日々草子 あの時の電話は、実は…

あの時の電話は、実は…

「真里奈さん!大晦日の夜から元日にかけて、初詣に行きませんか?」
夕食の席上、船津がはしゃぎながら、言った。

「…無理。」
真里奈は相変わらずの態度で、答えた。
「大晦日、多分夜勤だから。」
「えー!?本当ですか?」
船津は信じられないという感じで叫んだ。
「こんなこと、嘘でなんて言わないわよ。」
「本決まりですか、それ。」
「多分ね。具体的に分かるのは、来週かな。」
「じゃ、決まったら教えて下さいね。」
「何でよ?」
「僕も当直を希望しますから!」
船津の嬉しそうな顔に、真里奈は呆れて言った。
「あなたも物好きねえ…。」
「真里奈さんと一緒に年が越せるなら、どこだっていいんです!もし病院だったら二人でカップの蕎麦を食べましょうね!」
「…船津さん、買ってきてよね。」
「もちろん!」
病院で二人で食べるカップそばも、悪くないかもと真里奈はその時思った。

「私は一人暮らしだから病院でお正月を過ごすは平気だけど、船津さんの御両親はがっかりしないの?」
真里奈は船津が一人息子で、実家暮らしだということを思い出して尋ねた。
「ああ、全然!うちの親、好きなことして楽しんでいますから。」
「ふーん。」
「はい!」
そして、船津は当直明けに初詣に行こうとか、どこの神社がご利益があるかとかをペラペラと喋り続け、真里奈を閉口させたのだった…。

「坊ちゃま!今年もまた旦那様から御連絡がございましたよ!」
休日にも関わらず、自分の部屋で必死になって勉強している船津の元へ、ばあやが嬉しそうにやってきた。
「ああ、今年というか、来年は行けそうにないんだよね。」
船津の言葉に、ばあやが驚いた。
「まあ!なぜでございますか?」
「多分、当直に入ると思う。」
「それでは、私もこちらに残ります。」
ばあやが当然と言わんばかりに、答えた。
「え?いいよ、いいよ。ばあやだけ行っておいでよ。ウィーンフィルのニューイヤーコンサート。毎年、楽しみにしているんだからさ。」
「私が楽しいのは、コンサートよりも船津家の皆様が全員揃っておいでなのを拝見できるからでござますよ。坊ちゃまが日本に残られるのに、私だけが旦那様と奥様の元へ行くなんて、できません!」
「コンサートも、僕が小さい頃からの恒例行事だもんなあ。」
船津はしばし思い出に浸る様子を見せた。

「そう言えば、いつだったか、坊ちゃまがウィーンのホテルから日本へお電話をされていたことがございましたね?」
ばあやが思い出したように言った。
「ウィーンから…?ああ、入江に電話した時か。」
「随分長いお電話でしたから、女性の方だと思っておりましたが…。」
「あれは新年の抱負を電話で入江に言ってやったんだ。わざわざ、日本時間に合わせてさ。そこまで気を遣ったのに、あいつときたら適当な返事ばかりしやがって…。家でカウントダウンパーティーがどうとか、カップルでゲームがどうとか…。」
船津はあの時の直樹の態度を思い出し、怒りの表情をあらわにした。

「入江さんとおっしゃるのは、坊ちゃまのお友だちでございましょう?」
ばあやがなだめるように、言った。
「違う!あいつはライバルだ!」
船津はばあやを睨んで言った。
「あらあら失礼しました。」
「今日だって、あいつに負けないようにこうして勉強してるんだから!」
「まあ、申し訳ございませんでした。それではお邪魔をしないように、失礼しますね。」
ばあやはそう言って、部屋を出ようとした。

その時、
「今年の正月は、いつものディナーよりも素晴らしいご馳走かもしれないんだ。」
と、船津が声をかけた。
「おや、まあ。それでは日本を離れるわけにはいきませんね。」
ばあやは、クスクスと笑った。


☆あとがき
突拍子もない設定に関わらず、優しいコメントをいただけた話の続きです。
…今日はいろいろあって、興奮して頭が冴えているので(笑)
そして、最近こちらで話を書いていなかったなと思いました。

山もない、谷もない、オチもないという結果ですが、ほのぼのとした話になっていればなと。
この系統、タイトルが浮かばないのが一番の難点となっています(汗)
何かいいタイトルがあれば、ぜひ教えて下さい(笑)

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comment

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いいタイトルは思いつかないけれど、このシリーズも大好きなので、続けてくださいね。

いいなぁ、ニューイヤーコンサート…。
我が家も毎年テレビ中継で鑑賞してます。

新婚旅行であっちに行った時は、楽友会館で開催されているコンサートに喜んで行ったのですが、現代音楽でも難解なものが演奏されていて、ものすごく苦痛(笑)でした。
毎年、中継見るたびに思い出します。
やっぱりウィーンではウインナワルツが聞きたいですよね。

ハイソな船津の真実を知った真里奈の話とか知りたい。
案外、玉の輿とかいいながら、真実を知ったら、身分違いと引いてしまう真里奈を妄想しております…。

あの時の電話は海外からだったの~ぉ
もう相変わらず笑わせてくれてありがとう
山あり谷あり落ちあり十分のお話だし、ばあやがいるフナ様はポイントアップ(*^_^*)

ありがとうございます

えまーるさん
私もウィーンは一度は行ってみたいです!
シェーンブルン宮殿とか、マリア・テレジアとか、エリザベートとか(彼女はあまり宮殿にいなかったけど)あこがれです!
行ったんですね…。素敵!

さあやさん
船津って下の名前分からないんだもん(笑)
2つの説があるでしょ?
だから「坊ちゃま」でごまかしてやったわ(笑)
坊ちゃまはばあやかなと思って(笑)
んなわけでばあや登場しました^^
プロフィール

水玉

Author:水玉
『イタズラなkiss』のほかには『ゴルゴ13』が好きです☆
多数あるイタキスの二次小説の中で邪魔することなく、ひっそりとマイペースで我が道をゆきつつ生息しております。
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