日々草子 別冊ペンペン草 30

別冊ペンペン草 30







せっかくお祭りに参加させていただいているのに…雨をテーマというのがこんなに難しいとは!!
お題サイトとかめぐって考えようとしたのですが、まとまらなくて!!

無理やりこじつけた感ありありでお恥ずかしいです。










「船津くん、どう?プロットできそう?」
琴子がハーブティーなぞを淹れながら目を向けたのは、漫画家志望のローズマリー船津(注・ペンネーム)である。
「なかなか…はあ。」
その船津はダイニングテーブルに突っ伏した。
「もうすぐペンペン賞の締め切りだものね。」
船津がめざしているのは琴子が編集者と勤務している出版社、散米社の少女漫画誌『別冊ペンペン草』で定期的に募集している漫画賞だった。ゴールド、シルバー、ブロンズとありゴールドに入賞すればデビューは約束される。

「ま、これでも飲んでちょっと休んだら?」
「ありがとうございます。」
ズズズとハーブティーを船津はすすった。
「それにしてもよく降るわよねえ。」
琴子は窓から外を見た。梅雨のこの時季、雨がしとしとと降っている。
「琴子、俺には?」
新聞を読んでいた直樹がリビングから声をかけた。先程から船津の世話を焼いている琴子がおもしろくない。
「あ、はいはい。今コーヒーを淹れるね。」
琴子はせっせとコーヒーメーカーにセットする。

「そうだ、船津くん。あとでポーズとってあげるね!」
直樹のコーヒーを淹れながら琴子が言った。
「え?いいんですか?」
「うん、これもダージリン船津デビューのためだもん。」
「ローズマリーです、琴子さん。」
とうとう花ではない名前にされてしまった。いつまでたっても自分のペンネームを覚えない琴子に船津は泣き笑いといったところ。
「何のポーズだよ?」
直樹が二人の邪魔をするかのように口を挟んできた。
「これ、これ。」
琴子が直樹の前にムニュッと唇をつき出した。
「タコか?何だよ、船津。お前、今度はタコについて延々と描くつもりか?」
直樹が琴子の唇を手でつかんだ。
「痛い!タコじゃないってば!」
ヒリヒリとする唇を摩りながら、琴子が直樹を睨む。
「キスよ、キス。キスを待つ女の子の表情を描く練習。」
「キス…だ?」
直樹の眉が寄った。それを見た船津が「あわわ」と青くなる。しかし当の本人は気づかない。
「いいです、琴子さん。やっぱり僕、想像で。」
「あん、だめよ!ちゃんとモデルを見て描くのがいいってこの間入江くんに教わったばかりでしょ?船津くんの奥さん、今取材旅行で留守だし。」
「…たとえ家にいたって、んな真似をするか。」
直樹がボソッと突っ込んだが、琴子はやはり気づかずに、
「これも編集の大事な仕事。ね?」
「でも…。」

ピンポーン。

そこに運よくインターフォンが鳴った。
「あ、僕出ます!」
助かったとばかりに船津が椅子から飛び上がり、玄関へと向かう。

やがて大きな段ボールを抱えて船津が戻ってきた。
「何ですか、これ?結構重い…。」
ヨロヨロとしながら船津が段ボールをリビングへ置いた。
「これ?編集部に届いた入江くん宛のプレゼント。」
琴子が答えた。なるほど、段ボールに貼られた送付票は散米社編集部である。
「それにしても、いつもより大きくありません?」
人気漫画家である直樹宛には毎月、大量の読者からのプレゼントが届くことは船津もよく知っている。しかし今月は一風変わっている。
「中を開ければ分かるよ。」
琴子はガムテープをビリリッと破り中を開けた。しかしその表情はおかしい。先ほどまでの屈託のなさがすっかり消えている。
中に詰まっていたのは…。

