日々草子 大蛇森の水難

大蛇森の水難

プールなんていつ以来だろう?
海は…慰安旅行で行ったけれど。

僕はゴーグルを装備し、泳ぐ体制に入った。
皆さん、お久しぶりです。僕のことお忘れですか?お忘れになられた方のために改めて自己ピーアールを…。名前は大蛇森。こう見えても泳ぎは得意。
今日は最近できたスポーツクラブの体験に来ている。
なんだかんだいって、メタボは怖いからね。
このスレンダーな体を維持する為にも、適度な運動は必要だから。

今日は平日のためか、プールも空いている。医者なんて仕事、不規則だから恐らく入会したら平日に通うことになるだろう。こんなに空いているなら入会してもいいかもしれない。

あれ?隣のコースで子供が泳いでいる…?
紺のスクール水着みたいだけど…。ここは18歳以上しか入会できないから高校生すらいないと思うけれど…。
…げ!あれはチンチクリンじゃないか。
ビート板に顔をのっけてバチャバチャやっている。あいつ、泳げないのに何でここにいるんだ?
…それにしても、チンチクリンの泳いでいる姿。まるで流木だな。それも枯れている。女に興味のない僕から見ても、何も感じない。
そんなことを思っていると、こちらへ向かってくる流木と目がバッチリと合ってしまった。

運動不足解消のため、スポーツクラブの体験に来たあたし。
一人ってちょっと不安だったけど、水の中は気持ちいいなあ。
それに泳げなくても、ちゃんと初心者に教えてくれるレッスンもあるみたいだし。
でもとりあえず今日は久しぶりなんで、ビート板を使おう。空いているみたいだしね。
…ゲッ!あそこにいる忘れたいのに忘れられないガリガリの白い体…。大蛇森!

「こんにちは。大蛇森先生。」
「…どうも。」
お互い大人なので、挨拶くらいは交わす。
「先生、ここの会員なんですか?」
「いや、まだ。」
チンチクリンが会員なら考え直すか…。
「まさか、君、ここまで僕の裸体を見に来たんじゃ…。」

大蛇森の言葉に、あたしはカッと頭に血が上った。
「違いますよ!そんな気持ち悪いことわざわざするわけないでしょう?」
どこまで、あの旅行を根に持つの!?しつこすぎ!

「ところで、君、もしかして泳げないの?」
そして、どうして、こいつは普通の人が聞きにくいことをズバッと訊いてくるんだろう?
悪い?泳げなくて?
泳げなくても入会OKってチラシに書いてあったもん。
「まあ…。あまり得意ではないです。」
あたしは一応、返事をした。

泳げないのか。しょうがないな。なら僕の素晴らしい泳ぎを見せてやることにするか。
僕はゴーグルをつけ、まずは軽くクロールで流すことにした。
こう見えても僕はクロール、平泳ぎ、バタフライ、背泳ぎと一通りマスターしている。
今日は個人メドレーもやってみる予定だ。
ここに入江先生がいたらなあ。なんでチンチクリンなんだろう?

…悔しいけれどうまいわね。
でも絶対入江くんの方が上手だけれど。見せつけで泳ぐところがあいつの性格の悪さを示しているわね。
あ。そろそろアクアビクスの時間だ。大蛇森なんか見ている暇はないわ。あっちのコースに移動しないと。

ふう!
見たか?チンチクリン。僕の華麗な泳ぎを…って、いないのかよ!
どこまで無礼な女なんだ。
いけない。アクアビクスの時間だ。やれやれ。チンチクリンに構ってなければ、もうちょっと泳げたものを…。

「はい!それではアクアビクス、初級を始めます!」
インストラクターの声が大きく響いた。
そして大音量の音楽が流れ始めた。

…なぜ?なぜ、僕とチンチクリンが並んで踊るんだ?
何とか離れようとしたが、人数がつまっていて離れることができなかった。

「はい!それでは右へ三歩!」
インストラクターが右と言っているのに、チンチクリンが左、すなわち僕の方に迫ってきた。
お前は右と左の区別もつかないのか?
痛いっ!おまけに僕の足をおもいきり踏んづけた。

「はい、それでは右手を上へ上げましょう!」
ゴツン!
チンチクリンの上げた「左手」が僕のあごへ命中した。
痛すぎる…!
だから、「右」と言うのに、何で「左」を使うんだ!
お茶碗を持つ手が左、お箸を持つ手が右だ。…お前が右利きならな。

「はい!手を腰に当てて、ひねってください!」
…今度は僕のわき腹に、チンチクリンの肘がぶつかった。
こいつ、プールの中で僕を殺す気なんだろうか?

「はい!それでは音楽に乗って…。」
リズムに乗って、体を動かす。
…チンチクリン。お前のそれはどう見たって、東京音頭ではないか?
ここは神宮球場か?

「はい!お疲れ様でした!」
地獄の時間がようやく終了した。
僕はヘトヘトだった。ストレスを解消するつもりが、もはや爆発寸前だった。

「…君は僕の体を疵物にする気か!?」
僕は思わず、チンチクリンに詰め寄った。
「…はあ?」
チンチクリンが間の抜けた声を出した。
「全然、言われたことと違うことをするし…。」
「先生こそ、私に迫ってくるのやめてもらえます?」
な、何を言い出すんだ、この女は!
どこまで自分中心の女なんだ!

