが食べたいって!パパはお仕事疲れているもんね。ご褒美ほしいんだよ!」
「ご褒美ってもう…。」
これには琴子も苦笑するしかない。
「分かりました。二人で分けるのよ。」
「よし!」
「よし!」
直樹と真樹は二人でハイタッチをした。
「…とかいって、絶対全部まーくんに食べさせるのよね。」
いつもこのパターンだと琴子は呆れる。だがこれも悪い気分ではない。

やがて三人のお気に入りのドニーズの看板が見えてくると、真樹が走り出す。
「まーくん、危ない!」
「真樹、ドニーズは逃げないぞ。」
琴子と直樹は真樹をつかまえ、二人でその手をしっかりと握ってドニーズのドアを開けて入って行ったのだった。





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あいかわらず、まーくんは愛らしくて大好きです。
フトンシリーズの親子のお話は本当にほっこりできますね。蒸し暑い毎日にほのぼのとしたお話で暑さを忘れることができました。ありがとうございました

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おはようございます

ふふ、とっても仲良し親子で良いねぇ♪水たまりではしゃぐまーくんとそれを優しく見つめる直樹と琴子の姿にほのぼのするよぅ(-^∇^-)子供ってほんと水たまりが好きだよねぇ‥水たまりにそっと入るならまだいいけど何故か豪快にバッシャーンって入るし‥「 ふ、服がぁぁ 止めてくれ~(TдT)」だわよ(笑) 久々にかわいいまーくんのお話が読めて嬉しかったです!

Sさん、ありがとうございます。

ありがとうございます!
お祭りということで、某所から出張させてみました♪
そろそろ某所でお話を書かないとと思っているので、その折にはまた遊びに来て下さいね!

紀子ママさん、ありがとうございます。

え?ダブダブのほうがいいって?それはそろそろダブダブの登場を心待ちにしているというサインということでしょうか?(笑)も~紀子ママさんのリクエストならば頑張っちゃわないと!
長靴カポカポまーくん、いかがでしたでしょうか?
最近はレインブーツなるものが普及しているおかげで、大人になっても長靴(笑)がはけるようになりましたよね。長靴はもうはけないんだろうなとしみじみしていたころが懐かしいです。
料理に失敗したらホカ弁、ありですよ!

佑さん、ありがとうございます。

そろそろ佑さんがまーくん欠乏症になっている頃じゃないかなあと思ってました!
まーくん、私も可愛くてたまらないので某所へ引っ込ませておくのがちょっと可哀想かなあと思い始めたり。でも好きな時に書ける利点は捨てがたい…うーむ。

秘密の喜びさん、ありがとうございます。

ありがとうございます!
いやいや、子供の立場から(もういい年ですが)考えるには、どうしてあの時あんなことをと思うことが多々あります。年を重ねないと気づかないことがあるんですよね~。
楽しんでいただけてうれしいです。

はるいちばんさん、ありがとうございます。

ありがとうございます!
日陰の身(笑)に生きているのに、こんなにたくさんの方に愛されているまーくんは本当に幸せですね。
時折、こちらにも登場させちゃおうかなと考えています♪

sarasaさん、ありがとうございます。

とんでもないです!
私もあちらはコメントのお返事を省略させていただいているので、その辺は全く気にしないでください!
読んでいただけていたんですね。それが一番うれしいです。
今回拍手がすごく多くてびっくりしました。それほど某所へお越しくださっている方が多いんだなあと。
某所がわからないとまーくんってなんだ、この子は?という状態ですからね(笑)

そうなんです。このシリーズは琴子ちゃんが入江くんよりしっかりしていることが特徴です。
入江くんが面白がってまーくんをからかったりするので、琴子ちゃんにしょっちゅう怒られているという(笑)まことにめずらしい入江くんが出てきます。

ぜひまた新作ができたら読んで下さいね!

副部長、ありがとうございます。

副部長お久しぶりです!
お元気そうで何よりです!

や~まーくんは本当に愛情込めて書いています♪
自分で言うのもなんですが、なかなか可愛くて^^
このシリーズは基本は三人で暮らしているので、そこが書いていて楽しいんですよね。
琴子ちゃんはしっかりしているし、まーくんはパパとママが大好きだし、入江くんは妻子を溺愛しているし。
書いていて本当に楽しいです!

毎回色々悩みつつ書いていますが、本当によく完結させられたなあと思うことがしばしばです。
私は毎日副部長のところをパトロールしているんで、時間ができたら新作お待ちしています。
変態度が大きければ大きいほど好みですので♪

marimariさん、ありがとうございます。

こちらも猛暑です!!もう暑くて暑くて溶けそうです。
この間、近場のスーパーでどこぞやのマダムが「もうねえ、暑くて家でじっと座って新聞読んでいるだけで汗がタラリなのよ~」と話しているのが聞こえてきました。

暑くて食欲もないですが、元気ですよ~♪

久々のまーくん、こんなに皆様に愛されているとはびっくりです!
これからもがんばって続けようと思います♪
素直でいい子なまーくんは入江家のアイドルですから、永久的に♪

るんるんさん、ありがとうございます。

本当に『ピチピチ…』という歌が聞こえてきそうですね!
きっと三人で歌いながら歩いていたことでしょう^^

癒しのシリーズというお声を多々頂戴しつつ、時折サスペンスや三文メロドラマになる、それがフトンです(笑)

Foxさん、ありがとうございます。

いえいえ、私も気になりますよ(笑)
チョコと苺とカスタードって感じかなあと思っているんですよね。抹茶だと子供が食べられないし(私も食べられないし)(笑)

ちぃさん、ありがとうございます。

や~ん、大好きだなんて嬉しいです!
やっぱりこちらにも時折顔を出させようかな…。こんなに愛されているのならば!
もっと頑張ってまーくんも更新したいです!表が落ち着いたのでそろそろ更新しないと♪
ちぃさんもお体に気を付けてくださいね!

あやみくママさん、ありがとうございます。

確かに、泥は落ちませんよね!!
でも水たまりって魅力あるんですよね~。大人になった今も、サンダルなんかがびしょびしょになったら「もういいや!!」とよけることすらしなくなる私ですから(笑)
長靴は濡れないから子供も楽しく入れますもんね!

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プロフィール

水玉

Author:水玉
『イタズラなkiss』のほかには『ゴルゴ13』が好きです☆
多数あるイタキスの二次小説の中で邪魔することなく、ひっそりとマイペースで我が道をゆきつつ生息しております。
そっと見守っていただけたら嬉しいです。

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当ブログは、『イタズラなkiss』の二次創作をメインとしておりますが、時折管理人の趣味や日々の出来事についての記事も書いております。

原作者様や関係各位とは一切関係ありません。

二次創作については、いわゆる原作の隙間をぬった作品もありますが、主人公以外のキャラクターをメインとしたものや オリジナルキャラクターが出てくるものもございます。

そして、原作と違った時代(平安や明治やその他の時代を舞台にしております)、異なる設定(主人公を医者と看護師じゃない職業にしております)で書いてあるものが多いですが、原作を冒涜しているつもりは全くございません。

二次創作が苦手という方及び原作のイメージと合わないと思われる方はどうぞお引き取り下さいますようお願いいたします。

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