日々草子 姫と軍師 3

姫と軍師 3

今頃言うのも遅すぎるという所なのですが…。
私、戦国物の小説とかドラマとか一時期よく見ていましたが…すみません!合戦シーンは飛ばしたり早送りしたりする人間なのです。
この話もその辺はすっ飛ばして、姫と軍師の関係重点という書き方になる予定です(というか、そうにしか書けない)。
いつもの時代コスプレ物という感じで読んでいただけたらなあと思います。
今回もこちらにUPできて嬉しいです。










「いやいや、完全勝利でしたな!」
「さすが、姫様が三顧の礼で迎えられた軍師殿!」
城の大広間では相原家の家臣たちが大喜びで直樹を褒めたたえていた。
「軍師様、この度の勝利、おめでとうございます。」
そう言って直樹の盃に酒を注ぐのはその姫、琴子であった。琴子は直樹のことを「軍師様」と呼ぶようになっていた。
「姫がなぜ酒を?」
直樹だけではなく家臣たち全員に琴子は酒を注ぎまわっている。そしてそれを何の違和感も持たずに受けている家臣たち。
「これはいつものことでございますから。」
桔梗が直樹に説明した。
「いつもって…。」
一番新参者でありながら、大将が座る席に祀り上げられている直樹は琴子に注がれた酒を飲みながらも「一体」と首をかしげずにはいられなかった。


**********

「では西垣との戦について。」
琴子との約束どおり、直樹は相原家へやってきた。そこで直樹は家臣たちの前で来る戦についての作戦を立て始めた。
「まず、××殿。」
「は、はい!」
名前を呼ばれた家臣が返事をする。
「××殿はまずこの地点で待機されるよう。」
直樹は広げた地図の地点を扇子で示す。

「××殿は○○で待機する、と。」

「そして△△殿。」
「はい。」
「△△殿はこちらにて兵を分けて…。」

「△△殿は兵を分けて身を潜める、と。」

家臣たちにどんどん指示を与えていた直樹の扇子が地図上から離れた。

「姫!!」
「は、はいっ!!」
突然自分へ向けられた声に琴子は驚いた。
「…何をされておいでなのです?」
「何って…。」
琴子は紙を広げて見せた。
「軍師様のご指示を書きとめているのですが?」
そこには直樹が先程から出している家臣たちへの指示が記されていた。
「何でそのようなことを?」
直樹は怒りを抑えようと努力していたが、どうしても声色に出てしまう。
「私、物覚えが悪くて一度聞いただけでは覚えられません。」
琴子は怒っている直樹とは対照的に笑顔で答えた。
「皆さま、よく一度で覚えられますね。私はこうして紙に書かないと…。」
「だから姫がなぜそれをしているのかと尋ねているのです!!」
直樹の声に家臣たちも震え上がった。

城の広間にて行われている作戦会議に、なぜか女性の琴子が直樹の傍に座って机を構えていたのである。それが直樹には理解できなかった。

「大体、姫は奥においでになればよろしいでしょうに。なぜここにいらっしゃるのですか?」
直樹は扇子で自分の額をコツコツと突きながら、ため息混じりに琴子に訊ねた。
「だって、私は一応この城の城主ですから。」
琴子は書きかけの紙を見ながら言った。
「私は戦には出られません。でもその私を守るために家臣たちは命をかけて戦ってくれるのです。せめて作戦くらいはきちんと理解しておかねばならないと思いまして。」
「軍師殿、姫様はいつもこうでございます。」
家臣の一人が琴子を庇った。
「そうそう。我らはいつもこうやって戦の作戦を立てておりますゆえ。」
「どうぞ気にされないよう。さ、続きを。」
家臣たち一同、琴子を庇うその様子に直樹は「はあ」と溜息をついた。
「こんな穏やかな状態で勝てるんだろうか…。」
城主琴子に似て、どうも家臣たちにも緊張感が足りない気がする。直樹はこの家臣たちを一つにまとめて軍師としてやっていける自信がなくなっていた――。


************

「…と思っていたら、結構やるもんだな。」
勝利の美酒に酔いしれている家臣たちを見回しながら、直樹は感心していた。
おっとりしているように見えた家臣たちだったが、直樹の作戦に見事こたえてくれた。大人数の西垣に大勝利したのである。
今までギリギリで逃げていたのは、きちんとした作戦を立てる軍師がいなかったからのようである。直樹の指示に対する飲み込みも早かったし、何より…。

