日々草子 拒む後輩

拒む後輩




「…と、このような状態なのです。」
男が説明を終えると同時に部屋の中がパッと明るくなった。同時に前に映し出されていたスクリーンはただの白い幕となる。
「いかがでしょうか?デューク入江先生?って、あれ?」
彼とその連れは目を丸くした。僕も奴が座っていた席を見る。先程まで座っていたはずの奴がそこにはいない。

と思ったら、奴は部屋の片隅に、いつものように壁を背にして立っていた。
「いつの間に!?」
驚く彼ら――本日の依頼人たちに奴は冷たく言った。
「…暗い所で同じ場所にじっとしていられるのは、そこにいるのが自分だけと確認できるだけです。」
くうっ!!!今日もこれだよ!何様、お前様、入江様!!

「なるほど!さすが入江先生ですね!」
そしてそんな入江に感心する依頼人たち。なんだろうね、一体?
「いかがでしょうか?今の映像をご覧になって…手術は?」
「俺のスイス銀行の口座に入金が確認され次第、とりかかりましょう。」
「おお!!ありがとうございます!」
…はい、契約成立!!本日も毎度ありぃ!!


今回の依頼人はとある地方都市の病院だ。しかも院長自ら患者と共に依頼にきた。
ということで、入江の口座に入金確認されたら出張ということになる。


「入江くん!!」
パタパタとやってきたのは琴子ちゃんだ。手に何か持っているけど、何だろ?
「入江くん、明日から出張なんだって?」
寂しいのか琴子ちゃんの大きな目には涙すら浮かんでいる。
「琴子ちゃん、出張といってもたかが一泊…ぐほっ!!」
入江のひじが僕のお腹に命中した。くそっ相変わらず敬うって言葉を知らない奴め。

「すまないな、琴子。さびしい思いをさせてしまうけれど。」
「ううん…。」
琴子ちゃんは手でごしごしと目をこすった。
「それだけ入江くんを必要としている人がいるってことだし、何より入江くんが優秀なお医者さんだって証拠だもの!」
「琴子、お前って奴は…。」
そして二人、お決まりのキスってやつですわ!はん、僕がいること、いやいや、ここが病院だってことは…はいはい言うだけ無駄ですね。

入江は琴子ちゃんが持っていた物を僕に押し付けながら、
「さ、琴子。」
「はあい。」
と、琴子ちゃんを連れていつもの仮眠室へと入って行った。

入江が僕に押し付けた物は、栄養ドリンクの空瓶だった。どうやら琴子ちゃんが飲んでいたらしい。
うわ、これ、超お高いやつじゃん!一本五千円だ!この間は三千円クラスだったのに!
はあ、僕だってこんな高いものは飲めないよ。まあ、スイス銀行に多額の預金がある誰かさんにとってはさ、一本五千円の栄養ドリンクだってうま○棒レベルの値段なんだろうね!

…一滴くらい残ってないかな?
自分でも浅ましいと思いつつ瓶の中を片目をつぶって覗いた時だった。

「そ、そこに息をかけられると…しゃべれなくなるの。」

…入江!お前、琴子ちゃんのどこに息をかけているんだあ!?



ということで、翌日僕たちは地方都市のとある病院へとやってきた。
着いた早々、手術のスタッフと打ち合わせだ。有名な入江大先生(ちょっと嫌味を言ってみる)を迎えてのことということで、看護師長も入っている。性別女性、年齢はアラフォーってところ。なかなかの色っぽい美人だ。

打ち合わせも無事に終わり、明日に備えて僕たちは用意されたホテルへと入った。
当の入江は部屋に入るなり、盗聴器対策とやらで装飾品や家具を入念にチェックしている。

「何であなたと同室にならないといけないんですかね?」
一通りチェックが終わった入江が言い出した。
今回、どういうわけか入江と同室だ。それはこっちの台詞だっての!
「お前に多額の報酬を払ったから、ホテルの部屋代をケチる羽目になったんじゃないのか?」
ふん、これくらいの嫌味は言わせてもらうよ。


僕たちはさっさとベッドに入ることにした。
「お前、何で裸なわけ?」
「別に。」
入江は備え付けのパジャマを着ていなかった。なんだ、こいつ?ま、まさか…。
「僕を襲うつもり?」
入江が闇の中で目を光らせるのが分かった…。
さ、寝よう寝よう…。



スーッ…パタン。

ドアが開いた?あれ?だって鍵をかけておいたはずなのに…。

ピタ、ピタ、ピタ…。

だ、誰かが歩いてこっちに来ている!誰?誰なんだ?