「湿布?」
様々なメーカーから出ている湿布の箱、箱、箱であった。
「な、何でこんなに?」
「それはね、これが答えなの。」
一緒に入っているファンレターのうち、一通を琴子は船津へ渡した。
「“入江先生。梅雨の時期はさぞ神経痛が痛むことと思います。そんなお辛い中に私たちにナオキンを届けて下さってありがとうございます…”先生、神経痛もちなんですか?」
「誰がだよ。」
直樹は船津を睨んだ。
「俺のことを七十代と勝手に勘違いして送ってくるんだよ。」
「ああ、先生年齢不詳ですもんね。」
人気漫画家でありながら、唯一公開されているのはその性別だけ。一度サイン会を開催したものの、顔はさらしていないので年齢は謎のままの直樹である。読者はその作品の様子から直樹の年齢を高齢と推定し、勝手に神経痛持ちと思い込み、梅雨の時期はこうして湿布を送ってくるのだった。

「お前も一個持って行け。」
「え?いいんですか?」
先程機嫌を損ねかけたのに、気前のいい直樹に船津は驚いた。
「ああ、今月のバイト代な。」
「嘘!!」
しかし直樹の顔は真面目なものである。やはり先程機嫌を損ねたことは間違いないらしい。

「昨年の分とか、どこにしまってあるんですか?これだけの量の湿布。」
船津はもらった湿布をバッグへしまいながら、直樹に訊ねた。すると琴子が挙動不審になった。
「琴子さん?」
「え?ああ、どこかしら?」
「結構使っているからそんなに置き場所に困らないんだよ。」
様子が明らかにおかしい琴子と違って、直樹は余裕の笑みを浮かべている。
「へえ。先生もやはり腱鞘炎で?」
船津の問いに、直樹は笑って何も答えなかった。



翌日――。

「また今年も、あなたがその匂いをプンプンとさせて出社する日が続くのね…。」
ラウンジで休憩中に、同僚の松本裕子がハンカチで鼻を押さえた。
「ごめんなさい…一応、無香性ってのを選んだのだけど。」
「無香性でも、湿布はそこそこ匂うものねえ。それにしても。」
松本は琴子の後ろに手を回し、シャツを素早くまくった。
「ちょ、ちょっと!」
「…まあ見事にばっちり。」
露わになった琴子の腰には、真っ白い湿布がペタンと貼られていた。

「編集部に大量の湿布が届いた時、今年もかとため息ついたわよ。」
「私もです…。」
シャツを直しながら琴子が涙ぐむ。
「それにしても、あなたの先生。変な趣味よねえ…湿布を見てその気になるなんて!」
「やだ、声が大きいって!!」

梅雨になると、直樹宛に大量の湿布が届く。それを見ると直樹は「せっかくだから使わないとファンに悪い」と変な理屈で琴子を可愛がるのである。それもいつも以上に。
特に昨夜はすごかった。それは船津にヤキモチを焼いたせいだからなのだが、琴子は今でも気づいていない。

「あーあ。ただでさえ空気がじめじめするってのに、この匂いか。」
「ちゃんと、松本さんが嫌がっているって言うから!」
「無理よ。さかりのついた年寄りは手に負えないもの。それにしても体力満タンでお元気で何よりね。」
「少しはおとなしくなってほしい…。」



その頃直樹は。
「今夜はこれにしてみるか。」
と、次に使う湿布を品定めしていたのであった。



関連記事

comment

管理者にだけ表示を許可する

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

驚きの別ぺ、再会!

おはようございます。ピコティムです。
昨日、別ぺで癒されていたところ、まさかの別ぺが梅雨祭りで出逢えることができたした。
偶然?運命?どちらにしても、わたくしにとっては感涙ものでした。
ありがとうお星様(七夕は明日ですね)、いえ、水玉先生。

別ぺのナオキンも●●り●なんですね(笑)


ああ、しょうもないことでおわっちゃいました。ごめんなさい。

おじゃましました。

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

るんるんさん、ありがとうございます。

読者への感謝を忘れないとか何とかうまい理由で、琴子ちゃんと遊んでいそうですよね!
梅雨もまもなく明けそうで…あと少しでお祭りも終わりかと思うと、貢献できなかった反省がますばかりです涙