「姫様にこうしてお酒をいただくことが唯一の楽しみで!」
「まあまあ。そんな嬉しいことを。」
「姫様、こちらにも。」
「はい、ただいま。」

家臣たちは琴子を守るために一丸となっていた。それが相原家の一番の強みといえよう。
無事に帰参して琴子の顔を見る、そのためには全力を尽くすのが相原家の家臣団だった。

「姫は勝利の女神ってところか。」
直樹が呟いた時、琴子が戻って来た。
「軍師様、お守りはいかがでございました?」
琴子に訊ねられ、直樹は懐から守り袋を出した。それは美しい端切れで作られた守り袋であったが…。
「この重さ、一体何が入っているのです?」
お守りにしては重さがあるものだった。
「それは内緒です。」
琴子は「フフフ」と笑った。


************

「姫、何を縫っておいでですか?」
部屋でせっせと針を動かしている琴子に、紀子が訊ねた。
「おばさま、軍師様にお渡しするお守りでございます。」
そう答えながら琴子は指にまた針を刺した。
「まあ…うちのあの息子に!」
琴子の優しさに紀子は涙を流さんばかりに感激した。
「軍師様はこの度の戦が初陣だとか。せめて私にできることをと思ったのです。でもおば様。」
「はい?」
「軍師様がお力になって下さることはこの家のためにはとても頼もしいことですが、おば様には申し訳ないですよね。」
琴子は針を持つ手を止めた。
「どうして?」
「だって戦に出ねばならなくなってしまいました。おば様はさぞご心配でしょうに。」
「まあ、そんなことを気にしていたのですか!」
紀子は「ホホホ」と笑った。
「少しはあの子も厳しい状況を経験しておいた方がいいのですよ。今まで草深い家でのほほんと暮らしていたのですから。」
「ですが。」
「いいのです。働かざる者、食うべからずです。それに一度や二度の戦でヘマをするような息子に育てた覚えはございません。まあ猫の手程の役には立つと思いますよ?」
「猫の手…。」
結果、直樹は猫の手どころか西垣軍が逃げるくらいの采配を振るったのである。


************


「しばらくは静かな日々が続きますね。これも軍師様のおかげです。」
「いいえ。」
安堵している琴子に直樹は容赦ない言葉をかけた。
「え?」
美酒に酔いしれていた家臣たちがその声に、一斉に直樹を見た。
「勝ったのでしょう?」
確かにこの勝利だけで西垣が相原への攻撃の手を緩めるとは思えないが、少しは平和が保たれると誰もが思っていた。
「この勝利は西垣の闘争心に火をつけたことでしょう。」
直樹は冷静に言った。
「負けたからですか?確かに西垣は負け知らずでしたが。」
琴子の問いに、
「ええ。ですがそれだけではありません。」
と直樹は答えた。
「それだけではない?どういうことでしょうか?」
琴子は心配そうに直樹を見た。
「はっきり申し上げますと、西垣はこの相原家を格下扱いしています。絶対に負けることがないと思っていたはず。」
直樹は続ける。
「その格下相手に今回散々な目に遭ったのです。これはおそらく今まで感じたことのない恥辱でしょう。特に西垣本人は相当誇り高い人物。その誇りを傷つけられた恨みは大きいはず。」
直樹の言葉に琴子、家臣団に緊張が走った。
「…きっと今度は更に大がかりな攻撃を仕掛けてくるはず。それも近いうちに。」
「近いうちに…。」
琴子は青ざめた。
「ええ。今頃悔しさで眠れないでしょうから。そんな思いを長期間抱いていられるわけがない。」
「どれほど後に、西垣は攻めてくるでしょう?」
琴子は不安でいっぱいの眼差しを直樹へ向けた。
「そうですな…。」
直樹は少し考えると口を開いた。
「…一月のちには。」

そしてその言葉は現実のものとなった。
一月経ったか経たないかのうちに、西垣は今まで以上の軍を従えて相原家を目指して攻撃に向かっているという報が直樹の元へ入ったのである。