ピタ…。

い、入江のベッドの前で足が止まった。
怖いけど僕はヘッドライトをつけた。

「あ、あなたは!!」
僕は思わず大声を上げてしまった。そこに立っていたのは、昼間に打ち合わせをした看護師長だったからだ!
しかも、その師長…スッケスケのベビードールなんてもんを着ている!!ブラジャーつけてないから丸見えだよ!!
師長、どうした!?

「入江先生…。」
師長が入江に声をかけた。入江は無言だ。
「朝日が昇るまで…先生のお傍にいさせてください。」
は、はい!?
何だって!?
その恰好でそのセリフってことは…つ、つまり!?
ちょっと待って!僕もこの部屋にいること知ってるよね?てことは、師長!僕の目の前で入江と!?

これは止めた方がいいのかな?
いやいや、琴子ちゃんにとんでもない声を上げさせている入江のテクニックを拝めるまたとないチャンスかも。いやいや、そんなことはいけない!入江は妻帯者なんだ!

入江をじっと見つめる師長。入江は上半身裸。自分を待っていたと誤解…いや、本当に入江が師長を待っていたとか?

「悪いが、寝る女は自分から選ぶことにしているので。」
入江は冷たく言うと背を向けた。
「うっ…!」
師長は口元を手で押さえると、パタパタと部屋を出て行ってしまった。

ほう…よかった。これで琴子ちゃんが泣かずに済む。入江、よくやったな!よく堪えた!男としては辛かっただろう!僕にはよく分かるよ!

「…何、一人興奮しているんですか?」
そんな僕に何事もなかったかのように声をかける入江。
「だってさ、お前がちゃんと操を立てたから…。」
「別に。」
「別にってお前、もう、照れちゃって。」
このこのこの!
「俺、原則デカパンの女には手を出さないんで。」
「で、デカパン?」
「ええ。それじゃあ。」
入江は寝息を立て始めた。

デカパン…デカパン…あれだけの短時間でそれを見てたとは。
てことは、琴子ちゃんはデカパンじゃないってことか?

こんなことがあったというのに、手術は難なく終わった――。



「入江くん、お帰りなさい!」
斗南に戻るなり、琴子ちゃんが入江に抱きついてくる。
「ただいま。」
「お疲れ様!」
そしてまた…ブチューッ。

「さ、俺を癒してくれ。」
「はあい。」
今度は琴子ちゃん自ら、僕に空瓶を押し付けた。うん、今日は六千円だ。あとで残ってないか確認してみよう。

いつものように仮眠室のドアがしまる。僕はその前で考える。
デカパン女を拒んで琴子ちゃんか。てことは、琴子ちゃんはその…履いていなくても変わらないだろって感じのちっこいパンツを…。

バタン!!

「くだらない想像はやめて下さい。あなたの命を縮めることになりますよ。」
仮眠室から入江が顔をのぞかせた。
「別に琴子がデカパンじゃないとか、そういうことではありません。」
聞いてもないのに説明してくれるところは、こいつ、結構親切だよな。
「じゃあ、何だよ?」
せっかくだからお説を拝聴してやろうじゃないか。
「…二度三度と続けて味わえる女は、そうざらにはいないからですよ。」
入江は自信満々に言うと、再びバタンとドアを閉めた。


「ああ!!入江くん!!こんな喜びをくれるなら何だって!!」

…どんな喜びをもらってるの、琴子ちゃん!!













☆ゴルゴ13の名言
「暗い所で同じ場所にじっと立っていられるのは…そこにいるのが自分だけと確認できる時だけだ。」
「女と寝るときは…俺の方から相手を選ぶことにしている…。」
「二度三度と味わえる女は、そうざらにはいない。」

☆ゴルゴ13の習性
デカパンの女性には絶対手を出さない。
なぜか自ら身をまかせにくる女性が多い。それを察するのかそういう時のゴルゴはまるで用意しているかのように、裸でベッドに入っている。


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Author:水玉
『イタズラなkiss』のほかには『ゴルゴ13』が好きです☆
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そして、原作と違った時代(平安や明治やその他の時代を舞台にしております)、異なる設定(主人公を医者と看護師じゃない職業にしております)で書いてあるものが多いですが、原作を冒涜しているつもりは全くございません。

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