りんさん、ありがとうございます。

本当に元気いっぱいですよね~。
ラブラブを久々に書けて私も嬉しかったです。

紀子ママさん、ありがとうございます。

お返事遅くなってすみません!!
紅茶だけましですよね(笑)でも本当、ペンネームを全く覚える気のない琴子ちゃんは編集としてどうなんだろうかと(笑)本気で育てる気があるのかしら?
それより紀子ママさんの妄想が素晴らしい!!
いつか使わせていただきたいです!!
紀子ママさんはピップなんですね。私はアンメルツオンキューパッチですよ。

ら~ゆさん、ありがとうございます。

はい、久しぶりの別ペですよ!
久しぶりに書いたら色々設定を忘れてしまって…船津くんのペンネームまで忘れてしまいました(笑)
でもおかげで過去作品を読め、ちょっと新鮮な気分です♪

ピコティムさん、ありがとうございます。

この話の直前にピコティムさんからコメントいただいて!!
久しぶりに書きたくなって書いてみました♪
お礼を言うのは私の方です、ありがとうございます。
別ペの入江くんは琴子ちゃんに溺れて溺れて夢中なんです~♪

吉キチさん、ありがとうございます。

私も思いました!!
入江くんは貼らなくていいのかと!!
いや、入江くんは琴子ちゃんの前でそんな恰好はしないんでしょう(笑)
琴子ちゃんの体に湿布を貼るのが一番の幸せなんでしょう♪
琴子ちゃんは気の毒ですけどね(笑)

sarasaさん、ありがとうございます。

sarasaさんもお好きなんて、うれしいです!!
最近とんとご無沙汰の作品だったので、ドキドキしながら書きました~。
船津くんが無事デビューできるその時までは続けたいなあと思っています。
最近船津くんの出番が多いなあと思いつつ(笑)
入江くんが正体を松本姉に明かす日と、どちらが早いかな?

anpanさん、ありがとうございます。

ええ、ええ。
まだアシスタントしてたんですよ(笑)日給500円でしたっけ?値上げした記憶はあるのですが…
デビューする日は来るのでしょうか?琴子ちゃんの願いですからかなえてあげたいと入江くんも思っているでしょうけれどね!
プロフィール

水玉

Author:水玉
『イタズラなkiss』のほかには『ゴルゴ13』が好きです☆
多数あるイタキスの二次小説の中で邪魔することなく、ひっそりとマイペースで我が道をゆきつつ生息しております。
そっと見守っていただけたら嬉しいです。

※当ブログに掲載されている文章及びイラストの無断転載・使用はご遠慮下さい。

現在の御訪問者
現在の閲覧者数:
御訪問ありがとうございます
このブログについてのお願い
当ブログは、『イタズラなkiss』の二次創作をメインとしておりますが、時折管理人の趣味や日々の出来事についての記事も書いております。

原作者様や関係各位とは一切関係ありません。

二次創作については、いわゆる原作の隙間をぬった作品もありますが、主人公以外のキャラクターをメインとしたものや オリジナルキャラクターが出てくるものもございます。

そして、原作と違った時代(平安や明治やその他の時代を舞台にしております)、異なる設定(主人公を医者と看護師じゃない職業にしております)で書いてあるものが多いですが、原作を冒涜しているつもりは全くございません。

二次創作が苦手という方及び原作のイメージと合わないと思われる方はどうぞお引き取り下さいますようお願いいたします。

コメント及びメールなどでの苦情及び批判は公開、非公開を問わず、私へ告げることはご遠慮いただけますよう、お願い申し上げます。

このブログ及び掲載されている話が嫌いだと思われたら、黙ってあなた様の中から、このサイトの存在を消去していただけますよう、お願い申し上げます。

カテゴリー+月別アーカイブ
 
最新コメント
最新記事
カボチャの世界
Private
カレンダー
07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
リンク