「どうしましょう、軍師殿!」
居並ぶ家臣たちは直樹に助けを求めた。勿論、琴子の姿もある。
「西垣軍は一万の兵を率いております。対する相原軍はこの状況で集められるのが五千。」
焦る家臣たちに比べ直樹は冷静に説明する。
いずれ攻めてくるであろうとこの一月、鍛錬をしてきたがそれでも兵力は西垣軍には到底及ばない。しかも相手は更に力を付けて来ていることは明白だった。
「ここはドーンと…。」
「滅亡する道を選ぶのはまだ早い。」
直樹は家臣たちの言葉を遮った。

「この城を燃やしましょう。」
直樹の出した策は、琴子や家臣たちには全く考えつかないものだった。燃やすとはどういうことか。それは次回で。



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水玉さん、こんばんは♪

私も血みどろの戦いは早送りです。(死んでいくのは名もない兵士。。~早送り)
水玉ワールドの戦は、逃げるか追い出すかの戦い!?
紀子ママのように「ホホホ」と安心していればよさそうで良かったです。~♪

ピキッ!ピキッと青筋が立ってきそうな入江くん。
微妙な言葉からその努力が伝わってきて面白いです!(笑)
意に介さず笑顔の琴子ちゃん。
そんな姫を入江くんも守りたくなるんだろうな~。

姫を守る相原家の家臣団。。。団(笑)のお話を交えこれからの展開と、まだ姿を現せない謎のガッキーとの次なる戦いは~???
次回も楽しみです♪
更新ありがとうございました!!

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みづきさん、ありがとうございます。

まずはマドカメと呼んで下さってありがとうございます(笑)
少しずつ浸透してきた?ようで嬉しい限りです^^
歴史物、私も好きです。好きだと書いてみたいと思うのですが、書いてみたらこれが難しく…。
読み逃げでも来て下さる事が嬉しいです。

母の事もご心配して下さりありがとうございます!

紀子ママさん、ありがとうございます。

ですよね。だって…合戦シーンってたいてい飛ばしてもその後のストーリーに影響ないし(笑)
勝敗さえわかっていればOKだし、重要人物に何かあったらそこで止めればいいし(笑)
ガッキー、そろそろ出てきますよ~。
でもやっぱりあの性格で頑張ってほしいです。

あやみくママさん、ありがとうございます。

私も子供の頃、よく読みました!!
子供向けの本ってすごくよく書かれていて、大人になって大人向けの本を読みその人物の真の姿を知りがっかりしたことも何度か…(笑)
今でも一番好きなのが歴史上の人物を主人公にした小説ですね~。
歴女さんが読んだら絶対「はあ!?」と思われること間違いなしですが「まあ、水玉の力はこんなもんか」と笑いながら見守って下さるとうれしいです。

あおさん、ありがとうございます。

特に韓国ドラマの拷問シーンは早送りですよ(笑)
そうですそうです。紀子ママのように「オホホホ」と笑いながら読んで下されば!!
私、青筋立てる入江くんが大好きなんですよ!!←なんか変な趣味ですみません
それが伝わって嬉しいです。
琴子ちゃんを守る家臣団もどこか「?」な感じですしね!
本当に毎回ついてきて下さりありがとうございます。

佑さん、ありがとうございます。

お~佑さんに琴子ちゃんを可愛いって言ってもらえた!!
すごく嬉しいです!!

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あおさん、何をおっしゃる!

そんな、お礼を言うのはこちらの方です!
いつも楽しいコメントをいただけて嬉しいです!
お返事が面白くなくて申し訳ないです。
プロフィール

水玉

Author:水玉
『イタズラなkiss』のほかには『ゴルゴ13』が好きです☆
多数あるイタキスの二次小説の中で邪魔することなく、ひっそりとマイペースで我が道をゆきつつ生息しております。
そっと見守っていただけたら嬉しいです。

※当ブログに掲載されている文章及びイラストの無断転載・使用はご遠慮下さい。

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二次創作については、いわゆる原作の隙間をぬった作品もありますが、主人公以外のキャラクターをメインとしたものや オリジナルキャラクターが出てくるものもございます。

そして、原作と違った時代(平安や明治やその他の時代を舞台にしております)、異なる設定(主人公を医者と看護師じゃない職業にしております)で書いてあるものが多いですが、原作を冒涜しているつもりは全くございません。

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