「いかがでした?アクアビクスは?」
その時、インストラクターが僕たちに声をかけた。
「カップルで参加される方、結構いらっしゃるんですよ。」
「か…」
「カップル!?」
僕とチンチクリンは同時に声を出した。
「とんでもない!」
そして同時に返事をした。

「あ、あたしは世界一素敵な旦那様がいます。こんなガリガリの気持ち悪い男じゃない…!」
「ぼ、僕の方こそ、こんな流木みたいな女なんて…!」
僕は頭にきて、もうプールから上がることにした。

シャワーを浴びて、更衣室へ戻ろうとしたら流木女とまた一緒になった。
「…女子の更衣室はあっちだから。あの時みたいに、男子の所へ乱入するのはやめてくれたまえ。」
釘を刺すことを忘れない。
チンチクリンは失礼なことに、無視して歩いていった。

「どうだった?プール。」
俺は琴子に尋ねた。
「…大蛇森がいた。」
犬猿の仲が顔を合わせたってわけか。琴子にとっては災難だったな。
「聞いてよ!あいつったら、あたしのことを流木って言ったのよ!」
流木…。分からないことはないか。俺は笑いを堪える。
「そして、迫ってくるの!」
せ、迫る…?俺じゃなくて、琴子に?
「もう許せない!でも一番許せないことは…。」
琴子は怒りを込めて叫んだ。
「あいつとカップルに間違われたことよ!」
…。

「おはようございます。入江先生。」
僕は昨日の悪夢を忘れるように、入江先生に救いを求めた。
入江先生は何か雑誌を見ている。
「おはようございます。大蛇森先生。」
ああ爽やかだ。プールもいいけどやっぱり先生の周りはマイナスイオンに溢れている…。
「何を見ているの?」
「占いです。」
先生、占いになんて興味があるのか。
「大蛇森先生は魚座ですよね?」
え?僕の星座を覚えていてくれているの?
嬉しい…!
「…“水難の相”が出ているそうです。」
「す、水難…?」
「ええ。水の周りには近寄らない方がいいみたいですよ。…プールとか。」
水難…。もしかして、昨日のも水難だったのか。
そうだな。きっとそうだ。
「絶対水に近寄らないようにするよ!」
僕は決心した。

…これでスポーツクラブのプールには来ないだろう。
しかし何でも信じる人なんだな。

そういや、昨日、琴子が俺が選んだ紺の水着がスクール水着っぽくて嫌だとわめいていたな。
だってあいつが持っている水着、もう一つはちょっと露出が多い。
俺と一緒なら着たっていいけれど、一人のときはやめてほしい。
…昨日みたいな変な男に付き纏われないためにも。


☆あとがき
久しぶりの大蛇森です。
Eさんのあの絵の影響がまだ続いているのかも…(笑)

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comment

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よかったぁ~^^;
このお話を外で携帯からこんにちわしなくって!!
どこまで大蛇森ファン(水ちゃん大蛇森)にさせる
おつもり^^
お腹がよじれました♪

さあやも昔、水泳をしてたのでメドレー経験はありますが大蛇森くんのメドレーは想像したくないですわ^^
特にバタフライ・平泳ぎ!!
あの顔が水中からこんにちわ^^してくるだけで笑える!
笑えちゃう!みたくない^^って感じですね^^

あと、水中エアロも経験あるけど想像するだけで本当にムリっ!!もう、水ちゃん最高です♪
東京音頭→神宮?にはぴっくん!!
だってさーやはLOVE♡Gだからね^^

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今日はPCからこんにちわ。こんばんわ?
さあやさんと同じく、携帯からじゃなくて助かった=3
直樹の言うことなら素直に聞き入れてしまう純粋?な大蛇森もある意味かわいい?けど、そんな大蛇森とカップルに間違われたことにさりげなく焼餅を焼いて牽制する入江君もかわいい。
いつもホント楽しみ♪

ありがとうございます!

さあやさん

ごめんね。
もう私の頭の中には、豪快なバタフライをする大蛇森君しか浮かばなかったの(笑)
あの顔が勢いよく、水中から飛び出すところとか…。
東京音頭=神宮を書いた時、さあやとえまさんの顔がチラリと脳内を…笑

ヒロイブさん
今日は電車の中じゃなかったんですね(笑)
本当に、大蛇森ってある意味、乙女?ですよね。
けなげっていうか…。あの外見じゃなければいいのに…。
プロフィール

水玉

Author:水玉
『イタズラなkiss』のほかには『ゴルゴ13』が好きです☆
多数あるイタキスの二次小説の中で邪魔することなく、ひっそりとマイペースで我が道をゆきつつ生息しております。
そっと見守っていただけたら嬉しいです。

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そして、原作と違った時代(平安や明治やその他の時代を舞台にしております)、異なる設定(主人公を医者と看護師じゃない職業にしております)で書いてあるものが多いですが、原作を冒涜しているつもりは全くございません。

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